「善き人のためのソナタ」
原題:das leben der anderen
監督:フロリアン・ヘンケル・フオン・ドナースマルク
2006年 ドイツ映画 138分
キャスト:ウルリッヒ・ミューエ
セバスチャン・コッホ
トーマス・ティーメ
フォルクマー・クライネルト
1984年、東ドイツの有名劇作家ドライマンは、国家保安省の
ヴィスラーにより完全監視下に置かれる。彼の恋人で女優の
クリスタは、彼と深い愛情で結ばれていたが、同時にヘムプフ
大臣の寵愛も受けている。そして盗聴を始めたヴィスラーは
2人の会話を聞くうちに、次第に心境に変化が起こるのだった。
第79回アカデミー賞外国語映画賞受賞作です。
1984年、まだ東西ドイツが対立していた時代、東ドイツにはシュタージ
と呼ばれる国家保安省が存在し、10万人の協力者と20万人の密告者
がいたと言われています。シュタージ局員ヴィスラー役は、自らも監視
されていたことを告白したウルリッヒ・ミューエです。彼はこの映画の公開
直後にガンで亡くなっています。
ヴィスラーは、社会主義国家にきわめて忠実で、当時の有名劇作家
ドライマンを監視するよう、上司ウルヴィッツに進言するのです。
部屋中に盗聴器を仕掛けらたアパートへ何も知らないドライマンは帰宅し、
恋人クリスタとの生活を全てヴィスラーに盗聴されます。それは24時間
あらゆる場所で行われ、それを聞きながら、記録を取っていくのです。
監視、脅迫、密告などは、民主義国家と思われている国々でも実は行われて
いることかもしれません。ただそれを知らないだけかも。
ドライマンは、現体制に歯向かうこともなく、国のために脚本を書いていますが、
反体制のレッテルを張られ、7年間の職業停止を言い渡された演出家イエルス
の自殺によって、真の芸術について正面から向き合うことを考えます。
一方、ヴィスラーは、次第にドライマンとクリスタの芸術に対する真摯な思いを
理解し、ドライマンが奏でるピアノ曲を聴いて、自らの生き方を考え直し始めるのです。
ヘムペフ大臣の寵愛を拒否するように彼女に進言し、そしてそのことによって
拘束されるクリスタ。
西側の記者に、東ドイツの自殺者についての記事を渡したドライマン。その全てを
知っていながら、知らないふりをしつつ、その証拠を見つけなければならないヴィスラー。
3人3様の心が絡み合って終盤へと向かいます。
ラストの書店のシーンは胸を打つものでした。
<マープルの採点>
お勧め星 ☆☆☆☆
昨日はなんばから梅田まで歩いて足が棒のよう。暑いくらいだった。