「冬の小鳥」
原題:une vie toute neuve/ a brand new life
監督:ウニー・ルコント
2008年 韓国=フランス映画 92分 PG-12
キャスト:キム・セロン
パク・ドヨン
コ・アソン
パク・ミョンジン
9歳のジニは、旅行に行くと言われて、父親にソウル近郊の
児童養護施設に連れて来られる。彼女は父が迎えに来るのを
信じ、誰にも心を開かない。そんな彼女は園庭で傷ついた小鳥
を見つけたことをきっかけに、年上のソッキと親しくなる。ソッキは
一緒に外国へ行こう、と語り、ジニもその言葉に胸を膨らませる
のだったが...。
ラストの違和感は、他の方のレビューを読んで納得しました。そういう
ことだったのかと。となると、終盤に彼女が歌った救いようのない悲しい
歌や最後の集合写真で見せた笑顔の意味も分かって来ます。
冒頭、よそゆきの服、靴をパパに買ってもらい、ごちそうを食べて床につく
ジニ。
ジニ役は「アジョシ」(2010)のキム・セロンです。これが映画デビュー作
だそうですが、悲しい表情、怒りをあらわにする姿、大喜びする表情、そして
全くの無表情と様々な姿を演じています。それがとても自然なのです。
1975年、ソウル近郊のカトリック系児童養護施設に連れて来られたジニは
父には「ちょっと旅行する」とだけ説明を受けていたのです。
「わたしは孤児じゃないわ。」
父の言葉を信じ、施設の誰とも打ち解けない日々が続きます。
しかし園長の言葉やいつまでたっても迎えに来ない父のことを考え、彼女は
次第に自分の状況を理解し始めるのです。そこにはジニがこの施設に連れて
来られた悲しい誤解ともいうべき事件がありました。いや、そんな事件がなく
てもおそらくは、ジニはもう再婚した父の元には居場所がなかったのでしょう。
一方、2つ年上のスッキは、ジニに
「外国へ行こう。」
と言います。2人は施設の庭で見つけた傷ついた小鳥の世話から、少しずつ
打ち解けていたのです。スッキの言葉を信じ、一緒にアメリカへ行けると思った
夢も奪われ、優しいイエジンは、好きな男性にフラれ、家政婦となって施設を出ていく。
さらに小鳥も動かなくなってしまう。次々と起こる出来事に、ジニの小さな胸は
もう張り裂けんばかりになっているはずです。
「むしゃくしゃするなら布団を叩け。」
寄付された人形をずたずたに引き裂いたジニに向って、施設の職員が言うのです。
布団を叩き続ける音が響き渡る寒々とした空。
彼女は埋めた小鳥の墓を掘り起こして自ら土に埋もれます。それが今までの
彼女の積もり積もった絶望そのものですね。そして今までの自分を埋葬したの
かもしれません。
そんなジニがあっという間にフランスへ引き取られていきます。ソッキの時は
引き取り手が何度も会いに来たし、お試しでお泊りもする念のいれようだったのに。
まるで犬猫の譲渡の様に扱われていく様子はさらりと描かれ、彼女は施設を
去る時には笑うんですよ。父に甘えた背中を思い出しながら。
この強さがジニのこれからの人生に明るい光となってくれるのでしょうか。
<マープルの採点>
お勧め星 ☆☆☆
絶対に大陸から何か飛来してる。目がしみる。