「闇を生きる男」
原題:rundskop
監督:ミヒャエル・R・ロスカム
2011年 ベルギー映画 124分
キャスト:マティアス・スーナールツ
イェロン・ペルセヴァル
バーバラ・セラフィアン
ジャッキーはベルギー、フランドル地方で酪農業を営んでいる。
ある日彼の伯父が怪しい仕事話を持ち込んでくる。彼は渋々その
打ち合わせ場所へ向かうが、そこには幼なじみで、ある事件がきっかけ
となって、疎遠になっていたディエドリックがいた。そして家畜ホルモンの
不正使用の捜査官が殺害されたことから、ジャッキーは警察にマーク
され始めるのだった。
暗いんです。ひたすら暗い映画です。ジャッキーの少年時代、ディエドリックと
遊んでいた頃は、オレンジがかったどこか懐かしい映像なのに、成長した現在
では、曇ってどんよりした映像になっています。それは彼の心の中を描いて
いるのかもしれません。
ベルギーで家業を継ぎ、畜産業を営んでいるジャッキーは、実は少年時代に
ある事件で睾丸をつぶされていたのです。
その結果、彼は男であるために、日々ホルモン剤を飲用し、さらに注射も打って
いるのですが、その副作用で、情緒が不安定であり、時に暴力的な行動に走って
しまいます。ジャッキーの異常なほどのマッチョな体が、クスリによるものだと
実感します。
さらに彼は、牛ホルモン剤を使って、牛を太らせ販売しており、それは違法な手段
であるようです。映画中、フラマン人と出てきますが、それはベルギーがフラマン語
(オランダ語に似ている)を公用語とする北部とフランス語を公用語とする南部とで
成立しており、その対立の中で、ホルモンマフィアなるものが存在するのです。
そしてその家畜ホルモン問題を捜査していた警官が殺害され、たまたまジャッキー
の伯父エディが持ち込んだ商売話の相手がその事件とつながっていたことから、
ジャッキーは何もしないうちに危険人物になってしまうのです。いや、もちろん
ジャッキーの飼っている牛たちは、違法なホルモン注射を打っているのですが、
それは父親の代から続いていることであり、殺人などとは無縁のものなのです。
この不条理な事態は、遡って彼の少年時代の事件にも言えることで、その相手が
たまたまマフィアだったことで、単なる事故で片づけられているのです。彼の心の
闇は脈々と受け継がれ、それでいて事件を起こしたブリュノは、今や精神病院に
入っているは、その彼の妹ルシアをずーっと思い続けていたのに、
「あなたは動物と同じ!」とまで言われてしまう。
復讐はできず、気持ちも受け入れてもらえない。
「タマなし」だの「男じゃない」だのと軽口を叩かれることは、日々彼の心を痛め
つけてきましたが、ルシアの言葉は、ジャッキーの希望を全て打ち砕くものでした。
(でも個人的な感想ですがルシアはきれいじゃないです。)
ディエドリックがゲイになったこともジャッキーの事件の時、一人逃げて見ていた
だけだったことに原因があるのかもしれません。
ラストのクスリと注射の影響でぼやけ、らせん階段がクルクル回るジャッキー目線
の映像などをはじめとして。なかなか凝った作りになっています。
<マープルの採点>
お勧め星 ☆☆☆
グロ星
ハラハラ星 ☆
エロエロ星
ダルダル星
今日は曇り空。