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- 2023.01.12 Thursday
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「そして、私たちは愛に帰る」
原題:Auf der Anderen Seite
The Edge of Heaven
監督:ファティ・アキン
2007年 ドイツ=トルコ映画 122分
キャスト:バーキ・ダヴラク
トゥンジェル・クルティズ
ヌルギュル・イェシルチャイ
ハンナ・シグラ
ヌルセル・キョセ
パトリシア・ジオクロースカ
トルコからの移民で、ブレーメンに暮らすアリは
トルコ人娼婦イェテルと暮らし始める。しかし息子
で大学教授ネジャットとの仲を邪推したアリは
誤って彼女を殺してしまうのだった...。
<お勧め星>☆☆☆ 静かな映画ですが、3つの家族
が少しずつつながり、余韻の残るラストになっています。
この映画では、3つの親子のそれぞれの行動をしばしば
すれ違いを織り交ぜながら描いています。
「イェテルの死」では、ブレーメンに住むトルコからの
移民の初老のアリという男が、通称ジェシーという娼婦の
元を訪れることから始まります。妻と死別したアリは、
彼女を気に入り、一緒に暮らし、一生寝てくれということ
を申し出ます。実はジェシーは本名はイェテルといい、
夫はトルコで右翼に殺され、一人娘アイテンのために学費を
送っているものの、全然会うことができない。そのことを
聞いた息子のネジャットは、ちょっと彼女のことを見直す
けれど、心臓発作で入院していたアリは、息子と彼女の仲を
疑うのです。ちょっと色ボケしたじいさんにとって、彼女は
自分の所有物。でもイェテル的には、あくまでもプライドが
あり、彼の元を去ろうとすると、アリに殴られてしまいます。
そしてイェテルは死亡し、アリは刑務所に収監、息子は彼女
の親族の元へ向かうのです。トルコの空港に降り立つ棺。この
シーンは逆のものが次の親子で見られます。
「ロッテの死」は、トルコで反体制活動を行う女性がハンブルグ
に向かうところから始まります。すぐにピーンときますが、
彼女はアイテンらしい。学食めあてで入り込んだ大学の授業で
眠り込んでいるアイテン、その授業はネジャットのものです。
そして学食でロッテという学生と出会い、意気投合し、彼女の
家に間借りすることになります。なぜだかとっても親密になっちゃう。
アイテンの存在からロッテと母親スザンヌの関係もぎくしゃく
してきます。ここで幾度となくネジャットが本屋にはったイェテル
の娘捜しのビラが映るのですが、まるで昼メロのように様々な
すれ違いによって2人はつながることができないのです。ここは
惜しい!と思うばかり。でもつながったところで生きては会えない
のですが。
「天国のほとりで」では、突発的な事件からロッテが亡くなり、
母スザンヌはトルコを訪れます。棺がトルコからドイツに向かう
飛行機に運び込まれるのです。ここの重なりも絶妙なシーンと
なっています。
その事件の原因を作ったアイテンと会ったスザンヌは、彼女への
怒りはなく、逆に真の親子のように心を通わせます。このスザンヌ
は娘が間借りしていたネジャットの家でしばらく滞在することに
する。こういう風につながっていたのです。
そしてネジャットはスザンヌの話を聞いて、絶縁していた父アリの
元へ向かうことになります。アリはスザンヌがトルコに到着した
飛行機で強制送還されています。
ラストは釣りに出たアリをひたすら海岸で待つネジャットの姿が
エンドロールとともに映ります。彼らはどうなるのか。出会える
のに、会うことを避ける親子もいれば、出会いたいのに命を亡くす
親子もいる。その運命の皮肉が静かに綴られていくような気がしま
した。