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- 2023.01.12 Thursday
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「北京の自転車」
原題:Beijing Bicycle
監督:ワオ・シャオシュアイ
2000年 中国=台湾映画 113分
キャスト:ツイ・リン
リー・ピン
ジョウ・シュン
リー・シュアン
カオ・ユアンユアン
農村から北京に出稼ぎにきたグイは自転車宅配便
の仕事を得る。貸与された自転車で仕事をこなす
グイだったが、ある時それを盗まれてしまう。
一方高校生のジェンは、中古で買った自転車を友人
とともに乗り回し、ガールフレンドもできるのだが...。
<お勧め星>☆☆☆ 一台の自転車を巡る人間ドラマ
ですが、中国の格差社会をこれでもかと見せつける
内容になっています。
「たかが自転車」と映画内で、様々な人が口にします。
しかしこの映画の主人公である農村出身の17歳のグイ
にとっては、大事な商売道具であり、ようやく自分の
物になろうとしている貴重なものなのです。
同じく17歳の高校生ジェンは、通学だけでなく、遊び仲間
のメンバーに入るためにも、女の子にモテるためにも自転車が
必要不可欠。しかし彼の家は再婚した父の稼ぎは少なく、
義妹の入学資金やら生活費やらでとても自転車を買ってもらう
余裕などないのです。
最初わたしは、ジェンがグイの自転車を盗んだと思っていた
のですが、実は違っていて、ジェンは父のへそくりを盗み出し、
それで中古の自転車を買ったようです。念願の自転車を手に
入れ、気持ちよさそうにペダルを踏むジェンのすがすがしい
表情は、彼が本当に自転車を欲しかったのだと実感します。
逆に自転車宅配便業者として働くグイは、給料から天引き
されていた自転車代を払い終え、やっと自分の自転車となる
まさにその日に自転車を盗まれてしまいます。日本では
とうの昔に「防犯登録」というものがあったし、そもそも
大事な商売道具には、頑丈な鍵をかけるのが普通。さらに
盗品の買い取りだって、厳しいチェックですぐにバレるのに
中国ではその辺りは全然縁遠いようです。
しかし中古品を買ったジェンも500元支払っている。きっと
盗んだ誰かがすぐに売ってしまったのでしょう。したがって
ある意味ジェンの所有物でもあるのです。とはいえ、グイだって
給料の8割も天引きされて自転車を手に入れた身の上です。
映画の中でこの自転車の所有を巡って、逃げる、追うの繰り返し
があり、グイはジェンの仲間から理不尽な暴力を受けるし、
ジェンは父から金を盗んだことで暴力を受けます。強い者が
弱い者を一方的に痛めつける姿は見ていてつらいです。
ジェンはせっかくいい雰囲気だったガールフレンドにも
自転車がなくなったことで、つらく当たってしまいます。
このガールフレンド、シャオは、自転車がなくてもきっと
親しくしてくれたのにね。おまけに父に殴られる姿まで
見られてしまう。そりゃあ、この年頃の乙女なら愛想も
尽かします。早速自転車上手なBFに乗り換えたシャオを見て
ジェンは自転車さえ手に入れば彼女も戻ってくると思うの
です。もう、ばかね〜。
胡同の狭い路地で、大捕り物が今まさに起こっているのに、
住民はただ傍観するのみです。また、終盤にグイの自転車を
徹底的に破壊し続ける少年は、何に対して怒っているのでしょう。
また、グイと先輩がのぞいていた、向かいの建物に住む都会の
女は実は「使用人」だった。ただ都会の女のふりをして、家主
の服や靴を履き、化粧をし、醤油を買いにいていただけなのです。
都会に住む人の中の格差、都会と農村部との格差。これだけ
広がった格差は今もっと大きくなっているのです。この大きな
不満はどこにいくのでしょうね。