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    • 2023.01.12 Thursday
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    マイ・インターン

    4
    JUGEMテーマ:洋画

    マイ・インターン

    「マイ・インターン」
    原題:The Intern
    監督:ナンシー・マイヤーズ
    2015年 アメリカ映画 121分
    キャスト:ロバート・デ・ニーロ
         アン・ハサウェイ
         レネ・ルッソ
         アダム・ディバン
         アンダース・ホーム

    妻に先立たれた70歳のベンは、高齢者インターン
    に応募する。彼が採用された会社は、ジュールズと
    いう若い女性が経営しており、忙しい彼女の手助け
    をするちに、彼女の心の内を知るようになる...。

    <お勧め星>☆☆☆ 洗練したファッションが一番
    楽しいです。話は普通ですね。


    <ネタバレしているかも>
    日本では高評価ですが、Rotten Tomatoesでは60%
    という評価。お、私と同じだな。
    この映画は2つの視点から見ることができると思います。


    マイ・インターン

    1つは70歳で男やもめのベン・ウィテカー。彼は毎日
    同じことの繰り返しを脱するため、About the Fitという
    女性向け衣料品ネット通販会社の高齢者インターンに応募
    するのです。ロバート・デ・ニーロが毎日着る服がどれも
    趣味がよく、ネクタイやヴィンテージ物のカバンに至る
    まで素晴らしいコーディネートになっています。採用が
    決まり、出勤するのだけれど、かつて電話帳印刷会社に勤務
    していたベンは極めてアナログな人間なのです。けれど
    あっという間に会社の仲間に受け入れられ、重宝され、
    会社専属のマッサージ師フィオナとも仲良しになっちゃう。

    フィオナ役は「ナイトクローラー」(2014)で、TV局
    のプロデューサーを演じたレネ・ロッソです。色っぽいわ。
    そしてもう1つは数か月前にこの会社を起こし、寝る時間も
    食べる時間も削って仕事に励むジュールズ・オースティン。
    アン・ハサウェイの着こなしもばっちりです。


    マイ・インターン

    彼女は二言目には「女性だからといって差別されたくない」
    と言って、仕事をおろそかにせず、家庭は健康上の理由で
    仕事を辞めた夫マットが主夫として娘ペイジの世話をしつつ、
    守ってくれている、理想的な姿であります。これこそ最新の
    家族の在り方、と思っていたら違うんだよね。
    経験豊富なベンの力を借りて、若いジュールズが様々な出来事
    を乗り越えていくという、おとぎ話のようなストーリーです。
    けれどやはりそこには落とし穴があります。
    サンフランシスコへ仕事に向かうジュールズに付き添うベンは
    彼女の悩みを聞くのです。実は彼はそのことをもう知っていて
    グダグダ泣く彼女を的確なアドバイスで支えます。よし!
    これでジュールズは新しいスタート地点に立ったのか、と
    思ったら、なあにあのラストは。あのイケメン夫は絶対に
    確実にまた同じことを繰り返しますよ。そこだけ女性に戻らない
    でほしかったわ。がっかり。


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    ブラック・スキャンダル

    4


    ブラックスキャンダル

    「ブラック・スキャンダル」
    原題:Black Macs
    監督:スコット・クーパー
    2015年 アメリカ映画 123分 R15+
    キャスト:ジョニー・デップ
         ジョエル・エドガートン
         ベネディクト・カンバーバッチ
         ロリー・コクレイン
         ケヴィン・ベーコン

    1970年代の南ボストン。アイルランド系マフィア
    のジミーは、同じ地区出身のFBI捜査官コノリーから
    イタリア系マフィアを排除するため、協定を結ぶ話を
    持ちかけられる...。

    <お勧め星>☆☆☆☆ すごく面白かった。ただ同じ
    名前の人や顔が似た人がいて、人物を覚えるのに苦労
    しました。


    ジョニー・デップの役作りは本当に圧倒されます。映画
    内の薄毛は、特殊メイクだそうですが、右の前歯が変色
    しているところまで、本人に似せています。できれば
    人物相関図を片手に見たいところですが、それは映画が
    終わってから、幾度となくチェックしてカバーしました。
    始まりはFBI捜査官と取引するために、ジミーこと
    ジェームズ・”ホワイティ”・バルジャーの手下が証言を
    するところからです。その男はケヴィン。

    そして時はさかのぼり、1975年のケヴィンに変わり
    ます。彼はジミーの店の用心棒として立っており、店の
    前でもめ事を起こすのです。最初から暴力の応酬で、
    使う言葉には必ずfuckがついている。まさにマフィアの
    世界です。
    さて南ボストンは、サウシーと呼ばれ、アイルランド系
    マフィアの縄張りであったものの、イタリアン・マフィア
    としのぎを削っていたらしい。ジミーは「仲間同士の
    忠誠心」を何よりも大事にし、裏切りは絶対に許さない
    男だったのです。そのあたりは序盤にバンバン裏切り者を
    射殺するシーンからも伺えます。


    ブラックスキャンダル

    彼と親しいのは、同じサウシー出身でFBI捜査官ジョン・コノリー
    で、この役を演じるのは「エクソダス:神と王」(2014)
    などのジョエル・エドガートン。彼はFBI内で手柄をあげるため
    ジミーを利用しようと考えるわけです。


    ブラックスキャンダル

    このコネリーの上司役でちょっと老けちゃったケヴィン・ベーコン
    が出演しているのはうれしい限り。不良や悪役から一皮むけた
    感じがします。彼の向かって右手にいるのがジョン・モリスと
    いい、「誘拐の掟」(2014)のデヴィッド・ハーバーが
    演じていますが、実はコノリーもファーストネームがジョンなので
    まず戸惑います。一応字幕では使い分けてあったけれど、ラスト
    付近にはどっちのジョンだろうと思ってしまうこともありました。

    で、コノリーは、イタリアンマフィア、アンジュロファミリーを
    潰すために、ジミーに情報屋をするように持ち掛けるわけです。
    もちろん見返りは、ジミー一味「ウィンター・ヒル・ギャング」
    の悪事には目をつぶるというもので、これによってジミーたちは
    どんどん勢力を拡大していきます。この話に乗る前に、実は
    ジミーは同士のミッキーをアンジュロファミリーに射殺されて
    おり、その報復も兼ねて話に乗るのです。時代を感じさせる
    バカでかい車の窓を手でくるくる開けて、そこから発砲すると、
    相手の頭を確実に撃ち抜き、血しぶきがウィンドーガラスに
    飛び散るシーンは何度見ても怖い。


    ブラックスキャンダル

    一方でジミーの弟ウィリアムことビリーは、上院議員をしており、
    母親の家での食事風景を見ると、本当に微笑ましく感じられるのです。
    ベネディクト・カンバーバッチはちょっと太ったかな。仲間、特に
    血縁の絆は強く、中盤でのアイルランドの祭り「セント・
    パトリックス・デイ」での兄弟の目配せは、それを痛切に感じさせ
    るのです。
    しかし、ジミーの息子が突然の病で亡くなり、妻も彼のもとを去り、
    さらには最愛の母が亡くなると、ジミーの人間不信は強まり、その
    残虐性も強まっていくのです。どんどん規模を広げていったジミー

    のその後の姿は、コノリーの焦燥感と交互に映り、栄枯盛衰を感じ
    させます。しかしラストのクレジットで流れた登場人物の現在を
    見ると、「忠誠心」を持ち続けたのは誰かがよくわかります。
    色恋を一切排除した、まさに男の映画でした。




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    イブラヒムおじさんとコーランの花たち

    5
    JUGEMテーマ:洋画

    イブラヒムおじさんとコーランの花たち

    「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」
    原題:Monsieur Ibrahim et les Fleurs du Coran
    監督:フランソワ・デュペイロン
    2003年 フランス映画 95分
    キャスト:オマー・シャリフ
         ピエール・ブーランジェ
         イザベル・アジャーニ

    1960年代、初頭のパリに父と暮らすモイーズは
    せっせと貯めた小銭をトルコ系移民の老人の店で
    両替し、遂に初体験を済ます。老人はモイーズの
    ことはすべてお見通しで、彼も次第に老人の話に耳
    を傾けるようになるのだった。

    <お勧め星>☆☆☆半 見終わるとほのぼのします。
    しかし今こんな状況ではないのが辛いです。


    音楽が懐かしいものばかりなのです。そして映画の
    終盤、モイーズとイブラヒムおじさんが、おじさんの
    故郷を目指す旅をするとき、画面いっぱいにスイス、
    アルバニア、ギリシャの街並みや遺跡、景色が美しく
    広がるのです。
    話の始まりは、パリに住むユダヤ人モイーズ少年が
    ブタの貯金箱を壊して、小銭を取り出すシーンからです。
    へーヨーロッパにもブタの貯金箱ってあるんだ。この
    金を何に使うかって?それは道路で立ちんぼをしている
    娼婦と初体験をするためだとわかると、彼がなぜ鏡を
    前に、声のかけ方やしぐさを練習していたのか理解でき
    てしまう。なんだかいじらしい。

    やっと35フラン貯まったので、向かいのイブラヒム
    おじさんの店で両替してもらい、ついでにちょいとお菓子
    をくすねて、遂に目的達成。


    イブラヒムおじさんとコーランの花たち

    モイーズの母は優秀な兄ポポルを連れて家を出ており、
    彼は仕事で忙しい父に代わって食事を作るのです。この
    父がなんとも陰気な男で、終盤に実はモイーズは母が不倫
    して生まれた子であり、兄などいなかったとわかると、この
    陰気さもうなづけるのです。


    イブラヒムおじさんとコーランの花たち

    モイーズとはろくに会話もしない父と違い、イブラヒム
    おじさんは、彼のことをなんでもお見通しなのです。もち
    ろん万引きも知っていて
    「くすねるならこの店でしろ」
    と言ってくれるのです。さらに
    「父親は適当なものでいい。モイーズはいいものを食べろ」
    と父には賞味期限切れのキャットフードなどをパテとして
    食べさせることを助言します。
    「これはうまいなあ」
    だって。

    このイブラヒムの教えはコーランに基づいており、1つ1つが
    モイーズの生き方の指針となっていくのです。
    「金持ちは笑う」
    というモイーズに
    「笑うから幸せになる」
    と教えます。そうそうこの街で映画のロケがあり、女優として
    登場するのが、イザベル・アジャーニです。


    イブラヒムおじさんとコーランの花たち

    この人にもお水をたかーく売っちゃう。
    しかし陰気な父は会社をクビになり、さらに陰気となり、
    遂にはわずかな金を残して失踪するのです。するとイブラヒム
    は彼を自分の養子にしようと奔走します。自分の母との関係も
    理解したモイーズとイブラヒムは本当の親子のように、いや
    孫とおじいさんのようにだな、生活するのです。
    イブラヒムの信仰はイスラム教のスーフィ主義といい、戒律に
    とらわれず、内面を重んじるもので、現在のISが主張する教義
    とは全く異なるものだと思われます。とにかく平和な笑顔の
    絶えない考え方なのです。

    終盤、イブラヒムは真っ赤なスポーツカーを買います。もちろん
    モイーズとともに自分の故郷へ向かうためです。...がおじさん
    には免許がなかったとわかり、そこからモイーズの助けも借りて
    何とか免許取得し、旅に出ます。
    イブラヒムの言うスローライフが幸せの証、というにぴったりの
    景色を見ながら、突然の悲劇に襲われます。それでもイブラヒム
    は笑いながら目をつぶるのですよ。イブラヒムは故郷の町へ入る
    砂漠の道で事故を起こし、それがもとで亡くなるのです。
    そして今、同じ店でモイーズは同じように物を売っています。
    ほら小僧が万引きしていったよ。それを笑って見ているモイーズ
    はイブラヒムそのもののようでした。
    オマー・シャリフがとても味のあるおじいさんになっています。


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    ブリッジ・オブ・スパイ

    3

    ブリッジオブスパイ

    「ブリッジ・オブ・スパイ」
    原題:Bridge of Spies
    監督:スティーブン・スピルバーク
    脚本:ジョエル・コーエン
       イーサン・コーエン
    2015年 アメリカ映画 142分
    キャスト:トム・ハンクス
         マーク・ライアンス
         スコット・シェパード
         エイミー・ライアン
         セバスチャン・コッホ

    保険専門の弁護士、ドノバンは、ソ連の
    スパイとして捕まったルドルフの弁護を
    依頼される。誰もが死刑判決を望む中、
    ドノバンは公正な裁判とルドルフの価値を
    訴え、禁固刑を勝ち取る。しかし国内で
    大きな批判を浴びた後、ソ連領内で捕虜
    になったパワーズとルドルフの身柄交換の
    交渉を引き受けることになるのだった。

    <お勧め星>☆☆☆☆ ドノバンの見事な
    交渉術に目を見張ります。


    1957年、冷戦の真っただ中のストーリー
    なのです。冷戦というと、ソビエトを主軸
    とする東側の国々と、アメリカを主軸とする
    西側の国々との情報戦争と簡単に理解して
    いましたが、東側でもソビエトの傀儡政権と
    言われた東ドイツが、国として認められたい
    という政府の思惑もうごめいていたのですね。
    今また冷えつつある米ロ関係の中で、唯一
    アメリカに認められたいと示威活動を行う
    北の小国を思い出します。


    ブリッジオブスパイ

    さて、トム・ハンクス演じるジェームズ・ドノバンは
    保険専門の弁護士であり、かなりやり手なのです。
    家庭では、しっかり者の妻や3人の子供に囲まれ普通
    に暮らしていたのですが、なぜかソ連のスパイとして
    捕まったルドルフ・アベルという男の弁護を引き受ける
    ことになるのです。政府の取引にも応じないルドルフの
    運命は死刑と決まったようなもので、形だけの裁判の
    ための弁護人が必要だっただけのこと。


    ブリッジオブスパイ

    ところがドノバンは弁護人たるものの仕事を極めて
    誠実にこなすわけです。つまり彼は正当な理由で
    逮捕されたのか、証拠は正当な手続きで確保された
    のか、さらには公正な裁判が行われるかなど、俄然
    奮闘します。そして判事までも死刑を念頭に裁判を
    進めていたのに、
    「おそらく近いうちに彼が保険として必要になる」
    と説得し、見事禁固刑を勝ち取るのです。マスコミの
    力はすごいですよね。電車の中で、新聞に目を通す
    一般市民が、ドノバンを白い目で見るし、家には
    銃弾が撃ち込まれます。当時は小学校でもソビエトは
    原爆を落とす国、という教育がされていたのも映り、
    思想教育の恐ろしさも感じます。

    時を経ずして、ソ連領土内で偵察飛行を行っていた
    パワーズ中尉の軍用機が墜落し、彼はソビエトの捕虜
    になるのです。


    ブリッジオブスパイ

    そこでドノバンはCIAの依頼で、一般市民として、ルドルフ
    とパワーズの交換の交渉のため、東ドイツへ向かうのです。
    ところがその直前、東西ドイツの対立が激しくなり、
    ベルリンの壁ができ、たまたま東ドイツへ留学していた
    フレデリックというアメリカ人大学生がシュタージに
    拘束されるのです。
    ドノバンはその事実を知ると、CIAの計画

    パワーズ対ルドルフ
    の交換ではなく、
    パワーズ+フレデリック対ルドルフ
    という極めて難しい交渉を考え付きます。この交渉相手
    というのが、ソビエトに決まっているのに、なぜか東
    ドイツも絡んで、両国の関係も含めて極めて複雑になって
    しまうのです。
    何とか約束の建物に到着したドノバンの前で涙をこぼす
    ルドルフの妻と娘と従弟が、ある瞬間、平然と立ち去って
    行く。どこに真実があるのか、それを見極めるのが本当に
    難しい時代だったのですね。

    ラストの橋の上でのシーンは、吐く息の白さと降り積もる
    雪の中、緊張感が一気に高まります。本当に見ごたえの
    ある映画でした。






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    さよなら渓谷

    4
    JUGEMテーマ:邦画

    さよなら渓谷

    「さよなら渓谷」
    監督:大森立嗣
    2013年 日本映画 116分 R15+
    キャスト:真木よう子
         大西信満
         鈴木 杏
         井浦 新
         大森南朋

    ある山間部の渓谷で男児の遺体が見つかり、
    その母親が逮捕される。その事件を取材する
    記者、渡辺が隣家の尾崎夫妻について調査を
    始める頃、尾崎が容疑者の女と関係があった
    という情報から警察に事情聴取を受けるので
    あった。

    <お勧め星>☆☆☆ 見る側に判断をゆだねた
    ラストでしたが、全体の雰囲気は独特で強く
    引き込まれました。


    主役は真木よう子と大西信満。大西さんの出演
    映画を調べると故若松浩二監督のものが多く、
    「キャタピラー」(2010)での戦争で両手足
    を失ったあの軍人さんかと気が付きます。
    実際に起きたある事件を想像させるような幼児
    殺害事件とその犯人として疑われ、押しかける
    マスコミを怒鳴りつける立花という女性が映ります。


    さよなら渓谷

    隣人の尾崎夫妻はその大騒ぎを聞きながら、SEXに
    ふけっているのです。このシーンがかなり長く、エロ
    ティックであり、真夏に扇風機しかない部屋で、汗に
    まみれている2人から、異様な熱気が伝わってくるの
    です。


    さよなら渓谷

    そして大森南朋演じる週刊誌記者、渡辺は、立花が尾崎と
    関係があったと警察で供述し、彼が事情聴取を受けること
    になった後、尾崎夫妻について、特に尾崎俊介について
    調査を開始するわけです。渡辺自身、社会人ラグビーの
    選手だったものの怪我で退部、そのまま会社を辞め、今の
    仕事に就いている。そのことで妻から常になじられている
    のですが、尾崎がかつて大学野球で優秀な投手だったのに、
    突然退部、退学したことを知り、その理由に強く興味を
    惹かれるのです。関係者の口は重く、尾崎について深く
    語ろうとはしません。それを調べて来たのは、同僚の小林
    で、この役は鈴木杏。いつも思うけれど、この子、昔は

    ものすごく美少女だったのよね。確かに演技力はついた
    けれど、美少女のイメージはすっかりなくなりました。
    さて、尾崎は15年前何を起こしたのか。それは野球部員
    4人で高校生を集団レイプしていたのです。原作本では
    その後の4人について細かく描かれているようですが、
    映画ではあくまでも尾崎主体に語られていきます。尾崎は
    有罪となり野球部だけでなく大学も辞め、先輩の紹介で
    不動産仲介業に就いていたらし。一方被害者の水谷夏美
    はその後悲惨を絵に描いたような人生を送り、今は失踪
    しているというのです。


    さよなら渓谷

    「もう生きてないよね」
    小林は尾崎に対する怒りとともに、夏美への同情を強く
    持つのです。レイプされた被害者なのに、なぜにさらなる
    不幸を受けなければならないのか。ジョディー・フォスター
    主演の「告発の行方」(1988)を思い出します。
    しかし渡辺はある時、この夏美が尾崎の妻、かな子では
    ないかと気づくのです。バラバラのピースがつながると
    なぜ2人が一緒にいるのかを彼は知りたくなります。
    自分がレイプした女性と暮らすことは、事件が誰かに
    バレる心配がないという利点があるが、事件と常に一緒に
    生きていくという苦しみを抱え続けることになる。

    そんな頃、かな子は警察に「尾崎と立花は男女の関係が
    あった」と通報します。再び警察の取り調べを受けること
    になった尾崎は、かな子が証言したと聞かされると、刑事に
    対し、素直に立花と関係があったと白状するのです。
    そんな彼に面会に行き、体調を尋ねるかな子。2人の奇妙な
    関係は、回想シーンを入れて、少しずつ解き明かされていく

    のです。
    ボロボロになっていた夏美が連絡したのは、自殺を図った
    時、毎日面会に来て手紙を残していった尾崎でした。その
    手紙には「君のために何でもする」と書いてあったのです。
    あちこちを転々とするうちに、夏美は「かな子」と名乗り
    始めます。それは、あの事件のとき彼女を置いて帰って
    行った女性の名前です。夏美の中では、自分とかな子が
    逆であっても不思議ではなかったはず。それなのに自分
    だけがこんな状況に追い込まれてしまった。

    「私が死んだら、あなたが楽になる。あなたが死んでも
    あなただけが楽になる。私の目の前で苦しんで」
    と彼女は尾崎に言うのです。
    ラストは置手紙1つ残して出て行った彼女について、その
    理由を渡辺が尋ねると、尾崎は
    「幸せになりそうだったから出て行ったんだ。一緒に不幸
    になる約束だったから」
    と答えます。ではもう1つの質問
    「事件を起こさなかった人生とかな子と出会わなかった人生
    のどちらがよかったか?」
    に対し、尾崎が答えようとした瞬間、映画は終わるのです。
    この答えがどちらだったのかわたしにはわからなかった
    けれど、
    「必ず行方を見つけ出す」

    という決意に満ちた尾崎の顔を見た時、きっと2人は幸せに
    なるのだろうと信じました。姿を消すことは尾崎を楽にする
    ことで、それは尾崎を許したことに違いないと思うのです。





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    ストックホルムでワルツを

    1
    JUGEMテーマ:洋画


    ストックホルムでワルツを

    「ストックホルムでワルツを」
    原題:Mnonica Z
    監督:ベル・フライ
    2014年 スウェーデン映画 111分
    キャスト:エッダ・マグナソン
         スベリン・グドナソン
         シェル・ベリィクビスト

    スウェーデンの田舎町で電話交換手をしている
    モニカは、一人娘エヴァ=レナの世話を両親に
    任せ、夜はジャズクラブのステージに立っている。
    そんな彼女にニューヨークで歌を歌うチャンスが
    舞い込むのだが...。

    <お勧め星>☆☆☆半 色遣いやファッションが
    素敵だし、何よりジャズメロディが心地よいです。


    スウェーデンの伝説的な歌手モニカ・ゼタールンド
    の半生を描いた作品で、その役を演じている
    エッダ・マグナソンは人気のジャズシンガーで、
    その味わい深い歌声とともに美しい顔だけでなく
    ヌードも披露する体当たり演技を見せています。


    ストックホルムでワルツを

    また1960年代のファッション、髪型、車、街並み
    などが見事に再現されており、どこか郷愁を誘う雰囲気を
    漂わせているのです。
    スウェーデンのハークウォッシュという田舎町に住む
    モニカは、電話交換手をしながら、夜はジャズクラブで
    歌を歌うシングルマザー。家には自身の両親がいて、孫で
    あるエヴァ=レナの世話をしているんだけれど、モニカ
    は特に父とそりが合わないのです。


    ストックホルムでワルツを

    映画内で幾度となく繰り返される口論の中で、父は
    「お前はなぜ木登りで上を目指すんだ。同級生が途中
    であきらめても、お前は頂上を目指し、見事に木から
    落ちたじゃないか。」
    と言い、モニカは
    「わたしは上からの景色をみたいのよ。」
    と言い返すのです。後半にわかるのですが、実は父も
    かつてジャズのトランぺッターであったらしい。結局
    夢破れた自分を顧みて、現状に満足することを諭すわけ
    です。

    モニカに舞い込んだニューヨークでステージに立つ、と
    いう話は、浮かれて舞台で歌った彼女の前から客が立ち
    去るという現実と、尊敬するジャズシンガーからの酷評
    で打ち砕かれるのです。この時代ジャズは黒人の歌で
    あり、その歌を聴きに来るのは白人で、まさかモニカの
    ような北欧の金髪女性が歌うなどとは思わなかったの
    でしょう。それでいて彼らに楽屋はなく、モニカが自分
    の楽屋を使って、とまで言っています。またモニカの
    あこがれのジャズシンガーに自分の歌を聴いてもらうも
    「心で歌いなさい。真似だけでは歌えない。」
    と言われるのです。

    失意のまま帰国したものの、こんなことにモニカは
    負けません。再びスウェーデンでのツアーに参加し、
    ’スウェーデンの言葉でジャズを歌いたい’
    と考えます。バンドのチェリスト、ストゥーレが渡した

    ベッペの詩集から曲がスラスラ思いつくあたりは彼女
    の天性の才能を感じさせます。ただ酒とたばこが手放せない
    姿が多く映され、モニカの歌のレッスンシーンがほぼ
    見られないのは少し残念です。

    さらにモニカは、自分の目的のために有名な男性を利用
    していくのですが、それがことごとく成功し、国内での
    トップ歌手に登りつめます。この辺りはあまり好感の
    持てる姿ではありません。しかし現実にはこんな世界
    なのでしょうね。娘のために豪華な家を買い、派手な
    パーティーを開くものの、それは当時の恋人ヴィルゴット
    に受け入れられるものではなかったのです。そして
    ユーロビジョン・ソング・コンテストにスウェーデン代表
    で参加し、自慢の歌を披露したものの、ジャンルが
    ふさわしくないということで、なんと零点に終わってしまう。

    彼女の挫折は続きます。この辺りはとてもテンポよく
    描かれ、ヴィルゴットと別れ、いつもそばにいると思って
    いたストゥーレの婚約、新しい恋人の浮気、流産など
    彼女は大きな打撃と苦痛を受けるのです。しかし舞台上
    では相変わらずモニカを演じ続けます。けれど一旦自宅に
    戻るとたった一人で大きな屋敷にいることの孤独に押し
    潰されそうになるわけです。何かを得るには何かを犠牲
    にしないといけない、と言うけれど、彼女の得たいものは
    あまりに大きな犠牲を伴ったのかもしれません。

    ラストに再びニューヨークに呼ばれ、観衆の前で自身の
    歌をスウェーデン語で歌うと拍手喝さいを浴びます。その
    歌を地元では両親がラジオで聴いているのですよ。父は
    その歌を聴き初めて涙を見せます。
    「挑戦すれば成功できたのに」
    とモニカに言われた通り、挑戦すれば成功したかもしれ
    なかったけれど、それを今自分の娘が手にしているのです。
    ラストはストゥーレとの結婚式の後、どんどん高く上がって
    いくモニカが映ります。彼女はまさに今、木の上からの
    景色を眺めているのだなと実感するシーンでした。
    その後のモニカ・ゼタールンドは、重い脊柱側弯症のため
    引退し、車いす生活を強いられた後に、悲劇的な自宅火災で
    亡くなっているとのこと。彼女の最高の時期でエンディング
    にしたことは、気分の良いまま見終わることができました。





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    刺さった男 ID:b31pv0

    2

    刺さった男

    「刺さった男」
    原題:La Chispa De La Vida/As Luck Would Have It
    監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア
    キャスト:ホセ・モタ
         サルマ・ハエッタ
         ブランカ・ボルディージョ
         ファン・ルイス・ガリアルド

    2年も求職中のロベルトは友人にも就職を断られ、
    失意の中、妻と結婚式を挙げたホテルへ向かう。
    しかしそこは博物館に変わっており、中に入った
    彼は立ち入り禁止区域で落下し、頭に鉄の棒が
    刺さってしまうのだった。

    <お勧め星>☆☆☆ コメディと思っていたら人間
    の醜い面を描きながらバッドエンディング。うーん。


    主人公の男は2年間失業中の元広告マン、ロベルト・
    ゴメスです。彼は美しい妻ルイサ、後半に出てくる
    パンクロッカーの息子ロレンソ、眼鏡をとったら
    結構可愛い娘バルバラの4人家族で幸せに暮らして
    いるけれどお金がないのです。


    刺さった男

    教師をしている妻は、実家のあるメキシコの移住しよう
    と提案しますが、一家の主であるロベルトは、この
    スペインで生活し、子供たちに高水準の教育を受けさせ
    ようと必死で面接を受けまくっているのです。もちろん
    愛する妻にもこの邸で幸せに暮らしてほしい。でも現実は
    破産寸前の身。何とかつてをたどって旧知の友人の会社
    へ向かうも、相手は彼のことなど後回しでゲームに
    興じている始末。だから景気が良くならないんだよ!

    面接を待つ間にコーヒーを飲もうとすると、上から
    植木にかけた水が降ってきてびしょ濡れになるし、車は
    駐禁を取られるし、金がないこの自分をあろうことか
    ホームレスが襲ってきます。あー、もう彼の心はボロ
    ボロ。とりあえず現実逃避で、2週間後に迫る結婚記念日
    のことを考え、妻と結婚式を挙げたホテルを見に行く
    のですが、それがない...。今妻を喜ばせることは思い出
    のホテルに宿泊することなのに、それがない...。

    実はホテルの敷地から遺跡が発掘され、既に博物館に
    建て替えられていたのです。とことんツイていない彼
    は、流されるままこの博物館に入り込んでしまい、立ち入り
    禁止区域で警備員に呼び止められ、それから逃げようと
    したとたん、ヴィーナスのような彫像とともに中吊り、
    そして落下してしまうのです。
    「大丈夫かーい」
    「ああ頭が少し痛いけれど大丈夫」
    いえいえ全然大丈夫じゃないんです。


    刺さった男

    彼の後頭部には鉄の棒が刺さっており、題名通りの
    「刺さった男」
    になってしまったのです。そこから博物館の内覧会に来て
    いた記者が大勢詰めかけ、彼の動向を報道し始めます。
    救急隊到着→搬送が難しい→消防隊到着→動かせるか医師に
    相談→医師はX線検査を指示。
    という具合にロベルトは一向にこの体勢から救い出され
    ません。ところが彼はここで一計を思いつくのです。
    自らの姿をマスコミに売り込んで金儲けしよう。
    だって今朝は誰からも無視されていたのに、今はこんなにも
    注目を浴びているじゃないか。

    そこで知り合いのマネージメント会社の代理人を呼ぶのです。
    もちろん妻への連絡も忘れません。さらに博物館で客を呼び
    こもうとしていた市長、せっかく発掘された遺跡を壊したく
    ない館長、もしもロベルトが自殺を図ったのなら、会社の
    イメージが損なわれると慌てる、彼が面接に行って断られた
    会社の社長などの思惑が次々と映し出され、人間の醜さを
    これでもかと見せつけます。みんなが自分の利権ののみを
    優先するのです。

    ロベルト自身も自らの姿を売り込むことで、家族に金を
    残せるのならそれで悔いはないと考え、必死で笑顔を見せ
    たりします。こんな時彼の身を案じるのは、家族しかいない
    わけで、これは日本でも同じようなことが起きているなあと
    感じます。大事故の後に詰めかけるマスコミやその事故の
    原因から逃れようとする釈明は幾度となく聞いてきました。
    ルイサは、小さなテレビ局の記者の女性が、彼女が悲嘆に
    くれる姿を見て、思わずカメラを下に向けたのを見て、
    ある決意をするのです。

    そう、この鉄の棒を抜いたらおそらくはロベルトは死んで
    しまう。だったら最後の家族写真をここで撮ってもらおうと。
    この時汗だくになりながら笑顔を見せるロベルトと涙を
    ぬぐって笑顔を作る妻子の姿が滑稽ながらとても悲しく
    思えるのです。見世物になっても家族のことを考え、それ

    で金を稼ごうとするロベルトの家族愛が強く伝わるし、
    被害者へ尊厳をもって接することの重要さも伝わります。
    鉄の棒を抜いた瞬間、大量の血しぶきが出たことで、彼の
    運命がわかるんだけど、ラストに最後のビデオテープを

    持った家族の前に金の入ったテレビ局の社長が立ち、その
    アタッシュケースを目の前に出すと、ルイサは力いっぱい
    それを蹴り倒すんです。ここは気分がよかった。その前に
    父の死を知ったロレンソが、父の最後の願いを聞いて
    厚底ブーツを投げ捨てたのも胸が詰まりました。その
    ブーツでどかどか歩くたびにロベルトが悲鳴を上げて
    いたなあ。
    人の不幸を売り物することは人間の尊厳を踏みにじる行為
    であるということですね。

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    マダム・イン・ニューヨーク

    4
    JUGEMテーマ:洋画

    マダム・イン・ニューヨーク

    「マダム・イン・ニューヨーク」
    原題:English Vinglish
    監督:ガウリ・シンデー
    2012年 インド映画 134分
    キャスト:シュリデビ
         アディル・フセイン
         アミターブ・バッチャン
         メディ・ネブー
         ブリヤ・アーナンド

    インドに住む主婦シャシは、家族の中で唯一英語が
    話せず悲しい思いをしている。そんな彼女が姪の
    結婚式の準備のためニューヨークへ向かうことになる。
    しかしニューヨークで英語が話せないために辛い体験
    をしてしまい、一念発起して英会話教室へ通うことに
    するのだった。

    <お勧め星>☆☆☆☆☆ 主演の女優さんが美しく、
    インド映画特有の歌や踊りもストーリーに調和し、気分
    よく見終われる内容でした。


    主役のシュリデビさんは、映画撮影時48歳ということですが、
    インド美人の典型のような顔立ちです。彼女のさりげない表情
    や仕草の1つ1つがとても丁寧に演じられているので、見る側
    に共感を呼ぶものになっています。


    マダム・イン・ニューヨーク

    序盤、インド、ゴードボーレで夫サティシュ、娘サプナ、息子
    サガルそして義母と暮らすシャシは、手作りラドゥを配達して
    大人気なのです。しかしシャシは、家庭では主婦業をこなし、
    外で働く夫や子供の世話、家事を一気にになっている多忙な
    女性でもあります。彼女は家族の中でただ一人英語が話せず、
    娘サプナにすら馬鹿にされてばかりです。
    「英語が話せないから恥ずかしい」
    娘に言われても彼女はただ悲しく思うだけ。前半はこんなシーン
    をコミカルに描いているので、それが特に辛そうには思えません。

    ところがシャシの姉マヌの娘ミーラが結婚することになり、
    彼女たちの住むニューヨークへ向かうことになります。それも
    準備のため一足先にシャシ一人で行くことになってしまう。自分
    の留守中の家庭も心配だけれど、もっと心配なのは、初めて乗る
    飛行機や出入国手続き、飛行機内でのことです。ここはテンポ
    よく描かれ、隣席の親切な乗客の手助けもあって、何とか楽しく
    乗り切ることができます。
    「何事も初めては1度」
    その乗客に元気づけられ、自信を持ったシャシは無事にマヌの
    家に到着し、さあ姪たちとニューヨーク生活を堪能し始める...
    はずが、カフェで悲惨な体験をしてしまいます。いるのよね、
    ああいう店員や客が。日本であれば、誰か手助けするし、まず
    店員教育の根本から違うと思う。仕事に対する考え方の違いなの
    かしらねえ。ムカつくわ!思わず泣きじゃくって店を飛び出した
    シャシに優しい声をかける男性もいるのです。
    でもシャシは決して弱い女性ではなく、通りかかったバスの看板
    を見て「英会話を学ぶ」ことを決意します。


    マダム・イン・ニューヨーク

    その教室のメンバーは人種も職業も様々な人ばかりだけれど、
    「英会話をマスターして、自信を持ちたい」
    という同じ気持ちを持っています。この教室の講師デヴィッドが
    また個性的。


    マダム・イン・ニューヨーク

    彼はゲイであることを隠そうともせず、自己紹介で皮膚の色を
    話す生徒を優しく注意したり、話さない生徒には無理強いをする
    こともありません。とにかくそれぞれの個性を認め、彼らに自信
    を持たせるスキルを持っている気がしてなりません。いい奴だよ。


    マダム・イン・ニューヨーク

    シャシは姉や家族には英会話教室に行っていることは内緒なの
    ですが、姪のラーダだけはそれを察し、彼女をこっそり応援して
    くれます。次第に自信をつけ、地下鉄だって、街中だって堂々と
    歩けるようになるシャシの姿は、見ていてとてもすがすがしい。
    ところが同じ教室のフランス人、ローランに告白されちゃう。
    フランス人ってすぐに告白するのかしら。相手は人妻よ。
    その上、もうすぐ卒業試験という時に、インドから予定より早く
    家族が到着するし、サガルがけがをしたりするのです。
    「やっぱり家族を優先しないといけない」

    シャシの心は折れるけれど、それをまた奮い立たせるのが、ラーダ
    の活躍です。するとまたアクシデントが起きます。まさに転んでは
    立ち上がり、また転んでは立ち上がるというシャシの姿に次第に
    胸が熱くなってくるのです。
    ラストは何度目かの歌と踊りで楽しく締めくくられ、とてもいい
    気分で見終えることができるのです。
    「ジャッジメンタル」見た目で判断したり、偏見を持って接すること

    は絶対にしないようにしようと心に強く思った映画でした。


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    ターナー、光に愛を求めて

    5
    JUGEMテーマ:洋画

    ターナー

    「ターナー、光に愛を求めて」
    原題:Mr.Turner
    監督:マイク・リー
    2014年 イギリス=フランス=ドイツ映画 PG12
    キャスト:ティモシー・スポール
         ドロシー・アトキンソン
         マリオン・ヘイリー
         ポール・ジェッソン
         レスリー・マンビル

    19世紀のロンドンの画家ターナーは、若い頃から
    その作品に高い評価を受けており、自由気ままに旅
    をしながらその題材を求めていた。しかし最大の理解者
    である父を亡くした後、失意の彼は旅宿を営むブース夫人
    と出会う...。

    <お勧め星>☆☆☆ 有名な画家ターナーの後半生を如実
    に描いており、秀逸な作品ですが、やや単調です。


    ターナーは、昨年美術館で展覧会があり、その絵を鑑賞
    しました。モネなどの印象派の画家たちに影響を与えた
    だけあって、その絵画からはリアリティーではなく、光を
    上手く使った独特の雰囲気が漂っていました。
    でもそもそも絵画に疎い自分にとって、最も印象に残って
    いるのは、彼自身が描いた自画像で、それがかなりハンサム
    だったことです。1枚だけ他の人物がターナーを描いたもの
    がありましたが、そこに描かれていたのは、自画像とは似ても
    似つかない醜い小男でした。そんなわけで、このターナー役
    を演じるティモシー・スポールがとてもよく似合っています。


    ターナー

    19世紀、ロンドンで画家をしているターナーは、そのよき
    理解者である父を持ち、自由にあちこち旅行しては、絵を
    描いていたのです。帰宅すると猫背のハンナという女中がおり、
    ターナは自分の慰み物として扱うだけで、彼女の存在など
    ないかのようにふるまいます。
    さらに元恋人との間に娘2人がいるものの、認知もせず、孫が
    生まれたと言って全員で訪ねてきても、大して関心も見せま
    せん。彼の作風にある通り、光の部分だけ求め、影となる部分
    は避けていたのかもしれません。
    そしてたまたまスケッチ旅行で立ち寄った宿のブース夫人と
    出会うわけです。


    ターナー

    ブース夫人は2回めの結婚をしており、その夫は元奴隷船の
    船大工をしていたことで、彼から奴隷船の話を聞かされるの
    です。帰宅するとその船の姿をキャンバスに描きなぐるターナー
    が映ります。そして彼の父が亡くなり、失意の彼はブース夫人の
    船宿を訪れると、彼女も夫を亡くしていたのです。ターナーは
    なぜかブース夫人を気に入り、そのまま深い関係になります。
    ターナー曰く「キミの鼻が好きだ」。(確かに鼻は大事だな)
    一方ターナーの作品は時代の流れで、受け入れられない存在に
    変わっていきます。その前にロイヤル・アカデミー内の醜い争い
    も描かれ、彼の苦悩も伝わるのです。


    ターナー

    ターナーは病に冒され、ブース夫人の家に入りびたりになると、
    ハンナは人づてにそこを訪ねて行きます。彼女はそこで、夫婦
    同然に暮らす2人の話を聞き、彼の顔を見ずに戻るわけですよ。
    ハンナの悲しみなどきっとターナーはこれっぽっちも気づか
    なかったでしょうね。
    ターナーが題材を求めた先の景色がとても美しく描かれていて
    まるで彼の絵画そのもののようでした。





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    アンナと過ごした4日間

    3
    JUGEMテーマ:洋画

    アンナ

    「アンナと過ごした4日間」
    原題:Cztery noce z Anna
    監督:イエジー・スコリモフスキ
    2008年 ポーランド=フランス映画 94分
    キャスト:アルトゥール・ステランコ
         キンガ・プレイス
         イエジー・フェドロヴィチ
         バルバラ・コウオジェイスカ

    ポーランドの田舎町に住むレオンは、病院の火葬場で
    働きながら、病気の祖母の世話をしている。彼の唯一
    の楽しみは、隣接する看護師寮に住むアンナの部屋を
    のぞき見することだった。

    <お勧め星>☆☆☆ これを純愛ととるべきか、変態と
    とるべきか、見る側に尋ねているように感じます。


    冒頭、斧を買う男が映り、彼のおどおどした様子と、次に
    映る人間の手を燃やすシーンから、まるで殺人鬼であるか
    のような映画を想像します。しかしそれは全く間違いであり、
    映画の全貌がつかめるのが、ラスト付近の法廷でのシーン
    という手の込んだ作り方になっています。画面全体は暗く、
    ポーランドの寂れた町の厳しい気候を物語っているかのよう
    です。
    主人公レオンは、病気で寝たきりの祖母の世話をしつつ、
    病院の火葬場で働いているらしい。これが冒頭の手を燃やす
    シーンだったのです。そこでも手にはめてあったはずの指輪
    を盗んだと疑われてしまうほど、レオンは他人に受け入れて
    もらえない存在かつ、はっきり否定もできない気弱な男なの

    です。そんな彼の唯一の楽しみは、祖母を寝かしつけてから
    こっそり隣接する看護師寮の部屋をのぞき見すること。


    アンナ

    彼の息遣いと手にした小さな灯り、そして煙草の火だけが
    輝き、いつ相手に見つかるのかとドキドキします。この看護師
    はアンナという女性で、かなり豊満な人。後で説明がありますが、
    レオンは非嫡出子であり、祖母に育てられた生い立ちから、自分
    なりの母親像を求めていたのかもしれません。
    そして突然釣りの帰り道、農場の納屋で女性がレイプされて
    いる現場を目撃します。これが急に入り込むので、いつのこと
    なのか、これが誰なのか、少々混乱するのです。さらに警察での
    レオンでの取り調べシーンも映りこみます。そこでも彼は自分の
    意見をはっきり主張できないのです。


    アンナ

    そして祖母が亡くなり、遺品を燃やしているとそこからなぜか
    アコーディオンが出てきます。その音色ももの悲しく、唯一の
    身内を亡くした彼の孤独を物語っているようです。


    アンナ

    それから祖母の睡眠薬を、アンナの部屋の砂糖に混ぜ、熟睡した
    彼女の部屋に忍び込むことを考え付きます。もちろんれっきとした
    犯罪なんだけど、レオンがあまりにビクビクしているので、逆に
    滑稽に見えてしまうのです。
    1日目、アンナの白衣の匂いを嗅ぎ、取れかけたボタンを器用に
    縫い付け、彼女の枕に少しだけ頭をのせる。
    2日目、途中で眠ってしまったアンナに代わって、彼女の足の指の
    ペティキュアを縫ってあげる。
    3日目、この日は焼却場閉鎖のため、彼は仕事を解雇され、退職金
    で指輪を買うのです。ちょうどアンナの部屋では彼女の誕生日パーティ
    が開かれている。遠くから同じように乾杯し、酔いしれて行くレオン。
    どこまでも悲しく感じますが、レオンにとっては、至福の時間なの
    ですね。そして部屋に侵入し、バラを飾り、パーティの残り物を
    食べ、指輪をはめてあげると、アンナの指には大きすぎるんです。

    そうこうするうちに指輪は転げ落ちて、床板の間に入り込んでしまう。
    悲しい姿なのに、やはり滑稽に映ります。さらに、同じ様に眠りこみ、
    翌朝大慌てで彼女のベッドの下に隠れるレオン。ベッドの下からの
    視点でアンナは映され、その結構太い脚が目の前に出てきます。
    4日目、彼女の部屋の鳩時計を修理し、戻しに行った所で、パトカー
    に見つかる。この時も慌てすぎたレオンは、部屋のカーテンに
    絡まって転がるのです。この姿こそ本当の悪人ではない、ただの内気
    で孤独な男であることを象徴している気がします。

    そして彼が実はかつて、アンナのレイプ犯として有罪となっていた
    ことがわかるのです。刑務所内での他の囚人からの暴行シーンも映り、
    レオンの不幸さをさらに物語るものになります。この冤罪を経て
    彼はアンナを愛するようになり、それは「のぞき見」という形で表現
    することしかできなかった。さらにエスカレートし、「侵入」という
    形になってしまった。
    彼が法廷で、なぜ再びあんなに近づいたのかと尋ねられた時、明確に
    「愛だからです」
    と答えていました。レオンが自信を持って「愛」を訴えたところで、
    それは普通の人間であれば、気味が悪いとしか受け取れないのは当然
    のことなのです。アンナも然り。

    ラストに釈放されたレオンが自宅に戻ると、隣の看護師寮の前には
    高い壁が出来上がっています。これはどんなに彼が思いを伝えようと
    しても超えられない壁が存在するということの例えなのかもしれません。





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