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    • 2023.01.12 Thursday
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    三度目の殺人

    4

    JUGEMテーマ:邦画

     

    三度目の殺人

     

    「三度目の殺人」

    監督:是枝裕和

    2017年 日本映画 124分

    キャスト:福山雅治

         役所広司

         広瀬すず

         満島真之介

         吉田鋼太郎

         市川実日子

     

    エリート弁護士の重盛に強盗殺人事件の容疑者

    三隅の弁護の依頼が持ち込まれる。三隅は犯行を

    自供しており、情状酌量による減刑を求めるだけの

    簡単な事件に思われたが...。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 見た人がいろいろ考えること

    ができる映画です。


    三度目の殺人の意味


    2018年第71回カンヌ国際映画祭のパルムドールを

    受賞した「万引き家族」の是枝監督作品です。是枝監督は、

    作品全体に漂う空気感がとても緩やかで、しかし核心部分

    では強く輝きを放つものを見せるというイメージを

    個人的に持っており、大好きな監督の一人です。
    特に2015年「海街diary」は美人4姉妹が鎌倉の景色と

    重なり、何度でも見たくなる内容でした。ちなみに原作の

    漫画は読んでいません。
    今回は法廷サスペンスとうことで、いつもと雰囲気が異なる

    のかと思いましたが、やはり光の使い方やBGMに流れる

    ピアノの音、風の音などが効果的に使われ、緊張感の中に、

    決して不快な瞬間を抱かせない独特の何かを漂わせています。

    また十字架を意味するかのような被害者の燃えた跡、雪合戦

    の後に倒れこむ姿、カナリヤの墓、ラストの十字路などが象徴的

    に表れ、この映画が罪と裁きを観念的に描いているように

    思えるのです。

     

    三度目の殺人
     

    エリート弁護士重盛が死刑回避のためだけに弁護を行おうと

    考えていた強盗殺人事件犯、三隅にとにかく振り回され、

    次第に自分と彼を重ね合わせてしまったことで、自信満々

    だった重盛が、すべてのものに疑問を抱いて行ったかのよう

    にも受け取れました。

     

    三度目の殺人
     

    逮捕後すぐに自供したはずの三隅。しかし彼の供述は二転三転し、

    被害者の妻による「保険金目当ての殺人依頼」を週刊誌記者

    に告白する。何も聞かされていない弁護側は、方針の転換を

    せざるを得ないのです。すると次には被害者の娘、咲江が

    「父から性的暴行を受けていた。三隅さんは父を殺していない」

    と言い始める。

     

    三度目の殺人

     

    ああ、こうなると三隅犯行説すら揺らいできます。ところが

    この咲江は自らの脚が不自由な理由を嘘で固めています。

    嘘つきなんです。その上、今度は三隅自身が「実は殺していない」

    と言い始めます。こうなると「真実」はなにかすっかり

    わからなくなるのですよ。

     

    三度目の殺人


    ただ三隅の死刑だけを回避する弁護を行うはずが、すべての

    ストーリーが崩れ、おまけに三隅がかつて起こした事件の

    せいで疎遠になっている娘と、重盛が別居中の妻との間に

    もうけた娘が重なってきてしまうのです。その上、重盛の

    かつての事件の判決を下したのが重盛の父であり、2人殺害

    なのに死刑を回避し、無期懲役だったことを知ると、彼は

    混乱します。犯罪は社会が生んだと思われていた30年前。

    今はどうか。「人の命を自由にできるのは裁判官」と語る三隅は、

    人間の意志に関係なく命が選別されることに途方もない理不尽

    さを感じていたのでしょうか。いや、私個人の考えでは、彼は

    そんなことを考えていなかったと思うのです。殺されて当然の

    人間もいなければ生まれてこなければよかった人間もいない、

    というきれいごとを並べ立てても社会において、そう考えてしまう

    事例はいくつもあるかもしれません。ただそれを誰が裁いて誰が

    決めるのか。その最後の砦である裁判所が、真実を求めるのでは

    なく、弁護士、検察官、裁判官のそれぞれのメリットを求める場所に

    なっていないのかと考えてしまいます。
    終盤の拘置所のガラス越しの重盛と三隅は、最初日差しが重盛に

    当たっていたのに、途中でガラスに映る三隅と重盛が重なって

    映ります。三隅は重盛を演じていただけの空っぽの器の人物で

    あるかを物語るようでした。三隅が飼っていた5羽のカナリヤの

    話も象徴的に思えました。ゆっくり考えたい映画です。

     

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    グリーンルーム

    4

    JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

     

    グリーンルーム

     

    「グリーンルーム」

    原題:Green Room

    監督:ジェレミー・ソルニエ

    2015年 アメリカ映画 95分 PG12

    キャスト:アントン・イェルチン

         イモージョン・プーツ

         パトリック・スチュワート

         カラム・ターナー

     

    売れないパンクロックバンド「エイント・ライツ」は

    知り合いの紹介で、ポートランドのライブ会場で演奏

    をする。しかしそこはネオナチの拠点であり、パットが

    不運にも殺人現場を見てしまったことでメンバー全員が

    楽屋に閉じ込められてしまうのだった。


    <お勧め星>☆☆☆ ネオナチVSパンクロッカーの勝ち目

    のない闘いなのですが、意外と強い。


    無人島で聴きたいバンド名を言うな


    グリーンルーム=「楽屋」
    監督は「ブルーリベンジ」(2013)の

    ジェレミー・ソルニエで、あの映画は復讐に燃える男の姿

    を静かにそして残酷に描いていました。私個人の好みと

    しては好きな映画の1つです。ただ、周りの人間から
    映画の趣味の悪さを指摘され、観たいと思う映画の多くは

    ボッチ鑑賞。ふふん、レディースデイに行った

    「ゲットアウト」だって女性一人鑑賞がたくさんいたぞ。

    さすがに「ピラニア3D」はいなかったけれど。
    ついでに「ピラニア3D」は笑えちゃうからいけない。
    ところがホラー、サスペンス映画が好きを自称していても

    苦手なタイプのものがあり、「スクワーム」(1976)

    のように芋虫的なものが登場するものや「ディセント」

    (2005)のように閉鎖的な場所に閉じ込められるものは
    見ることは見るけれど、ちょっと目を覆っちゃう。芋虫嫌いは、

    小学校の廊下のゴミ箱の上にお蚕の箱が置いてあって、

    桑の葉をむしゃむしゃ食べるお蚕が..いや、もう言わない。

    あれがトラウマに違いない。
    そして閉鎖的な空間が怖いのは、幼少期、近所の神社にあった

    防空壕の跡に入り込んだのが怖かったのを引きずっているのだ

    と思う。今は「立ち入り禁止」の札が立っていたなあ。
    この映画でも売れないロックバンドのメンバーがライブ会場

    の楽屋に閉じ込められます。しかしそれは特に「監禁」と

    いう恐怖ではなく、ドアの向こうに何が待っているかという

    恐怖の方が強いです。
    メンバーの一人パットが演奏後、入っちゃいけないと言われた

    楽屋にスマホを取りに戻ったことが原因なんですね。そこで

    女性が殺害されているのを見てしまう。
    「なにも見ていません」「誰にも話しません」
    いやいやこのライブ会場の雰囲気を見たら、ヤバイと気づけよ!

    と思ってしまう。

     

    グリーンルーム

     

    スキンヘッドに革靴、黒ずくめの衣装の白人が見えなかった

    かな。最初に歌った「ナチ・パックス」でナチスを侮辱した

    歌詞を歌った時、彼らが唾を吐いたり、今にも飛びかかり

    そうだったことに気づけよ!
    パット役は「スタートレック」より「ゾンビ・ガール」

    (2014)の方が印象に残っている2016年に27歳で

    事故死したアントン・イェルチン。彼はバンドのメンバーと

    殺された女性の友人、そしてネオナチの男と共に楽屋に

    閉じ込められるわけです。おまけに警察官がボスらしい。

     

    グリーンルーム

     

    グリーンルーム

     

    どう見ても勝ち目はないと思ったら、あら、リースったら

    格闘技の締め技が上手いじゃありませんか。しかしドアを

    隔てた向こうにはネオナチの集団がいるわけで、彼らが

    使うのは大陸系マフィアが使うようなナタと犬(ピットブルか)

    であり、それのよって傷つけられた時の切り傷や噛み傷はまこと

    にリアルです。監督自身がこのリアルさにこだわったそうで、

    「実際の作り物を使う」という手法ながら作り物に見えない、

    とてもすんごい出来栄えになっています。痛いってば。
    楽屋から出るたびに人が減っていき、じゃあここにとどまって

    殺されるのかと思ったらまさかの展開です。パットが語った

    「ペイントボール作戦」がなぜに成功したのかは気にしないで

    おくと、どんな飼い主でも犬は忠実なんだなと実感する

    ラストシーンは少ししんみりします。

    もうロックバンドのメンバーは残っていないしね...。

     

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    グレイテスト・ショーマン

    3

    JUGEMテーマ:洋画

     

    グレイテストショーマン

     

    「グレイテスト・ショーマン」

    原題:The Greatest Showman

    監督:マイケル・グレイシー

    2017年 アメリカ映画 105分

    キャスト:ヒュー・ジャックマン

         ザック・エフロン

         ミシェル・ウィリアムズ

         レベッカ・ファーガソン

         ゼンデイヤ

     

    仕立て屋の息子に生まれたフィニアスは父を亡くした

    後に、幼馴染の令嬢チャリティと駆け落ち同然に結婚

    する。彼は妻子を幸せにするため、「ユニークな人間

    を集めたショー」を計画し、人気を博するが..。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 体の奥からエネルギーが沸き

    起こる気分になれる映画です。


    愛を欲張らないで


    上流の美徳と、冒険による笑顔が対照的に映るシーンが

    見られるのですが、縁もゆかりもない上流階級の方々は、

    きっと大口を開けて笑うようなこともないのだろうと勝手に

    想像しています。ただ「エンターテインメント」に関して

    言うと、わたしの身内でも「お笑い番組を見て笑うのは

    くだらない」と考える人がおり、「ええ〜!こんな楽しい

    のにくだらないの一言ですませるのか」と憤慨してしまい

    ます。この点については個人の好みであり、また「笑い」の

    ツボというのはそれこそ一人一人異なると思うので敢えて
    気にしないようにしています。

    「ラ・ラ・ランド」(2016)はストーリーとしては

    単純な男女の出会いと恋愛とその後の人生を夢物語のように

    描いており、映画内の音楽はどれも素晴らしく、ついつい

    ハミングできるものばかりでした。「Another Day of Sun」

    は気持ちを高揚させるために今もしばしば聴いています。
    この映画では主役のフィニアスを演じるヒュー・ジャックマンの

    歌声の素晴らしさは「レ・ミゼラブル」(2012)と同様に

    太く力強く響き渡ります。

     

    グレイテストショーマン

     

    と同時に「ペーパーボーイ 真夏の引力」(2012)
    のザック・エフロンが演じるフィリップも負けず劣らず美声を

    わたしの耳に届けてくれました。ルックスも好み。
    ストーリーの本筋は、フィニアスが、妻子のために借金をして

    「アメリカ博物館」から「ユニークな人を集めショーを開く」と

    いう事業に変更し、人々の人気を集めながらも、マスコミや

    レイシストや上流階級の人々から批判され、挫折し、それでも

    成功し、さらに何もかも無くし..というもので、その中に

    フィリップとアフリカ系女性アンとの恋物語が挟みこまれた感じ

    です。「フリークス」という1932年の映画がイギリスでは

    30年間公開禁止になっていたように、やはりこの映画の中に

    登場する「ユニークな人々」というのはフィニアスの事業、つまり

    金儲けのための人集めに使われているように思えます。それを

    真っ向から否定し、自由と平等を声高に語るフィニアスに対しても

    少し違和感を感じてしまうことは確かです。ただこの映画を

    大々的に公開し、「ユニークな人々」について、それが個性で

    あると思わせてくれるのは、アメリカの良い部分の象徴であり、

    その個性を受け入れる寛容さを持ち合わせた人々が多くいることは、
    ぜひとも強調したい部分でもあります。そのテーマを避けて

    作り出す映画こそ表面的な内容なものに終わってしまうとも

    感じてしまうのです。

     

    グレイテストショーマン
     

    フィニアスが作ったサーカスは、庶民には人気を博するけれど、

    芸術的には受け入れられず、新聞でも「ペテン師」と酷評されて

    しまいます。それでも前を向くパワーは、彼が妻子を幸せにしたい

    という強いエネルギーで支えられているのです。フィニアスの

    妻チャリティ役のミシェル・ウィリアムズは
    「マリリン 7日間の恋」(2011)「フランス組曲」(2014)

    「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2015)と個人的には

    好きな映画ばかりに出演していますが、アカデミー賞獲得は
    まだしていないようです。

     

    グレイテストショーマン

     

    「フランス組曲」はこの中でも最もお勧め映画です。
    そしてフィリアスはさらなる上を目指し、オペラ歌手

    ジェニー・リンドの興行を手掛けることになるのですが、

    それは自分が最初に作り上げたショーの仲間を軽んじることに

    つながり、始めから彼に向けられていた批判が蓄積され続けて

    いたことすら忘れてしまっていたという大きな落とし穴に

    はまる結果を向かえるわけです。

     

    グレイテストショーマン

     

    まさに成功と挫折。フィリアスはジェニーに去られ、借金を抱え、

    劇場は焼失、フィリップは、ニューヨーク社交界だけでなく

    両親からも拒否されてしまう。そこに何が残っていたか。残って

    いたものの価値の大きさに気づければ、またそこから這い

    上がればいいのです。家族、仲間、友人、恋人との愛、信頼、

    友情は、苦しみを半減させ、喜びを倍増させる、喜びは共有する

    者が多いほどその大きさが無限大に広がると思っています。
    オープニングの「THE GREATESTSHOW」では足が自然とステップ

    を踏み出すこと間違いなしです。

     

     

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    潜入者

    5

    JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

     

    潜入者

     

    「潜入者」

    原題:The Infiltrator

    監督:ブラッド・ファーマン

    2016年 アメリカ映画 127分

    キャスト:ブライアン・クランストン

         ダイアン・クルーガー

         ジョン・レグイザモ

         エイミー・ライアン

     

    麻薬取引の取り締まりを行う潜入捜査官ロバートは、

    麻薬カルテル撲滅のため、資金洗浄について捜査を

    開始する。彼は同僚エミールとコロンビアの麻薬

    カルテルへの接触を図るが...。


    <お勧め星>☆☆☆  実話を基にしていて見ごたえが

    ありますが、かなりソフトな内容です。


    結婚式に大集合。


    潜入捜査を描いた映画はいくつもありますが、麻薬

    ではなくテロ計画阻止のため、ネオナチ組織に潜入した

    FBI捜査官を描いた「アンダーカバー」(2016)

    はとても印象的でした。主役は「ハリーポッター」

    シリーズのダニエル・ラドクリフ。彼がスキンヘッドと

    なり、心底ネオナチ思想に傾倒していくかのように

    振舞う姿は、恐怖と共に、その心の葛藤も映し出され、

    潜入捜査の困難さを体感しました。
    日本で「おとり捜査」と言ったらやはり

    「おとり捜査官 北見志穂」

    ですよ。松下由樹さんが、毎回何かに扮して

    (コスプレっぽく思えるほど)潜入し、危険ギリギリの

    ところで、同僚の助けが来て事件が解決という、とっても

    わかりやすいお話です。
    さてこの映画では、1980年代に繰り広げられた

    アメリカにおける麻薬犯罪カルテル崩壊作戦の1つを

    描いているのです。まず主人公のボブが潜入捜査をして

    いて逮捕されるシーンから始まり、彼が税関の捜査官で

    あるとわかります。しかしこんな小さな取引では組織

    壊滅はできないということで、麻薬取引で動く大量の金に

    目をつけ、その資金洗浄の中に潜入しようということになる

    わけです。とりあえず、名前が覚えられたのがボブ、相棒と

    なるエミール、ボブの妻イヴ、ボブの上司ボニーですね。

     

    潜入者
     

    潜入者

     

    後にボブの「婚約者」役として捜査に加わるのが

    「女は二度決断する」(2017)のダイアン・クルーガー

    演じるキャシーで、彼女がとても綺麗なんです。これは

    映画を見ないといけない。
    ところがこれ以降カルテルに接近するために下っ端に取り

    入っていくのに、名前と顔が一向にくっつきません。

    ラテン系のルックスなのと、麻薬取引でしばしばみられる

    残虐な行為が見られないからでしょうか。特徴がつかみきれ

    ないんです。

     

    潜入者

     

    それでも話は地道にコツコツ進み、悪人たちと知り合って

    大物に近づいていくのです。中盤に登場する

    ロベルト・アルケイノと妻にいたっては、人間的にはとても

    好意的に描かれているし、ロバートもキャシーも親しくし

    すぎてしまったと後悔している通り、あれでは「悪人」と

    感じられません。そしてBCCI(国際商業信用銀行)も出てきて、

    それはCIAに資金提供しているという。ちょっとすみません。

    同じ国の中でたくさん組織があってそれが全然交流していなくて、

    いや逆に敵対しているのは難しすぎます。
    とにかくボブとキャシーの偽りの結婚式が開かれる10月3日に

    全員が集合し、そこで一挙に確保するという計画が出来上がる

    のはいつだった?そこまでの信用を得る努力があまり描かれて

    いなかったけどいいのかな。

     

    潜入者
     

    麻薬カルテルというと血なまぐさい映像ばかり出てくると思う

    けれど、それはほとんどないし、非情なシーンも少ないので

    安心して見られる反面少し物足りないかな。「ボーダーライン」

    (2015)のように心にずしんとは来ませんでした。

     

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    シェイプ・オブ・ウォーター

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    シェイプオブウォーター

     

    「シェイプ・オブ・ウォーター」

    原題:The Shape of Water

    監督:ギレルモ・デル・トロ

    2017年 アメリカ映画 124分 R15+

    キャスト:サリー・ホーキンス

         マイケル・シャノン

         リチャード・ジェンキンス

         マイケル・スタールバーグ

         オクタヴィア・スペンサー

     

    研究所の掃除係として働く声が出せないイライザは、

    ある日研究対象として持ち込まれた「彼」を目撃する。

    ストリックランド博士により虐待される「彼」にいつ

    しか心を寄せるようになるが、その「彼」が生体解剖

    されると聞き、何とか研究所から連れ出そうと計画する

    のだった。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 純粋な愛の姿を美しい光や水の

    映像と音楽で描いています。


    喪失は愛で補填される。


    ギレルモ・デル・トロ監督作品で一番好きなのは、やはり

    「パンズラビリンス」(2006)でしょうか。童話の

    世界観に浸り、美しい迷宮での生活を楽しんでいるうちに

    突然訪れる現実世界にはそのギャップの大きさから、ただ

    ただ悲しみが残りました。
    この「シェイプ・オブ・ウォーター」よりアカデミー賞

    作品賞は「スリー・ビルボード」が獲ると予想して先に劇場

    にて鑑賞。とてもよく練りこまれた作品であり、ラストに

    かすかな希望が感じられる秀作でした。
    ところが作品賞ではなかったんですよね。そして今頃配信で

    鑑賞しました。この映画は絶対に大スクリーンで見るべき

    ものだったととても後悔しています。とはいえストーリーは

    一言で言うと切なく美しい「究極の愛」の物語なんです。
    映画内に登場する「彼」は1954年映画「大アマゾンの半魚人」

    に似ているというけれど、半魚人と思いたくない。この

    「彼」は知性と意志を持ち、さらには...。

     

    シェイプ・オブ・ウォーター
     

    登場するのは声が出せないイライザ、彼女と同居する

    リストラされたゲイのジャイルズ、イライザの同僚の黒人女性

    ゼルダ、そしてアマゾン部族から神のように崇拝された異形の

    「彼」とマイノリティばかりなのです。そして時は1962年の

    東西冷戦時代ですから、ソ連のスパイも登場する。さらに

    圧倒的な存在感を放つのが、この「彼」を捕獲し、研究対象と

    して虐待するストリックランド博士です。この役は

    マイケル・シャノン。

     

    シェイプ・オブ・ウォーター

     

    彼の場合は性格が異形なのかと思うほど嫌な男で、その役を

    とても上手に演じています。R15指定かつ一か所ボカしがある

    というので、どこかと思ったら何のことはない、

    マイケル・シャノンのお尻でした。別に気にもならなかったわ。
    「美女と野獣」のように甘い恋愛映画かと思っていると、かなり

    残酷なシーンが幾つも見られ、血を見るのが苦手だったり、

    爬虫類が苦手な人は、お勧めしない映画です。
    そしてゆで卵1つで始まったイライザと「彼」の心のつながりは、

    ロシアのスパイ、ストリックランド、イライザの3つ巴で、

    (いや、スパイとイライザはタッグを組んだか。)遂には

    イライザの自宅のバスルームに「彼」をかくまい、そして愛を

    はぐくむこととなります。同居人のジャイルズが「彼」を見て

    「美しい」と言ったのは。自分がうわべだけ着飾った醜い人間を

    数多く見てきたからかもしれません。

     

    シェイプ・オブ・ウォーター
     

    バスルームにお湯をはって、それもバスルームいっぱいにはって、

    交わされるラブシーンは本当にまるで絵画を見ているような

    思いになります。ラスト付近はまさに手に汗を握る展開であり、

    その直前にイライザが妄想するシーンは「ラ・ラ・ランド」の

    終盤を思い起こさせるもので、イライザの口から美しい歌声も

    聞かれるのです。

     

    シェイプ・オブ・ウォーター

     

    この緩急の差がまた見ている側を飽きさせません。
    気持ちが高まると青く光る「彼」の体やイライザの首にある

    傷など、いろいろなことに想いを馳せつつ、夢物語に包まれた

    ように映画は終了します。緩やかな幸福感を味わえる映画でした。

     

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    LION/ライオン〜25年目のただいま〜

    3

    JUGEMテーマ:洋画

     

    ライオン

     

    「LION/ライオン〜25年目のただいま〜」

    原題:Lion

    監督:ガース・デイビス

    2016年 オーストラリア映画 119分

    キャスト:デブ・パネル

         ルーニー・マーラー

         ニコール・キッドマン

         デビッド・ウェンハム

     

    5歳のサルーは兄の仕事について行き、駅ではぐれて

    しまう。彼はストリートチルドレンとなった後に施設に

    収容され、幸いなことにオーストラリア人夫妻の養子と

    して迎えられる。彼は何不自由なく育ち大学生になるが、
    ある時自分がインドで迷子だったことを鮮明に思い出す

    のだった。


    <お勧め星>☆☆☆☆


    自分のルーツ


    キャッチコピーは「迷った距離1万キロ、探した時間25年、

    道案内はGoogle Earth」。実話ベースの映画ですが、少し

    ずつ実際と異なることもあるようで、特に主人公サルーが

    生家を探すのに使ったのは、Google Earthだけでなく

    facebookもあったそうです。

     

    ライオン
     

    成人したサルー役は「スラムドッグ$ミリオネア」(2009)

    「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」(2013)などの

    デブ・パネル。彼の恋人ルーシー役は「キャロル」(2016)

    のルーニー・マーラー。

     

    ライオン
     

    また養母スー役はニコール・キッドマンが演じています。

    ニコール・キッドマンの抑えた演技も素晴らしいです。
    黄色い蝶の大群に囲まれた5歳のサルーから始まるこの映画

    では、時折その蝶が姿を見せ、見終わった後で調べてみると、

    彼の守護神のような意味を表しているのだと知りました。

    とはいえ、この壮大な家族探しの旅は、幼いサルーが兄グドゥの

    仕事に無理やりついて行ったことから始まります。どんなに

    力持ちでもどんなに真面目でも、5歳児なんですよ。サルーは

    駅で兄とはぐれてしまい、おまけに回送電車ではるか遠い

    カルカッタまで向かってしまうのです。人々がひしめき合う駅の

    雑踏で、小さなサルーは柱をよじ登り「グドゥ〜」と呼び続けます。

    この姿は彼が襲われているものすごく大きな不安を感じ取れる

    もので、見つかるはずもない兄の名を呼ぶ声がいつまでも響き渡り、

    耳から離れません。

     

     

    ライオン
     

    かつて実姉が「インドへ旅行したい」と言って突然出かけた

    ことがあって、それも初めての海外旅行であり、

    「どうしてインドに行きたい?」と尋ねたところ

    「ガンジス川でで沐浴をしたい」との答えが返ってきました。
    それがこのサルーが迷った時期とちょうど重なります。姉は

    沐浴の夢はかなわなかったし、ついでに帰国時に下痢の症状が

    あり、検疫で止められ、さらにはその後保健所にも行く羽目に

    なったことを思い出しました。
    サルーの困難な状況はここで数多く映されます。ストリート

    チルドレンとなり、それを捕まえに来た大人に追われ、人身売買

    に巻き込まれそうになり、さらには劣悪な環境の施設に収容

    されます。サルーは幸いなことに5ヶ月で里親に恵まれたことが、

    その後のサルーの人生が大きく変わったと思うのです。そして

    オーストラリアへ渡り、何不自由ない家庭の子供として育って

    いきます。翌年同じように養子の弟マントッシュを受け入れた

    この家庭はマントッシュの問題行動に苦労するわけですが、

    それは彼の養子に出されるまでの過酷な生活の積み重ねであっ

    たことは想像に難くないのです。
    ではなぜサルーは本当の母や兄を探したい欲求にかられたの

    でしょうか。それは映像で見られるように、時折浮かぶ故郷の村や

    母や兄の姿、そしていくつもの出来事が頭から離れなかったに

    他ならないと思うのです。「自分探しの旅」と称して世界を放浪

    するバックパッカーがいる中で、自分のルーツを探しに行く者は

    ほとんどいないと思う。自分のルーツがオーストラリアになく、

    インドにあることはわかっているのに、その過去を探すことは

    今の養父母を裏切ることにもなる。サルーの心の葛藤は続きますが、

    それでも過去の記憶を取り戻し、これから先の人生を歩みたいと

    切望するサルーの気持ちもなんとなくわかる気がするのです。

    本当に何となくですが。
    インドで施設に収容されている時、サルーは顔写真付きで新聞に

    親探しの記事を載せられるのですが、反応はありませんでした。

    それはなぜか。彼の母は新聞どころか「文字」が読めなかったのです。
    ちなみにインドにおける識字率は1991年当時48.2%に過ぎず、

    田舎の村に住む母が文字を読めなかったとしても当然のことなのです。
    一方里親であるジョンとスーは決して子供が持てないから養子を

    選択したのではなく、「恵まれない子たちを助ける方が意義がある」

    という崇高な志を持っていたことを知ると、また感動します。
    その経緯も神秘的であり、彼らとサルーの結びつきも運命的なもので

    あったのかもしれません。
    「闇の子供たち」(2008)ではタイにおける臓器移植を目的と

    した幼い子供の人身売買や幼児売買春を描いていましたが、インドに

    おけるストリートチルドレンは世界で最も多く、その中から人身売買

    で連れ去られる者もかなりの数いるのです。
    但しこの映画ではあくまでも自分のルーツを探すことを主に描いており、

    それが叶う時には感動するとともに、兄グドゥがなぜ戻らなかったのか

    理由を知ると、サルーの脳裏に浮かぶのは兄と2人で線路を飛び跳ねて

    遊んだこと、一緒に石を運んだこと、自転車に乗せてもらったことなど

    楽しいものばかりであり、彼の記憶の中ではグドゥは永遠にあの時の

    まま存在し続けるのだろうと思ってしまいました。

    Google Earthと自分の断片的な記憶をつなぎ合わせて目的を達成

    したサルー。そしてラストに映画の題名の意味が分かるのです。

    住んでいた場所をいくら大人に伝えても伝わらなかったのは、
    「ガネストレイ」ではなく「ガネッシュタライ」だったからで、

    自らの名前すら「サルー」ではなく「シェルウ」だったと知ると

    サルーがいかに幼かったのかを改めて実感します。

     

    ライオン
     

    シェルウの意味は「ライオン」

     

     

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    ハーフネルソン

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    ハーフネルソン

     

    「ハーフネルソン」

    原題:Half Nelson

    監督:ライアン・フレック

    2006年 アメリカ映画 106分

    キャスト:ライアン・ゴズリング

         シャリーカ・エップス

         ステファニー・バスト

         セバスチャン・ソッツィ

         アンソニー・マッキー

     

    ブルックリンで公立中学の歴史教師をしているダンは、

    夜はバスケットのコーチもしている。しかしある日、

    トイレでコカインを吸っているところを、教え子

    ドレイに見つかってしまう..。


    <お勧め星>☆☆☆ 何はともあれライアン・ゴズリング。


    1人では非力、1人では孤独


    ライアン・ゴズリングが大好きなので出演している映画は

    ほとんど見ていると言っても過言ではありません。
    「完全犯罪クラブ」(2002)で初めてライアン・ゴズリング

    を見たと思うのですが、内容を全く覚えていません。
    「きみに読む物語」(2004)はライアン・ゴズリングと

    レイチェル・マクアダムスの共演のラブストーリーの王道です。

    「君はいつも戻ってきた」の一言に、ラブストーリーなんて

    ちゃんちゃらおかしいわ!と思っていても号泣してしまいました。
    「ラースと、その彼女」(2007)「ブルーバレンタイン」

    (2010)と続き、「ドライヴ」(2011)では逃がし屋を

    している寡黙な男を演じ、わたしのハートをわしづかみにして

    スクリーンの向こうへ、いや、レンタルDVDとして返却され

    ました。一時期PCの壁紙や携帯の待ち受けはこのライアン一色

    だったものです。「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」

    (2012)「オンリー・ゴッド」(2013)等を経て遂に

    壁紙を一新する作品「ラ・ラ・ランド」(2016)登場です。

    劇場で複数回鑑賞することはほとんどないのに、それでも飽き

    足らずBlu-ray購入し、サントラも購入しました。友人によると

    「あのネズミ顔の男の人のどこがいいの?」だそうで、心の中で、

    「あなたのダンナはゲーハータヌキだろう!」と言い返したいのを

    ぐっとこらえました。

    そのライアン・ゴズリングがアカデミー賞主演男優賞にノミネート

    された作品がこの映画です。この映画でも悲しい顔、寂しい顔、

    はにかむような笑顔と女心をくすぐる表情を随所で見せています。

     

    ハーフネルソン
     

    ブルックリンで公立中学の歴史教師をしているダンは、指導

    すべきこと内容ではないことを教え、生徒には人気があるの

    です。また彼自身、自分が教えている「対立理論」というのが、

    学校から教えるように言われている「公民権運動について」

    よりも、ずっと生徒のためになると考えているらしい。

    ブルックリンの貧困層が多い黒人が通う公立中学で「公民権」

    について教え込むのは、彼らが苦難を経て手に入れたこの

    権利を脅かす犯罪行為に走る少年少女がいかに多いかという

    ことでしょうか。授業では生き生きしているダンも私生活では

    コカイン中毒者であり、GFはすでに更生し、他の男性と婚約

    している。しかし自分は更生に失敗し、今この状態にいると

    いう泥沼から抜け出せない境遇に深い孤独と焦燥感を覚えて

    いるようです。
    映画の後半で、彼が行くのを避けていた自分の実家が映るの

    ですが、父は極端な白人至上主義者であり、母親と弟も特に反発

    していないのです。つまり彼が学校で教えようと考えていた理論は、

    自分の家庭環境への反発であり、社会への反発であり、

    ささやかな抵抗でもあった気がするのです。

     

    ハーフネルソン
     

    その彼がトイレでラリっているところを生徒のドレイに

    見つかってしまいます。ドレイはシングルマザーの家庭で、

    母は働きづめだし、兄はドラッグ関係で収監されているのです。

    おそらくは彼女はとても賢く、この境遇でなければもっと

    高等な教育を受けるチャンスがあるはずなのに、そんなことは

    夢のまた夢。この2人の奇妙な友情は互いの孤独を埋める目的

    だというほど深いものではなく、寂しい時間に側にいるという

    だけで自然と落ち着くような感じになるものではないのかなあ。

    何かを禁止したり押し付け合うことのない少しだけ和らいだ

    空気感を漂わせることができる相手。

     

    ハーフネルソン
     

    しかし遂にドラッグ販売を手伝ってしまったドレイが、その

    ドラッグを届けた先にいたのがダンなのです。互いの最後の砦、

    つまりダンはドラッグを吸っているけれど、それを買う姿を

    見られたくなかったし、ドレイは兄の友人で売人のフランクの

    手先として動いている姿を特にダンに見られたくなかったの

    でしょうね。

     

    ハーフネルソン
     

    ラストはダンの自宅のソファの両脇にちょこんと座る2人が

    映ります。全く違う立場であり、境遇であるけれど、最低でも

    「孤独」ではなくなった証であり、これからどう転ぶか予想も

    できないけれど、少しだけ希望が持てるものでした。

    ちなみに「ハーフネルソン」はプロレスの技の1つで「羽交い締め」

    を表すそうです。ダンの状況を物語っているのかな。

     

     

     

     

     

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    はじまりの街

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    はじまりの街

     

    「はじまりの街」

    原題:La vita possibile

    監督:イバーノ・デ・マッテオ

    2016年 イタリア=フランス映画 107分 

    PG12

    キャスト:マルゲリータ・ブイ

         バレリア・ゴリノ

         アンドレア・ピットリーノ

         カテリーナ・シェルム

     

    ローマに暮らすアンナは夫のDVから逃れるため、

    息子のヴァレリオと友人カルラが住むトリノへやって

    来る。初めての場所になじめないヴァレリオは、夜の

    サイクリング中に街娼を見かけ、心を惹かれていくが...。


    <お勧め星>☆☆☆ 人生を切り替えるチャンスはいつ

    でもあるのだと実感します。


    何があっても人生は素晴らしい


    冒頭、サッカーの試合の話をしながら帰る2人の少年うち、

    ヴァレリオが自宅へ戻ると父が母に暴力をふるっており、

    彼は思わず失禁してしまうのです。

     

    はじまりの街

     

    女性に暴力を振るう男性は個人的には最低だと思っている

    けれど、ある時男性に

    「僕は妻に言葉の暴力を受けているんだ」

    と聞かされたことがあって、暴力は肉体的なものだけを指す

    のではなく、精神的なもの、特に「言葉」の暴力は肉体的な

    ものと寸分の変りもないダメージを与えるのだと実感しました。

    いや男性の怒鳴り声も思わずビクリとなってしまうな。けれど

    ニコニコ笑っているだけの毎日って本当に難しい。
    この母親アンナは、幾度となく夫にDVを受けているらしく、

    二人は彼女の友人カルラがいるトリノへ逃げていくわけです。

     

    はじまりの街

     

    この映画の登場人物は、DV夫でも息子のために許すべきか

    (これ何度めだろう)悩むアンナと13歳の多感な少年ヴァレリオ、

    普通の感覚とはかなりズレていて、少し幼稚に思えるカルラ、

    家の前のビストロの主人マチュー。

     

    はじまりの街

     

    マシューはフランス人であることと、かつて起こした交通死亡

    事故の件で嫌がらせを受けている元サッカー選手です。さらに

    暇つぶしに夜のサイクリングに出かけたヴァレリオが心を惹か

    れる街娼ラリッサ。

     

    はじまりの街

     

    これね、一目でその仕事がわかるし、ヴァレリオだって知らない

    はずもない年齢なんですが、なぜか心を惹かれるんです。ここは

    かなり謎。後半彼女と遊園地デートした後に、彼女の仕事の現場を

    目撃すると、ヴァレリオは大泣きするんですよ。13歳ってそう

    いう年頃なんだろうか。
    ヴァレリオが孤独に耐えているのと同時に、母アンナは、慣れない

    仕事と息子の反抗と、空気の読めないカルラとの生活に疲弊して

    いくのです。そうそうセクハラ演出家?もいました。幾つもの出来事

    が起きるけれど、その中で一番好きなものは、傷心のヴァレリオが

    放置していた自転車に、しっかり鍵をかけておいてくれたマチューの

    優しさです。人間は優しさの積み重ねで生きていくのだなと思って

    しまいます。時にはそれが「おせっかい」だったり「鬱陶しい」と

    感じるけれど、それでも優しい心を受け取ると、それが他人への優しさ

    につながっていくと思うのです。そんなことを考えていても、やはり

    終盤の急展開はちょっと説明不足感が否めません。急にサッカーに

    誘いに来る近所の少年たちは、何を見て誘おうと思ったんだろう。

    まあそこはいいか。
    気球が上がっていくシーンとそこで流れる明るい歌で、人生はいつも上昇

    することができるのだと実感する映画です。

     

     

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    灼熱

    4

    JUGEMテーマ:邦画

     

    灼熱

     

    「灼熱」

    原題:Zvizdan

    監督:ダリボル・マタニッチ

    2015年 クロアチア=スロベニア=セルビア映画 

    123分 R15+

    キャスト:ティノナ・ラゾビッチ

         ゴーラン・マルコビッチ

         ニベス・イバンコビッチ

         ダド・チョーシッチ

     

    1991年クロアチア人とセルビア人の対立が深まる中、

    アドリア海に近い村でクロアチア人のイヴァンとセルビア人

    のイェレナは、2人で街へ逃げようと計画していた。

    しかしイェレナの兄によって彼女は連れ戻されてしまう...。


    <お勧め星>☆☆☆☆


    愛は普遍的なもの


    私個人から見ると、クロアチアとセルビアという国はイタリア

    の東辺りにあって..くらいにしか印象がないのですが、

    クロアチア人とセルビア人がたびたび対立してきたことは、

    歴史や近年のニュースなどで知ることができています。
    それでも遠い国、というイメージしか持てないのです。
    映画のストーリーは三部作で、それぞれ民族紛争を背景に

    して、ある若い男女のカップルの姿を描いていきます。

     

    灼熱
     

    まず1991年、イェレナ(セルビア人)とイヴァン

    (クロアチア人)。恋人同士だった2人は、激しさを増す

    民族対立を避けて街へ向かおうとするものの、イェレナの

    兄サーシャによって阻止されてしまう。完全に非暴力で

    トランペットを吹き続けるイヴァンの姿は強く心に残ります。

    太陽が真上にあり、日差しがさんさんと降り注ぐ中での悲劇。

     

    灼熱
     

    次は2001年、クロアチア紛争後、復興に取り組む政府も

    セルビア人に対しては消極的であり、ゾルカとナタシャ母娘は、

    すっかり破壊された自宅へ戻って来るのです。荒廃した街並みや

    銃撃、爆発の跡がその凄まじい戦禍を物語ります。そして家の

    修理に訪れるのがアンテ。セルビア人である母娘は兄を

    クロアチア人に、クロアチア人であるアンテは、父をセルビア人に

    それぞれ殺害されており、紛争は終結したとはいえ、互いの胸の

    中にくすぶり続ける憎しみは決して消えることがないのは、

    ナタシャの態度で一目瞭然なのです。しかしどちらが悪いと

    一方的に責めることで何かが解決するのだろうか。修理が終わる日、

    アンテとナタシャは関係を持つのですが、ナタシャは

    「これで終わりよ」と冷たく言い放ちます。紛争がなければ、恋を

    したかもしれない、いや紛争がなければ出会うこともなかったのか。

    沈んでいく夕陽が草原を赤く染めていきます。

     

    灼熱
     

    時を経て2011年。平和を取り戻したクロアチア国内で、

    久しぶりに故郷に戻ってきたルカは、民族の違いで母親に

    引き離されたかつての恋人マリヤの家を訪れるのです。平和を

    取り戻したとはいえ、人々の心の中に差別が残っていることは、
    2人が引き離された現実から知ることができます。さらに彼ら

    には子供がおり、一度は拒絶したルカをマリヤは受け入れるかの

    ごとく玄関扉を開けたまま、家の中に去っていくのです。
    つまり小さなレベルでの和解が進んでいくことを意味し、それが

    民族の対立を和らげていくのだと意味しているような気がしました。
    三部作の男女はいずれも同じ俳優、女優が演じており、時代や

    環境が異なっても、変わらずに存在するのは「愛」だと、とても

    単純なことですが、大切なことを訴えます。但し2人がかなり

    印象的なルックスなので、一目で同一人物だとわかり、敢えて

    そういう設定にした監督の思いをどうとらえたらいいのか悩んで

    しまいました。また必ず登場する黒い犬と海。

     

    灼熱

     

    すべてを見ているのが犬であり、海は誰もを同じように包み込み、

    浮かばせ、潜らせる。第三部では、朝陽が昇るシーンが見られる

    ことで、この長い対立にも夜明けが来ていることを意味していた

    ような気がします。
    「政治も過激な国家主義もけっして勝者はいないが、人間の

    本質に備わる愛の力はすべてに勝る」監督自身の言葉です。

    心に深く刻みたいと思います。

     

     

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    静寂の森の凍えた姉妹

    3

    JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

     

    静寂の森の凍えた姉妹

     

    「静寂の森の凍えた姉妹」

    原題:Grimmd

    監督:アントン・シグルズソン

    2016年 アイスランド映画 105分

    キャスト:マルグレート・ビルヒャムズドッテイル

         スベイン・オラフルグンナルソン

         ピエトゥル・オスカル・シグルドソン

     

    アイスランドの森で幼い姉妹が遺体で見つかる事件が

    発生する。警察は殺人事件として捜査を開始するが、

    容疑者の一人は担当刑事エッダの弟であった。


    <お勧め星>☆☆半 全編にわたって寒々しい映像が流れ、

    霧の中に迷い込んだような感じを受けます。


    容疑者が多すぎる


    アイスランド映画というと3作品しか見たことがなくて、

    1つは「湿地」(2006)です。これはアイスランド、

    デンマーク、ドイツ合作なので、純粋にアイスランド製作

    映画では「レイキャビク・ホエール・ウォッチング・マサカー」

    (2009)と「ひつじ村の兄弟」(2015)のみかも

    しれません。「湿地」は原作が大変面白く、アイスランドと

    いう島国が持つ特徴にストーリーを上手く重ね合わせたもので

    あり、予想できない展開でまさに一気読みしました。映画

    ではかなりはしょった部分が見られ、原作の複雑な人物像や

    その背後関係などはかなり薄味になっています。

    「レイキャビク・ホエール・ウォッチング・マサカー」は、

    なんと懐かしい裕木奈江さんが出演しているものの、内容

    はB級映画という感じ。特に怖くないし、こだわったという

    BGMもそれほどのことはありません。はっきり言って
    なんでこんな映画を作ったのかしら?と思う内容です。

    「ひつじ村の兄弟」はさすがカンヌ映画祭「ある視点部門

    グランプリ受賞だけあります。アイスランドにおける羊の

    重要さと兄弟の姿をシリアスさとコミカルさを上手く混在

    させて描き、予想外のラストになっていました。
    どの映画もとにかく「寒そう」というのが共通項です。
    さて、この「静寂の森の凍えた姉妹」は、やはりどんよりした

    曇り空の下、雪が残る寒々しい景色がどこまでも広がって

    います。そしてヘルズモルクという町で見つかった幼い

    姉妹の遺体、警察の捜査線上に浮かぶ数名の小児性愛者、

    その中に担当刑事エッダの実弟アンドリがいる、という展開が

    中盤まで描かれていきます。しかし他の容疑者がどれも

    これも怪しすぎるし、エッダが犯人と主張する人物もいたり

    して、どうも事件のポイントがずれていくのです。警察の

    捜査も極めて適当で、まるで韓国映画内の警察の姿を見て

    いるように感じます。怪しい人物を幾人かピックアップして、

    見る側をミスリードしていくのではなく、たくさんのピースを

    まき散らかしたあげく、それを回収するどころか、さらに

    バラバラにしていくみたい。

     

    静寂の森の凍えた姉妹

     

    たとえば、エッダにしてもロフトルという男に固執するけれど、

    それはかつで2度逮捕されたのに、裁判で無罪になってしまった

    悔しさからとしか思えないのです。特別な関連性があるわけ

    でもない。また被害者の母ファンティに何か隠し事があるかの

    ように映るけれど、それも重大な意味を持つわけではないのです。

     

    静寂の森の凍えた姉妹
     

    そしてこれまたあちこちにフェイントを掛けすぎで、その連続は、

    ストーリーへの集中力を途絶えさせる大きな原因になっていると

    思います。エッダともう一人の刑事ヨイとの確執の原因もわから

    ないし、それにとどまらず、他の人物の説明がほとんどないので、

    顔すらも覚えきれません。あ、覚える必要ないか。
    ラストには「はっ」となりますが、どう見ても逮捕された人物が

    真犯人でないことはわかっているので、やっぱりね〜と思うくらいです。
    惜しい。もうちょっとですごく面白くなったのに、本当に惜しいです。

     

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