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    • 2023.01.12 Thursday
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    静かなる叫び

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    静かなる叫び

     

    「静かなる叫び」

    原題:Polytechnique

    監督:ドゥヌ・ビルヌーヴ

    2009年 カナダ映画 77分

    キャスト:マキシム・ゴーデッド

         セバスティアン・ユベルト

         カリーヌ・バナッス

         エブリーヌ・ブロシュ

     

    1989年、12月、モントリオール理工科大学で、

    1人の男子学生による銃乱射事件が起きる。女子学生

    ばかりを狙ったその事件で辛うじて生き残った

    ヴァレリーの心に傷は癒えることがなく...。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 少ない情報の中で犯人、犠牲者

    たちの思いを想像させることができます。


    男の子なら愛を、女の子なら世界に

    羽ばたくことを教える


    1989年、12月、カナダのケベック州にある

    モントリオール工科大学で実際に起きた銃乱射事件を

    もとに製作された映画で、

    「未体験ゾーンの映画たち 2017」

    上映作品です。監督は「ボーダーライン」(2015)、

    「メッセージ」(2016)、「ブレードランナー2049」

    (2017)のドゥヌ・ビルヌーヴ。全編モノクロであり、

    それは当時の雰囲気を醸し出すためなのか、それとも

    あまりに凄惨な事件であったためなのか、その両方

    でしょうか。
    事件を、犯人、被害者、そして被害者たちを助けようと

    した男子学生の視点から描いていきます。犯人の学生が

    抱いていた反フェミニズム精神は、女性全員に向けられて

    おり、なぜそこまで女性を憎むのかと考えます。しかし

    それはこの犯人が、学内を歩き回っても、他のどの学生も

    声をかけることすらなく、銃を発射して初めてその存在に

    気づかれるという、絶対的な孤独感に包まれていたことが、

    映像から伝わります。

     

    静かなる叫び
     

    また冒頭に彼が書き残す遺書めいた手紙の内容からも彼の

    いびつな、極めていびつな考えを知ることができるのです。

    犯人の家庭環境や交友関係など一切描かれないことが、見る

    側に余白を残した内容として与えられ、それをどう考えるか、

    というのが監督のメッセージの1つかもしれません。

     

    静かなる叫び
     

    一方、被害に遭った女子学生で重傷を負いつつ生存した

    ヴァレリーは当日、就職の面接で

    「子育てするために退職されてはかなわない」

    と面接官に言われ、自分が「女性」であることが世間に出た時

    いかに厳しい風にさらされるのか実感したばかり。さらに

    そのヴァレリーにノートを借りる男子学生は、事件が起きた時、

    犯人の言うなりになって女子学生を残して教室を出たことを

    深く後悔するのです。

     

    静かなる叫び
     

    あれは当事者でないとわからない。銃を持った犯人に

    「男は出ろ」と言われて出ないことを選ぶ人間がいる

    でしょうか。刃物ではなく銃ですよ。これらの映像を

    時間軸をバラして描いていき、自殺する犯人の流す血と
    被害に遭った女子学生の流す血が次第に混じり合うシーンが

    映ります。これは同じ血が流れている人間なのだという

    ことを意味しているのかもしれません。男女の差など単なる

    性別の差だと。
    事件後念願の航空会社の技術者になったヴァレリーが映り、

    おそらくは夫と暮らしているのですが、それでも事件当時の

    記憶がフラッシュバックし、悪夢に悩まされ続けているのです。

    犯人は自分の目的を達成し、自らの意志で命を絶った。しかし

    突然起きた事件で命を奪われた人々や生き残った人々の傷は

    永遠に癒えることはないのです。ごく平凡な学生生活を送り、

    夢を叶えたかもしれない人々の未来を一瞬で奪い去った犯人の

    罪は誰が償うのか、いえ償うことができる者などいない。

    二度と起こらせないことがせめてもの償いなのでしょうか。

    これはとてもありきたりで、そしてあまりに消極的な考え

    なのかもしれません。

     

     

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    めぐりあう日

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    めぐりあう日

     

    「めぐりあう日」

    原題:Je vous souhaite d'etre follement aimee

    監督:ウニー・ルコント

    2015年 フランス映画 104分

    キャスト:セリーヌ・サレット

         アンヌ・ブノワ

         ルイ=トゥ・ランクザン

         フランソワーズ・ルブラン

         エリエス・アギス

     

    パリに住むエリザは、生みの親を捜すため調査会社に

    よって知った出生地ダンケルクへ息子とやって来る。

    しかし守秘義務のため実母の名前は明かされず、彼女は

    理学療法士として働きながら自ら調査を進めるが..。


    <お勧め星>☆☆☆ 一人の女性が自らのルーツを知り

    再出発を始める話です。


    あなたが狂おしいほどに愛されることを、

    私は願っている


    ウニー・ルコント監督は「冬の小鳥」(2008)で

    知りましたが、あの映画では自身の少女時代を映画化した

    もので、主演のキム・セロンの演技が心に深く深く突き

    刺さりました。養子縁組に希望を抱く...というあらすじを

    書いているものもあるけれど、映画内ではまるで動物の

    譲渡会のように韓国の施設からフランスへ向かう少女が

    映し出されます。その時の笑顔とその直前の彼女の行動は、

    自らのルーツを捨てることへの葛藤と、新しい旅立ちへの

    希望の両方を感じさせ、見終わってからも静かに考え

    込みました。
    この映画は同じように養子に出され里親の元で育ったエリザが、

    実の母親捜しをするという内容です。エリザの現在の姿を

    見る限り、里親の元で幸せに成長したことは間違いないの

    ですが、なぜに自分のルーツを知りたがるのでしょう。
    またそこへ息子ノエまでも巻き込む理由は何でしょうか。

     

    めぐりあう日
     

    彼女がダンケルクで生まれたことを知り、夫を残して

    息子ノエとその地へ向かいます。なぜ夫と上手くいって

    いないのかわかりません。ただノエの容姿がアフリカ系の

    血筋を感じさせ、映画内でもそれを指摘するシーンがあった

    ことからエリザは自分のルーツに深く関心を持ったのだと

    感じるのです。

     

    めぐりあう日
     

    実母である女性と偶然つながり、それはノエともつながりが

    あるというストーリーは、特に違和感がなく描かれていきます。

    理学療法士をしているエリザは、多くの患者の体を素手で

    マッサージし、それがまことに生々しく、肌と肌を通じて

    感じるものが血の繋がりへと変わった時、エリザは混乱します。

     

    めぐりあう日

     

    なぜだろう。

    また行きずりの男と一夜を共にし、それを責めるノエをなぜ

    平手打ちするのだろう。彼女の混乱に息子を巻き込んでいると

    いう夫の指摘はズバリじゃないだろうか。さらに序盤にエリザは

    妊娠がわかり、すでに中絶できる時期を過ぎていたため、

    わざわざベルギーで手術を受けるのです。妊娠を夫に告げない

    理由とか中絶する理由とか全くわからないのです。
    こんな多くの疑問を抱きつつ、ラストに笑顔で向かい合う2人を

    見ると、かつて破壊された経験を持つダンケルクという町が

    彼女にとっての再生の町に変わったことがとても幸せに感じて

    しまいます。
    原題の意味は

    「あなたが狂おしいほどに愛されることを、私は願っている」で、

    作家アンドレ・ブルトンの著書「狂気の愛」の中で、娘に宛てて

    書いた手紙からの引用だそうです。この作家の名前も初めて

    知りましたが、「愛されていたのか」ということを確かめる旅が

    ダンケルクへの旅だったのかなとも思ったりしました。

     

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    夜明けの祈り

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    夜明けの祈り

     

    「夜明けの祈り」

    原題:Les innocentes

    監督:アンヌ・フォンテーヌ

    2016年 フランス=ポーランド映画 115分

    キャスト:ルー・ドゥ・ラージュ

         アガタ・ブゼク

         アガタ・クレジャ

         バンサン・マケーニュ

     

    1945年12月、ソ連占領下のポーランドで1人の

    修道女が、フランス赤十字の医師マチルドに助けを

    求める。修道院では臨月の修道女が苦しんでおり、

    彼女は帝王切開で出産を成功させるが、ここには

    他にも妊娠した修道女がおり..。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 強い信仰心と現実のはざまで

    揺れ動く人々の姿と使命感のみで動く女性を描いています。


    絶望からの希望


    映画を見て本当に良かったと思えるのは、普段味わえない

    スリルやアクションシーンを体感できることや、個人の

    好みだけれどドキドキハラハラする非現実の世界に入り

    込めることなどと共に、歴史の教科書では決して取り

    上げられることのない戦争の惨禍を知ることができること

    です。もちろん、それを知ったときに衝撃は大きいけれど、

    知らないままでいるよりも、知って、次にこの国のニュースが

    報道された時に、そうか、この国には過去にこんな出来事が

    あったのだと思い出し、今起きていることと何か関連が

    あるのではないかと想像することができるのです。
    この映画のヒロイン、フランス人医師マチルドは

    マドレーヌ・ポーリアックという実在の人物であり、彼女の

    医師としての倫理観、使命感に燃えた行動のすべてを描いて

    います。彼女は無神論者だったようで、信仰心の厚い修道女

    たちの姿とは真逆で、仕事が終われば、酒も飲むし、

    同僚医師サミュエルと一夜を過ごすなど、それなりにストレスを

    発散しています。

     

    夜明けの祈り

     

    負傷兵の手当てをするポーランドにおけるフランス人という

    立場でなければ、ごく普通の若い女性の生活を送ったに

    過ぎなかったでしょう。いやそこには第二次世界大戦という

    大きな戦争がありました。そこでのフランス人の状況も幾つか

    の映画で見たことがあります。

     

    夜明けの祈り
     

    美しい讃美歌を歌う修道女の声の後ろで、何か悲鳴が聞こえて

    きます。それは何なのか。そして1人の修道女が町へ向かい、

    ソ連人とポーランド人以外の医師を捜すのです。なぜ自国の

    医師ではだめなのか。

     

    夜明けの祈り

     

    夜明けの祈り
     

    マチルドが向かった修道院でなぜか臨月の修道女が苦しんで

    います。男子禁制、神の花嫁であるはずの修道女がなぜこの

    状況に置かれているのか。ここには第二次大戦後、ポーランドで

    起きた悲劇が横たわっているのです。
    ドイツ軍撤退後に侵攻してきたソ連軍兵士たちが、この修道院に

    3度にわたって侵入し、修道女たちを次々にレイプしていき、

    それによって数人の修道女が妊娠してしまったのです。

    「貞節を守る」ことが彼女たちの教えの1つであり、守れなかった

    ことは「罰」となり、それは「祈り」で神に赦しを求めるしかない

    という。「受難は神の思し召し」。いやいやそれでも日に日に

    お腹は大きくなるわけで、マチルドは検問しているソ連軍兵士の

    目をかいくぐって修道院に向かうのです。最初はフランス

    赤十字の任務にないから命令違反なのかと思いましたが、マチルド

    自身もソ連兵に襲われかけるシーンもあったことや修道院が

    ポーランド軍に家宅捜索を受けるシーンなどから、マチルドに

    危害を加えるのは1つの要因だけではないと認識できるのです。
    マチルドは何度も修道院に通い、また呼びだされ、次々と

    赤ちゃんを取り上げていきますが、出産を喜ぶ修道女ばかり

    ではなく、また、生まれた赤ん坊はすぐにシスターが養子に

    出してしまう。ここは終盤にからくりがわかり、本当に悲しい

    思いを抱きます。信仰のために取った行動が正しいか否か、

    それは神に委ねたと言いつつ、実は自らの修道院の体面を守る

    ためだけではなかったのかと。
    戦争は敵味方に分かれ、戦い、多くの命を奪い、多くの物を

    破壊するだけでなく、戦争が終結しても、数多くの爪痕を

    残していきます。それは形としていつまでも存在し、時間や

    賠償金、また信仰心だけでは解決できるものではないのです。
    映画内でシスター・マリアが

    「信仰は24時間の疑問と1分の希望」

    と言うのも少しだけ理解できたような気がしました。
    ただこのような事件が現在も紛争地帯で起きていることを

    知っているだけに、なぜ世界は変われないのかと無力感

    にも襲われるのです。

     

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    ロミーナ

    4

    JUGEMテーマ:Horror

     

    ロミーナ

     

    「ロミーナ」

    原題:Romina

    監督:ディエゴ・コーエン

    2018年 メキシコ映画 74分

    キャスト:フランシスカ・ロサノ

         オリベル・ナパ

         アランツァ・ルイス

     

    クリスタル湖キャンプ場にやって来た6人の

    男女は、夜、森の中で何かの物音を耳にする。

    翌日彼らの車は何者かによって破壊されており、

    助けを求めに行く仲間が1人また1人と姿を

    消していくのだった。


    <お勧め星>☆ 既視感のある映像が流れ、どう

    つじつまを合わせたらいいのかわからないけれど、

    やけにグロい。


    君を捜すって...。


    「クリスタル湖キャンプ場」って「13日の金曜日」

    のクリスタルレイクキャンプ場のパクリなんじゃない

    かしらと冒頭から思っていると、一応看板には5km先

    とあるので、例のキャンプ場の近くという設定らしい。
    ありきたりの始まり方で、車に乗った若者がまあ、

    うるさいのなんの。これは定番ですね。ほーら

    ガソリンスタンドに寄ったぞ。あれ?ここは簡単に

    スルーだな。大概、ここに気味の悪い老人とか浮浪者が

    いて何か不吉なことをいうんだけどなあ。もしくは

    何かのトラブルを招きそうはことをやらかしてくる

    んだけどなあ。
    冒頭の美しいソプラノの歌声はあっという間に変な

    BGMに変わります。時々湖の水面が映ることに何か

    意味があるのでしょうか。「クライモリ」(2003)

    のようにその水が何かに汚染されて..。いやこれも違った。
    精神鑑定を受けるロミーナとそのキャンプ場に転がる

    数人の男女の遺体から始まるこの映画は、絶対に

    ありきたりだけど、そこに殺人鬼がいたのだと思い込み

    ますが、誰でも予想できる通り、ロミーナが殺人鬼と

    何か関係があるということは、始まって10分で

    わかります。ものすごくわかりやすいホラーです。
    メキシコ産のアホ若者キャンプ場殺人鬼ホラーなのに、

    あらゆる設定がアメリカやカナダ産のこの手の映画に

    似ています。それも下手くそに似せてあるのです。

    そこに「美女がいる」「美男子がいる」というなら

    まだしも、どう目を凝らしてもいない。さらには、

    B級ホラー定番のお色気シーンもほぼなくて、ロミーナが

    なぜか全裸で湖を泳いでいたり、バストに自信がある

    のでしょうね。ちょいちょい目の保養をさせる程度です。
    そもそものあらすじにある

    「ロミーナは学校で仲間外れになっていて」

    という事実は、車の中での会話で知るのみで、せめて

    その仲間外れシーンを1,2カット入れたら少しは

    納得できたのになと思ってしまう。と言いつつ

    ディエゴとヒメナはロミーナと親友なんだって。

    「あんなブスのどこがいいんだ」
    と悪口を言いまくる仲間も自分の恋人を「デブ」と

    言ったり「男の友情と女の友情は違うんだよ」などと

    聞き捨てならないことを発言します。え〜、それって

    差別じゃないの。おまけに「デブ」発言の男は、自分が

    すでにおっさん体型なんですよ。
    若者の蛮行が血なまぐさい惨劇を招く...いや違うよ。

    そういうストーリーではなくて、ただただ血生臭い

    映像がそこかしこに映るだけで、内容はないようです。

    (つまらないシャレです)

     

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    DESTINY 鎌倉ものがたり

    4

    JUGEMテーマ:邦画

     

    destny

     

    「DESTINY 鎌倉ものがたり」

    監督:山崎 貴

    原作:西岸良平

    2017年 日本映画 129分

    キャスト:堺 雅人

         高畑充希

         堤 真一

         安藤サクラ

         田中 泯

     

    鎌倉に住む作家一色は、亜希子という若い女性と結婚する。

    二人は仲睦まじく暮らしていたが、魔界まつたけを食べて

    魂が抜けやすくなっていた亜希子は転倒した拍子に魂が抜け、

    体を無くしてしまうのだった..。


    <お勧め星>☆☆☆☆ どこか懐かしく、そして安心して

    見られる内容です。


    貧乏神にも親切にしよう

     

    <ネタバレしています>


    一色正和を演じるのは、笑顔で泣き顔ができる堺雅人さん。

    妻亜希子役は高畑充希さんです。高畑さんは、

    「とと姉ちゃん」で主演を務めましたが、わたしは個人的

    には「問題のあるレストラン」での序盤、嫌な役、中盤から

    実は問題を抱えた心の優しい女性と演じ分けていくところが

    気に入っています。あのドラマの松岡茉優さんも個性的だった

    なあ。高畑さんは決して美人ではないけれど表情がとても

    豊かで、ミュージカルではその歌声に驚きました。この映画

    ではかなり幼稚な女性、つまり純粋な女性を演じています。

    (ちょっと説明が難しい)

     

    destny
     

    原作はもちろん未読なので、予備知識はほぼ0で鑑賞。鎌倉は

    古い町で魔物が住んでいて..というと少しゾクリとしますが、

    出てる魔物はどれもそれほど怖くなくて、逆に愛くるしい

    感じさえします。
    「魔界まつたけ」を食べて一色の魂が抜けてしまうと、

    すかさず、先々代からのお手伝い、きんが魂を戻してくれる。

    このグッドタイミングを見ると、この映画ではきっとこのまま

    危険なシーンはないのではないかと確信してしまうのです。

    本当にない。
    「幽霊申請」をして死神局に承認されると、愛する人のそばに

    い続けることができる、というファンタジックな話の一方で、

    「心霊捜査課顧問」を務め殺人事件の現場で捜査を手伝う一色

    の姿はちょっと金田一耕助っぽいなあ。
    ここはお笑いシーンなのだろうか。カッパのような頭や後に

    狐の鼻になる刑事が登場していたぞ。

     

    destny
     

    亜希子の天真爛漫が次々と描かれ、ここでキーポイントの貧乏神

    登場です。田中泯さん、朝ドラで塩をまきながら踊っていた姿

    と大違いのボロボロの衣装です。でも

    「先生と一緒なら貧乏でも平気」

    という亜希子の素敵な言葉も飛び出しちゃって、
    「いやいや貧乏は辛いだろう」

    などと本音を突っ込むすきがありません。この二人がなぜに一目で

    ひかれあって、こんなにも深い愛情でつながっているのかは、

    ラスト付近でわかるんですよ。夫源病なんて言葉はこの二人には

    一生存在しないんだろうな。
    ところが魔界まつたけの後遺症は、亜希子が階段ですっころんだ

    拍子に現れてしまうんですね。(これは赤い手が足を引っ張った)

    魂が抜け、体を奪われた亜希子は「幽霊」になってしまうんです。
    ここでも一色に現れた妙な兆候は、行きつけの飲み屋の女将が

    見つけるというとてもよい展開です。「黄泉の国」に向かう列車に

    乗り込む亜希子とその後腑抜けのようになってしまう一色は対照的

    です。

     

    destny
     

    ちなみに「黄泉の国」へ行く時に同行する死神の一人は

    安藤サクラさん。本当にどんな役でもできる女優さん。

    「万引き家族」を見ても思いましたが、顔がふっくらして

    穏やかな雰囲気になったのと、絶妙な間でセリフを発する姿は、

    素晴らしいの一言に尽きます。

     

    destny

     

    またVFXを駆使しての「黄泉の国」へ向かう列車が通っていく

    景色や行った先の風景は、おとぎ話のような世界観が溢れていて、

    見ていて心がウキウキします。とはいえ一応悪いキャラも登場

    するのです。それは「天頭鬼」というんだけど、やっぱり

    怖くない。なので本当に心から安心して見られる映画です。
    ちょっと残念だったのは、脇の人々、つまり編集者本田は

    魔界転生コースを選んだけれど、その後どうなったんだろう、

    とか、日露戦争で夫を亡くしたというお手伝い、きんって

    いったい何者なのかとか、いろいろ気になることもありました。

    でもそんなことは忘れて、結ばれるべくして結ばれた一色と

    亜希子の幸せそうな姿に心が和むというか、ささくれだった心を

    落ち着かせてくれるというか、たまにはこういう映画を見て

    穏やかな気持ちになりたいものだと思います。

     

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    サーミの血

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    サーミの血

     

    「サーミの血」

    原題:Sameblod

    監督:アマンダ・ケンネル

    2016年 スウェーデン=デンマーク=ノルウェー映画 

    108分

    キャスト:レーネ=セシリア=スパルロク

         ミーア=エリーカ・スパルロク

         マイ=ドリス・リヒピ

         ユリウス・フレイシャンデル

     

    1930年代、スウェーデン北部の山岳地帯に暮らす

    サーミ人のエレは寄宿学校から高校への進学を希望

    するも、教師にその資格がないと言われてしまう。

    彼女は日頃から受けている様々な差別と偏見から逃れる

    ため、パーティーで出会ったニクラスの元に向かうが...。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 全く知らない事実をまた映画で

    見ることができました。


    悪意のない差別こそ憎むべき存在


    映画は全てヒロインのサーミ人、エレ・マリヤ視線で

    描かれています。ラップランドという地名はイコール、

    トナカイのイメージがあるのに、サーミ人という民族や

    ヨイクという彼らが歌う歌は全く知りませんでした。

    調べてみると「ラップランド」というのは「辺境」の地を

    意味する蔑称であり、サーミ、サーメと彼らは自称して

    いるそうです。この民族衣装はとても美しく山岳地帯に

    映えるのです。
     

    サーミの血
     

    この映画での1930年代のサーミ人は、まさしく、

    スウェーデン人とは別物と扱われており、生活の場はテント

    なので当然なのですが、学校もサーミ人専用の寄宿学校で宿舎

    から毎日ぞろぞろ集団で登校する姿が映ります。彼らは民族衣装を

    まとっており、その文化を守るように半ば強制されつつ、

    言語はスウェーデン語を話せと言われる。登校時には、

    好奇心の目で見られ、「臭い、不潔」という言葉をかけられる

    のです。
    それは冒頭に老いたエレが(クリスティーナと名乗っている)

    宿泊したホテルで、現在もスウェーデン人が

    「トナカイ飼いは自然を大切にするのかと思ったら、森の中を

    バイクで大騒ぎするのよ」
    と語る話からも、今なおスウェーデン人の心の奥には

    サーミ人への差別があることを知り、とても複雑な表情を

    浮かべるのが印象的です。自分自身も

    「あの人たちは汚いのよ」

    と息子に語っています。

     

    サーミの血
     

    そんな彼女の少女時代の回想シーンで、彼女がそのように強く

    思った原因が次々に明らかにされていきます。

     

    サーミの血

     

    標本のように身体測定をされ、全裸の写真を撮影されるのは、

    彼らがサーミ人を同じ人間と思っていない証拠でもあるのです。
    窓からスウェーデン人がのぞいているのがわかっているのに、

    14歳の少女に全裸を強要するのはどう考えも酷すぎる。ただ

    当時の研究では、サーミ人の脳はスウェーデン人より小さく、

    文明に向いていないと報告されていたらしい。つまり原始人扱い

    だったわけです。
    エレは高校へ行きたい、恋もしたい、都会で生活したい、と

    様々な夢を、とてつもなく強い意志で叶えていくわけですが、

    その過程は一切描かれません。それは見る者がいくらでも想像

    できる範囲のことだからなのです。

     

    サーミの血
     

    ニクラスと結婚するはずもないし、大体あのチャラ男はいか

    にも都会人という感じで、ちょっと違う味の女子と楽しんだ

    くらいにしか考えていなかったと思う。もちろんエレも彼に

    恋したわけではなく、恋することを体験する相手として彼を

    選んだに過ぎないのでしょう。最も辛く感じたのは、ニクラス

    の誕生日会で、民俗学を学んでいるという女子学生がエレに

    「ヨイクを歌って。本物を聞いたことがないのよ」
    とおねだりするシーンで、それが全く悪意のない行為だからこそ

    許しがたい屈辱を与えるのだと痛感しました。
    サーミ人として伝統を守り、姉の分までトナカイの世話をして

    一生を終えた妹ニェンナと全てを捨てスウェーデン人として

    生活をすることを選んだエレとは、かつてはあれほどまでに

    仲が良かったのだ、そして同じ苦痛を味わっていたのだという

    ことに思いを馳せた時、エレは自分が失ったものの大きさに

    気づいたように思います。エンドロールに流れるヨイクは、

    本当に牧歌的でのどかな雰囲気を醸し出しています。

     

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    ハンティング・パーク

    4

    JUGEMテーマ:Horror

     

    ハンティングパーク

     

    「ハンティング・パーク」

    原題:Carnage Park

    監督:ミッキー・ギーティング

    2016年 アメリカ映画 80分

    キャスト:アシュリー・ベル

         パット・ヒーリー

         ジェームス・エイバート

         グラハム・スキッパー

     

    銀行強盗犯に誘拐されたヴィヴィアンが乗った車が

    何者かに狙撃される。強盗犯は殺害され、彼女は命が

    助かったかに思われたが、そこに現れたのはガスマスク

    姿の人物で...。


    <お勧め星>☆☆半 一番の見せ場が暗くて全然見えない!


    ヒロインがホラー顔


    「未体験ゾーンの映画 2017」の1本で

    「ダークレイン」(お勧め)

    「FOUND ファウンド」(普通)と見た後での鑑賞です。
    冒頭に1978年にアメリカ、カリフォルニア州で実際に

    起きた実に奇妙な事件の映画化で...と流れるので、これが

    実話ベースなのかと興味津々。そしてホラー映画の定番、

    何者からか逃げてくる血まみれの男が遠くからだんだん

    近づいてきて、そして狙撃されるのです。狙撃犯が近づいて

    さらにとどめを刺すと、その犯人の顔が映り、なぜか

    ガスマスク姿。

     

    ハンティングパーク

     

    ガスマスク姿=「血のバレンタイン」(1981)の殺人鬼を

    絶対に思い出します。2009年にリメイクされた

    「ブラッディ・バレンタイン」はリメイクでもオリジナルと

    また違った楽しさがあって、どちらも超おススメほどでも

    ないもののおススメ作品です。なんといってもスピード感が

    あるのと、程よくエログロが織り交ぜてあるのです。少しは

    お色気があった方がホラーも楽しいというもの。先がわかって

    いるのに、そんなところでイチャコチャベタベタしていたら、

    ほらもうそこに...というお決まりの流れも、描き方ひとつで

    楽しくなると思います。
    で、この映画はどうかというと、かなりタランティーノ監督の

    「グラインドハウス」(2007)のパクリ感が否めず、いや

    多分影響を受けているんだろうなあ。懐かしい色調の画面と

    懐かしい音楽をバックに、登場人物のいまいちあか抜けない、

    少々間抜けな銀行強盗犯2人が映り、一人は瀕死の重傷を

    負っているのに、なぜか笑えてしまうという不思議なシーン

    から、トランク内に拉致されていたヴィヴィアンが助手席に

    座らされ、追手のパトカーを振り切るために脇道へと向かう

    姿が映ります。「サソリのジョー」なんて紹介される強盗

    なのに、あっという間に撃ち殺されちゃうの。

    この紹介必要かな?

     

    ハンティングパーク

     

    それと強盗に入るまでのシーンが回想で挟み込まれるけど、

    これも必要かな?何が怖いって、連れまわされて、ジョーが

    撃たれて、自分も狙われて、ヒーヒーキャーキャー叫びながら、

    マスカラが滲みまくったヴィヴィアンの顔です。

    怖い、これはまさにホラーです。

    あらすじを読むと、あちこちトラップだらけの広い私有地で、

    どんどん人が殺害されていくと思ってしまうのですが、
    ところがどっこい、たまにトラップにかかった遺体や人物が

    映る程度で、それほど危険とは思えないのです。そうそう

    保安官が登場するけれど、彼もビッグ・バッド・ジョーと

    わざわざ紹介されるものの大して活躍することもないのです。

    この際、的を絞って殺人鬼VSヒロインの攻防戦にした方が

    絶対に面白かったと思う。

     

    ハンティングパーク
     

    終盤こそ見せ場があるのかと思うと、暗い、とにかく暗い。

    それも内容ではなく画面が暗いのです。地下にある廃坑らしく

    迷路のようになっている場所で、ヒロインの悲鳴と効果音と

    古いレコード音楽とたまにピカっと光って映る人の姿のみでは、

    画面に目をくっつけて見ていてもほぼ何もわからない。

    これ、劇場で観た人には見えたんだろうか。

     

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    君はひとりじゃない

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    君はひとりじゃない

     

    「君はひとりじゃない」

    原題:Body/Cialo

    監督:マウゴシュカ・シュモフスカ

    2015年 ポーランド映画 90分

    キャスト:ヤヌシュ・ガヨス

         マヤ・オマダシェフスカ

         ユスティナ・スワラ

         エバ・ダウコフスカ

     

    検察官のヤヌシュは妻の死後摂食障害に陥った

    娘オルガと暮らしながら、日々の仕事に追われて

    いる。彼は娘の治療のためにアンナのセラピーを

    受けさせるのだったが..。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 何がおかしいのかわから

    ないけれど、ラストは泣き笑いしてしまいます。


    思いやる心


    冒頭に出てくる首吊りをした男は、綱を外して下に

    おろすと、知らないうちにスタスタ立ち去ります。

    このシーンの意味はいくら考えてもわからないのです。
    さてこの映画は大きな特徴が2つあって、1つは

    食べ物や食事は真上から撮影すること。

     

    君はひとりじゃない

     

    まるでインスタ映えを狙うかのようですが、むしろインスタ

    不映えというくらいまずそうです。これには理由が

    あって、ヤヌシュが検察官という仕事柄、遺体を検死

    した後に口にする食事とか、摂食障害のオルガが

    どうしても口に入れることができない食事を映すので、

    敢えてこのように描かれていると思います。
    もう1つはBGMが一切ないこと。ラストに

    ジェリー&ザ・ペースメイカーズの

    「You'll Never Walk Alone」が流れるのみです。これが

    とてもいい歌だし、このシーンにぴったりなんです。

    邦題はここから来たのかしら。映画の内容とはかなり

    違うけど。

     

    君はひとりじゃない
     

    ヤヌシュが妻を亡くした悲しさ、寂しさとオルガが母を

    亡くした悲しさ、寂しさは、比べる物差しがなく、特に

    オルガは父を憎み、摂食障害を起こすことで、その

    張り裂けそうな気持ちを封じ込めているかのようです。

     

    君はひとりじゃない
     

    そこに登場するセラピストのアンナは霊媒師であり、死者

    との交信ができるらしい。霊媒師といえば「死霊館」の

    ウォーレン夫妻が有名ですが、こちらはそんな悪霊相手

    ではなく、死んだ息子から母への手紙が届くようなとても
    優しいお仕事なのです。間違ってもあちらの世界に行って

    悪霊を戦うわけではありませんし、そもそもそういう映画

    ではないのです。
    ヤヌシュの家で誰もいないはずの場所の窓が開閉したり、

    急に電気がついたり、音楽が鳴ったり、足音がしたり..。

    やはり妻ヘレナの霊が家に帰ってきているのかと思うヤヌシュ。

    しかし一方で墓地の水道管が破裂し、妻の棺が流され、

    中身を確認するとやはり妻はそこに入っているのです。
    確かに死んで葬られているのです。それでも妻からの手紙を

    見つけ、遂に自宅でヤヌシュ、アンナ、オルガで交信を

    始めるのですが、ヤヌシュは吹き出してしまう。この気持ちは

    とてもよくわかります。笑ってはいけないと言われ、とても

    まじめに行うべきことなのになぜか笑えてしまうことが往々

    にしてあるものです。
    手紙はオルガが書いたものだと白状し、いつまでたっても霊

    と交信できないまま、大いびきをかき始めるアンナの姿を

    見ると父娘は思わず吹き出します。もう笑いが止まらない

    のです。こういう共通の思いを持った時、離れていた心が

    少しだけ近づいていくのでしょうね。
    ここで流れるのが前述の歌です。父娘の半泣きの笑い顔は

    なぜか晴れ晴れしていたなあ。わたしも思い出しても笑って

    しまいます。

     

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    クーリンチェ少年殺人事件

    4

    JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

     

    クーリンチェ少年殺人事件

     

    「クーリンチェ少年殺人事件」

    英題:A Brighter Summer Day

    監督:エドワード・ヤン

    1991年 台湾映画 236分

    キャスト:チャン・チェン

         リサヤン

     

    1961年、台湾。中学受験に失敗した小四は、

    夜間中学に入ることになる。そして不良グループの

    縄張り争いに巻き込まれるうちに、一人の少女、

    小明と出会うのだった。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 久しぶりに長い映画をゆっくり

    見ました。様々なシーンの意味を考えてしまう内容です。


    手離した懐中電灯


    映画の邦題にある殺人事件は、少年が殺害されたかの

    ように思えますが、少年が殺人を犯したという意味なの

    です。なんかややこしい。英題のA Brighter Summer Day

    の方がポイントを上手くとらえていると感じます。
    話の大筋は、1人の少年が1人の少女と出会い、周りや

    自身の不幸な状況が重なり続けて遂には少女を殺害して

    しまうということなのです。ただその背景に1961年

    当時の台湾が世界において不安定な国情であり、中国本土

    から移住した外省人と元々台湾に住んでいる本省人との
    対立もあり、さらにはアメリカの影響を強く受けていた

    時代であったことなどが、様々なシーンで映し出されていく

    のです。
    主人公の小四の家庭は、1949年に中国から台湾に移住した

    ものの、昇進しないまま公務員として働く父と元教師で採用を

    待っている母、英語が堪能な姉、不良グループに入っているけ

    れど実は真面目で弟思いの兄、家族思いの姉、幼い妹が狭い家

    にひしめき合って暮らしているのです。小四役のチャン・チェン

    は「ブエノスアイレス」(1997)でトニー・レオンの2人目

    の恋人役を演じたチャン・チェン。きれいな男性に成長したん

    ですねえ。
    食事のシーンは昔の日本映画を思い出させ、1つのテーブルに

    全員が座って食べるという感じ。食べ終わった小四が入って

    いくのは押し入れの下の段です。あれ?このシーン、最近観た

    映画であったような...。
    押し入れの中で、後に手に入れる懐中電灯を使って何かを

    見たり、その明かりをつけたり消したりします。

    社会の不安定さは大人の焦りにつながり、それは子供社会にも

    波及していて、小四も不良グループ小公園に属しているのです。

    対立するのは217というグループ。暗闇の中から突然飛んで

    くるボールは目に見えない相手が敵であり、それが何かの脅威

    を及ぼしているかのように感じます。

     

    クーリンチェ少年殺人事件
     

    冒頭の明るい日差しの下に描かれた小四と父の姿は、それが

    建国中学入試失敗という結果から夜間部入学に変わると、ほぼ

    夜の闇で活動するものに変わります。父はかなりプライドが高く、

    多分本土ではインテリだったのでしょう。どこか相手を見下す

    雰囲気があり、それは相手の敵対心を買ってしまうのです。

    また小四の通う中学の教師たちの理不尽な言動は

    「間違っていないのに謝るのはおかしい」

    とい父の教え通りに振舞うと、さらに悪い方向に行ってしまう

    ことに気づかない小四。全てが中途半端に大人で物事を理解

    するのも不十分な少年の心は小明という少女に恋をすると、

    これまた自分の中での理想像を彼女に当てはめてしまうのです。

     

    クーリンチェ少年殺人事件
     

    小明とデートをする時は晴れた昼間の空の下であり、それは

    彼の胸の内を表しているかのよう。映画が小四の視点で描かれる

    ので、彼が思っていることは理解できるけれど、他の人間の

    心の中はストレートには伝わりません。逆に何気なく描く小明の

    家庭環境や彼女が発する言葉は、小四が思い描いている小明とは

    かけ離れた本質を持っているといつ頃から気づいたでしょうか。
    もしかしたら終盤までわからなかったのかもしれません。映画の

    オーディションで「泣き」の演技を求められると自然に涙が出せる。

    恋人がいてそれはハニーというやけにかっこいい不良。母と

    二人で居候生活を送る家庭環境..。
    小四はたぶん賢い子供だったけれど、不運にも中学受験に失敗し、

    不運にもカンニングを疑われ減点される。ここに弁明の機会は

    ないのです。そしてまるでやくざの抗争のように台風の晩に起こる

    不良グループへの襲撃事件。ここで使われるのが日本刀であり、

    日本統治の歴史も感じます。
    同時期に父も中国共産党との関係を疑われ、拷問に近い尋問を

    受けることになります。この不遇な身の上はすべて台湾という

    国の不安定な情勢に影響されたものにほかならないと思うのです。
    小四が恋愛について純粋過ぎて、小明の本質に気づけなかったのか

    とも思いましたが、ラスト付近に交わされる2人会話で
    「君のことを全部知っているよ。でもいいんだ、僕だけが君を

    救うことができる。君には僕だけだ」
    「あなたも他の人と同じ。優しくするのは私の愛が欲しいからね。

    でも、私はこの世界と同じ。変わることはないわ」
    というものがあり、小四の傲慢さは父のみならず外省人の心を

    描いていて、逆に小明の言葉は本省人が持つプライドと外省人や

    大国への憎しみを描いているのだと感じます。

     

    クーリンチェ少年殺人事件
     

    この映画では男の友情が熱く描かれており、小猫王がずっと小四を

    思い続けていることや、ボンボン小馬も小四だけが友人だと涙を

    流すシーンを見ると、小四の一途な思いは一方的だけれど、それは

    彼がまだ大人になりきれていなかったということで説明がつくし、

    エンドロールに映し出される彼が死刑判決から懲役15年に

    変わったことも心の救いになりました。

     

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    リトル・ダンサー

    5

    JUGEMテーマ:洋画

     

    リトル・ダンサー

     

    「リトル・ダンサー」

    原題:Billy Elliot

    監督:スティーヴン・ダルドリー

    2000年 イギリス映画 111分

    キャスト:ジェイミー・ベル

         ジュリー・ウォルターズ

         ゲイリー・ルイス

     

    1984年イングランド北部の炭鉱町はストライキ

    決行中である。父と兄は炭鉱労働者であり、ビリー

    もボクシング教室に通っているが、たまたま隣で

    行われたバレエ教室に心を惹かれてしまうのだった。


    <お勧め星>☆☆☆☆☆ ずっと見たかった映画。

    そしてやっぱり見てよかったです。


    未来を託すもの


    炭鉱労働者は本当に男臭く、極めて古い考え、つまり

    男はボクシング、レスリング、女はバレエ、ダンスを

    習うものと信じ切っている人々が多いというのは、

    私が子供の頃の町の人々の考えと全く同じです。
    田舎町でしたのでバレエもダンスもなかったのですが、

    男は野球、めんこ遊び、女はなわとび、あやとりと

    決まっていて、ピアノ教室に行くのは町でも教育熱心な

    家庭の女子だったものです。(かなり古い気がするが

    それほどでもない)
    炭鉱労働者のストライキを描いた映画は

    「バレードへようこそ」(2014)

    があり、その中ではその男臭い古臭い炭鉱労働者の組合

    支援のために、同性愛者団体が立ち上がるものの、寄付

    すら受け付けてもらえず、途方もない苦労をする姿が

    明るく描かれてしました。「リトル・ダンサー」でも

    主人公ビリーの親友マイケルがゲイであることを映画の

    中盤でカミングアウトしています。女子が習うものと

    決まっていたバレエに挑戦するビリーと性的マイノリティー

    であるマイケルとの絆が一層深まったシーンも見られる

    のです。

    ビリー役は「崖っぷちの男」(2012)で

    サム・ワーシントン演じる主人公の弟でトロいけれど、

    それなりに頑張るジョーイを演じたジェイミー・ベル。

     

    リトル・ダンサー
     

    「スノーピアサー」(2013)でも最下層にいながら先頭を

    目指す集団のリーダーを演じていました。あの列車はしかし

    不思議な代物だった。
    ストライキに明け暮れ、貧しい暮らしにあえぐ炭鉱労働者の

    家庭やその活動を描けば、どうしても暗い内容を想像して

    しまいます。しかし冒頭から映画にはポップな音楽が流れ、

    ビリーがくるくる回転しながら朝食を準備する姿が
    とても楽し気に映るのです。ビリーの家の内装も色遣いが

    とてもカラフル。おばあちゃんの寝ている部屋の引き戸は

    黄色で壁はペパーミントグリーンという感じです。

     

    リトル・ダンサー

     

    ボクシングのグローブよりバレエに魅力を感じ、ウィルキンソン

    先生の指導を受けると、ビリーの持って生まれた才能がどんどん

    あふれ出てきます。亡き母やおばあちゃんは「ダンサー」になる

    のが夢だった。その血筋をひいているのがビリーなのです。

    とはいえ男として生まれたビリーがこの町では炭鉱夫になる

    選択肢しかありえません。
    一方ウィルキンソン先生は中流家庭でありながら、夫が不況で

    自宅待機中かつアル中という不遇な身の上です。それでなのか

    持って生まれたものなのか、ものすごく偏屈で怒りっぽいのです。

     

    リトル・ダンサー

     

    それはビリーの父も同じであり、妻亡きあと、ただの頑固

    おやじとなり、口より先に手が出るありさま。父ジャッキー、

    兄トニー、ウィルキンソン先生の三つ巴の言い争いは凄まじく、

    ビリーは思わず耳をふさぎ家から飛び出していくのです。

    その怒りか悲しみかわからない感情もなぜかステップ、ダンス

    へと変わっていく姿を見ると、この子は、踊ることで自らの

    心情を表現していくことができるのだと実感します。
    頑固な父が息子トニーを裏切り、ストを辞めて職場に復帰した

    のは、炭鉱夫で一生を終える自分たちとは違う未来をビリーに

    託したのだと思うと、目頭が熱くなりました。怒号の中バスで

    炭鉱に向かうジャッキーの顔が何とも言えないんです。
    どちらの息子も可愛いのにどちらかを裏切らないといけないと

    したら、夢を託す存在を生かしたい、それは妻が生きていたら

    きっとそう助言したはずだと確信したのですね。ううう...。
    一番好きなシーンは、ビリーとウィルキンソン先生が

    「ブギを踊ろう」に合わせてダンスを踊る姿です。踊る前に

    亡き母が18歳のビリーへ宛てた手紙を、ビリーがすでに開封

    し、それを暗記するほど読んでいたことを知ると、このシーンも
    泣けるはずなのですが、それがとても楽しい音楽なので涙が

    吹き飛びます。すごく好きな映画の1つになりました。

     

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