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    • 2023.01.12 Thursday
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    レディ・バード

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    レディ・バード

     

    「レディ・バード」

    原題:Lady Bird

    監督:グレタ・カーウィグ

    2017年 アメリカ映画 94分 PG12

    キャスト:シアーシャ・ローナン

         ローリー・メトカーフ

         トレイシー・レッツ

         ルーカス・ベッジズ

         ティモシー・シャラメ

     

    カトリック系の高校に通う17歳のクリスティンは

    自らを「レディ・バード」と名乗っている。彼女は

    自らが暮らすサクラメントの町を出て東海岸の大学を

    志望していたが、それに反対する母親とはしょっちゅう

    喧嘩ばかりしている。彼女は親友ジュリーと参加した

    ミュージカルのオーディションで知り合ったダニーに

    恋心を抱くが...。


    <お勧め星>☆☆☆☆ ヒロインの気持ちが手に取る

    ようにわかり、はるか昔の青春の日々が蘇ります。


    愛情は注意を払うこと

     

     

    <ネタバレしているかも>


    ヒロインのシアーシャ・ローナンは、わたしの大好きな

    女優さんの一人です。

    「つぐない」(2007)

    「ハンナ」(2011)

    そして「ビザンチウム」(2012)では透き通るような

    白い肌を持つ孤独な16歳の少女クララ役がぴったりでした。

    ちょっとうつむいた時の眼差しに悲しさとか寂しさとかを

    感じさせます。
    さらに2015年映画「ブルックリン」は、今まで観た

    映画のベスト5に入るものです。アイルランドの閉鎖的な

    田舎町とニューヨーク、ブルックリンに恋人を持つ二股女、

    などと酷評する人もいたけれど、あれは地方出身で都会に

    移住したことがある人たちには必ずわかる胸の内だと思います。

    ずっと都会に住み続けている人、また地方で一緒暮らし続ける

    人には、決してわからないと思いかもしれません。良くも

    悪くも思い出が詰まり、知り合いがいっぱいの地元と、

    顔見知りはいなくて新しい生活を一から始める都会とでは、

    そこにいる「自分」が全く別に感じられます。それは客観的に

    見ても同じこと。
    そういう映画は他にもあって、「ラ・ラ・ランド」(2016)

    を見て「ミアはなぜに2年ぽっちが待てなかったんだ」という

    疑問を口にする友人がたくさんいました。あのミアの気持ちは

    セブと公園のベンチで語り合ったシーンを見ればわかるし、

    夢を叶えることと恋愛を成就させることが必ずしも同時に

    できるとは限らないのですよ。
    さてヒロイン、クリスティンは自らを「レディ・バード」と

    名乗り、サンフランシスコの北東のサクラメントに住む裕福

    ではない家庭の娘なのです。この都市に住む2割が貧困線以下

    であり、特に若年層は3割がそれに入っているという。

    レディ・バードの兄で養子のミゲルが有名大学を出たのに

    スーパーのレジ係なのは、この町では仕事を探すことがかなり

    困難なことが伺えるのです。

     

    レディ・バード
     

    精神科医の母マリオンは「金持ちの真似をしないで」が口癖で、

    とにかく娘の行動を否定し、干渉しまくります。これはかなり

    鬱陶しい。父は学歴はあるのにリストラ寸前だし、狭い家には

    ミゲルの恋人も同居しています。バスルームが1つ、狭い

    キッチンという家の様子を見ても、この家が裕福どころか貧しい

    家庭なのだとわかるのです。

     

    レディ・バード
     

    とはいえ話は暗いものばかりではなく、カトリック系の高校で

    親友ジュリーと聖体をポリポリ食べながらエロ話に興じる姿を

    見ると、ダイエットしたい気持ちは食欲には勝てないな、などと

    笑ってしまうし、未体験のことへの妄想には「ほほぅ〜」

    そんな風に考えるのかと思ってしまう。
    映画ではこのレディ・バードの親子(特に母親)関係、友人関係、

    恋愛関係、学校生活と様々な角度から、視点を変えて日常を

    描いていきます。どれをとってもすぐにうまくいかないのが「青春」
    そのもの。

     

    学内ミュージカルのオーディションで知り合ったダニーに恋をし、

    初体験の準備

     

    レディ・バード

     

    感謝祭のイベントでバンド演奏をしていたカイルと遂に

    童貞&処女の感動の初体験

     

    レディ・バード
     

    内申点を上げて何とか東海岸の大学に合格したい


    ここで対照的な女子生徒ジュリーとジェナが登場し、

    レディ・バードは背伸びをしたくて、金持ちの仲間入りが

    したくて、とにかく初体験をすませたくて、親友をジュリー

    からジェナに変えちゃうんです。この辺りの気持ちがすごく

    よくわかります。今ある日常を劇的に変化させて、新しい

    自分を見つけたいという欲望の塊、つまり未来が限りなく

    広がっているからこそできる冒険なんだと思うのです。
    プロムに行くためのドレスを試着すると、パツンパツンで

    「パスタをお替りするからよ」と母親に言われ、激おこの

    レディ・バード。それでも悲しくて辛いときは「食べる」が

    一番。一緒に付き合ってくれるのは人間的にバカでない

    相手ですよ。
    18歳の誕生日を迎えた途端、タバコとエロ本を買いに

    行ってIDを誇らしげに見せるのも、高校卒業した時に、

    まず化粧品店に行ってメイクアップ商品を買った時代を

    思い出します。今は中学生でもお化粧する時代なんだよねえ。

    ラスト付近の急性アルコール中毒は、人間生きていたら

    一度は経験があるもので、翌朝正気を取り戻すと、すごく

    恥ずかしくて、二度とお酒なんか飲まないと固く決意する

    のに、やはりそんな気持ちはあっという間に消える儚いものだ

    と実感しています。(マーライオンは1度しかしたことない。)
    レディ・バードことクリスティンは、故郷を懐かしむことは

    あっても戻ることはなく、他の場所で新しい自分を見つけて

    いくんだろうな、そして母はずっと娘を心配し続けるんだろうな

    と考えながら鑑賞終了でした。いい映画だったな。

     

     

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    女は二度決断する

    4

    JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

     

    女は二度決断する

     

    「女は二度決断する」

    原題:Aus dem Nichts

    監督:ファティ・アキン

    2017年 ドイツ映画 106分 PG12

    キャスト:ダイアン・クルーガー

         デニス・モシット

         ヨハネス・クリッシュ

         サシア・シャンクラン

     

    カティヤは最愛の夫と息子を爆発事件で失ってしまう。

    容疑者はすぐに逮捕され、ネオナチ思想に染まった

    夫婦だとわかるが、裁判では十分な証拠があるにも

    かかわらず、無罪となってしまうのだった。


    <お勧め星>☆☆☆半 綺麗ごとでは済まされない

    ヒロインの胸の内が強く伝わります。


    憎悪の連鎖

     

     

    <ネタバレしているかも>


    ヨーロッパ映画がとても好きなのでしばしば見るのですが、

    その映画で直接的に描かれる自分の知らなかった歴史的悲劇、

    事件に驚き、また映像の奥に隠されたメッセージを読み取ると、

    見終わってしばらくその世界に浸り続けます。
    監督はファティ・アキン。最も有名なのは「愛、死、悪」に

    関する三部作

    「愛より強く」(2004)

    「そして、私たちは愛に帰る」(2007)

    「消えた声が、その名を呼ぶ」(2014)で、
    この中では「消えた声が、その名を呼ぶ」が最も印象に残って

    います。第一次大戦中に起きたオスマン帝国による

    アルメニア人へのジェノサイド。トルコ政府が今でも認めて

    いないその事実を壮大なスケールで描いていました。

    そのほかにも2009年映画「ソウル・キッチン」のような

    コメディもあり、笑いの中に移民としての苦労を織り交ぜると

    いう内容になっています。

     

    女は二度決断する
     

    この映画の主人公一家ヌーリ、カティヤ、息子ロッコのうち

    ヌーリはトルコからの移民であり、冒頭に何かの罪で

    (後に薬物売買とわかる)で収監されていたことを知ると、

    つまり前科持ちなのだなとわかります。そして突然起こった

    彼の事務所の爆発事件。ダイアン・クルーガー演じるカティヤの

    悲しみの深さは、声にならない泣き方、体の震わせ方、焦点を

    失った瞳の動きなど全てで、見る側にその思いを伝えます。
    事件当日に捜査が開始され、カティヤが事情聴取を受ける

    警察では

    「イスラム教徒か」

    「クルド人か」

    「政治的な活動をしていたか」

    「敵はいたか」

    「薬物取引のトラブルはなかったか」とあまりに偏見に満ちた

    質問が放たれます。カティヤ一家の住む家がかなりの豪邸であり、

    「保証金はどこから出たのか」とまで言われてしまう。実は

    ヌーリの実家はトルコでは裕福な不動産業を営んでいるらしく
    ここでも警察の移民への偏見が見え隠れするのです。
    この被害者がドイツ人だったらどういう質問をされたのだろう。
    そしてすぐに容疑者が捕まると、カティヤの予想通りネオナチの

    夫婦なのです。ここで改めてドイツの過去を遡らずにはいられ

    ません。この夫婦のうち夫の父親は、息子とは思想の違いで絶縁

    していた。ナチスドイツの蛮行を恥じ、決して受け入れることの

    できない思想なのに、息子があろうことかそのような思想に染まり、

    納屋で爆発物を製造していたのです。世界で再び広がっている

    移民排斥、ヒトラー崇拝思想については嘆かわしいとしか

    言いようがない。どんな思想だったか少しでも調べたら、決して

    関わってはいけないと思うのに、またナチス式の敬礼すら法律で

    禁止されているのに、他国では「かっこいいから」と真似を

    したり、SSの姿をコスプレしたり、頭のネジを締めなおして来い

    と言いたい。

     

    女は二度決断する
     

    しかしそんなドイツにおいても、少なからずその思想は受け

    継がれているのを感じるのは、この事件の裁判風景です。

    弁護士が容疑者を擁護するのは当然ですが、弁護側が用意した

    証人、証拠が明らかにねつ造であるのに、それを認める裁判官を

    見ると、移民への差別意識を強く感じます。
    「顔のないヒトラーたち」(2014)で、アウシュビッツ裁判

    開始までのある検事の険しい道のりが描かれていました。しかし

    その裁判にかけられなかった相当数のドイツ人が普通に暮らし、
    その子孫が生き続けているとしたら、同じ考えを持っていない

    保証はないのです。それでもドイツでは「負の歴史」として

    ナチスドイツを認識し、「なぜこうなったのか」を問い続けて

    いることは素晴らしいと思っています。

     

    女は二度決断する
     

    映画内の裁判で、証拠不十分として無罪になってしまった

    容疑者に対し、カティヤはどう対処するか。
    上告するのが最も正当な方法だけれど、そこに正当な裁判が

    存在するのか、ということは一審で十分理解できました。

    その結果カティヤはある決断をします。それは2回。1回目と

    2回目の違いは憎しみの連鎖を断ち切るか否かだと私は思って

    います。もちろんそこに、カティヤ自身を海の中へ誘う、

    iphoneの中のヌーリとロッコの姿があったのも確かですが。
    移民受け入れに寛容だったドイツが遂にその方針を転向した今、

    ヨーロッパでの極右政党の台頭が勢いを増し、中東の混乱で

    移民、難民が急増しているのを新聞で読むと、再び悪夢が訪れる

    のではないかと遠く離れた国から思うばかりです。
    ラストのギリシャの真っ青な空、そして美しい海面。それを

    見る人々が誰も同じように「綺麗だ」と思える世界は来るの

    でしょうか。

     

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    ワンダー 君は太陽

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    ワンダー

     

    「ワンダー 君は太陽」

    原題:Wonder

    監督:スティーブン・チョボウスキー

    2017年 アメリカ映画 113分

    キャスト:ジュリア・ロバーツ

         ジェイコブ・トレンブレイ

         オーウェン・ウィルソン

         マディ・パティキンソン

         ダビード・ディグス

     

    トリーチャーコリンズ症候群のため幾度となく

    手術を繰り返してきた10歳のオギーは、初めて

    学校へ通うことになる。しかし支えてくれた家族の

    いない学校生活では、周囲のイジメや好奇の目に

    晒される日々の連続であり、彼は幾度となく

    へこたれそうになるが...。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 最も苦手なジャンルの映画

    なのですが、すんなり心に入り込み素直に感動できます。


    心は未来、顔は過去


    「辛いときは楽しいことを空想する」オギーが登校を

    開始し、周囲の生徒から避けられ、誰も口をきいてくれない

    時に、彼の心の中に浮かぶ言葉は、彼が宇宙飛行士として

    人気を博する姿の映像で現れます。オギーのように外見が

    普通と異なるということだけでなく、何かのきっかけで

    周りから暴言を吐かれたり、いじめられたり、無視され

    たりすることは、人生の中で幾度も経験すると思います。
    そんな体験が1つもない人がいるのでしょうか。しかし

    それを乗り越えた時、辛い時間を過ごしていた自分、

    さらにはその前の自分よりもぐっと成長していると感じる

    のは、自分の人生から思い返しても断言できるのです。

    それが「成長」なのかもしれません。

     

    ワンダー
     

    オギーはトリーチャーコリンズ症候群という遺伝子の異常に

    よる病のため、生まれつき顔の形成が不完全で、27回もの

    手術を受けてきたのですが、それでもやはり外見はかなり

    特徴的なままなのです。
    10歳まで自宅学習をしてきたオギーの父、母、姉は各々

    個性にあふれており、決して彼を邪魔者扱いしないし、逆に

    彼を軸に家族がまとまってきたようにも感じられます。
    映画の視点はオギー、姉ヴィア、オギーの同級生ジャック、

    ヴィアの親友ミランダの順に描かれ、彼、彼女たちが

    どのように考えて今を生きているのかが順にわかってくるのです。

    オギー役は「ルーム」(2015)の息子役を演じた

    ジェイコブ・トレンブレイ。12歳のわりにはまだまだ小柄で

    あり、映画の設定の5年生としてもかなり小さく感じます。
    ところでこの映画の監督スティーブン・チョボウスキーは

    2013年に「ウォールフラワー」という映画を製作しており、

    これは彼が書いた青春小説の映画化であり、スクールカースト

    最下層にいる内気な高校生チャーリーの姿を涙と笑いを交えて

    楽しく描いていました。いや衝撃的な内容もあったか。

    日本での2012年映画「桐島、部活やめるってよ」を彷彿と

    させる内容でしたが、前者には恋愛があり、後者にはなく、
    映画部前田の姿を学校のスター的存在桐島が突然バレー部を

    辞めると言った事件から波及する生徒内の混乱の中で描いていて

    全く異なるものでした。エンドロールに流れる自主製作映画を

    本当に作っていたらもっと楽しかったのに、などと今さらながら

    考えています。2007年映画「グラインドハウス」で使われた

    偽予告編「マチェーテ」がダニー・トレホ主演で2010年に

    実際に公開されていて結構な評価を得ていたので、ぜひとも

    するべきだったよなあ。

     

    ワンダー
     

    さて、家族の胸の内、特にヴィアの心を知ると、家族の中でも

    複雑な思いを持っていることがわかります。とても優しくて、

    弟を心の底から愛しているのに、やはり母がオギー中心に生活

    しているのが辛いのです。自分の方も少しは見てほしい。

    私だって辛いことがあるのを知ってほしい。
    また映画の中盤でオギーの唯一の友人となるジャックや

    ヴィアと親友だったのに急に冷たくなったミランダの心は映像で

    見ると、あの表情にそんなことが隠されていたのかと驚くばかり

    です。

     

    ワンダー

     

    ただ、当然のことながら嫌な奴は存在し、金持ちで大人の前

    ではいい子を演じるジュリアンがそれなのです。これさ、

    映画では優れた校長先生や教員がいたからわかったけれど、

    普通は見抜けないと思う。

     

    ワンダー
     

    終盤に校長先生が遂に彼の両親を呼び出すのですが、両親は

    一切認めないし、逆に「息子はそんなことはしない。家は

    多額の寄付金をしている」(ここでこの学校は多分私立だと知る)

    「教育員会に知人がいる」と開き直り脅すような言葉を投げ

    かけるわけです。その時の校長先生の言葉が重いです。
    「オギーは見た目を変えられない。だから見る側が変わらないと」
    それに対する母親の言葉も事実であることは確か。
    「世間は甘くない。傷つけ合うものよ」
    それでもジュリアンはまだ10歳であり、自分のしたことが

    悪かったと素直に反省できる年頃なのです。これを見ると親の

    エゴがその後の子供の人格形成に大きく影響を及ぼすことを

    実感します。誉めて認めて「いい子だよ」と言うだけが正しい

    わけではなく、悪いことは悪い、と教え込むことも極めて重要な

    ことで、特に第三者からそれを指摘されると、頑なに我が子愛を

    振りかざすのは、決して良いことではないと思います。

    それはただの自己満足に過ぎない。
    この映画に対して実際にこの病に苦しむ人々からは、

    「過酷な現実を無視している」

    「感動ポルノだ」という批判も上がったそうですが、この病を

    映画で見て初めて知る人も多いわけで、外見だけで人を判断する

    のではなく、内面の価値を理解する努力を常にするべき、という

    当たり前のことを確認できる内容だったと思います。

    わたしは「感動ポルノ」とは思いません。

     

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    アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    アイ、トーニャ

     

    「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」

    原題:I,Tonya

    監督:クレイグ・ギレスピー

    2017年 アメリカ映画 120分 PG12

    キャスト:マーゴット・ロビー

         セバスチャン・スタン

         アリソン・ジャネイ

         ジュリアンヌ・ニコルソン

         ポール・ウォルター・ハウザー

     

    貧しい家庭に育ったトーニャは母ラヴォナの暴力や

    暴言に耐えながらスケートの練習に打ち込む。しかし

    若くして結婚した夫ジェフからも暴力を受け、試合

    では審査員の評価が低く、彼女は不満を募らせるが、

    1991年の大会でトリプルアクセルに成功するの

    だった。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 当時大ニュースだった事件の

    裏側を知るとトーニャに対する思いが全く変わります。


    アメリカには敵が必要


    トーニャ・ハーディングといえばすぐに思い浮かぶのが、

    1994年のナンシー・ケリガン襲撃事件であり、

    イメージとしてはトーニャ=悪、ナンシー=善という

    ものが出来上がっていました。
    またトーニャ・ハーディングは1991年にアメリカ女子

    フィギュアスケート界で初めてトリプルアクセルを成功

    させています。トリプルアクセルといえば浅田真央さん?

    いやいや、やはり世界で初めてトリプルアクセルを成功

    させた伊藤みどりさんを真っ先に思い出します。

    マツコ・デラックスが以前テレビ番組で語った通り、綺麗な

    衣装をひらひらさせて愛嬌を振りまきながら美しさを競う大会
    だった女子フィギュアスケートを一変させた人物なのです。

    伊藤みどりさんはアスリート!

    最近彼女の当時の競技の映像を見る機会があったのですが、

    ジャンプがものすごく高いです。あれなら5回転くらい
    跳べる...ような気がしました。これは本当に日本人の誇るべき

    人物だと思うんです。そこから思い返すと1972年の

    札幌オリンピックで、ジャネット・リンが見事にしりもちを

    ついたのに芸術点では満点をもらえ、そして銅メダルを獲得

    したのも、その愛くるしい表情が審査員の心を揺さぶったん

    だろうな。いや本当に可愛いかったです。

     

    ジャネット
     

    映画では、当時を回想するトーニャ、母ラヴォナ、元夫ジェフ、

    ジェフの友人ショーンと共に、その時代が再現されていきます。

    労働者階級かつ父親が家を出た貧しい家庭のトーニャは、

    下品で暴力的かつ強権をふるう母ラヴォナの言う通りに行動

    します。それでも殴られ、暴言を吐かれ、何一つ褒めて

    もらえません。4才のトーニャをスケートリンクに連れて

    行きコーチに無理やり押し付けるときのラヴォナの柄の悪さは、

    本当にこの人本人が演じているのかと思うほどです。

     

    アイ、トーニャ

     

    まあ、親が親なら子も子とはよく言ったもので、トーニャは

    ろくでもない男ジェフと交際開始するわけです。(ラヴォナは
    5回も結婚離婚を繰り返している)

     

    アイ、トーニャ

     

    最初優しかったジェフもすぐに暴力をふるう男に変身。

    DV男の典型例のように、暴力をふるった後は

    「愛している。許してくれ」

    と優しくなるのでトーニャは離れられないわけです。

    暴力母から逃げ出して幸せになるはずが、ここでも暴力に

    さらされる。トーニャは誰かに「愛されたかった」のです。

    序盤に登場した、ラヴォナの夫がトーニャの実父でしょうか。

    彼について行こうと泣き叫ぶ彼女の顔が忘れられません。

    それでもスケートの才能に満ちていた彼女はひたすら練習に

    打ち込むのですが、どれだけ良い演技をしても点数が

    上がりません。「芸術点」が低いんです。最近は技の

    「出来栄え点」が採用されていてジャッジの主観が極力

    出ないようになっているとのことですが、素人が見て

    「あれ?この人全部クリアしたのに、なぜにこんなに点数が

    上がらないの?」と思うことが多々あります。これが当時は
    「芸術点」という漠然としたものだったのですから、

    審査員に詰め寄り「なぜなのか」と尋ねるトーニャの

    気持ちもわかるのです。答えは

    「完ぺきなアメリカの家族のイメージがない」。
    美しいものを美しいと思う気持ちは人それぞれだけれど、

    そこに豊かさを求められたら、結局は限られた人々しか

    参加できない競技になってしまうのではないでしょうか。
    母と絶縁し、ジェフと結婚したものの相変わらず暴力に

    耐える日々が続くのです。伊藤みどりさんが銀メダルを

    獲得したアルベールビル五輪では4位に終わり、スポンサーは

    つかず、ボンビーでウェイトレスをするしかありません。

    ラヴォナもウェイトレスをずっと続けていたから貧乏の

    連鎖は断ち切れないんだろうなと絶望的な気分になります。
    フィギュアスケート=お金がかかるスポーツというのは

    どこに国でも同じなんですね。衣装、靴、リンク使用代、

    コーチング料、遠征費...一人前になるまでに家が一軒建つ

    というのはプロスケーターの本田武史さんの言葉。
    と考えるとスポンサーのつかなかったトーニャの苦労と焦りも

    理解できるのです。ここで今さらながらに気づくのは、

    トーニャ=悪という考えが変わっていったこと。それは当時の

    マスコミの報道を鵜呑みにしていたからなのですね。

    向かって右が本人です。

     

    アイ、トーニャ
     

    これ以降は誰が真実を語っているのかは判断できません。

    トーニャに届いた脅迫状、そしてナンシー・ケリガン

    殴打事件発生。トーニャの周りにいる既に別れたものの

    付きまとうDV男ジェフ、勝手にトーニャのボディガードと

    語る虚言癖のあるショーン、その仲間などみんなアホ過ぎて

    あきれ返ります。それゆえにトーニャが愛しく感じられる

    のです。いや相変わらず柄は悪いですよ。
    全米スケート協会から永久追放されたと描かれていた映画の

    内容とは異なり、トーニャは、その後プロスケーターとして

    活躍するも、暴力事件を起こし、プロボクサー、総合格闘家

    へと転身。その激動の人生も今は嵐が去った後の静けさを

    取り戻したかのように、ワシントン州で再婚し、一児を

    もうけて穏やかに暮らしているといいます。彼女にとって

    どうしても欲しかった「愛されること」を手に入れた
    のだと思いたいなあ。
    映画内でナンシー・ケリガン事件を追うマスコミが急に

    ジェフの家の前から消えたのは、1994年6月、

    O・J・シンプソン事件が起きたことを知ると、アメリカには

    「敵」が必要なのだと語ったトーニャの言葉にただ頷く

    のみでした。

     

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    マザー!

    4

    JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

     

    マザー!

     

    「マザー!」

    原題:Mother!

    監督:ダーレン・アロノフスキー

    2017年 アメリカ映画 121分 PG12

    キャスト:ジェニファー・ローレンス

         ハビエル・バルデム

         エド・ハリス

         ミシェル・ファイファー

     

    郊外の一軒家に暮らす詩人と妻。妻は創作が

    進まない夫を支え静かな生活を送っていたが、

    ある夜見知らぬ男が訪ねてくるのだった。


    <お勧め星>☆☆☆ セリフや登場人物の姿から

    宗教色が強い内容と分かり、今一つ入り込めません

    でした。


    理解不能な登場人物


    <ネタバレしています>

     

     


    主演はジェニファー・ローレンスとハビエル・バルデム。

     

    マザー!

     

    体の線がはっきりわかる部屋着姿のジェニファーは、

    本当に優しく慈悲深い雰囲気を漂わせています。一方、

    夫で詩人のハビエルは「臭いだろ」と本人が映画内で

    言う通り、臭そうな濃い顔族のおじさん。

    「ノーカントリー」(2007)の無表情な殺し屋、

    「007 スカイフォール」(2012)のとことん

    悪い奴のイメージがどうしても蘇ってしまい、この

    組み合わせは美女と野獣だよなと絶対に感じると思います。
    一番最初にこの詩人が光る石を台に置くと、なんという

    ことでしょう。すすけた家がみるみるうちに色づいていく

    のです。そして妻が目覚める。これが何を意味するのか、

    石に魔法がかけられていて実はこの家や妻の存在は

    男の幻想なんじゃないのだろうか、と普通は考えますよね。

    けれど登場人物のセリフが全くかみ合っていなくて、時折

    キリスト教色を感じさせるので、見終わって調べてみると、
    やはり登場人物は聖書の中に存在するものそのものらしい。
    妻=地球
    夫=創造主
    最初の訪問者=アダム(創造主が初めて作り出した初めての男)

     

    マザー!
     

    訪問者の妻=イブ(アダムの肋骨から作られた初めての女)
    この訪問者に「結婚していたの?」と疑問を投げかける詩人の

    妻のセリフや「出ていけ」と言われても出て行かず訪問者夫妻が

    いけない行為をしているのは、エデンの園でリンゴを食べた

    ことを意味しているのかしら。
    その後訪れる訪問者の息子で兄=カイン(人類最初の殺人を行った)
    その弟=アベル(人類最初に殺された)
    その間にどんどん増える訪問者、大衆=キリスト教の信者
    突然妊娠し、喧騒の中で生まれた赤ちゃん=イエス・キリスト
    このような内容を読み、映画のシーンを思い返してもキリスト教

    に全く疎いので、そう言われればそうかもね、程度にしか

    感じません。ひたすら壁を塗り続ける妻は
    「この家は古いけれどこの手で作り直しているの」

    と嬉々として語るけれど、多くの人々がどんどん破壊していきます。
    またトイレに詰まっていた物はなんだろう?さらにちょくちょく

    胸の痛みを覚える妻が口にする黄色の粉の意味するものは?

    ああ、わからないことだらけです。

     

    マザー!
     

    日本で公開中止になったのは、妻への過剰な暴行シーンや赤子の

    惨殺、そしてその肉を口にする人々のシーンがあったからだそう

    ですが、宗教色の濃い映画だからこそ反発を招くのを恐れたような

    気もします。次第に家が破壊され、水があふれ、銃撃、火事、

    爆破とそれはエスカレートしていきます。
    屋敷=この世
    世界の終わりのカウントダウンが始まると人々は混乱し、逃げ惑い、

    倒れこむ。妻は絶望し、いっそこの世を破壊してしまおうと決意

    するのです。それは純粋で優しさゆえの行為でしょうか。
    焼け焦げた妻の胸から取り出したすすけた石を手でこすり再び

    台の上に置く。創造主は理想の世界を作りために何度も破壊を

    繰り返し続けているのだと思うラストでした。
    でもさ、実際の話としてあの詩人はあり得ないものを求めすぎて

    いると思うわ。などと考えながら、ハビエルの顔が濃すぎると

    実感しつつよく分からないまま二度と見ることのない映画だと

    思ってしまいました。

     

     

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    監獄の首領

    4

    JUGEMテーマ:韓国映画全般

     

    監獄の首領

     

    「監獄の首領」

    原題:The Prison

    監督:ナ・ヒョン

    2017年 韓国映画 125分

    キャスト:ハン・ソッキュ

         キム・レウォン

         チョン・ウンイン

         シン・ソンロク

     

    元刑事のユゴンはある刑務所に重大な罪を

    犯したため収監される。しかしその刑務所には

    イクホという強力な力を持つ受刑者がおり、

    彼の指示で塀の外で受刑者たちによる犯罪が

    行われているのだった。


    <お勧め星>☆☆☆半 男臭いバイオレンス映画です。

    荒唐無稽な内容と思っても一気に見られます。


    刑務所から出たくない男


    警官や検事、果ては裁判官の腐敗ぶりまでも描く

    韓国映画の極めつけは、なさそう実はありそうな

    このストーリーではないでしょうか。
    冒頭一人の男が、何かの不正の発覚を恐れ高跳び

    しようと計画していると、突然押し入った覆面の

    男たちに拘束された上、薬物を注射されて殺されます。

    たまたま居合わせて女性も同じく殺されます。
    考えてみると女性が登場するのはこのシーンのみで、

    あとは全て男性しかいません。男臭く、高校の体育会系の

    部活の部室の臭いに血の臭いを加えた感じでございます。

    食べ物を食べるシーンもありますが、少しもおいしそうに

    見えません。あくまでも「腹を満たす物」でしか存在

    しないのです。

     

    監獄の首領
     

    黄色い名札をつけ刑務所に収監されたユゴンは、血の気が

    多く、同房者たちに痛めつけられてもへこたれず、かつて

    塀の外で「情報屋」として利用した男から、8号棟の

    無法ぶりを聞かされます。そして力づくでそこへ移動すると、

    そこではイクホという特別待遇の受刑者をトップとして、

    まるでヤクザ組織のような社会が広がっているのをこの目で

    見るわけです。刑務官は当然のこと刑務所の所長までもイクホの

    言うなりであり、夜になると受刑者たちが脱獄し、犯罪行為を

    働いては戻って来る。越えられない塀のある刑務所にいる、

    という完ぺきなアリバイがあるわけですから、警察も犯人を

    捜せないのは当たり前なのです。なんせイクホは金をたんまり

    持っているので、その金で権力を操り、今の所長もイクホの

    力で刑務官から出世させたという。ええ〜、まじか。
    煙草だって酒だって豪華な食事だってまるで王様のように

    自由に楽しみ、ゆったりと刑務所生活を楽しみ?つつ、

    ドラッグ強奪や裏切り者粛清、権力者の要請による邪魔者を

    消すことまで計画し、実行するわけです。ハン・ソッキュが

    とても穏やかな顔つきなのでさらに凄みが増すというものです。

     

    監獄の首領
     

    ユゴンはこのイクホのためになぜか尽力するわけです。それは

    イクホに気に入られて権力を手にしたいのかと一旦は思うの

    ですが、時折入り込む回想シーンに登場する彼の兄で記者

    ユチョルと何か関係があるらしい...。
    乱闘シーンは、素手か棒を使うものがほとんどで、ラスト付近に

    なって大爆発と銃が使われます。あ、電動の丸鋸も使われるか。

    あれは怖いなあ。
    そしてユゴンが隠していた身の上が少しずつ明らかになると、

    とっても勘のいいイクホも気づいて行くのです。ユゴンも

    焦ればイクホも焦る。ジェットコースターの上昇のように

    ゴミ処理機のスロープをゆっくり上っていく局長に姿を見ると、

    ああ何度も乗った「センター・オブ・ジ・アース」を思い出します。

    へんてこな恐竜やら太古の生物をゆっくり見ながら上がっていると

    突然急上昇し、明るくなった途端急降下。あれはそれほど高低差が

    ないし、この恐竜を見たら急上昇って覚えてしまうほど乗ったから

    全然平気です。いや、このゴミ処理機はそんな楽しいものでは

    ないのです。明るい所から出てくるのは金属の破片のように粉々に

    粉砕されたものなのです。
    しかしながら、仮釈放を断るイクホを見ると、彼が住む世界は

    刑務所の中にしか存在しないある意味「裸の王様」なのだなと

    実感します。外の世界で生きる術を失ってしまったかのよう。
    ところで、せっかく自動小銃を手に入れたのに、それを捨てて

    イクホとタイマンをはるユゴンの姿は、アメリカ映画で、

    なぜか銃を捨ててタイマンで勝負をつけるという

    「アウトロー」(2012)を思い出し、少しだけイラっと

    しました。

    「ラストスタンド」(2013)のシュワルツェネッガーも

    最後はタイマンだったなあ。

     

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    アンセイン 狂気の真実

    4

    JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

     

    アンセイン

     

    「アンセイン 狂気の真実」

    原題:Unsane

    監督:スティーブン・ソダーバーグ

    2018年 アメリカ映画 98分

    キャスト:クレア・フォイ

         ジョシュア・レナード

         ジェイ・フェイロー

         ジュト・テンプル

     

    ストーカー被害を受け、故郷を離れ一人暮らしを

    始めたソーヤーは不安な状況を打開できず、ある

    病院のカウンセリングを受ける。しかしいくつかの

    書類にサインした後、彼女は突然措置入院させれて

    しまうのだった。


    <お勧め星>☆☆☆半 真実は何かより、ヒロインが

    置かれ続けた状況が怖いです。


    ずっと君を見ていた。


    unsaneは英語のinsane「正気とは思えない、狂気」を

    もじった造語だそうです。
    監督はオーシャンズシリーズ、

    「コンテイジョン」(2011)

    「マジック・マイク」(2012)など名作を手掛けた

    スティーブン・ソダーバーグ。個人の好みで

    「マジック・マイク」は大好き!
    チャニング・テイタムの男の色気たっぷりの鍛え抜かれた

    身体とダンスパフォーマンスに目が釘付けでした。だから

    「ヘイトフル・エイト」(2015)ではあんな最後に

    まさかのチャニング・テイタム!そしてあっという間に

    退場チャニング・テイタム!と唖然茫然。

    あの映画は長かったなあ。劇場で座っていてお尻が痛く

    なったし、そもそも本題に入るまでが長く、やはり

    あちこちでいびきが聞こえていました。
    さてこの映画は全編をiPhone7プラスで撮影したというと

    いうのが斬新であり、まるで手元にあるスマホで動画を

    撮ったかのような印象を受け...ません。そもそも手元に

    あるのはiPhone8だし。

    固定された映像、望遠、暗視、P.O.Vと様々な手法をフ

    ルに活用し、根底に漂うヒロインの不安感を伝えている

    かのようです。
    ソーヤーは銀行の融資係?として働き、その能力を

    認められつつも何やら黒いバックパックを背負った黒髪の

    男性の幻影を見るという恐怖と不安から逃れられない状況

    にある模様。この胸の内は同僚への冷たい言葉、上司に

    対する疑念、母とものすごく久しぶりに電話で会話する姿、

    さらには出会い系で知り合った男を部屋に誘ったものの

    直前に拒否してしまうという姿で描かれ、どんな辛い体験を
    受けたのかとそこを知りたくなります。

    そして彼女はハイランド・クリーク病院内のストーカー被害

    の会のカウンセリングを受けるわけですが、何かの書類に

    サインした後、突然入院させられてしまうのです。

     

    アンセイン
     

    「ちょっと、わたしは相談に来ただけよ」
    怖いのは、こういう病院が実際に存在するということ。内容は

    詳しくは書きませんが、閉鎖的な空間に入れられ、周りが

    精神疾患の人たちばかりならば、絶対に自分は「普通」と

    思い続けられるだろうか。
    そして反抗的なソーヤーは拘束されたり、薬を増やされたり

    するわけです。さらに病院の職員にあろうことかストーカーの

    加害者デビッドがいるではありませんか。これがデビッドなのか

    どうかも実は見ている側には確信が持てません。

    ダサい眼鏡なのは確かだな。

     

    アンセイン
     

    「あんたデビッドじゃないの!fff」
    数回映る病院の経営者の女性が「自分たちはこういう人たちを

    救っていて感謝もされている」と信じ込んでいることも怖いです。

    また診察する医師が、すべての患者がみな病を持っており、

    患者の言うことに一切耳を貸さない、信用しない。さらに

    警察も事件が起こるまでは全く介入できないし、する気もない。

    どうしよう。自分がこんな状況に置かれたら..。
    画面が乱れ、投薬の影響かソーヤー自身が、自らまともなのか

    どうか不安になっていくのを見ていると

    「もしかして全てが彼女の妄想?」と思い始めてしまいます。

     

    アンセイン
     

    アンセイン

     

    後半は幾つもの要素が加わり、ちょっととっ散らかった感じが

    しましたが、「心の傷」は受けた期間より、それを消し去る

    ための時間がずっと長く必要だし、もしかしたら一生引きずる

    かもしれないと思ってしまいました。
    そうそう、ソーヤーがストーカー被害を受けた時に相談する

    探偵?役でマット・デイモンが出ていましたね。

     

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    南瓜とマヨネーズ

    4

    JUGEMテーマ:邦画

     

    南瓜とマヨネーズ

     

    「南瓜とマヨネーズ」

    監督:冨永昌敬

    原作:魚喃キリコ

    2017年 日本映画 93分

    キャスト:臼田あさ美

         大賀

         浅香航大

         若葉竜也

         大友 律

         光石 研

         オダギリジョー

     

    ミュージシャンを目指す恋人せいいちのため、

    ツチダはライブハウスで働きながら、キャバクラ

    にも勤め始める。そして店の客に愛人契約の話を

    持ち掛けられるのだった。


    <お勧め星>☆☆☆半 忘れてしまった遠い昔の

    感情を思い出させる映画です。胸がキュンとなります。


    ダメ男を好きになる重い女


    「糟糠の妻」ってよく耳にしますよね。演歌歌手の

    下積み時代を支える妻が、身を削って生活費を稼ぎ、

    ひたすら夫のために尽くすのです。そして売れて

    しまうと、若くて可愛い子に乗り換えてしまう
    こともよくある話。そうだ、お笑いの世界でもあるし、

    スポーツの世界でもあるし、何かの芸で世間に認められる

    までの期間が長ければ長いほど、そういう女性が幾人も

    存在するのかもしれません。それが美しいと思うのは

    成功した状況が見えてきた時であって、一向に埋もれた

    ままの場合「ヒモ」になってしまんだろうな。(勝手な想像)

     

    南瓜とマヨネーズ
     

    この映画のツチダも、音楽にこだわりがあるミュージシャンを

    目指すせいいちのために、とにかく生活費を稼ぐんです。

    「今日はどんな曲を書いたの?」ツチダは浮気するより

    無職でいる男の方がいいという極端な考えを話す、実は

    とても重い女なんですよ。せいいちのためにキャバクラで働き、

    金持ちの客に愛人契約を迫られても、全て受け入れます。

     

    南瓜とマヨネーズ

     

    だってせいいちのためだもん。

     

    南瓜とマヨネーズ
     

    せいいち役は「ゆとりですがなにか」でゆとり世代を大好演

    した大賀。こういう役がほんとうにぴったりです。一日中家に

    閉じこもり、だーらだら発泡酒を飲み(ビールでないところが

    可愛い)自分のペースで過ごしていく。生活費はツチダが全て

    稼いでくれるんです。実はせいいちは、かなり音楽のこだわりが

    あって、メジャーデビューできるチャンスをそのこだわりの

    せいで潰していたらしい。音楽に対しては結構マジメなんです。

     

    南瓜とマヨネーズ
     

    それに引き換え、ツチダのかつての恋人ハギオ(オダギリジョー)

    はとことん軽い男です。このタイプの男って絶対に会った

    ことがあるし、もしかしたら引っかかったことがあるかも

    しれない。20代前半くらいまでだと、ルックスが良くて

    口がうまくて、甘え上手な男性の言う言葉が「うそ」と

    感じていても「自分だけには誠実。自分が彼を支えるのだ」

    なんて考えてしまっただろうな。今ならこのダメダメ男、

    顔洗って出直して来い!と言えちゃうのに。
    ハギオが乗り捨てたバイクが回収されていくのをやはり

    追いかけようとするツチダは、ハギオに

    「お前、どうせハギオ!って寄って来る」

    と言われてしまいます。全て見透かされているんです。
    この自信たっぷりのハギオも憎めないし、せいいちとの関係に

    行き詰ったツチダが、ハギオに走る気持ちもなぜかわかって

    しまうのが女性なんだと思う。
    てなわけで、忘れていたはるか昔の感情を少しだけ思い出させ、

    懐かしい気持ちになる映画でした。

     

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    後妻業の女

    4

    JUGEMテーマ:邦画

     

    後妻業の女

     

    「後妻業の女」

    2016年 日本映画 127分 PG12

    監督:鶴橋康夫

    原作:黒川博行 「後妻業」

    キャスト:大竹しのぶ

         豊川悦司

         余貴美子

         津川雅彦

         尾野真千子

         永瀬正敏

     

    小夜子は、金持ち老人の後妻になり、金品を

    巻き上げる後妻業の女である。彼女を仕切って

    いるのは、表向きは結婚相談所を主宰する柏木で

    あり、その紹介で小夜子は次々に老人を虜に

    していくが..。


    <お勧め星>☆☆☆ 実は極悪な犯罪を描いている

    のに、あまりにコミカルで、それがすっかり消えて

    しまっているのはやっぱり納得できません。


    好きなことは読書と夜空を見上げること


    この映画のジャケットは「家族はつらいよ」の

    色調と似ているんです。そして笑顔溢れるこの2人。

    「家族はつらいよ」が昭和を感じさせるほのぼの

    三世代同居一家の話だったのに対し、こちらは
    真逆の金持ち老人を騙しては結婚し、金品を巻き

    上げてあの世に送るというアブノーマルな人たちの

    話です。
    大竹しのぶ演じる小夜子をはじめとして、彼女の

    周りは悪い奴ばかり。大竹しのぶといえば

    「青春の門」(1975)の織江役での鮮烈な

    デビューを決して忘れることはできません。

    それが「黒い家」(1999)では金の亡者の

    極悪非道な女を演じ、アッと驚いたことも覚えて

    います。あの映画は怖かった。
    大竹しのぶの関西弁が上手いのかどうかわたしには

    判断できなかったけれど、甘ったれた声で老人に

    媚を売ったかと思うと、野太い声で啖呵を切り、

    煙草に火をつける。これがこの人の本性で全く
    もって下品な女だと実感し、それを観客に見せつける

    からすごい。

     

    後妻業の女
     

    小夜子は何回も結婚しており、一人息子ひろしがいるものの、

    こいつもクズだし、彼女が所属している結婚相談所の所長、

    柏木もクズの中のクズです。この役は豊川悦司が演じていて、

    やけにはまっているのなんのって。

     

    後妻業の女

     

    口八丁手八丁の上、絶倫らしく、真由美という北新地のホ

    ステスと付き合っていたかと思うと、若い女、理紗にも手を

    出している。理紗役の樋井明日香の脱ぎっぷりの良さには
    生唾ごっくんです。演技力はうーんだけど、それを十分カバー

    しているのかな。
    小夜子が2015年に内縁の妻に収まった金持ちの独居老人、

    耕造が倒れ、昏睡状態になった時、病院に駆け付けた彼の娘は

    長谷川京子と尾野真千子。この下の娘(尾野真千子)と小夜子の

    バトルは映画のクライマックスではないかと思うのです。

    始めからちょいちょい言葉での言い争いはあるのですが、

    小汚い飲み屋の座敷での大乱闘は本気度1000%です。

     

    後妻業の女

     

    あれは絶対の本気で殴っていると思う。尾野真千子が

    奈良県出身でコテコテの関西弁を使うので、それがさらに

    迫力を増しています。豊川悦司も大阪八尾市出身なのね。

    どおりでうまいと思った。

    前から思っているのですが、関西弁というのは本当に

    イントネーションが難しく、関東に移住した関西人が関東弁を

    覚えて話すのはとても簡単、しかし関東出身者が関西に

    移住して関西弁を話すのはかなりのスキルが必要です。見事に

    やってのけるのは渡辺謙さんくらいです。

    (これはわたしの頭の中で思っていること)

    全然関係ないのですが、三河弁も実は難しく、いえ多分

    どこの方言でも微妙なイントネーションは、地元民でないと

    発音できないと思うのです。NHKの朝ドラ「純情きらり」、

    深夜ドラマ「みんな!エスパーだよ!」は本当に変な言葉が

    使われていました。
    さて小夜子の過去は、耕造の娘が雇った興信所の男によって

    つらつらとバレてしまいます。そんな頃小夜子は逆に

    騙されるのです。ここで初めて知る「竿師」という職業。

    この職業である「通天閣」の持ち主役は笑福亭鶴瓶。

    「家族に乾杯!」の穏やかな口調と優しい目が一変して、

    小夜子に暴力をふるう時には、本当に怖いのはこういう

    タイプの男性なんだなと妙に冷めた目で見ていました。
    ラストはなんとなくいい話に収まっていたのと、小夜子も

    含め悪者に何も制裁が下っていないことにはどうかと思うわ。

    原作はどうなんだろう。

     

     

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    彼女がその名を知らない鳥たち

    4

    JUGEMテーマ:邦画

     

    彼女がその名を知らない鳥たち

     

    「彼女がその名を知らない鳥たち」

    監督:白石和彌

    原作:沼田まほかる

    2017年 日本映画 123分 R15+

    キャスト:蒼井 優

         阿部サダヲ

         松坂桃李

         村川絵梨

         竹野内豊

     

    十和子は同居する陣治が薄汚く、不潔で下品なことで

    毛嫌いしている。そして彼女は時計の交換の件で

    デパートの店員、水島と知り合い、すぐに深い仲に

    なるのだが...。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 男は顔じゃないのよ。女も

    顔じゃないのよ。でもやっぱり見た目に惹かれるのよ。


    あんまりなことをしたら恐ろしいことが

    起きるで


    食べ物の食べ方の汚い人は嫌い、という人が多く、

    クチャクチャ音を立てたり、口に物をたくさん入れたまま

    しゃべったり、あまりにがつがつ食べる姿には、やはり

    嫌悪感を覚えます。その中でも「箸」の持ち方が

    おかしい人はとりあえずアウトです。この映画で

    阿部サダヲ演じる陣治は、すべてを兼ね揃え、とにかく

    「下品」のオンパレードです。きっと実際の阿部さんは

    スマートに食事をされるのでしょうが、いつもの

    ハイテンションな口調は健在です。それがこの映画の

    後半に大きな変貌を遂げるとは思うはずもありません。

    食べ方ではないですよ。彼の胸の内です。

     

    彼女がその名を知らない鳥たち

     

    また、その陣治を、まるで汚物を見るかのような蔑んだ

    眼差しを送るのは、蒼井優演じる十和子です。

     

    彼女がその名を知らない鳥たち

     

    十和子には姉がいるけれど、彼女はなぜか関東弁を話すのが

    唯一気になったかな。彼女たちの出身はどこなんだろう。

    そしてなぜ十和子と陣治は一緒に暮らしているんだろう。
    様々な疑問は「黒崎」という人物の名前が出るごとに3人が

    ビクリとなるところで、「何かがあった」と気づきます。

     

    彼女がその名を知らない鳥たち

     

    この黒崎役は竹野内豊。もちろんイケメン。声もいい。

    甘い言葉で説得力のある話をするから十和子、すっかり

    信じていたらしい。2人の過去は時間をバラバラに戻して、

    どういう仲でどういうことがあったのかを描いていきます。

    ここは、無駄な回想シーンはなく、絶妙なタイミングで

    挿入されるので、それでああなったのかと納得できるのです。

     

    彼女がその名を知らない鳥たち
     

    そしてもう一人のイケメンは、十和子が冒頭にクレーム電話を

    かけていたデパートの時計売り場の店員、水島です。この役は

    松坂桃李。「エイプリルフールズ」(2015)ではセックス

    依存症の天才外科医役を演じていましたが、もう最低の男でして、

    あのお尻をぺんぺんしたくなります。でも綺麗なお尻よ。
    水島はきっと何回もこういうことをしているんだろうな、という

    感じで十和子と関係を持つのですが、キスするときに、

    チュパチュパ音を立て、まことに嫌らしく舌を出します。

    松坂君でなかったらおえ!となってしまいそう。(人間、顔では

    ないけれど、やはりイケメンが演じてこそ、その嫌らしさが

    伝わるというもの)
    そしてもう一人黒崎の知人の老人がまたクズなんです。亡くなる

    直前の中嶋しゅうさんが、これまた目つきだけで嫌らしさを

    醸し出してくれます。
    しかし実は十和子が、純粋過ぎるというか、逆に言うとオツムが

    弱いというか、ただイケメンに弱いだけの女性なのかも

    しれません。これはふつう大なり小なりそうなんだと思う。ごく

    普通の女性が、結婚詐欺に遭ったり、銀行で横領事件を起こし

    たりする事件が起きているのだから

    「自分だけは騙されていない」

    と信じ続ける女性はたくさんいるんだろうな。わたしも

    岡田将生くんに甘い言葉を囁かれたら、ちょっと自信がありません。

    (かけられないから大丈夫。)
    終盤は原作を読んでいないので、まさにアッと驚く展開でした。
    そして「自分を守り、生きていく」ということの難しさと、それを

    いつかは一人でこなさなければならない現実の厳しさも感じた

    ラストです。それは海よりも深い愛情でもって陣治が教えて

    くれたんだと思います。

    それにしても蒼井優の演技の振り幅の大きさには今回も感服しました。

    彼女はすごい。

     

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