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    • 2023.01.12 Thursday
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    尋問

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    尋問

    出典:IMDb

     

    「尋問」

    原題:Visaaranai/Interrogation

    監督:ヴェトリマーラン

    2015年 インド映画 118分

    キャスト:ディネシュ

         サムティラカーニ

         アナンディ

         ムルガドス

     

    尋問

    出典:IMDb

     

    タミル州出身のパンディは友人ムルガン、クマール、

    アフザルと公園で寝泊まりしながら小さな店で働いて

    いる。ある日彼は店に来た警官に突然逮捕され、他の

    3人と警察署で身に覚えのない泥棒の罪を認めるように
    暴行を受けるのだった。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 陽気で勧善懲悪のインド映画を

    イメージしていると全く異なる重い内容に驚きます。


    生きるために人を殺す


    118分の映画の中に3つのストーリーが盛り込まれて

    います。
    1つはタミル、ナードゥ州からアーンドラ、ブラデーシュ州、

    グントゥーラに出稼ぎに来ているタミル語しかわからない

    パンディ、ムルガン、クマール、アフザルが泥棒犯に仕立て

    上げられ、自白を強要されて酷い暴行を受ける話。
    2つめは、タミル、ナードゥ州の大物政治家たちの会計監査を

    するKKが、警察官ムットヴェール主導で拘束され、彼以外の

    警察官に拷問を受ける話。
    3つめは、裁判官への必死の訴えで釈放された例の4人のうち

    3人が再び警察署に戻り、そこからKK拘束の手伝いと警察署の

    掃除を始めてからの話。
    1つめと2つめの流れから3つめにつながるわけですが、実話は

    1つめのみで、裁判所で釈放を言い渡され、ただ一人故郷の村で

    車を降りたクマールが、その後、当時の体験談を「Lock Up」と

    いう小説に書き上げています。

    しかし、インド国内では事件を「片付けること」が優先され、

    「真犯人」ではなく「犯人」を作り上げることが普通に行われて

    いるそうです。そこには言語、宗教が混在する以上に、今なお

    存在する「カースト制度」を認めなければなりません。序盤に

    パンディが心を寄せるシャンティという警察官の家のメイドが、

    あざだらけの腕をしていることからも予測できます。

     

    尋問
    出典:IMDb

     

    そして突然拘束された4人が「認めろ」と言われ、殴られ続け、

    水責めを受け、逆さづりにされるという拷問を受けます。

    「何を認めるのですか」と尋ねただけでも再び暴行を受けるの

    です。

     

    尋問
    出典:IMDb

     

    1000万ルピー泥棒犯を見つけないと、自分の地位が危ういと

    上司から叱責される警察官は、その上司がさらにその上司から

    責められていることをとっくに知っているし、それがインドの

    階級制度なのだろうと思ってしまう。そこには利権、縁故も絡み、

    金も行き交っているのです。そんな複雑な情況の中で何も

    わからないまま拘束された4人が不遇でなりません。
    裁判所で、何とか裁判官に「拷問によって自白を強要された」

    ことを認めてもらい(この裁判官が英語を話す)4人は釈放されます。

    しかし村へ送ってもらう途中、クマルの下車の後、3人は

    ムットヴェール警察官のある仕事を手伝い、その後警察署の掃除も

    任せられるのです。

    彼らがあまりに純真で人を疑わないことが全て裏目に出ていくのは

    大変つらい。ムットヴェールには裁判所での通訳をしてもらった
    という恩義もあったからで、そのお礼をしたかっただけなのです。

    そもそも言葉がわからないのですから、警察署で話していること

    などわかるはずもないのに。
    恩を返そうと良心に従って行動したら、それがどんどん悪い方向に

    向かってしまったと言ってしまうのはあまりに不条理ではない

    でしょうか。
    終盤、発砲による流血シーンがあり、そこだけ白黒に変わり、

    スロー映像になります。そして闇の中に響き渡る2発の銃声で

    エンドロールを迎えるのです。無音のエンドロールを見ながら

    何を思い浮かべるか。
    「生きるために人を殺すことなんてできない」という人間としての

    普通の考えを踏みにじるのもまた人間なのだと実感しました。

     

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    失われた少女

    4

    JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

     

    失われた少女

    出典:IMDb

     

    「失われた少女」

    原題:Perdida

    監督:アレハンドロ・モンティエル

    2018年 アルゼンチン映画 103分

    キャスト:ルイサナ・ロピラト

         マライア・サラマンカ

         ラファエル・スブレゲルブルド

     

    2003年、アルゼンチン、パタゴニアでコルネリアと

    いう少女が行方不明になる。14年後警官となった彼女

    の親友マヌエラは、今なお娘の行方を捜し続ける彼女の

    母親の願いを聞き、再び捜査を開始するが..。


    <お勧め星>☆☆☆ 後半、特に終盤の展開が早すぎて、

    サスペンスの醍醐味にやや欠けます。


    いろいろ複雑


    非常によくできたサスペンスという評もあれば、凡庸な

    ストーリーという評もあり、期待半分位のモードで鑑賞を

    開始しました。
    冒頭の映像は2003年、パタゴニアで何かを、おそらくは

    人を捜索する人々と犬を真上から映し出します。そして

    とても寒そうな草むらの中に唯一見つかるのがペンダント

    です。これが何を意味するのか、とか、この後何かが

    見つかったのか、とか胸がわくわくしますが何も映らず、

    時は過ぎて14年後。ブエノスアイレスで、1軒の家に

    単独で侵入する女性警官マヌエラの姿に変わります。

    このシーンがやけにハラハラするんです。

     

    失われた少女
    出典:IMDb

     

    これがかつての出来事と関係があるのでしょうか。いえいえ

    これはマヌエラがチーフ、ラモンの指示に従わないし、相棒

    マルティンを毛嫌いしているのを印象付けるためだけのもの

    みたい。それにしてもマヌエラったらやけに格闘に強いじゃ

    ありませんか。このマヌエラ役の女優さんがあまりきれいでは

    なく、スタイルもいまいちなんですよね。逆にこの後登場する

    女性たちはみな割と綺麗なんです。
    それはさておき、このマヌエラの親友コルネリアが14年前に

    失踪しており、それがずっと他人との間に壁を作っている模様。

    コルネリアのミサに出席することもできず、終わってから

    こっそり出かけたりするのはその表れだし、セラピーにも通って

    いたらしい。
    それでもコルネリアの母クララに再捜査を懇願されると、急に

    マヌエラにやる気スイッチが入るのです。そのスイッチが入った

    のは、ミサの行われた教会から知らないブロンド女性が出て

    来たことや教会に置いてあったコルネリアの写真が持ち去られた

    ことなど不可思議な出来事が重なったせいもあるのかしら。
    マヌエラはラモ
    に制止されながらも勝手に捜査を再開するのです。

    この強引さはテレビドラマでよくあるパターンで、たとえば

    「科捜研の女」が殺人事件の捜査をしたり、「赤い霊柩車」

    では葬儀屋が推理をするし、温泉若女将までも捜査に参戦する

    ものもあって、「2時間ドラマだから許せる」という程度の内容に

    感じてしまいます。京都を舞台にしたサスペンスドラマで、

    当事者が誰も京都言葉を話さないこととは問題にもならない

    くらいに現実離れしていると思う。
    映画では 時系列が中盤バラバラになり、現在と7年前カナリア諸島

    での売春婦の姿、14年前のマヌエラ、コルネリア、レオノーラ

    など5人の少女の姿が次々に現れます。さらには、例の金髪女性と
    スキンヘッドの男が何やら不審な動きをする。

     

    失われた少女

    出典:IMDb

     

    ああ、そんなところで猫を捜しに行ったらアカン!

    ほらね。言った通りでしょう。
    ちょっと引っかかることはあれこれあって、だいたいこの

    辺りで事件の真相は分かってくるんだけど、話の根本はまだ先

    にあるんですよね。その終盤の展開がすごく早いです。

    あら、あの人ここに来たの?
    あれこの人も来たの?

    距離感がわからないのですが、ブエノスアイレスを南に下ると

    パタゴニアがあってその中にトゥニク村がある。ここはあっと

    いう間に移動できるのかしら。マヌエラは小型飛行機に乗って
    いたからやはり遠いと思うなあ。
    1つ1つの出来事や日付、年齢などすべてがうまく繋がるものの、

    それが一気に回収されるのはちょっと面白みに欠ける気がします。

    それと最重要人物の「いろいろ複雑なんだ」というセリフで
    全てが納得できるはずもないです。う〜ん、あと一歩!!

     

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    麻薬王

    4

    JUGEMテーマ:韓国映画全般

     

    麻薬王

    出典:IMDb

     

    「麻薬王」

    原題:The Drug King

    監督:ウ・ミンホ

    2018年 韓国映画 138分

    キャスト:ソン・ガンホ

         ペ・ドゥナ

         チョ・ションシク

         キム・デミョン

         キム・ソジン

         チョ・ウジン

     

    1970年代も釜山。貴金属密輸に手を染めていた

    ドゥサムは、日本に麻薬を輸出するビジネスへと転向し、

    次第に勢力を広げていくのだった。


    <お勧め星>☆☆☆ ソン・ガンホの演技力に尽きる

    映画です。


    身の程を知ること


    「実在の事件に基づくフィクション」ということで、

    ソン・ガンホ演じるイ・ドゥサムは実在しない人物の

    ようです。
    韓国映画で出演のソン・ガンホ、ペ・ドゥナ、

    チョ・ジョンソクなどの俳優陣の名前を見て、さあ、

    どんな映画だろうと期待値MAXで鑑賞開始しました。

    序盤はヒロポンの存在とその必要性、そしてヒロポンが

    取り締まり対象になった日本が「工場」を必要とし、

    輸出したい韓国の利害が一致する辺りまで戦時中の実際の

    映像を交えて描かれます。調べてみると1951年

    覚せい剤取締法が日本で制定され、密造ではなく、

    暴力団による闇のルートで1970年から韓国からの

    密輸が始まっています。主人公ドゥサムも貴金属の密輸で

    細々と財を得ていたものの、大阪にいる北朝鮮系暴力団

    から仕事を持ち掛けられ日本で材料を調達し、釜山で

    ヒロポンを製造し、再び日本へ輸出する計画を立てる

    のです。ここでかなりややこしいのが北と南の関係で、

    当時は朴軍事独裁政権だったため、中央情報部に目を

    つけられると「アカ」呼ばわりされ、ひどい拷問を受ける

    わけです。しかしドゥサムは権力者への賄賂という手段を

    用いて、危険な状況をとことん乗り切っていきます。

    これは現在の韓国映画でも汚職警官や果ては汚職判事
    までも登場するのと全く変わりがありません。

    だいたいこの手の映画で足を引っ張る身内が存在するもの

    でして、今回は序盤に耳を切られたドゥサムの従弟の

    ドゥファンがそれになります。また家族を大事にし、家族の

    幸せを願って麻薬取引に手を染めたドゥサムの妻スッキョンも

    中盤までは少しふがいない夫を助けるしっかり者の姿を見せ

    てくれます。
    舞台は日本の大阪、神戸、東京と韓国、釜山にまたがり、

    ドゥサム、チェ・ジンピル、チョ・ソンガンという韓国の

    ヤクザの協力と対立、裏切りなどを描きつつストーリーが

    進むのです。チョ・ソンガン役のチョ・ウジンの全身

    入れ墨姿は一見の価値がありますよー。目つきも明らかに

    ラリっているの。(映画やテレビでしか見たことないけれど)

    最初誰かわからなかったわ。


    麻薬王
    出典:IMDb

     

    ドゥサムは取引を重ねるたびに裕福になり、家や車がみるみる

    大きくなっていくのです。冒頭とこの最も大きな家になった時に

    流れるBGMが「スカイハイ」。これがなんだか心を躍らせて、

    見ている側もハイになるんですよね。映画内のキャバレーや

    クラブで流れる韓国や日本のムード演歌とは大違い。
    しかしその後のストーリーはかなり単調で、ペ・ドゥナ演じる

    キム・ジョンアと知り合ってからは、妻に去られ、自らもヒロポンを

    使用するようになり、と絵に描いたような転落の人生をたどります。
    そこに何のひねりもありません。さらに朴大統領暗殺事件による

    権力の移動がドゥサムの転落を決定づけるのです。終盤は

    ソン・ガンホの演技力にただただため息が出るほどで、彼の

    独壇場と言っても過言ではないと思います。
    というわけで期待値を上げた割にはかなり単調な映画であり、

    それでいて138分という上映時間は少々長いような気もしました。

    ペ・ドゥナをもっと見たかったのにぃ。

     

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    切り裂き魔ゴーレム

    4

    JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

     

    切り裂き魔ゴーレム

    出典:IMDb

     

    「切り裂き魔ゴーレム」

    原題:The Limehouse Golem

    監督:フアン・カルロス・メディナ

    2016年 イギリス映画 109分 R15+

    キャスト:ビル・ナイ

         オリビア・クック

         ダグラス・ブース

         ダニエル・メイズ

         サム・リード

         エディ・マーサン

     

    19世紀のロンドンで連続して猟奇殺人事件が起こる。

    捜査を担当するキルデア警部補は、容疑者4人のうち

    ジョンという男が最近毒殺されており、その妻リジーが

    逮捕されていることを知り、彼女に面会してジョンに

    ついて尋ねるのだったが..。


    <お勧め星>☆☆☆ ラスト付近のどんでん返しは全く

    想定外だったけれど、じっくり見ていたら必ずわかると

    思いちょっと悔しい。


    またの登場


    「未体験ゾーンの映画たち 2018」上映作品です。

    19世紀のロンドンを舞台にしており、まさに名探偵

    シャーロック・ホームズの世界そのもの。霧が深く、

    どんより曇った日々が続き、シーンの多くが夜であり、

    道端には娼婦や物乞いがあふれていた時代に、1人の

    男が服毒死しているのを妻リジーが発見します。

    リジー役は

    「ぼくとアールと彼女のさよなら」(2015)

    のオリビア・クック。この映画は実はとても悲しい内容

    なのに、お涙頂戴シーンはほとんどなく、ちょっと

    こじらせ屋さんの少女とスクールカースト底辺の少年2人

    との奇妙な交流を描いていて大好きな作品です。

    そしてそのリジーに不利な証言をするのがメイドの

    アヴァーリンで、リジーは夫殺しの罪で逮捕されるのです。

    アヴァーリンとリジーの関係も後に説明されて、不利な証言

    をする理由も十分理解できます。

     

    切り裂き魔ゴーレム
    出典:IMDb

     

    一方ビル・ナイ演じるキルデア警部補はロンドンで連続して

    起きている猟奇的な殺人事件の捜査を担当することになります。

    キルデアは優秀ではあるけれど、男色家と疑われ出世が遅れて

    いるし、迷宮入りになったらキャリアが傷つくということで、

    ロバーツ警部から無理やりに押し付けられちゃう。

     

    切り裂き魔ゴーレム

    出典:IMDb

     

    この時代の差別感情も垣間見ることができます。
    しかし現場保全もプライバシー保護も一切ない時代の事件です。

    捜査の邪魔になるからと勝手に遺体を動かすし、記者が現場に

    入り込むし、指紋捜査もされなかったのでしょう。「目撃証言」と
    「筆跡鑑定」が捜査の主になります。これでは冤罪が幾つも

    生まれたんだろうな。それこそシャーロック・ホームズのように

    頭のキレる探偵に存在が求められたのも当然ですね。また民衆も

    多くが貧しく、悲劇と血を求め、それを見たり聞いたりして

    好奇心を満たして楽しんでいたのです。
    そしてギルデアは図書館で、犯人が残したと思われる落書きされた

    本を発見し、その日に図書館を利用した人物を容疑者として探し

    始めるわけです。その中の一人が冒頭に毒殺されている劇作家

    ジョンであり、犯人として逮捕されている妻リジーに話を聞きに

    行きます。ここがまた地下牢のような場所で、薄暗くジメジメ

    しているんですよ。ああ、地下牢だから当然か。

    リジーの口から語られる自らの身の上はまことに悲惨であり、

    キルデアはかなり彼女に同情的になってしまうのもわかります。

    リジーは大変人気のある大衆演劇女優なんですが、その地位に

    上り詰めるまでの苦労は幼少期に遡って少しずつ再現されて

    いくのです。そう、この再現シーンが何度もあり、例えば容疑者

    としてあがった4人がそれぞれ犯行に及ぶ姿を4回映します。

    これがやや単調に感じられてしまう。しかしそのシーンが

    次第にリアルに再現されていくので血が怖い人は要注意です。

    この中にはカール・マルクスも含まれていて、あの人はこの時代

    の人だったのかと驚いてしまいました。

     

    切り裂き魔ゴーレム
    出典:IMDb

     

    リジーがダン・リーノという喜劇役者の劇団に入り、そこで

    頭角を表していくけれど、なぜか彼女を侮辱する人物は亡くなって

    います。リジーに近づく男性は「不幸な女性を救い満足を求める者」
    であり、それがジョンでもあったわけです。そしてリジーは

    というと、とにかく「後世に名を残す役を演じたい」という

    根っからの役者。怪しげな人々が多くあらわれ、

    こいつか!いやあいつか!いや絶対に彼だ!

    と何度思ったことでしょう。
    キーポイントはやはり図書館なんです。あの時に図書館の

    職員とキルデアの会話をしっかり聞いて疑問に思わなかった

    自分が悔しすぎる。なのでラストまでしっかり見ると大変

    見ごたえのある内容です。
    ビル・ナイの役は亡きアラン・リックマンが演じる予定だった

    そうで、最後に「アラン・リックマンに捧ぐ」とい文字で

    締めくくられています。

     

     

     

     

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    スターリンの葬送狂騒曲

    4

    JUGEMテーマ:コメディ映画全般

     

    スターリンの狂騒曲

    出典:IMDb

     

    「スターリンの葬送狂騒曲」

    原題:The Death of Stalin

    監督:アーマンド・イヌアッチ

    2017年 イギリス映画 107分

    キャスト:スティーブ・ブシェーミ

         サイモン・ラッセール

         ジェフリー・タンバー

         マイケル・ペイリン

         ポール・ホワイトハウス

         オルガ・キュリレンコ

     

    1953年、スターリンと秘密警察NKVDが国を

    支配して20年経ったソビエト。ある晩、スターリンが

    自室で倒れてしまう。翌日その姿を発見した側近たちは、

    彼の後継を巡って卑劣な駆け引きを開始するのだった。


    <お勧め星>☆☆☆☆ このような風刺の利いた映画は

    いくらでも見たい。笑いの中に渦巻く恐怖を体感できます。


    スターリンの粛清リスト


    スターリンと聞くと社会の教科書に載っていた、立派な髭と

    パイプをくわえた姿を思い浮かべます。しかし実は彼の顔は

    天然痘のあとで醜く、身長は163cm程度の貧弱な体格

    だったそうです。それを隠すために厚底の靴を履き、遠近法

    を利用したりして、似ても似つかない写真や絵を作成し

    自分自身の威厳を保ったと言います。顔を小顔に見せたくて

    遠近法を活用している身としては、この逸話にはあまりに小

    者感が漂っていて、見た目だけで力をアピールしようとする
    愚かさも感じてしまいます。

    絶対権力者はそういうものなのだろうか。
    1953年、NKVDとスターリンが国を支配して20年。

    何かのミスや言い間違い、密告などで「リスト」に載った

    人物が次々に粛清、つまり処刑されていった時代です。映画内で

    「記録」という言葉がしきりに出てくるのは、その「記録」が

    「リストアップ」へとつながっていることを意味していて、

    ここは秘密警察の恐怖を感じます。

     

    スターリンの狂騒曲
    出典:IMDb

     

    スターリンのは「自分の周りにいる人は全て敵である」と思い

    込んでいたため、優秀な医師は全て、スターリン毒殺計画を

    企てていたとみなされてすべて処刑されていました。そのため、

    脳卒中で倒れたスターリンを診察する医師が存在しないのです。

    急遽召集した医師団は、どう見てもリタイアしたじいさんか

    インターンのような若造しかいない。
    「最高の医師団です」
    スターリンの娘スヴェトラーナに真顔で紹介する側近の姿と

    医師団のメンツを見るとクスリと笑えてしまいます。さらにそ

    のスターリンは、いったんは意識を取り戻したものの結局亡くなる

    のですが、その前後に開始される側近の後継者争いは、あまりに

    醜く、卑劣で、あきれ返るほどです。だからこそここも笑って

    しまう。実際にはこの間にも、何も知らされない一般人が数多く

    処刑されたり、拷問されたりしているわけで、自分たちの立場

    しか考えていない権力の中枢にいる人々の「鈍感さ」をぜひ

    見てほしいと思います。

     

    スターリンの狂騒曲
    出典:IMDb

     

    側近の中には、スティーブ・ブシェーミ演じるフルシチョフと

    NKVD最高責任者ベリヤがおり、映画内ではこの2人の権力闘争

    の姿が主に描かれていきます。スターリンが倒れた時に、急いで

    側近の報告文書を持ち出すベリヤは、秘密警察のトップだけ

    あって、駆け引きが上手い。相手の弱みを握って、自分の都合の

    いいように話を進めようとします。

     

    スターリンの狂騒曲

    出典:IMDb

     

    フルシチョフは、序盤はどうもパッとしない存在なのですが、
    彼の計画が上手く行き始めると、急に側近たちが彼のもとに

    集まるのは、本当に愚かでみっともない。
    そして権力者が変わったとたん、シベリアでの処刑がパッと止まり、

    逮捕が終了し、囚人が解放されていくのです。今までの方針が

    180度変わり、周囲の人物がどちらを支持するか、この先の自分の
    立場への損得勘定で計算するのは、この時代の残虐な歴史を

    踏まえたうえで笑ってしまう。
    またスターリンの次男ワシーリーが酒浸りでどうしようもなく

    愚かに描かれているし、娘スヴェトラーナの悲しい身の上を少しだけ

    わかります。ちなみに長男は大戦中にドイツ軍の捕虜となり、

    スターリンがヒトラーからの捕虜交換を拒否したため、そのまま

    強制収容所で亡くなっています。
    終盤、フレシチョフが今まで冷遇されてきた、勲章キラキラ輝く

    ジューコフ元帥を取り込んで赤軍を活用し、みるみるうちに権力を

    握っていく姿を、残酷なシーンも交えて描いています。その場に

    いる人々の誰もが汚いことに手を染めたことがないということが、

    互いを責める発言で飛び出し、モロトフのように処刑されたと

    思った妻が、解放されたとたん、彼女への非難が消え去るという、

    もはや人間性のかけらすらも感じられない人々の姿が映し出されます。
    このフレシチョフも1964年には失脚し、その後ほぼ軟禁状態で

    年金生活で一生を終えたと知ると、権力の一極集中の恐怖と

    愚かさを、痛感せざるを得ません。エンドロールでは、写真が幾つも
    映り、その中から消えたり、削り取られたり、黒く塗りつぶされる

    人物を次々と見せていきます。それは権力者でも一般人でも同じで、

    時代の変化で消されていく人々の存在を知ることは、修正された歴史を、

    正確なものへと変えるものでもあると思いながら映画を見終えました。

     

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    さよなら、ぼくのモンスター

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    さよなら、ぼくのモンスター

    出典:IMDb

     

    「さよなら、ぼくのモンスター」

    原題:Closet Monster

    監督:ステファン・ダン

    2015年 カナダ映画 90分 PG12

    キャスト:コサー・ジェサップ

         アーロン・エイブラムス

         ジョアンヌ・ケリー

         アリオシャ・シュナイダー

     

    メイクアップ学校入学を目指すオスカーは、所有欲が

    強く怒りっぽい父親ピーターと二人暮らし。彼には

    ジェマという女友達がいるが、ある日バイト先で

    出会ったワイルダーという青年に心を惹かれてしまう

    のだった。


    <お勧め星>☆☆半 忘れていた甘酸っぱい思いが

    こみ上げますが、今一つ理解できませんでした。


    ハムスターは4回変えた


    最近重い内容の映画を見ていたせいか、この映画は

    何となく心に響かず、登場人物にも感情移入できない

    まま終わってしまいました。時折ハッとするような

    カットやシーンごとに流れる音楽はとてもおしゃれです。
    オスカーの少年時代、彼の母親は家を出るのですが、

    その理由がなかなかわかりません。オスカー自身は母を

    引き留めたくてハイヒールのヒールを折ったり、かばんを

    必死で引っ張ります。それでも家を出ていく母の姿を見て、

    父ピーターは嫌な笑いを浮かべるんですよね。
    さらに彼はいじめの現場に遭遇し、救いに行こうと覗いて

    いると、そのいじめられていた少年が大けがを負う現場を

    目にしてしまうのです。そのいじめの原因が、

    「ゲイだったから」

    とピーターから知らされ、オスカーは自分の長髪をハサミで

    切っていきます。その時にツリーハウスを父と一緒に作った

    時の釘うちやノコギリで木を切った情景が思い浮かぶのです。
    そして成長し、オスカーは特殊メイクが趣味で、メイキャップ

    スクールに入ることを希望しているらしいし、ジェマという

    女優志望の女子と仲良く過ごしています。メイキャップが趣味

    ということやジェマが雰囲気を察してキスを求めたときに、

    オスカーが「ごめん」と言ったことで、やはり彼はそうなのか

    と気づきます。

     

    さよなら、ぼくのモンスター

    出典:IMDb

     

    さらにバイト先でシャツを貸したワイルダーに、目が釘付け。

    それはいつからだったのかとか、なぜにピーターがオスカーと

    ジェマが付き合っているかどうか聞きたがるのかとか、少し

    説明不足のような気がして来るのはこの頃かな。この辺りまで

    来ると、ピーターの所有欲の異常な強さをさすがに感じてきます。

    そしてそれが母との離婚原因であるともわかってくるのです。

    「あの家にいたらだめになったの」
    おそらくはオスカーを連れて出たかったけれど、それを許されず、

    自分一人で出ていく選択肢しか与えれれなかったんだろうと

    推測できます。それはいまだに妻の荷物を渡さないピーターの

    姿にも表れているのです。
    「離婚したら財産は半分ずつなんだ」

    オスカーが少年時代に目撃した事件のトラウマは、彼の腹の中に

    ずっと残り続け、それは自分の性的指向の否定へとつながって

    いたんだろうな。明らかにゲイを差別するピーターと、同じように
    オスカーと接してきたから、彼の心を知っているはずの母ブランの

    受け止め方の大きな違い。

     

    さよなら、ぼくのモンスター
    出典:IMDb

     

    わたしがこの映画で唯一胸がキュンとなったのは、パーティーで

    ドラッグと酒でのせいで倒れ、ツリーハウスでワイルダーに

    オスカーが介抱されるシーンです。その直前にワイルダーが

    女子とキスしているのを目撃したオスカーがヤケになり、他の男性

    と関係を持とうとした途端、腹が膨らみ、口から大量の釘を

    吐いたように自分で感じたのは、少年時代に目撃した事件を

    いまだに引きずっていることの現れなんだと思う。

    ワイルダーに指摘されたことを「恥ずかしい」と返すオスカー。

    そして口移しで水を与えるワイルダーとそれを受け止めるオスカーの

    唇のなまめかしさは、なぜかもうすっかり忘れちゃったけど、

    「初恋」に胸を焦がしたときのような感じを受けました。しかし

    朝が来るとワイルダーは姿を消しています。一枚の紙きれを残す

    なんて、どこかで聞いた歌に出てきそうだわ。
    「独りぼっち」のオスカーが母に「強くなるしかない」と言われ、

    父への怒りを爆発させたとき、彼は遂にトラウマに打ち勝ち、

    父の束縛から逃れることができるわけです。

     

    さよなら、ぼくのモンスター

    出典:IMDb

     

    このシーンも、もちろん幻なんだけれど、やはりかつて目撃した

    事件で使われた鉄棒を腹から引き出し、それを父に向けます。

    すべてがあの事件の目撃と父の所有欲から始まっていたんでしょうね。
    そうそうオスカーの飼っているハムスターが10年も生きていて

    おかしい!と思ったら最後にあっさり説明されて、そうだよなーと

    納得します。おしゃれな映画ではあったけれど、自分の好みでは

    なかったです。

     

     

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    1987.ある闘いの真実

    3

    JUGEMテーマ:韓国映画全般

     

    1987

    出典:IMDb

     

    「1987.ある闘いの真実」

    原題:1987:When the Day Comes

    監督:チャン・ジュナン

    2017年 韓国映画 129分

    キャスト:キム・ユンソク

         ユ・ヘジン

         キム・テリ

         ソル・ギョング

         カン・ドンウォン

     

    軍事独裁政権化の1987年、韓国。ソウル大学の

    学生が警察の取り調べ中に死亡する。チェ検事は上司の

    指示に背き、慣例通り検死解剖を命じると、死因が拷問

    によるものだったと判明するのだった。


    <お勧め星>☆☆☆☆半 どうしてこんな映画を自国で

    作れるのだろうか。ラストは涙が止まりませんでした。


    真実を求める声ははやがて沸点に達する


    昨年見た「タクシー運転手 約束は海を越えて」(2017)

    が1980年の光州事件を一人のタクシー運転手の視点で

    描いていたのに対し、「1987.ある闘いの真実」は、

    その後続いた全斗煥大統領による軍事独裁政権への市民全体

    の視点で描いています。それは学生であり、検事であり、

    新聞記者であり、神父であり、看守であり、被害者家族でありと、

    本当に多くの視点で映し出されていくのです。
    翌年にソウル五輪を控えた1987年。漢江の奇跡と呼ばれる

    ほどの経済成長を遂げていた韓国は、国内ではレーガン政権の

    支持を得た全斗煥大統領が、北朝鮮の脅威を煽り、強圧的な

    軍事独裁政権を行っていたのです。冒頭にあるように南営洞

    では、多くの人々が「北のスパイ」容疑をかけられ、数々の

    拷問を受けていました。鼻歌を歌いながら無実の人々を水攻め

    にし、電気ショックを与え、椅子をけり倒す。この場所が

    映画内で映るたびに、遠くから悲鳴やうめき声が聞こえてくる

    のです。
    そして一人の学生が「心臓発作」で死亡します。明らかに

    「何かがあった」はずだけれど、そこは目をつぶって

    「即火葬せよ」と言われれば指示に従うはず。ところが、

    公安部長のチェ検事は「解剖してから火葬するのが慣例」と

    突っぱねるんですね。

     

    1987

    出典:IMDb

     

    いろいろな脅しやわいろにも目もくれず、「検死」を主張

    すると、その検死自体にも邪魔が入るし、家族は直接遺体に

    面会することすらできないという事実を知ります。そこで、

    さあ、彼が...。

     

    1987

    出典:IMDb

     

    この役は「お嬢さん」(2017)のハ・ジョンウなんですが、

    そこそこ頑張った後にその情報を新聞記者に渡して、職場を

    去ります。では新聞が当時正確なことを報道していたかというと、

    実は「報道指針」という政府が出したものに従って報道しており、

    政権に都合の悪いことは書くことは許されなかったのです。

    映画の中盤にそれを破ったことで、警官が押し掛け、社内を破壊

    していくシーンがあります。こんなことが許されていた時代が

    ほんの30年前にあったのですね。

     

    1987
    出典:IMDb

     

    さらに警察内でも治安部と対共部との対立があり、拷問が

    バレると警官が警官を逮捕していき拷問するという、極めて

    おかしな状況を目にします。「正義」は存在しないのかと

    思ってしまう。いや「正義」の定義はどこで決めるかが問題

    になってくるか。

     

    1987
    出典:IMDb

     

    一方、おなじみのユ・ヘジン演じる看守ビョンヨンは、実は

    手配中のキム・ジョンナムへ獄中の情報を提供する任務を

    背負っています。「タクシー運転手」では広州のタクシー運転手

    の一人で、あり得ないようなカーチェイスを繰り広げていた

    けれど、今回は、人のよさそうな顔つきで、大変重要な役割を

    果たしていきます。そしてヨニが思いがけずデモに巻き込まれた

    時に、その身を救ってくれた延世大学生、イニョル役は

    カン・ドンウォン。すっごくイケメンだからすぐにわかっちゃう。

    そして彼がこの役を自ら演じることを望んで取り組んだことを

    知ると、勇気ある行為にまた惚れ直してしまいます。映画製作当時

    朴槿恵政権であり、表現に対する弾圧が強かったため、極秘裏に

    撮影が進められたそうですが、その時期に決して潤沢と言えない

    資金でこのような映画を作れたことは本当に価値のあることだと

    思います。

    またイニョルが主催する漫画サークルで「1980年の光州事件」

    のビデオが流されます。あれは、「タクシー運転手」でドイツ人

    記者が持ち出したあの映像なんですね。監督自身が高校3年生の

    時にそのビデオを見て、事件について初めて知りとても驚いたそうです。
    綺麗ごとだらけの歴史映画ではなく、国の闇の部分に光を当てて、

    多くの人々に知らせることこそが映画や出版物の役割ではないかと

    実感します。コミックが原作の映画やアイドル主演の映画で
    興行収入を上げることだけを考えていたら、映画の質は下がる一方

    だよなあ。
    独裁打倒、護憲撤廃、と強く叫ぶデモの人波が、どんどん膨れ上がる

    のは、それだけ多くの人々が怒り、嘆き、悲しみ、国を愛している

    ことの表れであり、これをきっかけに、韓国に民主化宣言が発表
    されたことは、大変意義のある行為だったと思います。
    ラスト付近からエンドロールにかけては涙が止まらなかったです。

     

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    否定と肯定

    3

    JUGEMテーマ:洋画

     

    否定と肯定

    出典:IMDb

     

    「否定と肯定」

    原題:Denial

    監督:ミック・ジャクソン

    2016年 アメリカ=イギリス映画 110分

    キャスト:レイチェル・ワイズ

         トム・ウィルキンソン

         ティモシー・スポール

         アンドリュー・スコット

     

    アメリカのホロコースト研究家デボラ・リップシュタットは、

    自分の著書で、ホロコースト否定論者のアーヴィングを攻撃

    したことから、彼によってイギリスの裁判所に名誉棄損で

    訴えられる。彼女は弁護チームを結成し、アーヴィングの

    嘘を暴いていくが..。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 事実は1つだけれど、真実はいくつも

    あって、そこに嘘が混じる恐怖を体感します。


    同じ土俵に乗ってはいけない


    この映画は、今まで何作品も見て来たナチスドイツ関係の

    映画の中で最も胸が痛くなる内容でした。それは

    「ホロコーストはなかった」

    と大きな声を上げる人々の存在を知ったからでしょうか。

    そしてその一人であるアーヴィングというイギリス人歴史学者の

    手法が、既視感のあるものだったからかもしれません。

    1994年、アトランタのエモリー大学でホロコーストについて

    講義を行うデボラのもとに、突然一人の男が入ってきて大きな声

    で質問をするのです。その男こそデボラが書いた

    「ホロコーストの真実」
    という本の中で攻撃を受けたアーヴィングです。彼は彼女の

    「ホロコースト否定論者とは討論しない」

    という立場を利用し、その映像をビデオに収め、ネット上で

    「尻尾を巻いて逃げた」

    などとさらなる攻撃をするのです。彼女がターゲットになった

    理由は、もちろん本で彼を攻撃をしたこともありますが、

    彼女自身がユダヤ人であり、女性だったことも大きく影響しています。
    「ホロコーストの存在」は生存者の証言や数多くの文書、研究で

    確固たる事実だと信じていたし、これからも疑いようのない事実と

    受け止めていきますが、アーヴィングのような論法で

    「ガス室はチフス蔓延を防ぐ消毒室だった」

    「ヒトラーはユダヤ人を救った」

    と変えられることもできると知り愕然としました。

     

    否定と肯定

    出典:IMDb

     

    彼は他の裁判では生存者に対し、極めて侮蔑的な質問を投げかけ、

    「恥」を与えることもいとわない人物なのです。この役を演じる

    ティモシー・スポールが本当に嫌らしい男で、話し方一つを

    とっても軽蔑に値するのです。上手だなあ。深く考えると、論理が

    破綻している内容もその声の大きさに惑わされて、それに煽られて

    「正しい」と信じてしまう人が出てくるのもとても理解できます。

     

    否定と肯定

    出典:IMDb


    デボラはランプトン弁護士たちをチームにして、イギリスで

    起こされた名誉棄損裁判に立ち向かいますが、イギリスの法廷は、

    被告側が立証義務があるのです。つまり訴えを起こした側の内容が
    正しくないと証明していくのは被告側にあるということ。ここが

    ずる賢いアーヴィングの作戦でもあるんですね。デボラは自らが

    口を開き、そして生存者の証言で「ホロコーストの存在」を主張

    しようと考えるけれど、ランプトンたちは裁判と被害者の気持ちは

    別と考え、アーヴィングの著書の嘘を暴いていくことで裁判を

    進めることを主張します。

     

    否定と肯定

    出典:IMDb

     

    この時のデボラがあまりにヒステリックだし、アメリカ人と

    イギリス人との「違い」というものが随所に見られます。

    自己主張の強いアメリカ人と奥ゆかしいというか悪く言うと

    世間体を気にし過ぎるイギリス人という感じかな。
    ただこのランプトンたちの方法は大きなポイントでもあると

    思うのです。反ユダヤ主義の歴史曲解者と同じ土俵で争ったら、

    言葉尻をとらえられ、次々に追求をされてしまうことは目に

    見えています。デボラはここは歯を食いしばって良心を他人に

    委ねるんです。
    ところが裁判官が終盤に発する

    「信念に基づく発言なら詐欺師とは言えない。つまり故意に

    歴史を歪めて論じているのではない」

    という言葉もある意味納得します。だからこそこの表現の自由の

    悪用と嘘と説明責任の放棄によって論じられる、極めて大きな

    声の人達の言葉には決して頷いてはいけないと実感します。

    確実に起きていた事実をなかったことにはできないのです。

     

     

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    狐狼の血

    4

    JUGEMテーマ:邦画

     

    狐狼の血

    出典:IMDb

     

    「狐狼の血」

    監督:白石和彌

    原作:柚月裕子

    2018年 日本映画 126分 R15+

    キャスト:役所広司

         松坂桃李

         真木よう子

         滝藤賢一

         竹野内豊

         ピエール瀧

         石橋蓮司

         江口洋介

         中村倫也

     

    広島、呉原市内で、尾谷組と五十子会系加古村組の

    抗争が始まろうとしている時、所轄の署に新米刑事

    日岡が赴任する。彼はベテラン刑事大上と金融会社員

    失踪事件を捜査し始めるが...。


    <お勧め星>☆☆☆☆ イケメンばかりが罵声、怒号を

    飛ばし、懐かしい東映仁侠映画の再来を感じます。


    「正義」は誰のため


    監督は「凶悪」(2013)

    「日本で一番悪い奴ら」(2016)

    「彼女がその名前を知らない鳥たち」(2017)の

    白石和彌。「凶悪」では、背筋がゾクゾクするほどの

    恐怖を感じさせる人間の姿を徹底的に描き続けていました。

    山田孝之より、ピエール瀧より、リリー・フランキーが、

    どうしようもなく「悪」なんです。あの細くて優しそうな

    眼は「万引き家族」(2018)では万引きする時の
    ズル賢そうな眼にも変わるし、同居する子供を見つめる時の

    愛情のこもったものにも変わるし、スケベそうなものにも

    変わります。なんて変幻自在なんだろう。
    「彼女がその名前を知らない鳥たち」では、とにかく

    蒼井優さんの演技のふり幅の大きさに驚かされました。いや、

    いつも驚いてます。ラスト付近は原作を読んでいなかったので、

    まさに「あっ」。
    さて、この「狐狼の血」は波が岩にあたって白く砕ける映像

    から「東映」のロゴが浮き上がります。懐かしい東映仁侠映画

    の再来を思わせますね。とはいえ、ホラーもスプラッターも

    サスペンスもだいたい平気なのに、「ムカデ人間」だって、

    まあ普通に見られるのに、邦画の任侠物はどうも触手が伸びず

    「アウトレイジ」シリーズでようやくその壁を克服した

    ヘタレです。なのに、冒頭から豚小屋のシーン。

    そもそも豚コレラ発生のニュースを耳にしながら、豚の肛門だの

    うんちだの大アップで見せられるなんていやいや。
    時代は、昭和63年。中盤、右翼団体の事務所のテレビ映像に、

    昭和天皇のご病状がテロップで流れ続けています。まさに昭和が

    終わろうとしていた時代なのです。

    場所は広島県呉原市。尾谷組のシマに新興の五十子会系加古村組が

    入り込んできたことから抗争の火種がぽつぽつわき始めている。

    そんな時、所轄の警察の第二課にひよっこ刑事日岡が配属される

    わけです。

     

    狐狼の血

    出典:you tube

     

    日岡がコンビを組むのは、ベテランで破天荒な刑事大上。

    役所広司がギラギラした演技を見せるのは「渇き」(2014)

    以来でしょうか。汗がギトギト光っています。そしてスケベです。
    暴力団はもちろんワルぞろいだけれど、それを取り締まる二課の

    メンバーも、同じくらい悪いんです。今でも組事務所への

    家宅捜索に入るニュースを見ると、

    「はて?どちらが組の方ですか?」

    といつも思ってしまいます。

     

    狐狼の血
    出典:you tube

     

    竹野内豊、江口洋介に加え、今回目に留まったのは中村倫也の

    イケメンぶり♡

    キレイなお顔の人がキレると怖いですよ。

    もちろんピエール瀧は、相変わらずの存在感を見せています。

    キレイなお顔を言えば日岡役の松坂桃李だって負けていません。

    中盤辺りまでは、大上刑事に反発し、自分の理想を追求しようと

    します。その顔は序盤にボコボコになってるけど。
    そしてまさに血で血を洗う争いに中で「正義」への疑惑がわくん

    ですね。ルール通りに職務を果たすことで「安全」を守れるのか。

    その「正義」は誰にとってのものなのか。
    「アウトレイジ」では遠目にしか映らなかった、首がほぼ切れる

    シーンは、今回は日本刀で、ゆっくり、じっくり見せていきます。

    この男子トイレの個室内のカットは、前後左右から映せるように、
    その都度壁を外していったという。それだからこそものすごく

    インパクトの大きな映像になっています。
    よくできている映画だし、真木よう子のクラブのママ役も似合って

    いたし、伏線もうまく回収されていたけれど、やはり二回は見たく

    ない映画ですね。

     

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    7月22日

    3

    JUGEMテーマ:洋画

     

    7月22日

    出典:IMDb

     

    「7月22日」

    原題:22 July

    監督:ポール・グリーングラス

    2018年 アメリカ映画 144分

    キャスト:アンデルシュ・ダニエルセン・リー

         ヨン・オイガーデン

         ハン・トラン

     

    2011年、7月22日、ノルウェーの官庁街で

    自動車爆発事件が起こる。そして続けてウトヤ島での

    労働党青年部主催キャンプで、一人の男による銃の

    無差別発砲事件が起こるのだった。


    <お勧め星>☆☆☆☆ いま世界が抱える問題を全て

    あぶりだしているようなメッセージ性の高い映画です。


    一人の暴力行為など目的の足しにならない


    監督は「ボーン・スプレマシー」(2004)

    「ユナイテッド93」(2006)

    「グリーン・ゾーン」(2010)

    「キャプテン・フィリップス」(2013)などの

    ポール・グリーングラス。ジェイソン・ボーンシリーズ
    は、どれもストーリーが緻密で、スパイ映画の醍醐味を

    味わえるとともに、キレのいいアクションが楽しめました。

    「ユナイテッド93」は9.11事件で唯一目標に

    到達せず墜落した航空機の内部を、まるでノン・フィクション

    のように緊張感ある映像で見せています。さらに

    「グリーン・ゾーン」はイラク戦争のおける安全地帯を指し、

    『大量破壊兵器があるのか。そしてその情報は正しいのか』

    という問題提起よりも(そもそも、存在しなかったと結論

    付けられている)銃撃戦、カーチェイス、アクションに重き

    を置いた映画だった気がします。

    そして「キャプテン・フィリップス」はソマリアの海賊に

    襲われたコンテナ船を描いており、フィリップス船長役の

    トム・ハンクスの骨太な演技とオーディションで選ばれた

    ソマリア人海賊役の人達のリアルな姿に、まさに手に汗を

    握って見た覚えがあります。

    「アメリカに行くのが夢」...夢は叶ったけれど。
    さて、今映画は2011年に発生したノルウェー連続テロ事件と

    その後の状況が映し出されています。オスロから遠く離れた

    農場で何やら製造している男。市長選挙に向けて準備を行う

    女性たち。通常通りの任務を遂行している首相の姿。労働党

    青年部主催のキャンプが開催されるウトヤ島へ到着した若者たち。

    それらが次々に映り、あれは爆薬で、そして多くの銃器は

    あそこで使われて、とその時間が刻々と迫るのを体感します。

    官庁街での自動車の大爆発は、導火線に点火してからの時間が

    少しあり、監視カメラ映像や警備員の目に見える白いバンが

    「いつ爆発するのか」と、今まさにそれを見ているかのような

    錯覚に陥ります。
    それはウトヤ島での若者の様子も同じで、この後に待っている

    阿鼻叫喚の地獄と化すこのキャンプ場を微塵も感じさせません。

    だからこそ突然日常を引き裂いた人物への「大きな怒り」を

    覚えるのです。

     

    7月22日
    出典:IMDb

     

    ウトヤ島で、無表情に若者に銃を向けるブレイビクと逃げ惑う

    若者たちの絶望的な状況。しかし映画のメインテーマはこの

    惨劇後の生存者やその家族、犯人に指名され弁護人になった

    人物が法に基づいて弁護を進める苦悩、自分が指導者だと自負

    する犯人の姿なのです。
    銃ではなく法で裁く、と言い切る首相や、法に基づいて弁護を

    する、と語る弁護士には、被害者家族の悲痛な叫びを見ていると、

    かなり不当な思いを抱きます。しかし自分が正しいと思い込んで

    いる者へ何をどうすれば全員が納得のいく結果が得られるのかと

    考えると、そこで行き詰まります。死刑制度のないノルウェーでは

    「木に吊るしてしまえ」と叫ぶ被害者家族の言葉が実現するはずも

    ありません。またそれが被害になった関係者の総意であるはず

    もないのです。

     

    7月22日

    出典:IMDb


    映画内の裁判風景はリアリティに富んでおり、大変見ごたえの

    あるものになっていますし、必ず怒りを覚えることでしょう。

    さらに重傷を負ったビリヤルの手術から覚醒、そして

    リハビリ風景も大変過酷なものなのです。

    なぜ生き残ったのか。なぜこのような苦痛を受けるのか。

    なぜ自分たちを襲ったのか。なぜは尽きません。
    当時の首相が、この事件後
    事件を事前に防げなかったか
    爆破事件後の対応は適切だったか
    ウトヤ島への警察出動に遅れはなかったか
    など、きっちり検証したことは「被害者に寄り添う」という

    真の姿はこれなのだと実感しました。

     

    7月22日
    出典:IMDb

     

    7月22日

    出典:IMDb

     

    ラストにビリヤルの前に広がる広大な雪原は、彼のこれからの

    可能性を表し、逆に狭い独房に立つ犯人は「孤独」しか

    与えられない人生を送るのだということを意味していると

    思っています。

     

     

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    書いた記事数:3431 最後に更新した日:2023/01/12

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