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    • 2023.01.12 Thursday
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    失墜

    4

    JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

     

    失墜

    出典:IMDb

     

    「失墜」

    原題:The Decline

    監督:パトリス・ラリベルテ

    2010年 カナダ映画 83分

    キャスト:イザベル・ジルー

         ギョーム・シール

         ギョーム・ローレン

         ジュリエット・マクシム・プルー

     

    環境崩壊で難民になることを想定し、アントワーヌは

    妻子と日々トレーニングを積んでいる。彼はネット

    配信番組で見たアランという男性の訓練施設に向かい、

    彼を含めて5人の仲間とサバイバルトレーニングを開始

    するが、ある時不幸な事故が起きてしまい..。


    <お勧め星>☆☆☆ 個々の人物の背景がほとんど

    わからないけれど、短い映画なのでスリルを楽しめます。


    凍えた時の古典的な温め方


    始まりはものすごくスリリングで、何かが攻めてくるのか、

    シリアルキラーが侵入しようとしているのか、はたまた

    「パージ令」が出されているのか、と思うほどです。

    深夜こっそり家を出る親子3人は時間を測りながら舟の

    ある場所まで車で向かうのです。それが近いうちに起こるで

    あろう社会崩壊を想定してのサバイバル訓練の1つと知り、

    ちょっと拍子抜けします。
    確かに地球温暖化による異常気象や環境破壊、また未知の病の

    流行など、戦争が勃発せずともいつどこで難民になるのか

    わからない時代であることは確かです。
    さてアントワーヌはそんな中ネット配信番組で知ったアランと

    いう男性が行っているサバイバル訓練に参加することにします。

    結構もったいぶって目隠しまでされて、その訓練施設まで

    連れて行かれます。この時この車まで帰ってこれるかなと

    一抹の不安がよぎるのです。
    携帯電話は没収。

     

    失墜
    出典:IMDb

     

    参加者は女性がアナ、ラシェル、男性がダヴィッド、フランク、

    セバスという構成ですが、彼らの素性がほとんど明かされません。

    格闘に長けているラシェルが軍人あがりなのと、ダヴィッドが

    やけに「敵」を恐れているのだけが記憶に残るのです。
    ただ、その訓練施設は、自給自足生活かつ軍事用品もそろえて

    おり、あー、これは絶対に後でこの罠にかかる人が出てくるな、

    と思える動物に仕掛けた罠が至る所にある..らしい。

     

    失墜
    出典:IMDb

     

    「資源と領土を守る」とアランは言い、それは積極的な攻撃も

    辞さないというメッセージなのでしょうが、いかんせん、

    アランがめっちゃいい人そうなんです。このようなグループの

    中では、だいたいポンコツがいまして、そういう輩が何かへまを

    しでかした後に事態が悪くなっていくと思っていると、まったく

    違うのです。それは突然起こります。

     

     

     

    ネタバレ


    爆薬を製造していた5人が、今日の訓練を終了しようとした

    ところ、突然フランクの前で爆発が起こるのです。大けがを負った

    フランクに対し、救急車を呼びたい4人と、それを拒否するアラン、
    アランに同調するダヴィッドで対立しているうちにフランクは

    亡くなり、今度は警察を呼ぼうとする4人とそれを止める2人とで

    対立してしまいます。

    とりあえず一晩落ち着こうと言われた矢先に、外でボーボー、

    フランクを燃やすアランを見て、対立は大きくなり、敵味方に

    分かれてしまうのです。いくらこの施設で起きた出来事によって

    逮捕されるかもしれないとしても、後ろ暗いところがなければ、

    普通通報しますよね。アランとダヴィッドは何か通報されたくない

    事情があるらしい。分からないまま終わったけれど。
    そこからは施設を逃げ出す4人と後を追う2人とのサバイバルゲーム

    になると思ったら、施設を出るまでに一人負傷。そして例の罠に

    かかる人登場。早い早すぎる。
    ラシェルは軍人出身だけあってとても機転が利くのです。ところが

    アントワーヌはあんなに訓練していたのにそれが全く行かされず、

    唯一よかったのは、凍った川の中に落ちたラシェルを救う判断を
    したことかな。低体温症の彼女を救うために用いた手段は、ほら、

    昔漫画で見た、例の「体温」で温め合うというものです。ちょっと

    ポっとなっちゃうけれど、そんな気持ちはすぐに消え、終盤に

    突入です。
    ラストはアランVSラシェルのタイマン。体が倍くらいあるアラン

    相手にラシェルがどのように戦うか、なかなか見ごたえがありました。
    この映画の舞台はカナダのどのあたりでしょう。

    ラストに流れる音楽と一面に真っ白な景色が印象的です。

     

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    ガーンジー島の読書会の秘密

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    ガーンジー島の読書会の秘密

    出典:IMDb

     

    「ガーンジー島の読書会の秘密」

    原題:The Guernsey Literary and Potato

    Peal Pie Society/Guernsey

    監督:マイク・ニーウェル

    2018年 アメリカ=フランス映画 124分

    キャスト:リリー・ジェームズ

         ミキール・ハースマン

         グレン・パウエル

         ジェシカ・ブラウン・フェントレイ

     

    1946年第二次大戦後のロンドンに暮らす作家の

    ジュリエットは、ガーンジー島在住のドーシーと名乗る

    男性から1通の手紙を受け取る。彼女が戦時中に手放した

    本が手元にあり、ドーシーたちは読書会を開いていると

    いう話を手紙を通じて知るうちに、彼女は現地に行って

    その読書会を取材しようと考えるのだった。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 最後はちゃんと収まるところに

    収まって悲しい記憶を塗り替えたような気がします。


    本が引き寄せる力


    ガーンジー島はイギリス王室属領の島でチャンネル諸島の

    中にあり、位置はこのあたりです。

     

    ガーンジー島の読書会の秘密
    出典:wikipedia

     

    イギリスというより明らかにフランスに近く、第二次大戦中の

    1940年5月にナチス・ドイツがフランスに勝利し、占領下

    に置くと、7月にはチャンネル諸島を占領し、映画内で見られる

    ようにドイツ軍が直接支配を開始しました。
    冒頭、暗闇の浜辺から楽しそうに語らいながら戻る数名の男女の

    前に突然ドイツ軍兵士がが姿を現し、夜間外出禁止と身分証の

    提示を求めるのは、彼らがすでに自由な生活を奪われていた状況

    であることを表しています。
    集会の目的を訪ねられると「読書会」と答え、さらに初老の男性が

    「ポテト・ピール・パイの会」と付け加えます。ものすごく緊張

    する場面なのに、なぜこんな言葉が出てきたのは、彼らの食生活から
    生まれたアイデアだと知ると、少しだけほっこりするのです。

    ポテト・ピール・パイって、そのまま訳すと、ジャガイモの皮の

    パイですよ。ジャガイモと肉とかジャガイモと卵とかではないんです。
    これは、彼らが家畜をドイツ軍に没収され、ただジャガイモだけを

    育てることを許されていたという過酷な環境を物語ります。

    美味しいはずがない。

     

    ガーンジー島の読書会の秘密
    出典:IMDb

     

    一方終戦直後のロンドンで、リリー・ジェームズ演じる作家

    ジュリエットは、小説が売れてサイン会まで開けるようになった

    売れっ子なのです。さらにアメリカ人で軍関係者のマークという

    婚約者もいて人生絶好調のようにも思えます。ただ彼女の脳裏に

    フラッシュバックするのは、ドイツ軍の攻撃でがれきの山に

    なったビルや亡くした両親のこと。それに全く配慮を見せない

    マークは、能天気なアメリカ人のように描かれていて、ちょっと

    かわいそうな気もします。

    さらにジュリエットは大の本好きで、ある日彼女が戦時中に

    手放した本が手元にあるという手紙を受け取ります。差出人は

    ガーンジー島に住むドーシーという男性で「島には書店がなく

    読書会に使うので『シェークスピア物語』を買ってくれないか」

    とも付け加えてあります。「本」でつながった2人は一気に

    意気投合し、手紙のやり取り、つまり文通が始まるのです。
    文通って懐かしい言葉です。固定電話がなく、公衆電話か手紙で

    しか交流できなかった時代は、ほんの少し前なのに、今思うと

    あんな不自由な生活をよく送れたものだと思ってしまいます。
    ジュリエットは、次の作品にドーシーたちが開いている「読書会」

    を取り上げようと考え、単身ガーンジー島へ向かうことにするの

    です。あらら、お決まりの乗船間際のマークのプロポーズ付き。
    これから船に乗り込む人にプロポーズして、成功しても、後に

    結婚までこぎつけないような気がするのは、船が離れていくから

    でしょうか。
    ガーンジー島についての戦時中の様子がここでも描かれ、ラジオ、

    郵便、電信が止められ、ジャガイモしか食物がなくなった島民が

    過酷な生活を強いられていたことがわかります。その中である晩、
    モーグリー夫人の家にドーシー、アイッラ、エベン、エリザベスが

    集まり、隠していた豚を食べる会を開くのです。それはエリザベス

    の案であり、そこで彼らは自家製のジンを飲み、まずい

    ポテト・ピール・パイを食べてつかの間の楽しい時間を過ごします。

    この仲間たちが「読書会」と称して占領下の鬱屈とした生活を開放

    するための「避難所」を開催し始めるわけです。

     

    ガーンジー島の読書会の秘密

    出典:IMDb

     

    この話を読書会の仲間から聞くうちにジュリエット自身も同じ

    思いを抱いていたことを話し、彼らについて深く知ろうとするの

    ですが、エリザベスがいません。さらにキットという彼女の娘が

    いるのです。キットはドーシーを「ダディ」と呼ぶものの、

    エリザベスについては誰もが話したがらないのです。ここは結構

    入り組んだ謎で、「読書会」を「タイムズ」の記事にしたいという

    ジュリエットの申し出はきっぱり断られてしまいます。
    またジュリエットの泊まった宿屋の女主人は、彼らのことを

    あからさまに軽蔑して話します。これも謎めいているのです。
    ただミステリーではなく、戦争中だからこそ交流できた人たちが、

    戦争によって引き裂かれ、さらには...。
    「愛する人をこれ以上ドイツ人に奪われたくない」と強く主張する

    モーグリー夫人の気持ちは、彼女がいくつもの命をドイツ軍の攻撃に

    よって奪われたからで、それを否定することは誰もできません。

     

    ガーンジー島の読書会の秘密
    出典:IMDb

     

    幾度となく映る美しいガーンジー島の海岸風景に全く

    似つかわしくない砲台の数は、夫人の怒りを集約しているかのよう

    に思えます。
    一緒にいて心が安らぐ人たち=家族
    ラスト付近の同じ港でのシーンは、「君の名は」(古いほう)の

    ようにすれ違いはしないか、船の汽笛でかき消されやしないか、

    もうそこだけがドキドキでした。
    気分のいいラストで映画を見終わって久しぶりに心が軽くなっています。

    (暗い映画続きでした)

     

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    パージ:エクスペリメント

    3

    JUGEMテーマ:Horror

     

    パージ

    出典:IMDb

     

    「パージ:エクスペリメント」

    原題:The First Purge

    監督:ジェラルド・マクムーリー

    2018年 アメリカ映画 97分 R15+

    キャスト:イラン・ノエル

         ローレン・ヴェレス

         レックス・スコット・ディヴィス

     

     

    経済が破綻したアメリカでは「建国の父」NFFAが

    政権を握り、ある政策を施行するための実験を開始

    しようとしていた。実験の舞台となるニューヨーク、

    スタテン島に住む人々は報奨金欲しさにこの実験に

    参加する人々とそれに反対する人々とで分かれており、

    金に困っているイザヤは姉の忠告を無視して実験に参加

    するのだった。


    <お勧め星>☆☆☆ 映画内のメッセージは痛烈で、これが

    現実で起きているかのように思えます。


    なのに米国内で大コケ


    「パージ」シリーズも第4作目になりました。今作は

    「パージ法」がどのようにして施行されたのかを説明する

    内容になっています。

    2013年「パージ」はイーサン・ホーク主演で、既に

    「パージ法」が施行開始された社会で、防犯設備セールスマン

    一家の一夜の戦いが描かれていました。

    2014年「パージ:アナーキー」では、富裕層の天井知らずの

    快楽の追求を思い知らされ、1よりも世間の評価は高かったの

    ですが、個人的には1のホラー感が好きだなと思ったものです。

    そして2016年「パージ:大統領令」はさらにスケールアップし、

    大統領選まで巻き込んでいます。世界各地から「殺人ツーリスト」
    が訪れるなど、予想外の展開を見ながら、こんな悪法の行きつく

    先はこれしかないだろう。しかし次回作はどうなるんだ、

    宇宙規模かなどと考えていました。そうしたら4作目は、

    「パージ法」施行の前日彈となっています。
    確かに1作目で「なぜ、この法ができたのか」がはっきり

    わからなかったので、ここはしっかり説明しておきたいところです。
    経済破綻したアメリカで、政権を握ったのは全米ライフル協会が

    全面的に支援するNFFA(建国の父)です。彼らは心理分析官の

    アピデール博士の知恵を拝借して、ニューヨークのスタテン島で、

    12時間だけすべての犯罪が合法化される浄化「パージ」の実験を

    行おうとしていたのです。

     

    パージ

    出典:IMDb

     

    この島に住むのはほとんどがアフリカ系かヒスパニック系の

    貧困層であり、彼らの不平不満怒りを解消して平和な世界を
    作ることがこれからのアメリカに必要なのではないかと考えた...と

    いうのが建前です。
    実験中、島に留まれば5000ドル、それ以上の怒りの解放を

    すれば報奨金上乗せという話に参加者は続々と集まります。

     

    パージ

    出典:IMDb

     

    もちろん良心のある人々の反対デモも起きているのです。デモで

    声を上があげるナイアの弟イザヤはDの下で麻薬取引に手を

    染めており、Dは実はナイアの元カレという設定。映画の中盤以降

    ナイアの華麗な銃さばきや格闘シーンが見られ、さすが元カレがD‼

    と実感すること間違いなしです。
    実験を開始しても、人々が行うのは、派手ないたずらや強盗くらいで、

    殺人は最初に仕込んだスケルターのみなんです。

    あれ?これ予想と違う。いやこれが人間本来の姿なのです。

     

    パージ
    出典:IMDb

     

    しかーし、この実験の最終目的を果たすために、KKKに見立てた

    集団が投入されるんですね。この辺りから、殺戮の連続で、特に

    グロ映像はないものの、カメラに血しぶきが飛び散ったり、死体の

    山がどんどん出来上がっていきます。ドローンによるピンポイント

    攻撃なんて、スケールは違うけれど、実際の戦地で使っている手法

    と似通っています。

     

    パージ
    出典:IMDb

     

    終盤の煙幕で敵を迷わせた後の銃、刃物での攻撃は、もうDの強さに

    ほれぼれしちゃう。いやそんな場合じゃないんだよ。暴力に対して

    暴力で対抗する姿は、あまりに次元が低いけれど、暴力を始めた側が
    権力を持っていたら対抗するにはこれしか方法がないのでは?とも

    思ったりします。

     

     


    <ネタバレ>


    低所得者は社会の足手まといだから、健全な経済を保つために

    「口減らし」として始末していく

    こんな考えは弱者を見捨ていてる世界各地の姿を物語っているんだろうな。

     

     

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    プライベート・ウォー

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    プライベート・ウォー

    出典:IMDb

     

    「プライベート・ウォー」

    原題:A Private War

    監督:マシュー・ハイネマン

    2018年 アメリカ=イギリス映画 110分

    キャスト:ロザムンド・パイク

         ジェイミー・ドーナン

         トム・ホランダー

         スタンリー・トゥッチ

     

    戦場記者のコルヴィンは、スリランカの内戦を取材中に

    攻撃を受け片目を失う。しかし彼女はその後、PTSDに

    悩まされながらも活動的に世界の紛争地を取材し続ける。

    そして2012年シリアのホムズの取材に向かうが...。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 戦場記者の視線を通じて、戦争への

    強い抗議を感じます。


    知る義務を思い出せ


    監督は「カルテル・ランド」(2015)

    「ラッカは静かに虐殺されている」(2017)

    のマシュー・ハイネマン。「ラッカは静かに虐殺されている」

    は2017年にラッカのRBSSという市民ジャーナリスト集団

    によってスマホで撮影された映像を監督が映画として製作

    しました。自らの命だけでなく家族の身に危険が及ぶ中で、

    決死の撮影を行う人たちの勇気は、世界の人々に現状を知って

    ほしいという気持ちに集約されており、この映画でシリアが

    少しでも変わればいいと思ったものです。当時はISが一方的に

    ラッカを首都と宣言し、市民は彼らの支配下にあり、恐怖に

    おびえる生活を強いられていました。しかしそのISが欧米や

    ロシア軍によって掃討された今、シリアはさらに混迷を

    深めているのです。何度読んでも理解しきれないので図を

    載せます。このような勢力が争いを続けているのです。

     

    シリア
    出典:Wikipedia

     

    そこでは医療施設の狙い撃ちや一般市民の犠牲、化学兵器の

    使用など、ありとあらゆる蛮行が行われています。また

    シリアから難民として他国に逃れた多くの人々が、その途中で

    命を落としたり、難民キャンプでの過酷な生活を強いられて

    いるのです。
    映画では1986年から戦場記者として働くイギリス

    サンデータイムズのメリー・コルヴィンの半生を描きつつ、

    世界の紛争地の状況を伝えます。

    遡ること2001年、コルヴィンは上司が危険だと止めるのを
    無視してスリランカの内戦の取材に向かうのです。そして

    そこで攻撃を受け彼女は左目を失います。そのためこれ以降

    アイパッチ姿のコルヴィンが登場するのです。
    コルヴィンは結婚していたらしく、映画の中盤過ぎにわかるの

    ですが、2回流産をし、自分の子供を持つことをあきらめた

    ようです。全く状況は異なりますが

    「アメリカン・スナイパー」(2014)
    のクリス・カイルが戦地での体験からPTSDに苦しみつつ、やはり

    戦地にしか自分の居場所がないと思ったのと同じで、コルヴィンも

    普通の家庭生活を送る方法を知らなかったのです。
    コルヴィン役のロザムンド・パイクは、声を低めにし、動きも

    男性的で、おそらくはコルヴィンの姿を見て研究したのでしょう。

    ひっきりなしにタバコをくゆらせ、酒を浴びるように飲む姿は、

    まるで彼女自身がそのようだと思えるほどです。
    コルヴィンはその優秀な取材で英国プレス優秀記者賞を受賞

    しますが、そこで踏みとどまることはなく、その後も

    「人々の真実の物語」を取材するために、敢えて危険な紛争地

    へ向かうのです。

     

    プライベート・ウォー
    出典:IMDb

     

    2003年、イラク、ファルージャに向かう途中で知り合った

    カメラマン、ポールとはそれ以後仕事を共にするようになります。

    この時の検問シーンは、コルヴィンの冷静な姿で乗り切った感じ

    でしょうか。いや幸運だっただけなんだろうな。

     

    プライベート・ウォー
    出典:IMDb

     

    フセイン時代の虐殺の証拠が掘り起こされると、家族と思しき

    人たちから悲鳴と鳴き声が上がります。それを見てコルヴィンは、

    ただ静かに涙を流すのです。これが全く無表情で、これ以降も

    幾度となく涙を流すシーンがありますが、その1つの瞳に表情

    が現れることはありません。
    コルヴィンはPTSDに悩まされ、数多くの悲惨な現場がフラッシュ

    バックする悪夢を見るため、それを見ないために酒に溺れてしまう。

    さらに男関係もルーズになります。とはいえ、これは「女性記者」
    だからことさら描かれるだけで、男性記者ならこんな話は

    入れないんだろうなと少しだけ思いました。

    (「挑む女は美しい」ってジャケットの文句はなんだよ、いったい。)

     

    プライベート・ウォー

    出典:IMDb


    それでも彼女と大人の関係になるトニーという相手が現れ、つかの間の

    休暇を楽しむコルヴィンを支えてくれます。トニー役の

    スタンリー・トゥッチがいい感じ。

     

    プライベート・ウォー
    出典:IMDb

     

    しかしコルヴィンはやはり紛争地に向かいます。アフガニスタンから

    リビア、そこで同志ノームを失っても、さらにシリアへと向かうの

    です。ラッカをISから奪還した今でも、前と同じように、いやさらに
    激しい戦闘が続くシリア、ホムズで、彼女は決死の取材を敢行します。

    アサド政府軍の無差別攻撃を受け、上階が破壊されたビルに潜む

    女性や子供たちを見て、コルヴィンはやはり涙を流します。
    「紙に書くだけでなく、これを世界に伝えて。一世が消えていくの」
    シリア人の女性の言葉です。
    戦場記者として命を落とすことを「自己責任」と切り捨てたとしたら、

    世界で今も起こっている紛争によって傷つき、飢え、そして亡く

    なっていく人々のことをどうやって知ることができるのでしょう。
    知らない自由を行使する前に、知る義務を果たしてほしいと思う

    ばかりです。
    2012年以降50万人以上のシリア市民が亡くなっています。その

    事実をぜひとも知ってほしいと思います。

     

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    ライリー・ノース 復讐の女神

    3

    JUGEMテーマ:アクション映画全般

     

    ライリー・ノース

    出典:IMDb

     

    「ライリー・ノース 復讐の女神」

    原題:Peppermint

    監督:ピエール・モレル

    2018年 アメリカ映画 105分 R15+

    キャスト:ジェニファー・ガーナー

         マイケル・モーズリー

         ジョン・ギャラガー・Jr.

         フアン・パブロ・ラバ

     

    夫と一人娘カーリーと共に幸せに暮らしていた

    ライリーは、ある晩、麻薬組織によって二人を惨殺

    されてしまう。5年後、彼女は復讐のために

    ロスアンゼルスに戻り、関係者を次々と倒していくの

    だった...。


    <お勧め星>☆☆☆ とてもわかりやすいストーリーと

    強すぎる母さんは、「96時間」女版という感じです。


    ほぼ不死身


    監督は「アルティメット」(2004)

    「96時間」(2008)

    などのピエール・モレル。「アルティメット」は、

    スタントマン出身の(すごい格闘技の持ち主)

    シリル・ラファエリとパルクールの創設者とも言われる

    ダヴィッド・ベルの目を見張るほど華麗なアクションが

    堪能できました。この映画はハリウッドにて

    「フルスロットル」(2014)

    という題名でリメイクされ、ポール・ウォーカーの遺作に

    なっています。共演したのがダヴィッド・ベルで、

    ルックス的にはポールの方が断トツ上なんだけど、

    アクションに関しては、ダヴィッドの足元にも及ばないと

    実感させられます。
    「96時間」はただただ娘が大好きなパパ役の

    リーアム・ニーソンの強い姿を、アクションやカーチェイス

    で見せつけられました。こちらもかっこいいです。

    そして強すぎる。
    今回主役はライリー・ノースという平凡な主婦です。この役を

    演じたジェニファー・ガーナーは、ボクシング、クラヴ・マガ

    (イスラエルで考案された近接格闘術)、

    ウェイト・トレーニング、格闘技などを習得し、

    ほぼノースタント、ノーCGで挑んだそうです。キレキレの

    アクションと軍事用の銃器を派手に撃ちまくり、さらに

    時限爆弾までも使用できちゃうんです。なんでもありかい!

     

    ライリー・ノース
    出典:IMDb

     

    ストーリーは何も考えずに見ていたら大丈夫。夫と娘を

    目の前で麻薬組織に射殺されたライリーは、大けがを負った

    ものの生き残り、覚えいた犯人たちの顔を警察で証言するの

    ですが、なんと裁判では「証拠不十分」で無罪にされてしまう

    のです。

     

    ライリー・ノース

    出典:IMDb

     

    カッチーン。

    いやこの組織が実は警察や司法にも裏で手を回していたことを

    初めて知るわけです。

    まさに激おこ。
    その事件から5年後、突然事件関係者が殺害され始めます。

     

    ライリー・ノース

    出典:IMDb


    もちろんここでライリーの仕業だと見ている側はわかっている

    けれど、さて5年間に世界のあちこちで格闘術を身に着けるとは、

    あの少々気が強いものの平凡な一主婦だった女性が思いつくのが

    少し不思議だし、観覧車に処刑スタイルで大の男の遺体を

    逆さ吊りにできるのか、などとあれこれ疑問がわきますが、

    まあすべてスルーしてライリーのアクションを楽しみましょう。
    もちろんライリーも負傷します。それも自分で治療しちゃうし、

    ある時は生理パッドで止血することも考えついちゃう。

    ライリー天才だわ。

     

    ライリー・ノース
    出典:IMDb

     

    警察内部に麻薬組織とつながる人物がいるということはわかって

    いましたが、そこはミスリードされました。ちょっと悔しい。
    勧善懲悪のアクション映画で、気分転換にはぴったりです。

     

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    レ・ミゼラブル(2019)

    4

    JUGEMテーマ:洋画

    レ・ミゼラブル

    出典:IMDb

     

    「レ・ミゼラブル」

    原題:Les miserables

    監督:ラジ・リ

    2019年 フランス映画 104分

    キャスト:ダミエン・ポナール

         ジャンヌ・バリパール

         アレクシス・マネンティ

         ジェブリル・ゾンガ

     

    パリ郊外のモンフェルメイユは移民や低所得者が

    多く暮らす犯罪多発地域である。そこの犯罪防止班

    (BAC)に新たに加わった警官ステファンは、先輩の

    クリス、グワダと共にパトロールに向かうが、そこで
    ある事件と遭遇してしまう...。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 全く予想していなかった展開に

    ただ戸惑うばかりでした。


    それで何が変わるのか


    ヴィクトル・ユーゴーの原作小説「レ・ミゼラブル」は

    劇場映画やテレビ映画、舞台、さらには漫画にもなり、

    様々な形で目に触れてきました。パン1本盗んだ男が

    19年も服役し、その彼が司教と出会ったことで人生が

    大きく変わっていったこと、またその彼が市長にまで上り

    詰めた時、かつての罪に気づく私服警部ジャベールからの

    逃走や、彼が救いの手を差し伸べた不遇な身の上の

    フォンテーヌ(これが不幸にもほどがある)とその娘

    コゼットとの関り、さらにはフランス国内での混乱の状況が

    同時に描かれていました。その中で多くの愛と勇気と希望を

    抱き、終盤は涙にくれながらも、この先に待っているであろう
    明るい未来を想像したものです。権力と同等に対峙しようと

    する民衆の溢れるばかりのパワーを感じましたが、今作では

    どうでしょうか。
    パリ郊外のモンフェルメイユ。ここは原作小説の舞台になった

    街で、パリの東約17kmに位置しています。現在は人通りが

    ほとんどないパリ市内も、少し前までは観光客でにぎわって

    おり、エッフェル塔、凱旋門、シャンゼリゼ通り、オペラ座

    などおしゃれで優美な街というイメージを抱いていたと思います。

    しかし少し離れただけで、不法移民や貧困層が多く暮らす

    犯罪多発地区が存在しているのです。

     

    レ・ミゼラブル
    出典:IMDb

     

    映画はまずこのモンフェルメイユのBACに新しくステファンが

    加わるシーンから始まります。ステファンは決して名前で

    呼ばれず、初日から「ポマード」とあだ名をつけられています。

    そういえばこの映画内で正しく名前を呼び合う人たちはいません。

    BACは「サツ」とひとくくりで言い表され、地区のボスは

    「市長」、子供たちは「ガキ」、その中でもこの映画で問題の

    発端となる事件を起こした少年もイッサと呼ばれているものの

    本名ではありません。彼らには「個人」としての「存在」を

    認め合う気持ちがないのは確かです。
    そしてステファンを連れて白人警官のクリスとアフリカ系の

    グワダが、地区のパトロールに向かいます。麻薬のディーラー、

    不法移民、市長、前科者で陰で人をまとめるケバブ店主...。

    彼らは誰一人として善人ではないけれど、それを説明する

    警官たちも決して善人ではありません。
    序盤に父親に警察署に連れてこられ、鶏を盗んだことで

    「もう家に置けない、ここで預かってくれ」

    と言われるのがイッサです。つまり実の親でさえ味方になって

    くれない境遇の子供たちが存在しているのです。
    そのイッサは今度はサーカス団のライオンの子供を盗んでしまい

    ます。これが負の連鎖の始まりで、BACと全く信頼関係のない

    様々な大人たちが、その時々の利害関係で物事を進めていくのです。

     

    レ・ミゼラブル
    出典:IMDb

     

    そこに子供たちへの配慮など一切ありません。
    そしてイッサがグワザの放ったゴム弾を顔に受け倒れた時、頭上

    にドローンが飛んでいたのです。冒頭からのドローンをのぞき見

    に使っている眼鏡の少年が、たまたま飛ばしていてその行為を

    撮影してしまったのが、また不運の始まりでした。

     

    レ・ミゼラブル

    出典:IMDb

     

    クリスとグワダはイッサの治療よりドローン探しを優先します。

    保身に走るわけです。それをステファンは止めることができず、

    唯一薬局で消毒薬を購入することだけが彼にできることでした。
    一方ドローン少年も、親に無理やり信仰を押し付けられており、

    彼が心を解放できるのがドローンを飛ばしている時だったのです。

    しかし彼もその楽しみを奪われてしまいます。
    また序盤に大麻を吸っている女子生徒を強硬に職質するクリスは、

    その姿を撮影している他の少女のスマホを踏み潰しています。

    これが日常の行為だとしたら、その怒りのパワーは幾重にも積み

    重なって行くはずで、それがいつ爆発するのかと後半はドキドキ

    しっぱなしです。

     

    レ・ミゼラブル

    出典:IMDb

     

    その後半20分の衝撃は、前半の静かな威圧シーンと対照的で、

    力と力のぶつかり合いをまさに体感できるものになっています。
    全く形を変えているとはいえ、原作の「レ・ミゼラブル」での

    市民の行動と似通う熱いエネルギーが伝わってきますが、大きく

    異なるのが、その先に「変化」があるのだろうかという疑問です。
    それは現実への絶望にも繋がっているとも思うのです。

     

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    北の果ての小さな村で

    4

    JUGEMテーマ:洋画

     

    北の果ての小さな村で

    出典:IMDb

     

    「北の果ての小さな村で」

    原題:Une annee polaire/A Polar Yea

    r監督:サミュエル・コラーディ

    2017年 フランス映画 95分

    キャスト:アンダース・ヴィーデゴー

         アサー・ポアセン

     

    デンマーク人のアンダースは、グリーンランドの

    小さな村チニツキラークへ教師として赴任する。

    しかし現地の子供は、授業に集中せず、また学業より

    狩猟を優先する家庭もあり、理想を砕かれたアンダースは
    孤立感を深めるのだったが...。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 短い映画なので雄大な景色と

    過酷な自然環境を見ながら、人間本来の姿をしっかり

    確認することができます。


    物事を単純に考える


    グリーンランドというと、社会の教科書に載っていた

    世界地図がメルカトル図法で、ものすごく大きな島国かと

    思っていたら、実際はオーストラリア大陸の3分の1に

    満たない広さと知って驚いたものです。
    この映画はデンマーク人のアンダースがグリーンランドの

    チニツキラークという人口80名の村で教師をする姿を

    本人が演じる、ドキュメンタリーに近い内容です。

     

    北の果ての小さな村で

    出典:IMDb

     

    チニツキラークの位置はこの辺り。
    アンダースがなぜにグリーンランドの首都ヌークでなく、

    そこをわざわざ選んだのかは、後半になるとわかってきます。

    彼が7代続く農場の一人息子であることもキーなのです。
    さて現地に向かうアンダースは、雪と氷に覆われた海を船に

    乗って進んでいきます。そしてようやく到着した

    チニツキラークは、白い雪の中に色とりどりの屋根の小さな

    家がぽつりぽつりと建っている箱庭のような場所なのです。

     

    北の果ての小さな村で

    出典:IMDb

     

    水道施設はなく、水を汲みに行くか、サービス施設を利用し、

    トイレは週3回汲み取りに来るという。当然パブというな

    商業施設があるはずもありません。本当に北の果ての
    地であることを実感します。

    あ〜あ〜あああああ〜♪という音楽が流れてきそうですが、

    聞こえてくるのは、犬ぞり用の犬の吠える声ばかりです。この

    犬たちは酷寒の地にありながら、外で暮らし、外で繁殖して

    います。ハスキー犬よりも大型で、体毛が厚く、さらに気性が

    荒いのが特徴のようです。体重45kg程度のエスキモー犬

    というらしく、この映画で見る犬たちも特定の犬種ではなく、

    エスキモー犬(雑種)のように見えます。
    この地こそ、俺が求めたいた場所、俺がこれまでの経験を

    生かせる場所、彼らグリーランド人にデンマーク語を教え、

    将来の夢を膨らませてやろう、などという青臭い考えは、

    第1日目にして消え去ります。

     

    北の果ての小さな村で
    出典:IMDb

     

    授業中に座っていられない、おしゃべりが絶えない、何か

    尋ねてもグリーランド語(アンダースはグリーランド語が

    わからない)で答え、それは明らかにふざけたものであること

    しかわかりません。
    さらに調べていくと、子供たちは実の両親と暮らしている者は

    少なく、祖父母と暮らしている者が多いのです。デンマーク人の

    アンダースからすると、それは育児放棄なのではないかと

    考えるのは当然でしょう。
    また無断欠席したアサーの家を訪問すると、応対した祖母が

    グリーランド語で「祖父と漁に行った」と答え

    「アサーの教師は祖父。学校より祖父の教えが重要」と重ねて

    言うのです。

    「教育を受けることが子供たちの未来のためになる」という

    いたって簡単な話は一切通用しません。

    「デンマーク人は傲慢」という言葉さえつぶやきます。

    (この辺りはグリーランドがデンマークの旧植民地であった

    ことにも関係している)

     

    北の果ての小さな村で
    出典:IMDb

     

    これと並行して犬ぞりに乗って祖父とカジカ釣りに出かけている

    アサーが映ります。たった8,9歳の子供に銃を持たせるなんて!

    と非難を浴びそうですが、それも含めて、この地ならではの生活習慣
    を認めてなければいけないと感じます。
    いくら真剣に教えてもそれに答えない子供たちの姿や、親たちが

    彼の約束に現れなかったり、道であっても挨拶されないという仲間

    外れ感で、彼は思わず実母に電話を掛けるのです。この時に大事な

    家のヒーターが故障し、それを直すためには、町から部品を

    取り寄せなければならない、それには数日かかると聞いて

    アンダースはブチ切れてしまいます。巨体を震わせながら毛布に

    くるまってお酒を飲むアンダースを見ると、やや滑稽でもありますが、

    この村の人々が暖をとることの貴重さを実感することにもなるのです。
    新年の花火が凍てつくような空に昇る時、その音と光が見え、村人

    たちの歓声だけが聞こえます。
    またアーサの祖父が亡くなった時、祖母がアーサに聞かせる話と

    同時に外では、美しいオーロラが見られます。
    「デンマークではオーロラは見られない」とアンダースが言うと、

    村人は「つまらない国だな」と答えます。

    オーロラを自由に見られるのは、その地に住むものだけの特権かも

    しれません。
    ほとんどの村人が村から出たことがないこの地では、仕事は限られた

    ものしかなく、猟師は男の子のあこがれの職業なのです。そして

    女性は出産をするので、猟師にはならず、家にいて、男たちの持ち

    帰った獲物を捌くという分業体制が自然と続いているとのこと。

    もちろん生活のために町へ出稼ぎに行く者もいます。しかしこの地

    でのしきたりは脈々と受け継がれていくのです。
    短い夏がやって来て、雪の中に埋もれていたアサーの祖父の棺を、

    土の中に収めるシーンが出てきます。これらも含めて、自然と共存し、

    自然の恵みを自分たちの必要な分だけ自分たちの力で獲得し、
    そしてそれを食していく姿こそ人間本来の姿なのだなと実感しました。

     

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    スペンサー・コンフィデンシャル

    4

    JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

     

    スペンサーコンフィデンシャル

    出典:IMDb

     

    「スペンサー・コンフィデンシャル」

    原題:Spenser Confidential

    監督:ピーター・バーグ

    2020年 アメリカ映画 110分

    キャスト:マーク・ウォールバーグ

         ウィストン・デューク

         アラン・アーキン

         イライザ・シュレシンガー

     

    元ボストン市警察官スペンサーは上司に暴行を加え、

    5年間服役する。出所後は穏やかに暮らすはずだったが、

    その上司が殺害され、さらに部下の巡査が犯人であり、

    自殺体で発見されたと知ると、真実を追求しようと

    彼は行動を起こすのだった。


    <お勧め星>☆☆☆ よくあるストーリーだけれど、

    それなりに楽しめます。


    筋肉バカの最後はタイマン


    警察内部の腐敗を描いた映画は韓国映画でよく見られますが、

    アメリカ映画でも相当数作られています。

    1977年「L.A.コンフィデンシャル」ではロス市警内に

    渦巻くそれを、

    2009年「クロッシング」ではニューヨーク市警において、

    職務に忠実だったはずの3人の警官の苦悩を描いていました、

    2017年「デトロイト」は腐敗した警察官ではなく、差別

    意識丸出しの白人警官の姿が描かれ、アメリカにおける

    人種差別の歴史を身をもって知った映画でした。
    今作は、そんなに深い内容ではありません。正義感が強く

    血の気が多いスペンサーが上司を暴行し、5年服役する、

    という姿から始まります。この男、一旦思い込んだらもう

    どうにも止まらない、猪突猛進人間らしい。

     

    スペンサーコンフィデンシャル

    出典:IMDb

     

    もちろんこの背景には、上司であるボイランへの不満もあったの

    ですが、その彼の自宅を訪問し、ドアを開けたボイランの

    向こうで荒らされた部屋や青タンを作った彼の妻の姿を見て、
    「DV野郎〜!」と飛び掛かったわけです。
    服役を無事終えるという日、刑務所内で手荒い洗礼を受けます。

    パターン通り、スペンサーは素手での格闘に自信があり、割と

    殴られる続けてからの復活がすごいという男。

    「アウトロー」のトム・クルーズもそういえば、悪い奴を追い

    詰めて銃を発砲すればそれで終わる、という時に、わざわざ銃を

    ぽーいして、きれいな顔にはほとんど傷がつかない素晴らしい

    「タイマン」で決着をつけていました。なんとなく同じにおいが

    するスペンサーです。

     

    スペンサーコンフィデンシャル
    出典:IMDb

     

    スペンサーは出所後、ヘンリーというじいさんの世話で住居を

    提供してもらいます。ところがそこにはなぜか巨大なルームメイト、

    ホークがいるのです。ではこの二人のバディムービーかというと
    そうでもありません。もちろんホークはバカ力の持ち主で役に

    立つこと間違いなしです。しかしあくまでもスペンサーだけが

    主役の映画なのです。
    スペンサーには、一応シシーというウルトラ怖い妻?恋人?が

    いたのですが、服役中、彼女は一度も面会に来ず、それでいて

    出所の日には出迎えに来ています。それを避けてヘンリーの車で

    ササっと変えるスペンサーの気持ちもあまりわからないけれど、

    ストーリーには関係ないのでまあいいか。
    出所したらこの町を出て静かに暮らす...なんて思っていた

    スペンサーがテレビニュースで、例のボイランが処刑スタイルで

    殺され、その部下のグレアム巡査が自殺体で発見されたうえ、彼が

    犯人と発表されたことを知ると、めらめら正義感が燃え上がるのです。

    いやいやもう警察官でもなんでもないから、捜査は無理だと思うと、

    かつての力を利用していろいろな情報を集めていきます。ただし
    コンピューター関係に一切疎いので、そこは巨漢のホークが大きな

    指で小さなキーボードを操作して調べてくれるのです。

    スペンサーの脳みそは「正義」と「筋肉」でできているのかも。
    ストーリーにはアイリッシュマフィアやメキシコマフィアが登場

    します。しかし難しい内容ではないし、彼らがめっちゃ強いわけで

    もなく、スペンサーとキングコングもどきの(失礼)ホークが

    いればちょっと暴れただけで、しっかり収まっていくのです。

     

    スペンサーコンフィデンシャル
    出典:IMDb

     

    そうそうマーク・ウォールバーグが車好きということで、

    アイリッシュマフィアのボスが黄色のシボレー、コルベットZ06で

    登場します。いかんせん、このボスも巨体なので、この車では

    やや狭く感じてしまうのです。
    やはりマフィアはリンカーンMKX(なんとリッター7km)とか

    キャデラック、エスカレードがお似合いだよなあ。

    (あくまでも個人の感想です)

     

    スペンサーコンフィデンシャル
    出典:IMDb

     

    カジノ建設に絡むのは「悪い投資家」「汚職警官」

    「ストリートギャング」などと話しているのを見ると、カジノって

    金がなる木なんだなと思ってしまいます。
    ラストの派手な展開は、スペンサーがトラックの運転免許を

    獲得するための受講していたことを考えれば、すぐにわかって

    しまうという代物。でもまあ楽しい。

    さらに、案の定出てきましたよ、持っている銃をポーイした上での

    「タイマン」!!!
    見終わった心に残るのは、ちょっと老けたけれど相変わらず

    筋肉バカっぽいマーク・ウォールバーグのマッチョな体だけと

    いうお話で、気楽に楽しめます。

     

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    カット/オフ

    4

    JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

     

    カット/オフ

    出典:IMDb

     

    「カット/オフ」

    原題:Abgeschnitten

    監督:クリスティアン・アルヴァルト

    2018年 ドイツ映画 132分 R15+

    キャスト:モーリッツ・ブライブトロイ

         ヤスナ・フリッツィー・バウアー

         ラース・アイディンガー

         ファーリ・オーゲン・ヤルディム

     

    検視官ポールのもとに一人の女性の遺体が運び

    込まれる。そしてその遺体の頭蓋骨内にあった

    カプセルの中の紙切れに、ポールの娘の名前と

    電話番号が書いてあるのがわかる。急いで娘に

    電話をすると、助けを求める彼女の声が聞こえて

    くるのだった...。


    <お勧め星>☆☆☆☆半 北欧サスペンス同様に

    見ごたえのある内容でした。そして最後まで先が

    読めません。


    メルセデスの過剰機能は有効


    オープニングから大そう不気味です。嵐が吹き荒れる

    孤島、ヘルゴランド島のパブに1人の女性リンダがおり、

    彼女はどうやらダニーというストーカーから逃れるために

    この島にいるらしい。そしてそのダニーからメッセージが

    届くのです。おまけに急いで店から逃げ出す彼女を

    追いかけてくる男の姿も映ります。大丈夫なのか。

    このリンダは結構身軽で、あちこちの塀を乗り越えて走って

    逃げるのですが、突然崖をころころ転がり落ち、砂浜に

    倒れてしまうのです。薄暗い砂浜には、なんと男の遺体が

    あります。なんでやねん!
    舞台は変わり、何やら暴行事件の示談交渉をしているらしい

    ポールが映ります。ポール役は「エス」(2001)

    「ミケランジェロの暗号」(2011)などの

    モーリッツ・ブライブトロイ。彼は大学教授で検視官をして

    いるのですが、家庭に問題を抱えており、一人娘ハンナとも

    うまく行っていない模様。これが暴行事件のきっかけでも

    あるのです。

     

    カット/オフ
    出典:youtube

     

    そして1体目の遺体が登場します。「顔から空気が抜けた」

    「両手首先が切り取られている」という女性の遺体がリアルに

    映ります。遺体なので検死解剖を進めていっても血しぶきは

    出ません。しかしかなりリアルなので要注意です。

    そして何度も映ります。
    なぜ顔から空気が抜けていたのか?それは頭蓋骨内に何かの

    カプセルを入れ込むためで、そのカプセルを取り出して、中に

    あった紙切れに書いてある文字を見ると、なんとびっくり!

    ハンナという名前と彼女の携帯電話の番号ではありませんか。

    急いでその番号に電話すると、

    「パパ、助けて。警察には知らせないで。エリックを待って」

    と娘の悲痛な声が聞こえてきます。さっき喧嘩をしたけれど、
    最愛の娘ハンナの大ピンチにパパは居ても立っても居られなく

    なります。

     

    カット/オフ
    出典:youtube

     

    そこで突然入り込むのは、若い女性を監禁し、レイプして、その

    姿を録画している、ウルトラクズ男の姿です。

    まさかこの若い女性がハンナ?
    一方リンダが見つけた男の遺体のシャツには「エリック」と

    書かれており、その遺体の脇にあったスマホから着信音が流れます。

    そこでポールとリンダが繋がるのです。ところがリンダのいる場所は
    例の孤島であり、嵐のため数時間外部への出入りができない状況です。

    ここでポールは友人で、病院の用務員をしているエンダーを教えるん

    ですね。

     

    カット/オフ

    出典:youtube

     

    ポール、リンダ、エンダーが揃いました。
    遺体にさらなるメッセージがあると推理したポールは、リンダに

    遠隔指示で「検死解剖」をさせるのです。

    「あたしベジタリアンだから、肉は切れない」

    冗談にもならない言葉を発するものの、リンダは遺体に近寄る

    ことすらできないエンダーと違って、果敢に行動します。ここが

    またリアルなんです。

    遺体に舌がない→のどの奥深くに黄色のカプセルが入っている

    →それを取るために喉を切る。
    検死官は、どんな遺体でも平気で解剖できるのでしょうか。外科の

    看護師の知り合いがいて、彼女が言うには

    「手術はきれいに切っていくから平気。事故のけがは少し気になる」

    程度だそうです。

     

    カット/オフ
    出典:youtube

     

    また、ポールを助ける、空気が読めないが人のいいインゴルフと

    いうインターンになりそこなった男も登場します。つまり4人で

    事件の謎を探っていくわけです。
    ポールはなぜ娘を誘拐されなければならなかったのか。そこに

    気づいた時には、行く先々で遺体が転がり始め、一つの結論に

    達するかと思うと、おおう、見事なフェイントです。

    とにかく先が読めません。
    島で解剖室にいるリンダとエンダーも、停電や点滅する電気、さらに

    リンダの耳に残るダニーの声に悩まされ、いつになったらここを

    出られるのかと、見ている方がハラハラドキドキしっぱなしです。
    何が彼らを救ったのかと思うと、さすがドイツ映画だなと思って

    しまい、少しだけ笑えます。いや、ラストまで笑えなかったですよ。

    笑えたのは見終わってからです。

     

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    8番目の男

    3

    JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

     

    8番目の男

    出典:IMDb

     

    「8番目の男」

    原題:Juror 8

    監督:ホン・スンワン

    2018年 韓国映画 114分

    キャスト:パク・ヒョンシク

         ムン・ソリ

         ペク・スジャン

         キム・ミジョン

         イ・ジョンヨン

         イ・ヨンジン

     

    2008年、ソウルで韓国初の国民参与裁判が開廷

    する。様々な境遇の8人の人々は、既に自白をして

    いる被告への量刑だけを決定するという内容だったが、

    被告が容疑を否認し、また証拠に対する疑問の声が

    上がったことで裁判は一変してしまう...。


    <お勧め星>☆☆☆☆ コメディなんだけれど、法廷映画

    としても見ごたえがあり、無駄のないストーリー運びです。


    法は人を罰しないためにある


    日本では2009年に裁判員制度が導入されましたが、

    その制度によって決定した判決が、2審で覆ったり、

    量刑の大幅な変更があることが多く、その制度そのものへの

    不満も高まっています。一般人の意見を取り込むはずの

    裁判員制度が、結局は司法の側の人間の意見のみが反映

    されていると思われるからです。市井の人間と法の番人たち

    との感情や常識の乖離も感じることがあります。
    さて韓国ではその1年前に国民参与裁判が始まっていました。

    この映画はその制度が開始された時の初めての裁判風景を

    描いています。韓国の司法はとかく世論の影響を受けやすい、

    世論に迎合しやすいと言われています。

    映画内でも「コネ」のないキム裁判長が、その上司から

    「ここで手柄を上げればお互いに出世できる」

    「世論の注目を浴びでこの制度が認識される」などと

    言われるシーンがあり、司法の独立というものがかなり

    危うく感じられます。しかし映画を見ていくと

    「法は国民の常識」

    「冤罪を防ぐための基準が法」

    という強い意志をもって職務に臨むキム裁判長の姿が感じ

    取れます。

     

    8番目の男
    出典:IMDb

     

    このキム裁判長役のムン・ソリがヒロインだった

    「オアシス」(2002)は必見映画!!脳性麻痺の女性を

    ムン・ソリが熱演しており、社会不適応者である前科者の男

    との純愛は、必ず涙がこぼれるはずです。何が正しくて何が

    正しくないか、それを訴えることができない者たちの姿には

    胸が締め付けられるようになります。
    事件は、無職のカン・ドゥシクが自分の母親の頭を金づちで殴り、

    住んでいた団地のベランダから投げ落としたというもので、

    ドゥシクは当時階段から落下して気絶しており、3日後の病院で

    母親殺しを自白したため、その間に証拠や目撃者集めは十分

    行えていました。したがって陪審員は、ドゥシクへの量刑を

    話し合えばよかったのです。

     

    8番目の男
    出典:youtube

     

    ドゥシクは幼い頃、母親のせいで大火事に遭い、全身に大やけどを

    負っていたこと、一家の収入を支えていた母親が腰を痛め、

    生活が困窮し、生活受給を求めるも拒否されていたこと、少年院

    入所歴があること、前科5犯であることも「彼が犯人説」を

    ゆるぎないものにしていた理由でもあります。
    しかし1人の陪審員が「質問」をしたことで法廷の空気が

    変わってきます。
    「金づちで殴るともっと血が飛散する」
    彼が遺体清拭の仕事を30年務めており、その経験からの発言

    だったのです。もちろん不規則発言により彼は退廷となりますが、

    「ドゥシクは指がないんじゃないか」

    「指がないのに金づちを振り下ろせるのか」
    陪審員の中で、被告の罪への疑問が高まっていきます。ここで

    すぐに実験へとつながるところがすごいです。裁判員になった

    経験どころか候補の手紙が来たことすらないし、実際の裁判の

    風景を見たことさえないので、全く分かりませんが、日本だったら

    意見を求められたときのみ発言できるだろうし、もし実験が

    必要となったら、後日に変わるんだろうな。

     

    8番目の男
    出典:youtube

     

    危険な目に遭っても表情一つ変えないキム裁判長とは対照的に、

    陪審員たちは、控室で素の姿を見せます。

    「団地住まいだから貧しい」

    「あんな髪の毛を染めた娘の証言などあてにならない」

    「上の言うことはすべて正しい」
    ところが8番目に決まった陪審員のクォン・ナムは、とにかく

    疑問を持ち、徹底的に調べることを主張します。それに同調する

    のが、法学生の男性と団地暮らしを経験していた女性です。

     

    8番目の男
    出典:youtube

     

    すぐに終わるはずの裁判が、深夜まで及び、日ごろは役所に頭を

    下げたり、上司の顔色を窺っていた人々が、つかの間ではある

    ものの、権力の側を動かすことができた時に快感は、その時の

    陪審員の嬉々とした表情に浮かんでいます。
    「頑張れば奇跡は起きる」カン・ドゥシクの家の冷蔵庫に貼って

    あったメモの言葉です。物事のきれいな面だけを見せ続けることが、

    人々を幸せにするということは大きな間違いであるし、頑張った

    分だけ報いがあるなどと思うのは、薄っぺらい希望的観測に

    すぎません。しかし、頑張っても這い上がれない人々の姿を垣間

    見ることができたこの映画はやはり素晴らしいと思います。

     

     

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