聲の形

3

JUGEMテーマ:アニメ映画全般

 

聲の形

 

「聲の形」

監督:山田尚子

原作:大今良時

2016年 日本映画 129分

声:入野自由

  早見沙織

  悠木碧

  小野賢章

  金子有希

 

耳が不自由な転校生、硝子をからかい続けた翔也は、

彼女が5か月後に転校すると、逆に仲間外れになって

しまう。高校生になり、相変わらず孤独な将也は手話

教室で硝子を見つけ、何とか謝罪仕様と考えるが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ どう展開していくのか予想でき

なかったけれど、切なくて悲しくて辛くてそして嬉しい

気持ちになれました。


生きることの手伝い


見終わって何を思ったかというと一言。

「生きることが大切だ」

ということです。すごくありきたり過ぎて他の言葉を探した

のですが、真っ先に浮かんだのがその言葉でした。生きて

いくことは楽しいことばかりではない。苦しいし、悲しいし、

もどかしいし、時には本当に死んでしまいたいことだって

あります。考えてみたら自分が小学生や中学生の頃は、

「死」を実感したことがなくて、記憶のある限りでは誰も

身内で亡くなっていなかったし、ましてや自分の命を捨てる

ことなど思うことすらなかった。仲間外れになったり、

先生にきつく叱られたり、部活で先輩に無視されたりしても、

なぜだろう。「死」を考えたことはなかったなあ。社会人

になった時、従兄がバイクの事故で亡くなり、その時初めて

「死」を実感したような気がします。ほんの数時間前まで

普通に話をしていた人間が急に冷たく青白い顔で横たわって

いて、この体が二度と起き上がることがないと知った時は

本当に辛かった。
それ以降は幾度となく辛いことがあって、本当に消えて

しまいたいほど苦しいこともあったけれど、後で思い返して

みると、そこであきらめていたら、その先にある予想

できない未来を捨てることだし、まだやれるはずのことを

ゼロにしてしまうことだったなと感じます。

 

聲の形
 

主人公の将也はクラスのガキ大将のような存在で人気者だった

わけですが、そのクラスにある日、耳の不自由な硝子が転校

してきます。筆談を求める硝子を最初は物珍しそうに遠巻きに

眺め、次は将也を中心にイジメが始まるわけです。ここは

見ていて辛い。悪ふざけだったとかいたずらだったとかからかい

だったとか思っていたにしても、転校せざるを得なかった

硝子について校長先生が話をすると、今度は将也が逆に仲間外れ、

いじめの対象に変わるのです。
自分でやったことは全て自分の戻って来ると心を閉ざす将也の

よう人間は稀であり、おそらくはさらに弱い者へその怒りが

向かうこともあるのではないかとも思うのです。そこはわかりません。
そして高校生になり、孤独な将也がこっそり通っていた手話教室で、

なんと硝子を見かけるんですね。ここはすごい偶然という感じ。

 

聲の形

 

さらに将也には永束という友人ができるのです。こういう分岐点が

いつあるかわからないから人生は楽しいかもしれない。
将也は謝罪したいと思いつつ、幾度となく硝子に会ううちにかつて

の同級生や硝子の妹、結弦、さらには互いの母親などとのエピソード

を絡め、ストーリーは進みます。ここでもしばしば胸が痛むシーン

が描かれます。

 

聲の形
 

将也はかつてのイジメ事件を誰にも知られたくなかったし、

自分は生きる価値がない、人をまともに見る勇気が無くなって

いました。

 

聲の形

 

彼の眼には人の顔にバツ印がついて映ります)一方、当時の

級友はそれぞれが違う言い分を主張します。どれが正しいと

言い切れるものではないし、その時のその人物の年齢、

家庭環境、クラスでの立場、持って生まれた性格など全く

異なるわけだから、このくらいはよくてこのくらいはダメなど

と決められるはずもないのです。
さらに硝子と将也が納得しても、周囲にいた人物全員が同じ

方向を向けることなど無理に等しいと思う。どこで折り合いを

つけるかそこが肝心なのではないでしょうか。それが人間として

成長したことを意味するような気もします。
花火大会の音が水筒のコップに注いだお茶に響き、波打つのを

見せたり、橋の手すりに将也が持たれた振動を硝子が手のひら

で感じ取ったりするシーンは本当に秀逸。「音」が丁寧に

映像化されています。
涙が流れる内容ではなかったけれど、人間は1人で生きていくのは

難しいと体感する映画でした。
あのジェットコースターは、絶対に長島スパーランドのものだと

すぐにわかるリアルな絵でそれが動くときの振動と共に見る側に

伝わりました。エンディングのaikoの歌も良かったです。

 

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ


散歩する侵略者

4

JUGEMテーマ:邦画

 

散歩する侵略者

 

「散歩する侵略者」

監督:黒沢 清

2017年 日本映画 129分

キャスト:長澤まさみ

     松田龍平

     高杉真宙

     恒松祐里

     長谷川博己

     前田敦子

 

鳴海は失踪して戻ってきた夫真治が全く別人の

ようにふるまい「地球を侵略に来た宇宙人なんだ」

と発する言葉に驚く。。一方町では一家惨殺事件が起き、

それをきっかけに人格がすっかり変わってしまう人々

が続出するのだった。


<お勧め星>☆☆☆ 黒沢清監督の映画の中では、一番

好きな内容かもしれません。


最も価値のある概念

 

少しネタバレ


黒沢清監督の映画とは本当に相性が悪く「ドッペルゲンカー」

(2003)「LOFT ロフト」(2006)「Seventh Code」

(2014)と見ましたが、すみません、どれも眠くなり

ました。映画全体が静かなのと、映像がモノクロームに近い

ようなものが多く、催眠療法にかかったようになるのです。
なので今作も期待値0にて鑑賞。確か、昨年のカンヌ国際

映画祭に出品されていましたよね。前田敦子さんが他の俳優

さん達と一緒に赤絨毯を歩いていたような覚えがあります。

しかし、映画内での登場シーンはごくわずかであり、時間に

して5,6分かなあ。あ、敦ちゃんだ!と思ったら涙を

一筋こぼして去っていく...。
内容的には血しぶき満載なはずなのに、冒頭の一家惨殺事件

以外では、ほとんど血が流れません。銃で撃たれようと、

車ではねられようと、爆発に遭おうともです。そして題名

通り静かに侵略されていく町の人々の姿を、この監督らしく

淡々と描いています。
宇宙人の侵略物といえばいの一番に上がるのが

「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」(1956)です。

これは「SF/ボディ・スナッチャー」(1978)、

「ボディ・スナッチャーズ」(1994)、「インベージョン」

(2007)と何度もリメイクされるほどの名作であり、

この中で実際に見たことがあるのは3作目以外すべてですが、
1作目の不気味な雰囲気が一番ゾクリとしました。さらに侵略?

挨拶?なのか突然世界のあちこちに出現する宇宙船を描いた

「メッセージ」(2016)はその目的よりも映画の内容が

秀逸で、ああそういうことかと理解すると自然と涙が流れて

しまうものです。登場する宇宙人は姿を見せるものの少しも

怖くないし、逆にそれへの対応で世界各国の輪が崩れてしまう

恐怖を体感します。そして最終的には「人生」について深く

考えさせられる内容になっていました。

 

散歩する侵略者
 

しかしこの映画は宇宙人の目的が「地球侵略」と早々に真治の

口から語られます。真治役の松田龍平が、本当に飄々として

いて、悪く言うと無表情で、いったい何を考えているのか全然

わかりません。その彼の浮気をののしり、病院に連れていき、

訳の分からないことを口走る夫にイラつく妻鳴海役は長澤まさみ。

二人が全く対照的なのが印象的です。表情豊かで、怒り、焦り、

嘆き、あきれる、そんな姿を見せ続けた鳴海には、実は心の

奥底にマグマのように強く燃える「愛情」が隠されていると

気づくのは、本当に映画の終盤なんです。もう、鈍感で

すみません。

 

散歩する侵略者
 

冒頭の血まみれ女子高生あきら、彼女と同じ能力を持つ天野、

そして彼らに「ガイド」=信頼できるパートナーとして力を

貸す、ジャーナリストの桜井の関係と、真治とそのガイドと

なる鳴海との関係は明らかに本質が異なるのです。信頼できる

パートナーであっても愛情が存在しない、するはずがない、

前者と、かつては愛情で結ばれていた(今も?)後者では

関わり方が異なるのは当然なのでしょう。
真治が中盤「愛」の概念を集めようとして、教会の牧師のもとへ

向かうのですが、あまりに大きすぎて概念がまとまらず、

それを抜き取ることを断念します。

 

散歩する侵略者

 

ちなみに抜き取る時は、相手にその概念をしっかり頭の中で

まとめさせておいて、その額に人差し指を当てると、スルっと

入手でき、その途端、相手は一筋の涙を流し、倒れこんで

しまうのです。敦ちゃん、「所有」を抜き取られちゃったよ。
「愛なんてイメージできるはずないじゃない!」ときつく答える

鳴海の言葉はまっとうなこと。「仕事」「邪魔」などは

それぞれの頭ですぐにイメージできても、あまりに大きくて

漠然としている「愛」は実は最も強い力を持つ存在なのかも

しれません。これはとてもありきたりだな。でもそれが

すんなり理解できるのは、愛の概念を受け取った真治が

「全部違って見える」と言い、抜き取られた鳴海が

「何も変わらない」と無表情で答えた時です。
何も変わらないのではなく、何もなくなって抜け殻のように

なってしまったかもしれませんね。
あらゆることを一から考え直す「タイミング」はいつだって

あるし、そうしないと世の中が本当に崩壊していく道をたどる

のだと思ってしまいます。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ


アウトレイジ 最終章

4

JUGEMテーマ:邦画

 

アウトレイジ

 

「アウトレイジ 最終章」

監督:北野 武

2017年 日本映画 104分 R15+

キャスト:ビートたけし

     西田敏行

     大森南朋

     ピエール瀧

     松重 豊

     塩見三省

 

済州島に身を隠していた大友は、花菱会、花田に

よって手下を殺されてしまう。彼は市川と共に

復讐のため日本に帰国した頃、花菱会では新会長の

下で抗争が起きようとしていた。


<お勧め星>☆☆☆ 相変わらず悪い奴ばかり登場

しますが、何となく前2作に比べると薄味に感じて

しまいます。


会長にヨロシク


済州島ののどかな海で釣りを楽しむシーンから始まる

この映画は、すぐに海面に向かって発砲する大友の

暴力的な姿へと変貌します。
「アウトレイジ」(2009)「アウトレイジビヨンド」

(2010)と続き遂に最終章。登場人物も多くが変わり、

1から出演している俳優たちもかなり年をとってきたと

感じます。そしてこれはとても大切なことなんですが、
この映画を見る前に絶対に前2作を復習しておくべきだと

いうことです。「なんだ、バカヤロウ」「てめえ、コノヤロウ」

というセリフは幾度となく聞いたことを覚えていても、

人物相関図がかなり複雑であり、あとから文字で見ただけ

ではすっかりさっぱり。
かすかな記憶をたどると「アウトレイジ」ではとにかく

銃だけでなくナイフ、ロープなどといったあらゆる武器が

用いられ、残酷極まりない映像が次々と繰り出されました。

特に椎名桔平演じる水野の最期は凄まじかったです。そして

山王会傘下の大友組が数々の陰謀に操られ、分裂し、大友は

刑務所に収監されてしまう。
「アウトレイジビヨンド」はその大友を利用する刑事が登場し、

刑事とインテリやくざとなった山王会VS関西花菱会の

対立抗争が激しく描かれました。突出しているのは、加瀬亮

演じる石原が椅子に拘束され、ピッチングマシーンのボールを

受け続けるシーンでした。いつまでも響くボールが飛ぶ音と、

それが石原に当たる音が耳に残っています。

 

アウトレイジ
 

しかしながら最終章は主人公が大友であるものの、花菱会の

内部抗争に大友が関わるのは、大友自身の復讐を遂げるためで

あり、昔気質のやくざの姿を見ているような気がするのです。

義理、人情がなによりも優先であり、私利私欲とは無縁と

いう感じかな。

 

アウトレイジ
 

今作で最も目に付くのは冒頭から登場する花菱会、花田役の

ピエール瀧の演技です。ものすごい存在感があって「凶悪」

(2013)でリリーフランキーと並んで見せてくれた薄ら

笑いを浮かべつつ、ある時急に罵声を浴びせるような心底怖い

男を演じています。猫なで声と怒鳴り声の落差が激しく、

それだけでビクリとなってしまう。彼への大友の仕打ちは、

音だけですが、すべてが想像でき、そこに至るまであげ続ける

花田の悲鳴が、なんとも爽快というか、当然のように思えて

しまうから暴力の世界は怖い。

 

アウトレイジ
 

やくざの世界は、映画やテレビドラマなどで知るのみですが、

大友のような、つまりかつての任侠映画に登場するような人物

が今でも存在するのでしょうか。いや、これは一生知りたくない。
ラスト付近に大友が鉄工業者を殺害したのは、2作目のケジメ

だと後で知り、彼の執念深さを思い知るのです。これぞ

「ザ・ヤクザ」なんじゃないのかしら。いや、知りたくない。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ

 


ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル

3

JUGEMテーマ:アクション映画全般

 

ジュマンジ

 

「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」

原題:Jumanji:Welcome to the Jungle

監督:ジェイク・カスダン

2017年 アメリカ映画 119分

キャスト:ドウェイン・ジョンソン

     ケビン・ハート

     ジャック・ブラック

     カレン・ギラン

     リス・ダービー

 

校長先生から居残りを命じられた4人の高校生は、

その部屋にあった古いゲームでプレイを始める。

すると彼らはそのゲームの世界に入り込んでしまい...。


<お勧め星>☆☆☆☆ 予想と全く違って、ワクワク、

ドキドキしつつちゃんとしたストーリーにちょぴり感動

しました。


本当の命は1つ。生き方が重要。


1995年映画「ジュマンジ」は未見ですが、そんな

ことを気にしなくても十分見られる映画です。TVCMを

繰り返し流したり、観終わった人たちが

「すっごく良かった(どう良いのか?)」
「涙が出ました(なぜ?)」

「ものすごい迫力です(そりゃそうだ)」などと語って

いるシーンを使う映画はどうも敬遠してしまうへそ曲がり

なんです...が、ドウェイン・ジョンソンが好きなので、

好奇心もあって鑑賞。
2m近い身長と何といってもWWFの全チャンピオンに

ふさわしい見事な肉体にく・ぎ・づ・け。1日に5165cal

も摂取するそうです。それが当然脂肪ではなく、あの、

プルプルふるえそうな筋肉に変わるわけです。プロレスラー

出身の俳優が多くいるアメリカで、演技がしっかりできる

数少ない人物だと思います。ただの筋肉自慢の暴れん坊

じゃないんです。
まず、1996年、1人の青年が古いゲームの箱を開ける

シーンから始まります。
そして現在。ゲーム好きのオタク、スペンサー、彼に宿題を

やらせるフリッジ、スマホ大好き、男子大好きの可愛いおバカ、

ベサニー、陰気で理屈っぽいマーサの4人がそれぞれの理由で

居残り部屋に集められます。

 

ジュマンジ
 

この4人のキャラがとにかく濃いので、すぐに顔と名前が

くっつくけれど、それもつかの間、あっという間にゲームの

世界に突入。ドウェイン・ジョンソン演じるブレイブストンは

スペンサー、フィンバーはフリッジ、ベサニーは何と腹の出た

オベロンというおっさん、マーサは、ルビーというウエストの

くびれくっきりのイケてる女性に変貌。つまりゲームのアバター

になってしまうのです。

 

ジュマンジ
 

見てくれが全く変わったのに性格は全然変わっていないのは、

その格差が大きいだけに笑いも大きい。オベロン(ベサニー)

はおしっこの仕方が分からないし、それを教えてもらい実践すると

「すっごい簡単じゃん!」
と大喜びします。そうですよね。どこに行っても女子トイレが

長蛇の列なのは、とにかくあれこれ面倒なんです。やることが

いっぱいあるんです。
そして彼らにあてられたミッションはジャガーの目を盗んだ

ヴァン・ペルトからその宝石を奪い返し、元の岩にはめることで

平和な世界を取り戻すこと。それができないと現実世界の

戻れないのです。あら、困った。ついでによくあるライフは

3つですよ。「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(2014)

のように失敗したらとっとと死んでまたやり直し、というわけには

いきません。

 

ジュマンジ
 

ゲーム内に登場するのは猛獣たちばかりで、特に蛇が大映しに

なるので、蛇が苦手な人はラスト付近は卒倒するかもしれません。

サイとかカバとかヒョウは特に怖く感じなかったかな。
ライフが3つあると思っていても1つ減っただけなら

「まだ2つある」と思うけれど、残り1つになると

「もう1つしかない」と誰でも考えるものです。急に臆病に

なったり、他人任せにしたりというシーンも見られますが、
この映画の爽快なところは、いやな奴がいない、ということも

一因かもしれません。誰も死んでほしくないと心から思えてくる

のです。そこに至るまでには、現実の世界での偏見が消え、自分

に自信が持てたり、他のことに関心が向くようになっていく

メンバーや現実世界でできなかったことができる自分を見て、

自分の存在価値を実感できるメンバーなど、ある種の成長物語の

凝縮版にも見えます。そして一人ではできなかったことが4人

(実は5人)が団結することで、互いの弱点を逆に生かし、秀でた

能力は率先して活用するという姿はちょっと感動。特にラスト

付近の展開はスリルがありつつ、ちゃんとつじつまも合っていて

好感度アップです。
それにしても絶対に見逃せないのはブレイブストンとルビーの

キスシーンですね。あれは獣臭が漂ってきて大笑いしました。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ

 


三度目の殺人

4

JUGEMテーマ:邦画

 

三度目の殺人

 

「三度目の殺人」

監督:是枝裕和

2017年 日本映画 124分

キャスト:福山雅治

     役所広司

     広瀬すず

     満島真之介

     吉田鋼太郎

     市川実日子

 

エリート弁護士の重盛に強盗殺人事件の容疑者

三隅の弁護の依頼が持ち込まれる。三隅は犯行を

自供しており、情状酌量による減刑を求めるだけの

簡単な事件に思われたが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ 見た人がいろいろ考えること

ができる映画です。


三度目の殺人の意味


2018年第71回カンヌ国際映画祭のパルムドールを

受賞した「万引き家族」の是枝監督作品です。是枝監督は、

作品全体に漂う空気感がとても緩やかで、しかし核心部分

では強く輝きを放つものを見せるというイメージを

個人的に持っており、大好きな監督の一人です。
特に2015年「海街diary」は美人4姉妹が鎌倉の景色と

重なり、何度でも見たくなる内容でした。ちなみに原作の

漫画は読んでいません。
今回は法廷サスペンスとうことで、いつもと雰囲気が異なる

のかと思いましたが、やはり光の使い方やBGMに流れる

ピアノの音、風の音などが効果的に使われ、緊張感の中に、

決して不快な瞬間を抱かせない独特の何かを漂わせています。

また十字架を意味するかのような被害者の燃えた跡、雪合戦

の後に倒れこむ姿、カナリヤの墓、ラストの十字路などが象徴的

に表れ、この映画が罪と裁きを観念的に描いているように

思えるのです。

 

三度目の殺人
 

エリート弁護士重盛が死刑回避のためだけに弁護を行おうと

考えていた強盗殺人事件犯、三隅にとにかく振り回され、

次第に自分と彼を重ね合わせてしまったことで、自信満々

だった重盛が、すべてのものに疑問を抱いて行ったかのよう

にも受け取れました。

 

三度目の殺人
 

逮捕後すぐに自供したはずの三隅。しかし彼の供述は二転三転し、

被害者の妻による「保険金目当ての殺人依頼」を週刊誌記者

に告白する。何も聞かされていない弁護側は、方針の転換を

せざるを得ないのです。すると次には被害者の娘、咲江が

「父から性的暴行を受けていた。三隅さんは父を殺していない」

と言い始める。

 

三度目の殺人

 

ああ、こうなると三隅犯行説すら揺らいできます。ところが

この咲江は自らの脚が不自由な理由を嘘で固めています。

嘘つきなんです。その上、今度は三隅自身が「実は殺していない」

と言い始めます。こうなると「真実」はなにかすっかり

わからなくなるのですよ。

 

三度目の殺人


ただ三隅の死刑だけを回避する弁護を行うはずが、すべての

ストーリーが崩れ、おまけに三隅がかつて起こした事件の

せいで疎遠になっている娘と、重盛が別居中の妻との間に

もうけた娘が重なってきてしまうのです。その上、重盛の

かつての事件の判決を下したのが重盛の父であり、2人殺害

なのに死刑を回避し、無期懲役だったことを知ると、彼は

混乱します。犯罪は社会が生んだと思われていた30年前。

今はどうか。「人の命を自由にできるのは裁判官」と語る三隅は、

人間の意志に関係なく命が選別されることに途方もない理不尽

さを感じていたのでしょうか。いや、私個人の考えでは、彼は

そんなことを考えていなかったと思うのです。殺されて当然の

人間もいなければ生まれてこなければよかった人間もいない、

というきれいごとを並べ立てても社会において、そう考えてしまう

事例はいくつもあるかもしれません。ただそれを誰が裁いて誰が

決めるのか。その最後の砦である裁判所が、真実を求めるのでは

なく、弁護士、検察官、裁判官のそれぞれのメリットを求める場所に

なっていないのかと考えてしまいます。
終盤の拘置所のガラス越しの重盛と三隅は、最初日差しが重盛に

当たっていたのに、途中でガラスに映る三隅と重盛が重なって

映ります。三隅は重盛を演じていただけの空っぽの器の人物で

あるかを物語るようでした。三隅が飼っていた5羽のカナリヤの

話も象徴的に思えました。ゆっくり考えたい映画です。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ

 

 


グリーンルーム

4

JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

グリーンルーム

 

「グリーンルーム」

原題:Green Room

監督:ジェレミー・ソルニエ

2015年 アメリカ映画 95分 PG12

キャスト:アントン・イェルチン

     イモージョン・プーツ

     パトリック・スチュワート

     カラム・ターナー

 

売れないパンクロックバンド「エイント・ライツ」は

知り合いの紹介で、ポートランドのライブ会場で演奏

をする。しかしそこはネオナチの拠点であり、パットが

不運にも殺人現場を見てしまったことでメンバー全員が

楽屋に閉じ込められてしまうのだった。


<お勧め星>☆☆☆ ネオナチVSパンクロッカーの勝ち目

のない闘いなのですが、意外と強い。


無人島で聴きたいバンド名を言うな


グリーンルーム=「楽屋」
監督は「ブルーリベンジ」(2013)の

ジェレミー・ソルニエで、あの映画は復讐に燃える男の姿

を静かにそして残酷に描いていました。私個人の好みと

しては好きな映画の1つです。ただ、周りの人間から
映画の趣味の悪さを指摘され、観たいと思う映画の多くは

ボッチ鑑賞。ふふん、レディースデイに行った

「ゲットアウト」だって女性一人鑑賞がたくさんいたぞ。

さすがに「ピラニア3D」はいなかったけれど。
ついでに「ピラニア3D」は笑えちゃうからいけない。
ところがホラー、サスペンス映画が好きを自称していても

苦手なタイプのものがあり、「スクワーム」(1976)

のように芋虫的なものが登場するものや「ディセント」

(2005)のように閉鎖的な場所に閉じ込められるものは
見ることは見るけれど、ちょっと目を覆っちゃう。芋虫嫌いは、

小学校の廊下のゴミ箱の上にお蚕の箱が置いてあって、

桑の葉をむしゃむしゃ食べるお蚕が..いや、もう言わない。

あれがトラウマに違いない。
そして閉鎖的な空間が怖いのは、幼少期、近所の神社にあった

防空壕の跡に入り込んだのが怖かったのを引きずっているのだ

と思う。今は「立ち入り禁止」の札が立っていたなあ。
この映画でも売れないロックバンドのメンバーがライブ会場

の楽屋に閉じ込められます。しかしそれは特に「監禁」と

いう恐怖ではなく、ドアの向こうに何が待っているかという

恐怖の方が強いです。
メンバーの一人パットが演奏後、入っちゃいけないと言われた

楽屋にスマホを取りに戻ったことが原因なんですね。そこで

女性が殺害されているのを見てしまう。
「なにも見ていません」「誰にも話しません」
いやいやこのライブ会場の雰囲気を見たら、ヤバイと気づけよ!

と思ってしまう。

 

グリーンルーム

 

スキンヘッドに革靴、黒ずくめの衣装の白人が見えなかった

かな。最初に歌った「ナチ・パックス」でナチスを侮辱した

歌詞を歌った時、彼らが唾を吐いたり、今にも飛びかかり

そうだったことに気づけよ!
パット役は「スタートレック」より「ゾンビ・ガール」

(2014)の方が印象に残っている2016年に27歳で

事故死したアントン・イェルチン。彼はバンドのメンバーと

殺された女性の友人、そしてネオナチの男と共に楽屋に

閉じ込められるわけです。おまけに警察官がボスらしい。

 

グリーンルーム

 

グリーンルーム

 

どう見ても勝ち目はないと思ったら、あら、リースったら

格闘技の締め技が上手いじゃありませんか。しかしドアを

隔てた向こうにはネオナチの集団がいるわけで、彼らが

使うのは大陸系マフィアが使うようなナタと犬(ピットブルか)

であり、それのよって傷つけられた時の切り傷や噛み傷はまこと

にリアルです。監督自身がこのリアルさにこだわったそうで、

「実際の作り物を使う」という手法ながら作り物に見えない、

とてもすんごい出来栄えになっています。痛いってば。
楽屋から出るたびに人が減っていき、じゃあここにとどまって

殺されるのかと思ったらまさかの展開です。パットが語った

「ペイントボール作戦」がなぜに成功したのかは気にしないで

おくと、どんな飼い主でも犬は忠実なんだなと実感する

ラストシーンは少ししんみりします。

もうロックバンドのメンバーは残っていないしね...。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ


グレイテスト・ショーマン

3

JUGEMテーマ:洋画

 

グレイテストショーマン

 

「グレイテスト・ショーマン」

原題:The Greatest Showman

監督:マイケル・グレイシー

2017年 アメリカ映画 105分

キャスト:ヒュー・ジャックマン

     ザック・エフロン

     ミシェル・ウィリアムズ

     レベッカ・ファーガソン

     ゼンデイヤ

 

仕立て屋の息子に生まれたフィニアスは父を亡くした

後に、幼馴染の令嬢チャリティと駆け落ち同然に結婚

する。彼は妻子を幸せにするため、「ユニークな人間

を集めたショー」を計画し、人気を博するが..。


<お勧め星>☆☆☆☆ 体の奥からエネルギーが沸き

起こる気分になれる映画です。


愛を欲張らないで


上流の美徳と、冒険による笑顔が対照的に映るシーンが

見られるのですが、縁もゆかりもない上流階級の方々は、

きっと大口を開けて笑うようなこともないのだろうと勝手に

想像しています。ただ「エンターテインメント」に関して

言うと、わたしの身内でも「お笑い番組を見て笑うのは

くだらない」と考える人がおり、「ええ〜!こんな楽しい

のにくだらないの一言ですませるのか」と憤慨してしまい

ます。この点については個人の好みであり、また「笑い」の

ツボというのはそれこそ一人一人異なると思うので敢えて
気にしないようにしています。

「ラ・ラ・ランド」(2016)はストーリーとしては

単純な男女の出会いと恋愛とその後の人生を夢物語のように

描いており、映画内の音楽はどれも素晴らしく、ついつい

ハミングできるものばかりでした。「Another Day of Sun」

は気持ちを高揚させるために今もしばしば聴いています。
この映画では主役のフィニアスを演じるヒュー・ジャックマンの

歌声の素晴らしさは「レ・ミゼラブル」(2012)と同様に

太く力強く響き渡ります。

 

グレイテストショーマン

 

と同時に「ペーパーボーイ 真夏の引力」(2012)
のザック・エフロンが演じるフィリップも負けず劣らず美声を

わたしの耳に届けてくれました。ルックスも好み。
ストーリーの本筋は、フィニアスが、妻子のために借金をして

「アメリカ博物館」から「ユニークな人を集めショーを開く」と

いう事業に変更し、人々の人気を集めながらも、マスコミや

レイシストや上流階級の人々から批判され、挫折し、それでも

成功し、さらに何もかも無くし..というもので、その中に

フィリップとアフリカ系女性アンとの恋物語が挟みこまれた感じ

です。「フリークス」という1932年の映画がイギリスでは

30年間公開禁止になっていたように、やはりこの映画の中に

登場する「ユニークな人々」というのはフィニアスの事業、つまり

金儲けのための人集めに使われているように思えます。それを

真っ向から否定し、自由と平等を声高に語るフィニアスに対しても

少し違和感を感じてしまうことは確かです。ただこの映画を

大々的に公開し、「ユニークな人々」について、それが個性で

あると思わせてくれるのは、アメリカの良い部分の象徴であり、

その個性を受け入れる寛容さを持ち合わせた人々が多くいることは、
ぜひとも強調したい部分でもあります。そのテーマを避けて

作り出す映画こそ表面的な内容なものに終わってしまうとも

感じてしまうのです。

 

グレイテストショーマン
 

フィニアスが作ったサーカスは、庶民には人気を博するけれど、

芸術的には受け入れられず、新聞でも「ペテン師」と酷評されて

しまいます。それでも前を向くパワーは、彼が妻子を幸せにしたい

という強いエネルギーで支えられているのです。フィニアスの

妻チャリティ役のミシェル・ウィリアムズは
「マリリン 7日間の恋」(2011)「フランス組曲」(2014)

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2015)と個人的には

好きな映画ばかりに出演していますが、アカデミー賞獲得は
まだしていないようです。

 

グレイテストショーマン

 

「フランス組曲」はこの中でも最もお勧め映画です。
そしてフィリアスはさらなる上を目指し、オペラ歌手

ジェニー・リンドの興行を手掛けることになるのですが、

それは自分が最初に作り上げたショーの仲間を軽んじることに

つながり、始めから彼に向けられていた批判が蓄積され続けて

いたことすら忘れてしまっていたという大きな落とし穴に

はまる結果を向かえるわけです。

 

グレイテストショーマン

 

まさに成功と挫折。フィリアスはジェニーに去られ、借金を抱え、

劇場は焼失、フィリップは、ニューヨーク社交界だけでなく

両親からも拒否されてしまう。そこに何が残っていたか。残って

いたものの価値の大きさに気づければ、またそこから這い

上がればいいのです。家族、仲間、友人、恋人との愛、信頼、

友情は、苦しみを半減させ、喜びを倍増させる、喜びは共有する

者が多いほどその大きさが無限大に広がると思っています。
オープニングの「THE GREATESTSHOW」では足が自然とステップ

を踏み出すこと間違いなしです。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ

 

 


潜入者

5

JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

潜入者

 

「潜入者」

原題:The Infiltrator

監督:ブラッド・ファーマン

2016年 アメリカ映画 127分

キャスト:ブライアン・クランストン

     ダイアン・クルーガー

     ジョン・レグイザモ

     エイミー・ライアン

 

麻薬取引の取り締まりを行う潜入捜査官ロバートは、

麻薬カルテル撲滅のため、資金洗浄について捜査を

開始する。彼は同僚エミールとコロンビアの麻薬

カルテルへの接触を図るが...。


<お勧め星>☆☆☆  実話を基にしていて見ごたえが

ありますが、かなりソフトな内容です。


結婚式に大集合。


潜入捜査を描いた映画はいくつもありますが、麻薬

ではなくテロ計画阻止のため、ネオナチ組織に潜入した

FBI捜査官を描いた「アンダーカバー」(2016)

はとても印象的でした。主役は「ハリーポッター」

シリーズのダニエル・ラドクリフ。彼がスキンヘッドと

なり、心底ネオナチ思想に傾倒していくかのように

振舞う姿は、恐怖と共に、その心の葛藤も映し出され、

潜入捜査の困難さを体感しました。
日本で「おとり捜査」と言ったらやはり

「おとり捜査官 北見志穂」

ですよ。松下由樹さんが、毎回何かに扮して

(コスプレっぽく思えるほど)潜入し、危険ギリギリの

ところで、同僚の助けが来て事件が解決という、とっても

わかりやすいお話です。
さてこの映画では、1980年代に繰り広げられた

アメリカにおける麻薬犯罪カルテル崩壊作戦の1つを

描いているのです。まず主人公のボブが潜入捜査をして

いて逮捕されるシーンから始まり、彼が税関の捜査官で

あるとわかります。しかしこんな小さな取引では組織

壊滅はできないということで、麻薬取引で動く大量の金に

目をつけ、その資金洗浄の中に潜入しようということになる

わけです。とりあえず、名前が覚えられたのがボブ、相棒と

なるエミール、ボブの妻イヴ、ボブの上司ボニーですね。

 

潜入者
 

潜入者

 

後にボブの「婚約者」役として捜査に加わるのが

「女は二度決断する」(2017)のダイアン・クルーガー

演じるキャシーで、彼女がとても綺麗なんです。これは

映画を見ないといけない。
ところがこれ以降カルテルに接近するために下っ端に取り

入っていくのに、名前と顔が一向にくっつきません。

ラテン系のルックスなのと、麻薬取引でしばしばみられる

残虐な行為が見られないからでしょうか。特徴がつかみきれ

ないんです。

 

潜入者

 

それでも話は地道にコツコツ進み、悪人たちと知り合って

大物に近づいていくのです。中盤に登場する

ロベルト・アルケイノと妻にいたっては、人間的にはとても

好意的に描かれているし、ロバートもキャシーも親しくし

すぎてしまったと後悔している通り、あれでは「悪人」と

感じられません。そしてBCCI(国際商業信用銀行)も出てきて、

それはCIAに資金提供しているという。ちょっとすみません。

同じ国の中でたくさん組織があってそれが全然交流していなくて、

いや逆に敵対しているのは難しすぎます。
とにかくボブとキャシーの偽りの結婚式が開かれる10月3日に

全員が集合し、そこで一挙に確保するという計画が出来上がる

のはいつだった?そこまでの信用を得る努力があまり描かれて

いなかったけどいいのかな。

 

潜入者
 

麻薬カルテルというと血なまぐさい映像ばかり出てくると思う

けれど、それはほとんどないし、非情なシーンも少ないので

安心して見られる反面少し物足りないかな。「ボーダーライン」

(2015)のように心にずしんとは来ませんでした。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ

 

 


シェイプ・オブ・ウォーター

4

JUGEMテーマ:洋画

 

シェイプオブウォーター

 

「シェイプ・オブ・ウォーター」

原題:The Shape of Water

監督:ギレルモ・デル・トロ

2017年 アメリカ映画 124分 R15+

キャスト:サリー・ホーキンス

     マイケル・シャノン

     リチャード・ジェンキンス

     マイケル・スタールバーグ

     オクタヴィア・スペンサー

 

研究所の掃除係として働く声が出せないイライザは、

ある日研究対象として持ち込まれた「彼」を目撃する。

ストリックランド博士により虐待される「彼」にいつ

しか心を寄せるようになるが、その「彼」が生体解剖

されると聞き、何とか研究所から連れ出そうと計画する

のだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 純粋な愛の姿を美しい光や水の

映像と音楽で描いています。


喪失は愛で補填される。


ギレルモ・デル・トロ監督作品で一番好きなのは、やはり

「パンズラビリンス」(2006)でしょうか。童話の

世界観に浸り、美しい迷宮での生活を楽しんでいるうちに

突然訪れる現実世界にはそのギャップの大きさから、ただ

ただ悲しみが残りました。
この「シェイプ・オブ・ウォーター」よりアカデミー賞

作品賞は「スリー・ビルボード」が獲ると予想して先に劇場

にて鑑賞。とてもよく練りこまれた作品であり、ラストに

かすかな希望が感じられる秀作でした。
ところが作品賞ではなかったんですよね。そして今頃配信で

鑑賞しました。この映画は絶対に大スクリーンで見るべき

ものだったととても後悔しています。とはいえストーリーは

一言で言うと切なく美しい「究極の愛」の物語なんです。
映画内に登場する「彼」は1954年映画「大アマゾンの半魚人」

に似ているというけれど、半魚人と思いたくない。この

「彼」は知性と意志を持ち、さらには...。

 

シェイプ・オブ・ウォーター
 

登場するのは声が出せないイライザ、彼女と同居する

リストラされたゲイのジャイルズ、イライザの同僚の黒人女性

ゼルダ、そしてアマゾン部族から神のように崇拝された異形の

「彼」とマイノリティばかりなのです。そして時は1962年の

東西冷戦時代ですから、ソ連のスパイも登場する。さらに

圧倒的な存在感を放つのが、この「彼」を捕獲し、研究対象と

して虐待するストリックランド博士です。この役は

マイケル・シャノン。

 

シェイプ・オブ・ウォーター

 

彼の場合は性格が異形なのかと思うほど嫌な男で、その役を

とても上手に演じています。R15指定かつ一か所ボカしがある

というので、どこかと思ったら何のことはない、

マイケル・シャノンのお尻でした。別に気にもならなかったわ。
「美女と野獣」のように甘い恋愛映画かと思っていると、かなり

残酷なシーンが幾つも見られ、血を見るのが苦手だったり、

爬虫類が苦手な人は、お勧めしない映画です。
そしてゆで卵1つで始まったイライザと「彼」の心のつながりは、

ロシアのスパイ、ストリックランド、イライザの3つ巴で、

(いや、スパイとイライザはタッグを組んだか。)遂には

イライザの自宅のバスルームに「彼」をかくまい、そして愛を

はぐくむこととなります。同居人のジャイルズが「彼」を見て

「美しい」と言ったのは。自分がうわべだけ着飾った醜い人間を

数多く見てきたからかもしれません。

 

シェイプ・オブ・ウォーター
 

バスルームにお湯をはって、それもバスルームいっぱいにはって、

交わされるラブシーンは本当にまるで絵画を見ているような

思いになります。ラスト付近はまさに手に汗を握る展開であり、

その直前にイライザが妄想するシーンは「ラ・ラ・ランド」の

終盤を思い起こさせるもので、イライザの口から美しい歌声も

聞かれるのです。

 

シェイプ・オブ・ウォーター

 

この緩急の差がまた見ている側を飽きさせません。
気持ちが高まると青く光る「彼」の体やイライザの首にある

傷など、いろいろなことに想いを馳せつつ、夢物語に包まれた

ように映画は終了します。緩やかな幸福感を味わえる映画でした。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ

 


LION/ライオン〜25年目のただいま〜

3

JUGEMテーマ:洋画

 

ライオン

 

「LION/ライオン〜25年目のただいま〜」

原題:Lion

監督:ガース・デイビス

2016年 オーストラリア映画 119分

キャスト:デブ・パネル

     ルーニー・マーラー

     ニコール・キッドマン

     デビッド・ウェンハム

 

5歳のサルーは兄の仕事について行き、駅ではぐれて

しまう。彼はストリートチルドレンとなった後に施設に

収容され、幸いなことにオーストラリア人夫妻の養子と

して迎えられる。彼は何不自由なく育ち大学生になるが、
ある時自分がインドで迷子だったことを鮮明に思い出す

のだった。


<お勧め星>☆☆☆☆


自分のルーツ


キャッチコピーは「迷った距離1万キロ、探した時間25年、

道案内はGoogle Earth」。実話ベースの映画ですが、少し

ずつ実際と異なることもあるようで、特に主人公サルーが

生家を探すのに使ったのは、Google Earthだけでなく

facebookもあったそうです。

 

ライオン
 

成人したサルー役は「スラムドッグ$ミリオネア」(2009)

「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」(2013)などの

デブ・パネル。彼の恋人ルーシー役は「キャロル」(2016)

のルーニー・マーラー。

 

ライオン
 

また養母スー役はニコール・キッドマンが演じています。

ニコール・キッドマンの抑えた演技も素晴らしいです。
黄色い蝶の大群に囲まれた5歳のサルーから始まるこの映画

では、時折その蝶が姿を見せ、見終わった後で調べてみると、

彼の守護神のような意味を表しているのだと知りました。

とはいえ、この壮大な家族探しの旅は、幼いサルーが兄グドゥの

仕事に無理やりついて行ったことから始まります。どんなに

力持ちでもどんなに真面目でも、5歳児なんですよ。サルーは

駅で兄とはぐれてしまい、おまけに回送電車ではるか遠い

カルカッタまで向かってしまうのです。人々がひしめき合う駅の

雑踏で、小さなサルーは柱をよじ登り「グドゥ〜」と呼び続けます。

この姿は彼が襲われているものすごく大きな不安を感じ取れる

もので、見つかるはずもない兄の名を呼ぶ声がいつまでも響き渡り、

耳から離れません。

 

 

ライオン
 

かつて実姉が「インドへ旅行したい」と言って突然出かけた

ことがあって、それも初めての海外旅行であり、

「どうしてインドに行きたい?」と尋ねたところ

「ガンジス川でで沐浴をしたい」との答えが返ってきました。
それがこのサルーが迷った時期とちょうど重なります。姉は

沐浴の夢はかなわなかったし、ついでに帰国時に下痢の症状が

あり、検疫で止められ、さらにはその後保健所にも行く羽目に

なったことを思い出しました。
サルーの困難な状況はここで数多く映されます。ストリート

チルドレンとなり、それを捕まえに来た大人に追われ、人身売買

に巻き込まれそうになり、さらには劣悪な環境の施設に収容

されます。サルーは幸いなことに5ヶ月で里親に恵まれたことが、

その後のサルーの人生が大きく変わったと思うのです。そして

オーストラリアへ渡り、何不自由ない家庭の子供として育って

いきます。翌年同じように養子の弟マントッシュを受け入れた

この家庭はマントッシュの問題行動に苦労するわけですが、

それは彼の養子に出されるまでの過酷な生活の積み重ねであっ

たことは想像に難くないのです。
ではなぜサルーは本当の母や兄を探したい欲求にかられたの

でしょうか。それは映像で見られるように、時折浮かぶ故郷の村や

母や兄の姿、そしていくつもの出来事が頭から離れなかったに

他ならないと思うのです。「自分探しの旅」と称して世界を放浪

するバックパッカーがいる中で、自分のルーツを探しに行く者は

ほとんどいないと思う。自分のルーツがオーストラリアになく、

インドにあることはわかっているのに、その過去を探すことは

今の養父母を裏切ることにもなる。サルーの心の葛藤は続きますが、

それでも過去の記憶を取り戻し、これから先の人生を歩みたいと

切望するサルーの気持ちもなんとなくわかる気がするのです。

本当に何となくですが。
インドで施設に収容されている時、サルーは顔写真付きで新聞に

親探しの記事を載せられるのですが、反応はありませんでした。

それはなぜか。彼の母は新聞どころか「文字」が読めなかったのです。
ちなみにインドにおける識字率は1991年当時48.2%に過ぎず、

田舎の村に住む母が文字を読めなかったとしても当然のことなのです。
一方里親であるジョンとスーは決して子供が持てないから養子を

選択したのではなく、「恵まれない子たちを助ける方が意義がある」

という崇高な志を持っていたことを知ると、また感動します。
その経緯も神秘的であり、彼らとサルーの結びつきも運命的なもので

あったのかもしれません。
「闇の子供たち」(2008)ではタイにおける臓器移植を目的と

した幼い子供の人身売買や幼児売買春を描いていましたが、インドに

おけるストリートチルドレンは世界で最も多く、その中から人身売買

で連れ去られる者もかなりの数いるのです。
但しこの映画ではあくまでも自分のルーツを探すことを主に描いており、

それが叶う時には感動するとともに、兄グドゥがなぜ戻らなかったのか

理由を知ると、サルーの脳裏に浮かぶのは兄と2人で線路を飛び跳ねて

遊んだこと、一緒に石を運んだこと、自転車に乗せてもらったことなど

楽しいものばかりであり、彼の記憶の中ではグドゥは永遠にあの時の

まま存在し続けるのだろうと思ってしまいました。

Google Earthと自分の断片的な記憶をつなぎ合わせて目的を達成

したサルー。そしてラストに映画の題名の意味が分かるのです。

住んでいた場所をいくら大人に伝えても伝わらなかったのは、
「ガネストレイ」ではなく「ガネッシュタライ」だったからで、

自らの名前すら「サルー」ではなく「シェルウ」だったと知ると

サルーがいかに幼かったのかを改めて実感します。

 

ライオン
 

シェルウの意味は「ライオン」

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ



カレンダー

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< June 2018 >>

ブログ村

今日のわんこ

powered by 撮影スタジオ.jp

アマゾン

遊びにきてくれてありがとう!

カウンター

祝日カレンダー

Sakura Calendar

最新記事

categories

過去の記事

コメントありがとうございます!

トラックバックありがとうございます!

recommend

お友達

ミス・マープルについて

書いた記事数:2815 最後に更新した日:2018/06/24

あの映画を探そう!

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM