平方メートルの恋

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JUGEMテーマ:洋画

 

平方メートルの恋

出典:IMDb

 

「平方メートルの恋」

原題:Love per Square foot

監督:アーナンド・ティウーリー

2018年 インド映画 133分

キャスト:ヴィッキー・コウシャル

     アンギラ・ダール

     アランクリタ・サハイ

     ラトナー・パークタ・シャー

 

両親と同居の銀行員のサンジェイは自分の家を

持つことが夢である。一方、同じ銀行員のカリーナは

金持ちの婚約者がいるものの、彼の家に同居するのでは

なく、自分の家を持ちたいと願っている。この二人が

ひょんなことで知り合いになり、新婚夫婦向けの家を

購入し、それぞれの部屋を持つことを考えるのだった。


<お勧め星>☆☆☆半 インドにこんな映画があったのね〜

というようなラブリーな内容です。


サプライズは夢を与えるものでなくっちゃ


まさかあり得ないと思うのですが、あり得てしまうのが

この映画で、主人公のサンジェイは、銀行の上司ラシ

(夫がいる)と絶賛不倫中。といってもオフィス内で

キスするくらいですが、他にもサンジェイはカリーナと

なんと電車内でキスするシーンが出てきて、もうアッと

驚いてしまいます。「バーフバリ」での唇と唇が触れそうで

触れないという寸止めシーンの連続を思い出すと潔いったら

ありゃしない。但しリアルなベッドシーンは出てきません。

そこままだまだでございます。
鉄道アナウンサーなんて職業が存在するのを初めて知った

けれど、その職をもうすぐ定年で終えようとしている父を

持つサンジェイは、その社宅に両親と暮らしているのです。

自分の部屋すらなく、そこへ叔父さんが転がり込んできて

「プライバシーはどこ?」の世界ではありません。トイレ

だってゆっくり入れやしない。社宅の屋上に上って、前に

そびえたつ高層アパートを見ては「欲しい」と願い続けて

いるわけです。ムンバイは13億人が暮らし、物価は安い

けれど住宅事情はかなり酷いようです。家賃は世界トップクラスで、

ムンバイの物価は安いにもかかわらず、家賃は日本よりも
はるかに高く、建物が古いものも現役で、いたんでいるものも

高額で貸されているそうです。古い家でも最低家賃月30万円、

中心部の良い家だと家賃が100万円以上にもなると聞くと

庶民には高嶺の花としか思えません。サンジェイがローンを

組もうとして断られるのも月々の支払いが月給のほとんどを

占めてしまうからなのです。
一方のカリーナは大きな屋敷に両親と暮らすサムという婚約者が

いるけれど、結婚したら自分の家を持ち、家事は半々でしたい

という夢を持っています。このカリーナが母親と暮らす自宅も

ボロいにもほどがあるほどのボロ家で、上階の住民が動くと

天井から埃が降ってくる有様です。

 

平方メートルの恋
出典:IMDb

 

この二人がひょんなことで知り合い、「新婚夫婦向けのアパート」

を申し込む計画を立てるわけです。これは抽選だけれど、

当選すればローンが組めるし、自分の家が持てるという。つまり

家のために「偽装結婚」をしようと考えるのです。ところが

二人が序盤に絶対に惹かれ合っているなと気づいてしまうから、

また胸がキュンキュンします。偽装がいつ本物に変わるか、いや

もう変わっているけれど、尺から考えて幾つの難関があるだろうか

などと想像するとワクワクしちゃう。
まず第一の難関は、「結婚証明書」が必要なこと。

それはサンジェイが電車の中でスリを通じて知り合った男性が

公証人だったからラッキーです。このスリ事件の犯人も

「家賃の支払いのため」という理由だったことはそれほどムンバイ

では住宅事情が悪化しているのだなとまたまた実感します。

そして次の難関は、手付金のために退職金を前借りしようとラシに

話すと、夫が留守なのをいいことに無理やり関係を...。あれは

あったのかなかったのか。

三つ目の難関は互いの家の宗教の違いです。これはサンジェイの

家がヒンドゥー教でカリーナの家がキリスト教ということで

まだよかったのかもしれません。ヒンドゥー教とイスラム教であった

ならばもう少しややこしくなったとも思えます。この辺りは

宗教がらみの事件を調べるとすぐにわかります。

結局もっとも大きな障害になったのは、ラシとのあの一夜で、それが

結局後半の展開につながっていきます。

 

平方メートルの恋

出典:IMDb

 

それにしてもカリーナもラシもものすごくきれいなんです。インド

映画の女優さんはきれいな人ばかりだけれど、他のインド映画に

比べてスタイルがすらりとしているのも特徴的です。こんな二人から

好かれるサンジェイったら!!いや彼もなかなかのイケメンですよ。
「家は私のもの」というカリーナに対し「家のために結婚する」と

答えるサンジェイのその言葉の意味は、前半の思いとは全く異なり、

深い愛情が込められていたと感じました。それにしてもヒンドゥー教式の
結婚式のド派手なこと。

あんなにぎやかな式だったら、みんな踊って歌って飲んで食べて

大暴れしたくなりますね。(やってみたい)

 

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コブリック大佐の決断

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JUGEMテーマ:洋画

 

コブリック大佐の決断

出典:IMDb

 

「コブリック大佐の決断」

原題:Koblic

監督:セバスティアン・ボレンスタイン

2016年 アルゼンチン=スペイン映画 92分

キャスト:リカルド・ダリン

     インマ・クエスタ

     オスカル・マルティネス

 

1977年、軍事政権下のアルゼンチンで、囚人たちを

軍用機に乗せ空中で突き落とす「死の飛行」が行われて

いた。その任務から逃亡したコブリック大佐は、知人

アルベルトがいる田舎町へやってくるが...。


<お勧め星>☆☆☆ 「死の飛行」という言葉を初めて

知った映画です。


必ず迎えに来る


「汚い戦争」と呼ばれた1976年から1983年に

かけてのアルゼンチン軍事独裁政権は、左派ゲリラの

取り締まりに数多くの弾圧を実行しました。最終的には

民衆の支持を獲得するために起こしたフォークランド戦争に
敗北し、その政権は崩壊しています。
この映画は当時の暴政の中で行われた、政治犯を軍用機に

乗せ、空中から突き落とすという「死の飛行」任務に

あたっていたパイロット、コブリック大佐の姿を描いています。
1977年、妻らしき人物と別れを告げ、バスに乗り込む

コブリックは、何度もフラッシュバックする恐ろしい任務の

光景に悩まされているのです。誰が考えつくのかと思うほど

非情な行為を、なぜに平然と行える状況ができてしまうの

でしょう。任務と割り切って定年まで勤めあげれば、士官で

あるコブリックは、悠々自適な生活が送れたはずなのです。

いや、その前に政権が崩壊しているので、きっとなにがしかの

罪に問われたんだろうな。
コブリックは旧知のアルベルトが住む田舎町を訪れ、彼の

もとで農薬を散布する小型飛行機を操縦する仕事を与えられる

のです。これがまた上手い。当たり前だけど。

エンジントラブルで道路に不時着することになっても、

「よくあること」と言って上手に操縦しています。ああ、

そこにまずい人物がいるんです。

 

コブリック大佐の決断
出典:IMDb

 

どんな田舎町での狡猾な権力者は存在して、それがこいつ、

警察署長ペドロです。軍事独裁政権下では、そのミニチュア版

があちこちに存在したということが伺えます。ペドロが、また、

人相も声も悪く、時代劇で「おぬしも悪よのぅ〜、はーはははは」

と笑う悪代官そのものなんですよ。そうそうこいつ、明らかに

カツラとわかります。いつ取れるのかしら??
コブリックはただ平穏に暮らそうとするも、そこにナンシーと

いう女性が現れ、あっという間に恋に落ちるんです。あれ?

コブリックはブエノスアイレスに妻を残してこなかったっけ。

ああ、もう別の人生を歩もうと決めたからいいのか。

このナンシーは美しいけれど、かなり複雑な境遇であり、彼女は

ここから抜け出したいと思っているんです。
このナンシーを巡り起きる事件がさらなる事件を呼びます。

ここでペドロが「全く同じ状況」と言うんですね。本当に嫌な奴。
何かが起きそうになる時「タタタタタ」となるBGMは不安な気持ちを

募らせます。この静かで美しい田舎の景色に最も似つかわしくない

事が立て続けに起きてしまいます。

 

コブリック大佐の決断
出典:IMDb

 

軍政下での軍服の威力と暴力に対して行われる暴力のむなしさを

感じながらラストの映像を見続けました。
主演のリカルド・ダリンは「瞳の奥の秘密」(2010)同様に、

物憂げな表情がとても魅力的です。

 

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ケシ畑のちいさな秘密

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ケシ畑

出典:IMDb

 

「ケシ畑の小さな秘密」

原題:Jardin de amapolas

監督:フアン・カルロス・メロ・ゲバラ

2012年 コロンビア映画 86分

キャスト:ルイス・ブルゴス

     カルロス・ウアルバ

     ルイス・ロサノ

     パウラ・パエス

 

内線が続くコロンビアで、シモンは父エミリオと

ともに従弟のいる町へ向かう。そしてエミリオは

従弟の紹介でケシ畑で働くことになる。一方

シモンは隣家のルイーサと仲良しになり、彼女が
拾った犬が飼い主のもとに戻されたことを知り、

その犬を連れだすことを計画するのだった。


<お勧め星>☆☆☆半 地味な映画ですが、内線下で

普通に暮らす人々の苦しみが伝わります。


緑の湖面と笑顔


コロンビアという国は、約50年にわたって内戦が

続いた国で、2016年に和平合意(コロンビア政府と革命軍)

に至り、2017年には武器引き渡し終了のセレモニーが

行われました。ちなみに当時のサントス大統領には、

2016年ノーベル平和賞が贈られています。
映画内に登場する右翼的な民兵組織も2005年以降

武装解除が決定しているようです。とはいえ国内では、

右派左派ともに幾つかの武装集団が存在し、麻薬犯罪や

企業恐喝、また単発的な戦闘が起きています。
最も大きな問題は、どちらも麻薬が資金源であるという

ことで、映画内でエミリオが働くことになった違法な

ケシ畑に、空中から薬剤を散布する飛行機が登場します。

これは左派ゲリラの資金源を断つために介入した欧米諸国

の存在を表しているのです。このケシ畑のボスは、息子を

殺されているし、エミリオも妻子を殺されています。

エミリオの場合は、ゲリラに車を貸したことで、それが

民兵組織に狙われた原因なのですが、なぜに武装していない

人間に銃を向けるのでしょう。

「積み荷の豚とママの血が混ざってたくさん流れていた」
エミリオが息子シモンと二人きりで移動し、従弟のもとに

向かったものの、その家はもぬけの殻で、壁には

「人々に自由を」

「密告者は出ていけ」という落書きがしてあります。

この町は民兵が仕切っているらしく、いつゲリラが攻撃

してくるかわからない状況なのです。そこで仕事を求める

エミリオは、従弟のウィルソンを頼り、ケシ農場で

働き始めます。金はいいが、妥協は多いとその仕事を渋る
エミリオも生活するためには金が不可欠なのです。

貧困と麻薬、内戦という絶望的な情況であってもそこで

生活するしかない人たちは存在し、そこに「日常」が

あるわけです。シモンは隣家のルイーサと仲良しになり、

ルイーサが可愛がっていた迷い犬が、持ち主に引き取られて

しまうと、彼女を喜ばせるために、その犬を持ち主が

留守の間だけ連れだすことを計画します。ルイーサが

体調が悪いのは、例の空中散布された薬剤のせいであると

知ると、さらに戦争の恐ろしさを感じてしまう。そういえば

幼い頃、小型飛行機が田んぼに農薬を空中散布する時が

あって、何の注意も勧告されず、普通に体育の授業を
受けていたことを思い出しました。散布した後には、

なんとも言えないにおいが漂ったものです。
父の後をつけてケシ畑のボスに見つかり、彼に可愛がられる

ようになったシモンは、時間を見つけては犬を連れだし、

ルイーサと、束の間の、本当に束の間の楽しい時間を

送るわけです。その時の笑顔は忘れられません。ところが

父が信頼しているウィルソンは、妻子を他国に逃がし、それに

よって借金を背負っていることがわかると、この状況では

血縁者すらも裏切るかと、また絶望的な気持ちになります。
さらにゲリラ急襲後の民兵の報復により、そこにあった

「日常」はあっという間に消失してしまいます。ゲリラ攻撃中に、

父と逃げ込んだ家の壁に銃弾が撃ち込まれ、そこから差し込む

わずかな光、そして密告を疑われ民兵に連れていかれる

ルイーサ一家を含めた町民の姿と同時に映る、ケシ畑の倉庫で

シモンが転がすビー玉のカラフルさとその動き、さらに

地雷源を抜けた先に広がる森の奥の湖の緑色の水面の美しさ。
そのどれをとっても片方だけ切り取ってしまいたい。
内戦に限らず戦争で傷つくのは、無関係な人々がほとんどで

あることをここでまた痛感します。

 

 

 

 

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ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命

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ユダヤ人を救った動物園

出典:IMDb

 

「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」

原題:The Zookeeper's Wife

監督:ニキ・カーロ

2017年 チェコ=アメリカ=イギリス映画 127分

キャスト:ジェシカ・チャスティン

     ダニエル・ブリュール

     ヨハン・ヘルデンベルグ

     マイケル・マケルハットン

 

1939年、ポーランド、ワルシャワで動物園を営む

ヤンとアントニーナ夫妻。しかしドイツ軍の爆撃に

より多くの動物を失い、動物園は軍の管理下になる。

夫妻はユダヤ人がゲットーに収容され、劣悪な環境に

置かれていることを知ると、ここを隠れ家にしようと

考えつくのだった。


<お勧め星>☆☆☆ とても良い話だし、

ジェシカ・チャスティンの演技も素晴らしいけれど、

思いのほか心に響きませんでした。


生きるものすべてへの愛情


2頭のホワイトライオン?と眠る母子のうち、

母アントニーナ役はジェシカ・チャスティン。

 

ユダヤ人を救った動物園

出典:IMDb

 

「ゼロ・ダーク・サーティー」(2012)では冷静な

CIA分析官役、

「オデッセイ」(2015)では宇宙船の指揮官役、

「女神の見えざる手」(2016)では有能なロビイスト役

を演じるなど、強靭な精神力を持つ人間を演じることが

多いのですが、今回は「優しさ」を全面に出した人間と

なっています。
それは彼女の声の出し方や表情1つ1つから現れており、

特に「声」は、え?と思うほど細いのです。あくまでも

ヤンの良き妻でありつつ、人々を救うことを使命と考える

動物愛に満ちた女性という感じ。
突然の爆撃から始まる動物園の混乱やその後射殺されていく

動物たちが映るシーンで、まずこの映画を見るのをやめよう

と思ってしまいました。ここで思い出すのが、太平洋戦争中

の上野動物園の象の話です。わたしは幼い頃、祖母からも母

からも聞かされ、そのたびに涙をこぼしたし、今でも

思い出すと涙が出てきます。この話は創作部分が多く、

時間関係も事実とは異なっているということを知った上でも、

やはり何も知らない動物たちが戦争の犠牲になっていくのは、

人間と同じように辛い出来事だと思います。

 

ユダヤ人を救った動物園
出典:IMDb

 

冒頭のパーティーに出席していたドイツ人でヒトラー直属の

動物学者ルッツ・ヘック役は、ダニエル・ブリュール。

映画内で彼が語るように「絶滅動物の繁殖」の実現を考えて

おり、その彼の思惑とヘック、アントニーナの提案が上手く

かみ合って、この動物園は「養豚場」として稼働することに

なります。夫妻は、この養豚場を利用して、ゲットーにいる

ユダヤ人を救い出し、地下室に匿ったうえで別の地区へ

送り出して行くのです。その匿った場所は、動物園の地下室に

ある動物用に檻の中で、つまりゲットーというドイツ軍が

作ったユダヤ人専用の檻の中から、動物用の檻に移動するけれど、

それは「救う」という目的に使われます。

ゲットーは「命を奪う」という目的であるのと正反対です。

そして動物に注いだ愛情と全く同じようにユダヤ人たちに

惜しみなく愛情を注ぎ、慈悲あふれる姿を見せるのです。

 

ユダヤ人を救った動物園
出典:IMDb

 

ピアノを弾くのが合図で、匿われた人々が息をひそめたり、

階上に姿をあらわしたりしますが、突然姿を現すヘックには、

ハラハラするシーンがしばしば見られます。ヘックが

アントニーナに心を惹かれているのを利用する箇所がいくつか

出て来るけれど、あれは事実だったんだろうか。
終盤、収容所に送られる列車に乗り込むユダヤ人の中で

子供たちのあどけない顔、抱っこして乗せて、と両手を差し出す

しぐさを見ると、その先の出来事が分かっているだけに本当に辛い。

 

ユダヤ人を救った動物園

出典:IMDb

 

その時子供たちと共に列車に乗り込むのがユダヤ系ポーランド人

のコルチャック先生。彼が自分だけ助かることを拒否し、

子供たちと楽しそうにおしゃべりしながら移動する姿もまた

胸が痛みました。
コルチャック先生があげた子供の権利
「死についての子どもの権利」
「今日という日についての子どもの権利」
「あるがままである権利」
は今、もう一度確かめて、そして胸に深く刻みたいものです。
少し物足りなさを感じたのは、ナチスドイツ関係の映画があまりに

冷酷非道な内容が多いからでしょうか。

 

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ラッキー

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ラッキー

出典:IMDb

 

「ラッキー」

原題:Lucky

監督:ジョン・キャロル・リンチ

2017年 アメリカ映画 88分 PG12

キャスト:ハリー・ディーン・スタントン

     デビッド・リンチ

     ロン・リビングストン

 

90歳で一人暮らしのラッキーは毎日同じ時間に起き、

全く同じことを繰り返す日々を送っている。しかし

ある日彼は家で突然倒れ、医者に「加齢」が原因と

言われたことで、急に自分の「死」について考え始める

のだった。


<お勧め星>☆☆☆半 哲学的な会話も個性あふれる俳優の

演技ですんなり頭に入ってきます。


タートルではなくトータス


2017年9月に亡くなったハリー・ディーン・スタントン

の最後の主演作です。映画内の設定は90歳。亡くなった

年齢が91歳ということで、ほぼ同年齢の男性を演じた

ことになります。
ラッキーは毎日同じ時間に起き、たばこに火をつけ、朝の

身支度をし、ヨガらしきものを行い、牛乳をコップに1杯

飲むのです。次に飲む牛乳をコップに注ぎ冷蔵庫にしまって

おくことも忘れません。
彼のしわだらけの顔やたるんだからだの皮が、その老いを

十分すぎるほど感じさせます。

 

ラッキー

出典:IMDB

 

そしてカウボーイハットをかぶってダイナーへ行き、店主の

ジョーに禁煙を勧められるのを無視し、パズルをしてから

帰宅する途中で牛乳を買っていくのです。夜は行きつけの

「エレインの店」でブラッディ・マリーを必ず注文。

ブラッディ・マリーはウォッカベースのトマトジュースの

カクテルだけれど、トマトジュースは嫌いだから、ウォッカ

好きだけれどこれは飲めないな。それにラッキーのグラスに

マドラー代わりに差してあるのは明らかにセロリよね。

これもアウト。

 

ラッキー

出典:IMDb

 

この「エレインの店」で友人ハワードが飼っていたリクガメが

逃げ出したと語るのです。名前は「ルーズベルト」。

ハワード役はなんとデビッド・リンチで、それなりに味わいの

ある姿を見せています。そういえば映画の冒頭とラストに

リクガメがのろのろ砂漠地帯を歩いていたことを思い出し、

あれがルーズベルトかと気づくのです。鶴は千年、亀は万年と

いうことわざがあるので、亀は1万年生きると思っていたら、

実は鶴は最長でも80年、亀も180年ほどらしい。しかし

180年も生きるとしたら、夜店の露店で軽々しく亀など

買えなくなりますよね。でも180年生きたことを誰が

覚えていられるでしょうか。「この亀、今50歳よ」と言い

伝えていくのかしら。それでもハワードはルーズベルトを

100歳だったと語るわけです。
ラッキーは結婚したことはなく、家族はいないけれど、町の

人々はみな顔なじみだし、悪態をついたり、笑わせたり、

パズルの答えを聞くために夜、電話を掛けたりと、とても

居心地のいい空間に存在しています。神を信じていない

ラッキーにとって、「生」を意識した行動ではなく、ただ

彼なりのこだわりの生活を送ってきたにすぎないのですが、

ある日、彼が家で倒れ、医者から「加齢」が原因と言われた
ことで、急に心が揺らぎ始めるのです。ちなみにその診察の

時の医師との会話や手渡されたポップキャンディーをめぐる

やり取りは必見。大笑いしました。
今まで気にも留めなかった自分の「老い」と「死」。

その日から急に何か変わるかと思うと、やはりそれはなく、

いつも通りの生活を送ります。ただラッキーの心の中に

沸き起こった「死への恐怖」は夢となり現れ、また町の人々

との会話に少しだけ変化を見せます。彼を心配して自宅を

訪ねて来たダイナーのウェイトレスに打ち明ける秘密

「闇が怖い」

という言葉こそ彼のその時の心情を表していたのでしょうね。

他にもダイナーでの元海兵隊員との会話に出てくる少女の

笑顔など、「死」を意識したものが彼の心の大部分を占めて

いた時、牛乳をいつも買っているメキシコ人の店主の息子の

誕生日パーティーに呼ばれるのです。そこで急に立ち上がって

歌いだすラッキーと、それを見てほほ笑むメキシコ人たちを見ると、

ラッキーの存在が何かを超越したかのように思えます。

 

ラッキー
出典:IMDb

 

真実は物、全てはなくなり、ウンガッツ=ナッシング=無、

となるけれど、それへの執着を手放したとき、ラッキーの

ような笑顔が見られるのでしょうか。
同じように日常を描いた「パターソン」(2016)よりも

個人的には好きな映画です。

 

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将軍様、あなたのために映画を撮ります

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将軍様、あなたのために映画を撮ります

出典:IMDb

 

「将軍様、あなたのために映画を撮ります」

原題:The Lovers and the Despot

監督:ロス・アダム

   ロバート・カンナン

2016年 イギリス映画 97分

キャスト:チェ・ウニ

     シン・サンオク

     キム・ジョンイル

 

1978年、香港で韓国人女優チェ・ウニが突然失踪

する。彼女は北朝鮮の工作員によって拉致されたのだ。

一方彼女の前夫で映画監督のシン・サンオクも同時期に

姿を消し、2人は数年を経て北朝鮮国内で再会するの

だった。


<お勧め星>☆☆☆半 実話なのに、あまりに現実味の

ない世界で、それだからこそ怖いです。


ただ映画のレベルを上げるために

 

<ネタバレしています>


映画はチェ・ウニへのインタビューと

(彼女は2018年4月に死亡)前夫シン・サンオクが

製作した映画、再現VTR、そして2人の関係者、

養子2人への取材、さらにはキム・ジョンイルの肉声テープ
で構成され、2人がどのようにして姿を消し、そして

北朝鮮で映画製作を開始し、最終的にオーストリアの

アメリカ大使館へ亡命するまでを描いています。
予告編の字幕に

「二人の映画狂によって運命を狂わされた女優」

とあるうちの一人はもちろんキム・ジョンイルで、

もう一人は元夫シン・サンオクだとすぐにわかるけれど、

どのように狂わされたのか、大変気になるところです。
キム・イルソンのカリスマ性は「建国の父」として国民

から崇められ、「神」という存在だったのに対し、後継者

となるキム・ジョンイルにはそれが全くなく、体は小さく、

そして表情が乏しかったため、彼とその周りの人々は、

その地盤を盤石にするために国内での締め付けを強化

していたのです。物理的なものと感性とをコントロール

することで独裁政権体制は維持されていく..そんな字幕を

見ていると「感性」へ権力の干渉があまりに恐ろしい

ことに気づきます。
さてなぜこの女優と監督が北朝鮮に連れてこられたのか。

それはキム・ジョンイルがただ「映画のレベルを上げたい」

と思っただけのことなのだと知ると、唖然とします。

彼が芸術や文化に造詣が深かったことは何かで読んだ

ことがあります。日本の「ゴジラ」や「男はつらいよ」の

ファンで、1985年には東宝の特撮スタッフを招いて

「プルガサリ」という映画をプロデュースし、それに

チェ・ウニやシン・サンオクが出演していたのです。

 

プルサガリ

出典:IMDb

 

これに関してはそれほど評価は高くなかったようですが、

一度見てみたい気もするなあ。
美人女優チェ・ウニは、背も高くハンサムな

監督シン・サンオクと結婚し、養子2人を受け入れ育てながら、

映画製作に励んでいました。しかしどうもシン・サンオクは

「映画」にしか興味がなく、その資金繰りや家庭には一切

関心を持たなかったようです。借金取りが家まで押し掛けると、

彼は姿を消し、彼女は部屋の隅で震えている。そんなことを

彼女自身や子供たちが語ります。さらにシン・サンオクには
愛人がおり、そちらには2人も子供がいたということで、

遂にチェ・ウニとは離婚するわけです。
一方北朝鮮では映画好きなキム・ジョンイルが

「首領様のために泣いて死ぬ」

という映画ではなく、世界に通用する内容のものを製作したい

と考え、「ちょっとあの監督と女優を連れてきてよ」と
部下に語ったらしい。

「無理やりではなく自分から来るように仕向ける」

という命令は、部下にしてみると、

「連れて来ること」

の目的の方が絶対的なわけで、巧みな工作でチェ・ウニを香港にて
拉致します。この状況は本人が語り、まるでスパイ映画さながらの

ことが実際に行われていたのだと実感するのです。さらに怖いのは、

連れて来たことでニコニコ顔のキム・ジョンイルがチェ・ウニを
待っていること。

 

将軍様、あなたのために映画を撮ります

出典:IMDb

 

彼は欲しいものが手に入ったことしか気に留めず、その手法

などきっと興味がなかったんだろうな。彼の生育過程を語る

脱北者の言葉が裏付けとなっています。
しかしこのチェ・ウニとシン・サンオクがすぐに出会えたかと

いうと、そうではないのです。なんとなくシン・サンオクに

対し、この映画では「拉致」ではなく「亡命」ではないかと

疑っている節もあります。
元妻同様香港で拉致されたというものの、そこにはピョンヤン

行きの航空券や北朝鮮の映画の脚本が残されていたといいます。

元妻を探しに香港に行って、工作員に騙されたかもしれませんが。
この2人が北朝鮮で再会し、キム・ジョンイルの「信頼」を得て

意欲的に映画製作に携わるのです。金の心配をしないで映画が

作れるということで、2年3か月で17本の映画を撮ったという。

本国では離婚した2人も、誰一人心の許せる相手がいない土地で

再会すると、また違ったつながりを感じるのかもしれません。

ただ2人は、いつかは脱北しようと考えており、拉致の証拠

として、キム・ジョンイルの肉声を録音することを考えつくのです。

ちょっとこんなにありきたりな方法が通用するのか疑問だけれど、

当時はできたのかな。
彼らが亡命するためオーストリア大使館に駆け込むシーンの

再現フィルムは、まさにスリル満点でしたが、彼らの亡命を

アメリカが受け入れたのは、彼らが持っている北朝鮮の情報が

証拠もそろった真実であり、それが貴重であったからで、もしも

何も持っていなかったらどうなっていたんだろうと思ってし

まいました。
最後にやはりシン・サンオクの「拉致」への疑問が語られましたね。

本人が2006年に亡くなり、妻も亡くなった今となっては誰も

真実を知る者はいないのかもしれません。

 

 

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母という名の女

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母という名の女

出典:IMDb

 

「母という名の女」

原題:Las hijas de Abril

監督:ミシェル・フランコ

2017年 メキシコ映画 103分 PG12

キャスト:エア・スアレス

     アナ・バレリア・ベセリル

     エンリケ・アリソン

     ホアナ・ラレキ

     エルナン・メンドーサ  

 

ボーイフレンド、マテオの子供を妊娠中のバレリアと

姉クララが暮らす家に、久しぶりに母アブリルが

戻ってくる。出産を終え育児に戸惑うバレリアに

代わってアブリルは、孫カレンの世話をし始めるが、
それは次第にエスカレートしていき...。


<お勧め星>☆☆☆半 予想外の展開に驚き、そして

最後にもまた驚かされます。


愛は支配ではない


「父の秘密」(2012)では突然母親を失った娘と

父親とのすれ違いとその娘に起こる壮絶ないじめの発覚、

失踪を経ての父親の行動が、彼の空虚な瞳の中に宿る

怒りの炎の強さを実感させながら描かれていきました。
BGMもない唐突なラスト付近のシーンには衝撃を受けます。

あれが愛情なのだろうか。
そして「ある終焉」(2015)は終末期患者専門の

看護師の苦悩や葛藤をこれまた淡々と描き、彼の心の中が

はっきりわからないまま、やはり唐突なラストシーンを

迎えます。これらの映画はどちらもパッと終了し暗転した

後にエンドクレジットが流れていきます。その文字を見ながら、

映画の余韻に浸りつつ、内容を自分なりに消化していくのです。

「母という名の女」もこれとなったく同じ手法でストーリーが

進んでいきます。

 

母という名の女
出典:IMDb

 

冒頭、不機嫌そうな顔つきの小太りの女性が朝食の支度を

しているその背後の部屋から聞こえる男女の喘ぎ声。それ

が確かに聞こえているのに、この姉クララは何も起きて

いないかのように手を休めることはないのです。
クララは妹バレリアと暮らしており、彼女はボーイフレンド、

マテオの子供を妊娠中。どちらも17歳でバレリアは高校を

休んでいるし、マテオはアルバイト程度の仕事しかしておらず、

あまりに幼く無計画な行動をとっていることは理解できます。

しかし17歳くらいで計画的に人生を送り始めることができる

人ってどれくらいいるんでしょう。「若気の至り」なんて言葉も

あるわけだし、若さが知性を上回っている時期は必ず存在

するんだろうな。それが逆になるのはいつだろう。ならない

こともあるかもしれないなあ。
そんな時突然姉妹の母親アブリルが家に戻ってくるわけですよ。

どうやら姉妹の父親は別の人らしく、バレリアの父親である前

は若い女性と再婚し子供が2人いるらしい。そしてバレリアは

父親の方が好きだったようで、逆にそのせいでアブリルとは仲が

良くないらしい。
それでも初めての出産、子育てで戸惑うバレリアをアブリルは

献身的に支えるのです。それがバレリアという娘への愛情かと

思っていると、実はそうではないことに気づいていくんです。

それは画面に映し出される、若いカップルの子育てへの過剰な

干渉や、その後の驚くような行動に現れていきます。

つまりアブリルはクララやバレリアという娘を授かったけれど、

クララはどう考えても心の病を抱えていて一日中不機嫌で寝て

ばかり、かつ体型も崩れているし、バレリアは高校の途中で妊娠、

出産し、ままごとのような生活しか送れていないという、自分が

描いた娘像、母子像とはかけ離れたものになってしまっていて、

それが不満でたまらないと思うのです。さらにバレリアの父親で

ある前夫は、おそらく大変裕福で、海辺の別宅を渡してくれたけれど、

アブリルへは憎しみしか感じておらず、おまけに幸せそうに
新しい妻子との生活を送っているではないか。彼女の不満は、

怒りは、不条理な行動へとつながり、さらには、

「自分の思い描いた生活」

を送るために、どう考えても非常識な行為を平気で実行します。
おい、ちょっとマテオ!!

 

母という名の女
出典:IMDb

 

17歳の幼かったバレリアが、自分なりに考え、自分の意志で

行動し始めた時、彼女はかなり人間として成長したと思えます。

しかしこれは終わりではなく始まりにすぎません。

それでもラストの微笑みにたくましさを感じたのは確かです。

 

 

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ビニー/信じる男

4

JUGEMテーマ:洋画

 

ビニー/

 

「ビニー/信じる男」

原題:Bleed for This

監督:ベン・ヤンガー

製作総指揮:マーティン・スコセッシ

2016年 アメリカ映画 117分

キャスト:マイルズ・テラー

     アーロン・エッカート

     ケイティ・セーガル

     キアラン・ハインズ

     テッド・レビン

 

引退を勧告されたボクサー、ビニーは新しい

トレーナー、ケビンのもと、2階級あげて試合に

臨みタイトルを獲得する。しかし直後に交通事故で

首を骨折し、ボクサーとしては再起不能と医師に

告げられるのだった。しかし彼のボクシングに

かける情熱は消えることはなく...。


<お勧め星>☆☆☆半 ボクサーとしての再生だけで

なく家族愛や師弟愛などを強く感じることができます。


そう単純じゃない


主役はご存知、ジャズドラマー界のスポコン映画、

いや違う、天下の名作「セッション」(2014)で、

J・K・シモンズ演じるフレッチャーにとことんしごき

抜かれるドラマー、ニーマンを演じたマイルズ・テラー。

あの映画での神経質そうな姿とは一変し、自信過剰の

自称パズマニア・デビルことボクサー、ビニー役を

演じています。体脂肪率6%まで絞ったという体だけ

でなく、ボクシングのトレーニングもかなりしたん

だろうなあ。さらには歩き方や話し方が、かなり

オラオラ系で、まさにビニーになりきっていると

(知らんけど)思います。

 

ビニー
 

そして試合に3連敗し、タイトルマッチにも失敗したビニーを

鍛え上げるトレーナー、ケビン役は

「エンド・オブ・ホワイトハウス」(2013)で大統領役を

演じたアーロン・エッカート。なんだか大きくなったなと
思ったら役作りで体重を20kg増やしたそうです。映画内では

怪我をしてふさぎ込んでいるビニーを元気づけるために、

お茶目なダンスを見せてくれて、あれがアドリブと知りびっくり

します。you tubeで見直しても全く違和感のない動きで

「ビニーを元気づける何かやれ」と指示されたのだとしたら、

天下一品のものができたと思う。

 

ビニー
 

ストーリーは実話ベースなので、結果はわかっていて安心して

見られると思ったら、ところがどっこい、そうでもないです。

パンチを受けるシーンはリアルだし、ビニーの顔から噴き出す

血や、腫れあがる瞼などを見ると、本当にドキドキするし、

試合の様子も臨場感たっぷりなんです。
映画で描かれるのは1つは、当然のことながら大怪我を克服し、

見事に勝利を獲得するビニーの成功物語。

 

ビニー

 

「ハロー」と呼ばれる頸椎固定器具を装着したビニーは、

さながら中世の拷問具を着けられているように見えてしまいます。

実際のビニーはこんな姿です。

 

ビニー
 

そして2つ目は、かつてマイク・タイソンのトレーナーを

務めていたものの酒によるトラブルですっかり落ちぶれた

ケビンのトレーナーとしての再生物語。
3つ目は、アメリカ版亀田パパことビニーの父アンジェロの

息子への過大な期待と依存、干渉からの卒業物語。
あの自信過剰のビニーが、頂点から一気に落下し、そこから

(それが地下室なのも意味深)頂点を目指して鍛え上げてい

く姿がビニーだけでなく3つの方向から描かれているので、

単なる英雄崇拝映画に終わっていないような気がします。また、

ただただ男臭いのではなく、信心深いビニーの母や口うるさい

けれど家族思いの姉妹を映すシーンも数多く見られ、女性の

姿も輝いております。この調合の匙加減がまさに

「ちょうどいい」

ので男女誰が見ても気分が良くなると思う。
敢えて一言付け加えると、ラストのクライマックスのタイトル

マッチゲームは、あの映像のままだとしたら、チャンピオンは

再試合を訴えたような気がする。実際は3−0で勝利をおさめ

ているので、ビニーが前半ダウンしたとしても、後半では

かなり優勢だったのだと思います。
勝負はギャンブルにしてもスポーツにしても「そう単純じゃない」

けれど「結果が全て」なのだということは確かですね。

 

 

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パターソン

4

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パターソン

 

「パターソン」

原題:Paterson

監督:ジム・ジャームッシュ

2016年 アメリカ映画 118分

キャスト:アダム・ドライバー

     ゴルシフテ・ファラハニ

     バリー・シャバガ・ヘンリー

     クリプ・スミス

     永瀬正敏

 

ニュージャージー州、パターソンの住むバス運転手

パターソンは、妻ローラをベッドに残して出勤し、

仕事の合間に詩を書き留め、帰宅。そして夕食後

愛犬マーヴィンと散歩し、バーに立ち寄るのが日課

である。そんな彼の一週間をカメラで追っていく..。


<お勧め星>☆☆☆ 何も大きな変化はないけれど、

所々クスリと笑える映画です。何も変わらない幸せを

感じます。


レインコートを着てシャワーを浴びる


ニュージャージー州パターソンは、ニューヨークから

30〜40kmしか離れていない場所なのに、とても

のどかで自然にあふれ、治安も悪くないように感じます。

そこでバスの運転手をしているパターソンの一週間を

淡々と描いていくのです。パターソン役は

「スターウォーズ」シリーズのアダム・ドライバー。

彼が毎朝ほぼ同じ時間に起き、隣で眠る妻ローラにキスを

して、出かける支度をするのです。
起きた時に妻が話す「昨晩見た夢」の内容がちょっと

おかしい。そして出勤するとバス会社のドクが

「最悪の調子」をパターソンに説明するのですが、その

内容もかなりおかしい。

 

パターソン
 

パターソンは起きた時から、ずっと詩を考えていて、それが

文字として画面に映し出されます。毎日その内容が少しずつ

進んでいくのです。妻が「双子を授かった夢を見た」と聞いた

その日からあちこちで双子が目にいるパターソン。何かの

きっかけでいつも気に留めなかったことに視線が行くように

なるのかもしれません。
バスの運転中、乗客が交わす会話を切り取って、パターソンの

耳に届ける内容も、どうもおかしい。そして勤務を終え、

自宅に戻ると、いつもポストが傾いているのです。その理由が

後でわかるけれど、それを知るとこれまたおかしい。

 

パターソン

 

家に入れば、毎日家の中が少しずつ変わっているのです。

ローラが白と黒で統一しているのをパターソンはちょっと

違和感を感じながらも「素敵でしょう?」と言われると
「うん、そうだね」この会話の微妙な間と、その後少しだけ

パターソンが微笑みを浮かべることで、彼はローラを深く

愛しているし、この変化も気に入っているのだろうなと

思うのです。
そして夕食を食べ、愛犬マーヴィンの散歩に行く途中、

バーに寄るのがパターソンの日課。ここで毎日何かが変わり、

何かが起きます。大きな事件(それも大したことではない)は

金曜日に起きただけだったと思う。それも真相を知るとクスリ

と笑えます。

 

パターソン
 

平凡な毎日の中で少しだけ何かが変わり、それも普通の出来事

として流れていくのに、土曜日の晩、2人で映画に行って帰宅

すると、大事件が起きているのです。この時のマーヴィンの

申し訳なさそうな姿が壁から半分だけ見えて、この犬、

すごいな!と思ったら、カンヌ国際映画祭で「パルムドッグ賞」

を獲得したそうです。残念なことに映画公開前に亡くなった

そうで、エンドロールで追悼していました。

 

パターソン
 

意気消沈したパターソンの日曜日、一人で散歩に行くと日本人

に出会うのです。これが永瀬正敏さん。詩の話で盛り上がり、

彼からgiftを贈られると、それは何も書いてないノートです。

ここから月曜日が始まり、また新しい詩を書き始めるパターソン

が映るのです。とても単調なんだけれど、とてもおかしくて、

そしてみんな善人で、小さな幸せを感じる映画でした。

 

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ノー・エスケープ 自由への国境

4

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ノー・エスケープ

 

「ノー・エスケープ 自由への国境」

原題:Desierto

監督:ホナス・キュアロン

2015年 フランス=メキシコ映画 88分 

PG12

キャスト:ガエル・ガルシア・ベルナル

     ジェフリー・ディーン・モーガン

     アロンドラ・イダルゴ

 

アメリカへ不法に入国しようとしていたメキシコ人

たちを乗せた車が故障する。彼らは砂漠の国境地帯を

徒歩で進み始めるが、突然何者かに狙撃され始めるのだ

った。


<お勧め星>☆☆☆ 実にタイムリーな内容なのですが、

何を訴えたいのかメインテーマがぼやけている気がします。


砂漠という壁


トランプ大統領が大統領選挙前に公約に掲げていた

「メキシコとの国境に壁を建設する」ことは実際に進んで

いるようですが、その費用を「メキシコ側に求める」は実行

されているのかわかりません。そして「壁」があるはずの

国境に、この映画ではただ有刺鉄線が張られているだけで、

ひょいとくぐれてしまうのです。

 

ノー・エスケープ

 

なぜにこのような状況かというと、それは有刺鉄線の向こうに、

そう、地平線のかなたまで広がる荒涼とした砂漠を見れば

一目瞭然。日中の気温は50度以上にもなり、日よけもなく

砂漠と岩山があるだけの場所を徒歩で超えるのは、ほぼ

自殺行為に等しいと気がつきます。後から出てきますが、

蛇の大群もいるんです。

 

ノー・エスケープ
 

そして国境付近を、犬を連れ、酒を飲みながら車で走って

行く男は、「うさぎ狩り」をしている、と言う。いやあ、

これは違うな。しかし彼について説明されることはほとんど

なく、少ない情報から推理するに、おそらく軍隊出身、

おそらく移民の増加で職を失ったか、犯罪行為にあったか、

治安の悪化を嘆いているらしい。彼にはトラッカーという犬

しか相棒がおらず、この犬がまた彼に忠実かつかなり凶暴

なのです。

 

ノー・エスケープ
 

一方不法移民側も、無駄に話し始める可愛くもない犬の

ぬいぐるみを持つモイセスとアデラという女性以外は、ほぼ

顔と名前がわからないまま、バタバタ倒されていくのです。

こうなると2人VS男と犬という闘いにしか見えなくなります。

ただこの男から逃げ、砂漠を抜けるサヴァイヴァル映画の

ように思えてくるのです。
モイセスは合法的にアメリカに入国したのに、車のライトの

不備で拘束され、強制送還されてしまった。その際生き別れ

になった息子の元にどうしても向かいたいというのが目的で

あり、変なぬいぐるみは息子とに手渡す約束のものらしい。

その割には結構雑に扱ってしまうのが納得がいかないなあ。
終盤の岩場においての、上下、前後、左右というモイセスと

男の攻防は、ちょっとコントみたいで、緊張の糸が切れて

しまいます。「移民は侵略者」と考え「愛国心」で国境を

警備するという自警団とは全く異なる(自警団を容認している

わけではありません)ただの「人間狩り」が趣味のアル中男と

家族との生活や安全な暮らしを求める善良な?不法移民という

構図ではどう考えても不法移民に肩入れしたくなるというもの。
ではこの映画は何の目的で作られたのだろうと考えると、特に

メッセージ性もなく、リアルな殺戮シーンが続くだけだった

ようにも思えるのです。モイセスについてもっと説明があれば、

もしくは犬を連れた男に何かの説明があれば、感情移入できた

のにとかなり残念に思えてしまいました。

 

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