将軍様、あなたのために映画を撮ります

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JUGEMテーマ:洋画

 

将軍様、あなたのために映画を撮ります

出典:IMDb

 

「将軍様、あなたのために映画を撮ります」

原題:The Lovers and the Despot

監督:ロス・アダム

   ロバート・カンナン

2016年 イギリス映画 97分

キャスト:チェ・ウニ

     シン・サンオク

     キム・ジョンイル

 

1978年、香港で韓国人女優チェ・ウニが突然失踪

する。彼女は北朝鮮の工作員によって拉致されたのだ。

一方彼女の前夫で映画監督のシン・サンオクも同時期に

姿を消し、2人は数年を経て北朝鮮国内で再会するの

だった。


<お勧め星>☆☆☆半 実話なのに、あまりに現実味の

ない世界で、それだからこそ怖いです。


ただ映画のレベルを上げるために

 

<ネタバレしています>


映画はチェ・ウニへのインタビューと

(彼女は2018年4月に死亡)前夫シン・サンオクが

製作した映画、再現VTR、そして2人の関係者、

養子2人への取材、さらにはキム・ジョンイルの肉声テープ
で構成され、2人がどのようにして姿を消し、そして

北朝鮮で映画製作を開始し、最終的にオーストリアの

アメリカ大使館へ亡命するまでを描いています。
予告編の字幕に

「二人の映画狂によって運命を狂わされた女優」

とあるうちの一人はもちろんキム・ジョンイルで、

もう一人は元夫シン・サンオクだとすぐにわかるけれど、

どのように狂わされたのか、大変気になるところです。
キム・イルソンのカリスマ性は「建国の父」として国民

から崇められ、「神」という存在だったのに対し、後継者

となるキム・ジョンイルにはそれが全くなく、体は小さく、

そして表情が乏しかったため、彼とその周りの人々は、

その地盤を盤石にするために国内での締め付けを強化

していたのです。物理的なものと感性とをコントロール

することで独裁政権体制は維持されていく..そんな字幕を

見ていると「感性」へ権力の干渉があまりに恐ろしい

ことに気づきます。
さてなぜこの女優と監督が北朝鮮に連れてこられたのか。

それはキム・ジョンイルがただ「映画のレベルを上げたい」

と思っただけのことなのだと知ると、唖然とします。

彼が芸術や文化に造詣が深かったことは何かで読んだ

ことがあります。日本の「ゴジラ」や「男はつらいよ」の

ファンで、1985年には東宝の特撮スタッフを招いて

「プルガサリ」という映画をプロデュースし、それに

チェ・ウニやシン・サンオクが出演していたのです。

 

プルサガリ

出典:IMDb

 

これに関してはそれほど評価は高くなかったようですが、

一度見てみたい気もするなあ。
美人女優チェ・ウニは、背も高くハンサムな

監督シン・サンオクと結婚し、養子2人を受け入れ育てながら、

映画製作に励んでいました。しかしどうもシン・サンオクは

「映画」にしか興味がなく、その資金繰りや家庭には一切

関心を持たなかったようです。借金取りが家まで押し掛けると、

彼は姿を消し、彼女は部屋の隅で震えている。そんなことを

彼女自身や子供たちが語ります。さらにシン・サンオクには
愛人がおり、そちらには2人も子供がいたということで、

遂にチェ・ウニとは離婚するわけです。
一方北朝鮮では映画好きなキム・ジョンイルが

「首領様のために泣いて死ぬ」

という映画ではなく、世界に通用する内容のものを製作したい

と考え、「ちょっとあの監督と女優を連れてきてよ」と
部下に語ったらしい。

「無理やりではなく自分から来るように仕向ける」

という命令は、部下にしてみると、

「連れて来ること」

の目的の方が絶対的なわけで、巧みな工作でチェ・ウニを香港にて
拉致します。この状況は本人が語り、まるでスパイ映画さながらの

ことが実際に行われていたのだと実感するのです。さらに怖いのは、

連れて来たことでニコニコ顔のキム・ジョンイルがチェ・ウニを
待っていること。

 

将軍様、あなたのために映画を撮ります

出典:IMDb

 

彼は欲しいものが手に入ったことしか気に留めず、その手法

などきっと興味がなかったんだろうな。彼の生育過程を語る

脱北者の言葉が裏付けとなっています。
しかしこのチェ・ウニとシン・サンオクがすぐに出会えたかと

いうと、そうではないのです。なんとなくシン・サンオクに

対し、この映画では「拉致」ではなく「亡命」ではないかと

疑っている節もあります。
元妻同様香港で拉致されたというものの、そこにはピョンヤン

行きの航空券や北朝鮮の映画の脚本が残されていたといいます。

元妻を探しに香港に行って、工作員に騙されたかもしれませんが。
この2人が北朝鮮で再会し、キム・ジョンイルの「信頼」を得て

意欲的に映画製作に携わるのです。金の心配をしないで映画が

作れるということで、2年3か月で17本の映画を撮ったという。

本国では離婚した2人も、誰一人心の許せる相手がいない土地で

再会すると、また違ったつながりを感じるのかもしれません。

ただ2人は、いつかは脱北しようと考えており、拉致の証拠

として、キム・ジョンイルの肉声を録音することを考えつくのです。

ちょっとこんなにありきたりな方法が通用するのか疑問だけれど、

当時はできたのかな。
彼らが亡命するためオーストリア大使館に駆け込むシーンの

再現フィルムは、まさにスリル満点でしたが、彼らの亡命を

アメリカが受け入れたのは、彼らが持っている北朝鮮の情報が

証拠もそろった真実であり、それが貴重であったからで、もしも

何も持っていなかったらどうなっていたんだろうと思ってし

まいました。
最後にやはりシン・サンオクの「拉致」への疑問が語られましたね。

本人が2006年に亡くなり、妻も亡くなった今となっては誰も

真実を知る者はいないのかもしれません。

 

 

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母という名の女

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JUGEMテーマ:洋画

 

母という名の女

出典:IMDb

 

「母という名の女」

原題:Las hijas de Abril

監督:ミシェル・フランコ

2017年 メキシコ映画 103分 PG12

キャスト:エア・スアレス

     アナ・バレリア・ベセリル

     エンリケ・アリソン

     ホアナ・ラレキ

     エルナン・メンドーサ  

 

ボーイフレンド、マテオの子供を妊娠中のバレリアと

姉クララが暮らす家に、久しぶりに母アブリルが

戻ってくる。出産を終え育児に戸惑うバレリアに

代わってアブリルは、孫カレンの世話をし始めるが、
それは次第にエスカレートしていき...。


<お勧め星>☆☆☆半 予想外の展開に驚き、そして

最後にもまた驚かされます。


愛は支配ではない


「父の秘密」(2012)では突然母親を失った娘と

父親とのすれ違いとその娘に起こる壮絶ないじめの発覚、

失踪を経ての父親の行動が、彼の空虚な瞳の中に宿る

怒りの炎の強さを実感させながら描かれていきました。
BGMもない唐突なラスト付近のシーンには衝撃を受けます。

あれが愛情なのだろうか。
そして「ある終焉」(2015)は終末期患者専門の

看護師の苦悩や葛藤をこれまた淡々と描き、彼の心の中が

はっきりわからないまま、やはり唐突なラストシーンを

迎えます。これらの映画はどちらもパッと終了し暗転した

後にエンドクレジットが流れていきます。その文字を見ながら、

映画の余韻に浸りつつ、内容を自分なりに消化していくのです。

「母という名の女」もこれとなったく同じ手法でストーリーが

進んでいきます。

 

母という名の女
出典:IMDb

 

冒頭、不機嫌そうな顔つきの小太りの女性が朝食の支度を

しているその背後の部屋から聞こえる男女の喘ぎ声。それ

が確かに聞こえているのに、この姉クララは何も起きて

いないかのように手を休めることはないのです。
クララは妹バレリアと暮らしており、彼女はボーイフレンド、

マテオの子供を妊娠中。どちらも17歳でバレリアは高校を

休んでいるし、マテオはアルバイト程度の仕事しかしておらず、

あまりに幼く無計画な行動をとっていることは理解できます。

しかし17歳くらいで計画的に人生を送り始めることができる

人ってどれくらいいるんでしょう。「若気の至り」なんて言葉も

あるわけだし、若さが知性を上回っている時期は必ず存在

するんだろうな。それが逆になるのはいつだろう。ならない

こともあるかもしれないなあ。
そんな時突然姉妹の母親アブリルが家に戻ってくるわけですよ。

どうやら姉妹の父親は別の人らしく、バレリアの父親である前

は若い女性と再婚し子供が2人いるらしい。そしてバレリアは

父親の方が好きだったようで、逆にそのせいでアブリルとは仲が

良くないらしい。
それでも初めての出産、子育てで戸惑うバレリアをアブリルは

献身的に支えるのです。それがバレリアという娘への愛情かと

思っていると、実はそうではないことに気づいていくんです。

それは画面に映し出される、若いカップルの子育てへの過剰な

干渉や、その後の驚くような行動に現れていきます。

つまりアブリルはクララやバレリアという娘を授かったけれど、

クララはどう考えても心の病を抱えていて一日中不機嫌で寝て

ばかり、かつ体型も崩れているし、バレリアは高校の途中で妊娠、

出産し、ままごとのような生活しか送れていないという、自分が

描いた娘像、母子像とはかけ離れたものになってしまっていて、

それが不満でたまらないと思うのです。さらにバレリアの父親で

ある前夫は、おそらく大変裕福で、海辺の別宅を渡してくれたけれど、

アブリルへは憎しみしか感じておらず、おまけに幸せそうに
新しい妻子との生活を送っているではないか。彼女の不満は、

怒りは、不条理な行動へとつながり、さらには、

「自分の思い描いた生活」

を送るために、どう考えても非常識な行為を平気で実行します。
おい、ちょっとマテオ!!

 

母という名の女
出典:IMDb

 

17歳の幼かったバレリアが、自分なりに考え、自分の意志で

行動し始めた時、彼女はかなり人間として成長したと思えます。

しかしこれは終わりではなく始まりにすぎません。

それでもラストの微笑みにたくましさを感じたのは確かです。

 

 

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ビニー/信じる男

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ビニー/

 

「ビニー/信じる男」

原題:Bleed for This

監督:ベン・ヤンガー

製作総指揮:マーティン・スコセッシ

2016年 アメリカ映画 117分

キャスト:マイルズ・テラー

     アーロン・エッカート

     ケイティ・セーガル

     キアラン・ハインズ

     テッド・レビン

 

引退を勧告されたボクサー、ビニーは新しい

トレーナー、ケビンのもと、2階級あげて試合に

臨みタイトルを獲得する。しかし直後に交通事故で

首を骨折し、ボクサーとしては再起不能と医師に

告げられるのだった。しかし彼のボクシングに

かける情熱は消えることはなく...。


<お勧め星>☆☆☆半 ボクサーとしての再生だけで

なく家族愛や師弟愛などを強く感じることができます。


そう単純じゃない


主役はご存知、ジャズドラマー界のスポコン映画、

いや違う、天下の名作「セッション」(2014)で、

J・K・シモンズ演じるフレッチャーにとことんしごき

抜かれるドラマー、ニーマンを演じたマイルズ・テラー。

あの映画での神経質そうな姿とは一変し、自信過剰の

自称パズマニア・デビルことボクサー、ビニー役を

演じています。体脂肪率6%まで絞ったという体だけ

でなく、ボクシングのトレーニングもかなりしたん

だろうなあ。さらには歩き方や話し方が、かなり

オラオラ系で、まさにビニーになりきっていると

(知らんけど)思います。

 

ビニー
 

そして試合に3連敗し、タイトルマッチにも失敗したビニーを

鍛え上げるトレーナー、ケビン役は

「エンド・オブ・ホワイトハウス」(2013)で大統領役を

演じたアーロン・エッカート。なんだか大きくなったなと
思ったら役作りで体重を20kg増やしたそうです。映画内では

怪我をしてふさぎ込んでいるビニーを元気づけるために、

お茶目なダンスを見せてくれて、あれがアドリブと知りびっくり

します。you tubeで見直しても全く違和感のない動きで

「ビニーを元気づける何かやれ」と指示されたのだとしたら、

天下一品のものができたと思う。

 

ビニー
 

ストーリーは実話ベースなので、結果はわかっていて安心して

見られると思ったら、ところがどっこい、そうでもないです。

パンチを受けるシーンはリアルだし、ビニーの顔から噴き出す

血や、腫れあがる瞼などを見ると、本当にドキドキするし、

試合の様子も臨場感たっぷりなんです。
映画で描かれるのは1つは、当然のことながら大怪我を克服し、

見事に勝利を獲得するビニーの成功物語。

 

ビニー

 

「ハロー」と呼ばれる頸椎固定器具を装着したビニーは、

さながら中世の拷問具を着けられているように見えてしまいます。

実際のビニーはこんな姿です。

 

ビニー
 

そして2つ目は、かつてマイク・タイソンのトレーナーを

務めていたものの酒によるトラブルですっかり落ちぶれた

ケビンのトレーナーとしての再生物語。
3つ目は、アメリカ版亀田パパことビニーの父アンジェロの

息子への過大な期待と依存、干渉からの卒業物語。
あの自信過剰のビニーが、頂点から一気に落下し、そこから

(それが地下室なのも意味深)頂点を目指して鍛え上げてい

く姿がビニーだけでなく3つの方向から描かれているので、

単なる英雄崇拝映画に終わっていないような気がします。また、

ただただ男臭いのではなく、信心深いビニーの母や口うるさい

けれど家族思いの姉妹を映すシーンも数多く見られ、女性の

姿も輝いております。この調合の匙加減がまさに

「ちょうどいい」

ので男女誰が見ても気分が良くなると思う。
敢えて一言付け加えると、ラストのクライマックスのタイトル

マッチゲームは、あの映像のままだとしたら、チャンピオンは

再試合を訴えたような気がする。実際は3−0で勝利をおさめ

ているので、ビニーが前半ダウンしたとしても、後半では

かなり優勢だったのだと思います。
勝負はギャンブルにしてもスポーツにしても「そう単純じゃない」

けれど「結果が全て」なのだということは確かですね。

 

 

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パターソン

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パターソン

 

「パターソン」

原題:Paterson

監督:ジム・ジャームッシュ

2016年 アメリカ映画 118分

キャスト:アダム・ドライバー

     ゴルシフテ・ファラハニ

     バリー・シャバガ・ヘンリー

     クリプ・スミス

     永瀬正敏

 

ニュージャージー州、パターソンの住むバス運転手

パターソンは、妻ローラをベッドに残して出勤し、

仕事の合間に詩を書き留め、帰宅。そして夕食後

愛犬マーヴィンと散歩し、バーに立ち寄るのが日課

である。そんな彼の一週間をカメラで追っていく..。


<お勧め星>☆☆☆ 何も大きな変化はないけれど、

所々クスリと笑える映画です。何も変わらない幸せを

感じます。


レインコートを着てシャワーを浴びる


ニュージャージー州パターソンは、ニューヨークから

30〜40kmしか離れていない場所なのに、とても

のどかで自然にあふれ、治安も悪くないように感じます。

そこでバスの運転手をしているパターソンの一週間を

淡々と描いていくのです。パターソン役は

「スターウォーズ」シリーズのアダム・ドライバー。

彼が毎朝ほぼ同じ時間に起き、隣で眠る妻ローラにキスを

して、出かける支度をするのです。
起きた時に妻が話す「昨晩見た夢」の内容がちょっと

おかしい。そして出勤するとバス会社のドクが

「最悪の調子」をパターソンに説明するのですが、その

内容もかなりおかしい。

 

パターソン
 

パターソンは起きた時から、ずっと詩を考えていて、それが

文字として画面に映し出されます。毎日その内容が少しずつ

進んでいくのです。妻が「双子を授かった夢を見た」と聞いた

その日からあちこちで双子が目にいるパターソン。何かの

きっかけでいつも気に留めなかったことに視線が行くように

なるのかもしれません。
バスの運転中、乗客が交わす会話を切り取って、パターソンの

耳に届ける内容も、どうもおかしい。そして勤務を終え、

自宅に戻ると、いつもポストが傾いているのです。その理由が

後でわかるけれど、それを知るとこれまたおかしい。

 

パターソン

 

家に入れば、毎日家の中が少しずつ変わっているのです。

ローラが白と黒で統一しているのをパターソンはちょっと

違和感を感じながらも「素敵でしょう?」と言われると
「うん、そうだね」この会話の微妙な間と、その後少しだけ

パターソンが微笑みを浮かべることで、彼はローラを深く

愛しているし、この変化も気に入っているのだろうなと

思うのです。
そして夕食を食べ、愛犬マーヴィンの散歩に行く途中、

バーに寄るのがパターソンの日課。ここで毎日何かが変わり、

何かが起きます。大きな事件(それも大したことではない)は

金曜日に起きただけだったと思う。それも真相を知るとクスリ

と笑えます。

 

パターソン
 

平凡な毎日の中で少しだけ何かが変わり、それも普通の出来事

として流れていくのに、土曜日の晩、2人で映画に行って帰宅

すると、大事件が起きているのです。この時のマーヴィンの

申し訳なさそうな姿が壁から半分だけ見えて、この犬、

すごいな!と思ったら、カンヌ国際映画祭で「パルムドッグ賞」

を獲得したそうです。残念なことに映画公開前に亡くなった

そうで、エンドロールで追悼していました。

 

パターソン
 

意気消沈したパターソンの日曜日、一人で散歩に行くと日本人

に出会うのです。これが永瀬正敏さん。詩の話で盛り上がり、

彼からgiftを贈られると、それは何も書いてないノートです。

ここから月曜日が始まり、また新しい詩を書き始めるパターソン

が映るのです。とても単調なんだけれど、とてもおかしくて、

そしてみんな善人で、小さな幸せを感じる映画でした。

 

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ノー・エスケープ 自由への国境

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ノー・エスケープ

 

「ノー・エスケープ 自由への国境」

原題:Desierto

監督:ホナス・キュアロン

2015年 フランス=メキシコ映画 88分 

PG12

キャスト:ガエル・ガルシア・ベルナル

     ジェフリー・ディーン・モーガン

     アロンドラ・イダルゴ

 

アメリカへ不法に入国しようとしていたメキシコ人

たちを乗せた車が故障する。彼らは砂漠の国境地帯を

徒歩で進み始めるが、突然何者かに狙撃され始めるのだ

った。


<お勧め星>☆☆☆ 実にタイムリーな内容なのですが、

何を訴えたいのかメインテーマがぼやけている気がします。


砂漠という壁


トランプ大統領が大統領選挙前に公約に掲げていた

「メキシコとの国境に壁を建設する」ことは実際に進んで

いるようですが、その費用を「メキシコ側に求める」は実行

されているのかわかりません。そして「壁」があるはずの

国境に、この映画ではただ有刺鉄線が張られているだけで、

ひょいとくぐれてしまうのです。

 

ノー・エスケープ

 

なぜにこのような状況かというと、それは有刺鉄線の向こうに、

そう、地平線のかなたまで広がる荒涼とした砂漠を見れば

一目瞭然。日中の気温は50度以上にもなり、日よけもなく

砂漠と岩山があるだけの場所を徒歩で超えるのは、ほぼ

自殺行為に等しいと気がつきます。後から出てきますが、

蛇の大群もいるんです。

 

ノー・エスケープ
 

そして国境付近を、犬を連れ、酒を飲みながら車で走って

行く男は、「うさぎ狩り」をしている、と言う。いやあ、

これは違うな。しかし彼について説明されることはほとんど

なく、少ない情報から推理するに、おそらく軍隊出身、

おそらく移民の増加で職を失ったか、犯罪行為にあったか、

治安の悪化を嘆いているらしい。彼にはトラッカーという犬

しか相棒がおらず、この犬がまた彼に忠実かつかなり凶暴

なのです。

 

ノー・エスケープ
 

一方不法移民側も、無駄に話し始める可愛くもない犬の

ぬいぐるみを持つモイセスとアデラという女性以外は、ほぼ

顔と名前がわからないまま、バタバタ倒されていくのです。

こうなると2人VS男と犬という闘いにしか見えなくなります。

ただこの男から逃げ、砂漠を抜けるサヴァイヴァル映画の

ように思えてくるのです。
モイセスは合法的にアメリカに入国したのに、車のライトの

不備で拘束され、強制送還されてしまった。その際生き別れ

になった息子の元にどうしても向かいたいというのが目的で

あり、変なぬいぐるみは息子とに手渡す約束のものらしい。

その割には結構雑に扱ってしまうのが納得がいかないなあ。
終盤の岩場においての、上下、前後、左右というモイセスと

男の攻防は、ちょっとコントみたいで、緊張の糸が切れて

しまいます。「移民は侵略者」と考え「愛国心」で国境を

警備するという自警団とは全く異なる(自警団を容認している

わけではありません)ただの「人間狩り」が趣味のアル中男と

家族との生活や安全な暮らしを求める善良な?不法移民という

構図ではどう考えても不法移民に肩入れしたくなるというもの。
ではこの映画は何の目的で作られたのだろうと考えると、特に

メッセージ性もなく、リアルな殺戮シーンが続くだけだった

ようにも思えるのです。モイセスについてもっと説明があれば、

もしくは犬を連れた男に何かの説明があれば、感情移入できた

のにとかなり残念に思えてしまいました。

 

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サンド・ストーム

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サンド・ストーム

 

「サンド・ストーム」

原題:Sufat Chol/Sand Storm

監督:エリート・ゼクサー

2016年 イスラエル=ドイツ映画 87分

キャスト:ラミス・アマル

     ルバ・プラル

     ハイサム・オマリ

 

イスラエルの砂漠地帯に暮らすレイラの父は第二夫人

と結婚する。華やかな宴の後、第一夫人であるレイラ

の母アシュラは不機嫌となり、レイラの携帯電話に

男性からの着信があったことから、彼女の外出禁止を

言い渡すのだった。


<お勧め星>☆☆☆ 古い価値観が今も存在し続ける

社会をこの目で見ると、どこか似ている部分を感じて

しまいます。


トンネルと格子窓


映画の序盤と終わりに、おませな次女が新婚夫婦の部屋

をのぞき見するのですが、その中にいるのはまったく

別の2人であり、またまったく違う表情を見せています。

しかしのぞいている次女もいずれはこの格子窓の世界に

入っていくのだろうと思えるのです。
この映画はイスラエルとドイツの合作映画で、イスラエル

におけるイスラム教徒、ベドウィンと呼ばれるかつての

遊牧民族の姿を描いています。戒律の厳しいイスラム教徒

の姿を描いたものはイラン映画「彼女が消えた浜辺」

(2013)があり、男たちがしきりに口にするのは

「名誉と恥」という言葉で、この映画でも「恥」「手順」

など宗教だけでなく部族のしきたりに縛られた人々の姿を

見ることができるのです。
砂漠の中を走る車を運転しているのは、女学生のレイラで、

彼女の成績をしきりに気にする父スリマンが映ります。

 

サンド・ストーム

 

そうか、この父は進歩的な人なんだ、と思ったのもつかの間、

人家が見えてくると運転をサッと交代するのです。何となく

ですが、この砂漠に暮らす人々の中にも新しい風が吹き込んで

いるようにも思えるのですが、いったん村に入るとその風は

ぱたんと止まってしまうのです。

 

サンド・ストーム
 

第二夫人をもらうスリマンに対し、終始不機嫌な第一夫人

ジャリラは、レイラにも厳しく、因習に縛られた人物そのもの

のように感じるのですが、やはり終盤には、隠されていた

本当の心を表します。
「ここで生きなくていい」
さらに幸せそうな第二夫人アファフも、レイラに対し

「早く結婚しないと私のようになる」つまり「年の離れた男性の

第二夫人にしかなれない」と語り、自らの境遇を望んで選んだ

わけではないと知るのです。

 

サンド・ストーム
 

レイラには学校でのBFアンワルがいるけれど、彼女の村では

部族同士で男たちの決めた相手と結婚しないといけない。

アンワルがレイラの家を訪れた時、風にはためく洗濯物が

邪魔で邪魔でたまりません。どれだけ洗ったんだろうと思う

ほどの量の洗濯物がロープに挟んで並んでいます。それが

彼女を含め、ここに住む人々の囚われている多くの物を

示しているように見えます。なんせ駆け落ちしちゃったら、
「恥」をかかせたということで首を切られても文句が

言えないほどなのです。アンワルについて細かく描かれて

いませんでしたが、何か宗教的な罰を受けることで家を

壊さなければならないと語っていたような。
そんな家に嫁がせるなど、スリマンにとっては「恥」に

ほかならないわけです。あれほど冒頭に開けた話をしていた

スリマンが、村の長老には二つ返事でレイラの婚姻を受けて

しまう。そこにレイラの意志は存在しません。
レイラは第一夫人としての座も追われた母の姿を見、恋しい

相手の存在も知らせ、そして遂に家を出ようと決心するの

ですが、「真ん中のトンネルを抜けたら待ってるよ」という

アンワレのもとにどうしても行けないのです。
あそこにトンネルの出口が見えていて、向こうは明るいのに..。

ここで車の中で泣き崩れるレイラを見ると、なぜかその

気持ちがわかったような気になります。日本でも田舎の因習は

目に見えないけれどとても厳しく、それを破ると二度と戻れ

ないし、戻ったとしても、居心地の悪い生活しか送れなくなる。

郷に入ったら郷に従え。いや、そんなんじゃない。地縁血縁

のつながりが強すぎるのです。
レイラが戻ってきたのは夜の闇に包まれた村であり、スリマンに

強い意志でわがままを言うのです。それは彼女が守りたかった

ものがバラバラにならないために仕方のないことなのだろうか。
母と父と妹たちと祖父母を捨てるエネルギーを持つには、まだ

レイラは幼すぎたのだろうか。ここを出た先の生活への不安が

強かったのだろうか。それともそれら全てなのだろうか。
戻ったレイラの気持ちがよくわかると同時に、彼女もきっと

母や第二夫人同様に、いつかは後悔するんだろうなと思って

しまうのでした。

 

 

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フルートベール駅で

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フルートベール駅で

 

「フルートベール駅で」

原題:Fruitvale Station

監督:ライアン・クーグラー

2013年 アメリカ映画 90分 PG12

キャスト:マイケル・B・ジョーダン

     オクタヴィア・スペンサー

     メロニー・ディアス

 

2009年、元日。オスカー達はサンフランシスコ

市内に行った帰りのバート内で喧嘩に巻き込まれる。

彼らはフルートベール駅で警察官に拘束されるが、

必死で話をするオスカーに対し、1人の警察官が銃を

発砲してしまう...。


<お勧め星>☆☆☆半 不条理すぎる現実が正確に映像化

されています。


オスカーという人物


2009年、1月1日にカリフォルニア州、オークランド

で発生したオスカー・グラント3世射殺事件を題材にした

映画で、かねてから見たいと思っていたのですが、見る

勇気が起きず、今回遂に決心して鑑賞しました。
事件当時の周りにいた人々が撮影した動画から始まるこの

映画は、最初から緊張感が走ります。予告編などで知り得た

情報から、丸腰の黒人青年が白人警官に射殺された事件を

取り上げているのは知っていましたが、実際の映像を見ると

「丸腰」とはいえなぜに拘束されたのか、その経緯を

どうしても知りたくなるのです。なぜに彼らはあんなに興奮

していたのか。そしてなぜに警察官たちは暴力的に制圧

しようとしていたのか。
オークランドと言えばメジャーリーグのオークランド

アスレチックスの本拠地です。「マネーボール」(2011)

ではこの貧乏球団が常勝球団になったのか、ビリー・ビーン

というGMの独自の理論が見事に映画化されていました。
この球場へは数年前に足を運んだことがありますが、本当に

古い球場で、建物も古く、翌日向かったサンフランシスコ

ジャイアンツの本拠地AT&Tパークが、新しくてきれいで

その差に驚きました。ビールサーバーが幾つもあり、ちょうど

野球の開催日でなかったので飲むことができなくて悔しい思い

をしました。そういえばアスレッチクスにはガーリックの絵が

いっぱい描いてあったな。その理由を聞いたのにすっかり忘れて

います。

 

フルートベール駅で
 

映画では常に淡々とオスカーの人となりを描いていきます。

12月31日、母親の誕生日パーティーの準備を着々と進める

オスカー。彼には恋人ソフィーナと娘タチアナがいるのですが、

幾つかの前科持ちだし、仕事は遅刻が原因で解雇されている。

家賃の工面にも困っているのに、子だくさんの妹から、家賃用の金

を貸してほしいと電話をもらい、二つ返事で了承しています。

 

フルートベール駅で
 

さらにマリファナの売人もしているらしい。おまけについ最近、

他の女性と浮気をしていたという。このような彼の悪い面を

映しつつ、その一方で、売人から足を洗いたい、仕事が欲しい、

困っている人を助ける、野良犬を大事にする、家族への強い愛情

を見せる極めて優しい心の持ち主であるとも印象づけられるのです。

オスカーの母親役はオクタヴィア・スペンサー。

 

フルートベール駅で

 

人間だれしも聖人であるはずもなく、必ずや悪い面を持ち合わせて

おり、それが「人間」というものだと思うのですが、彼が受けた

報いが正当なものであったかどうかはこれを見れば即座に判断

できるのです。
しかし逆に白人警察官からしてみると、治安の悪い地域において

争いごとの多くは黒人同士のものであり、体が大きく、声も大きく、

数も多ければ、「恐怖」を抱かないはずもありません。

知り合いがサンフランシスコへ向かうバートの車内で、ipodに

合わせて大きな声で歌いながらダンスを始めた黒人女性を注意

する白人男性を見かけたそうですが、彼女は「差別をしているのか」

と言い放ち、その一言で白人男性は黙ってしまったとのこと。

善悪のまえに差別を持ち出すことが到底妥当とは思えないけれど、

差別を受け続けた歴史を持ち、今も大変デリケートな問題として

横たわっていることは確かなのです。

 

フルートベール駅で
 

オスカーを射殺した警察官は、殺人罪ではなく

「テーザー銃と間違えた」

とされて過失致死罪で2年の懲役刑となり11ヶ月で出所した

そうです。その判決が軽すぎるのかどうかではなく、監督が

「オスカーという人物と観客が一緒に時間を過ごす機会を作れれば
こんな出来事が再び起きるのを減らせるかもしれない」と語った

ことはとても心に沁みます。
人種だけでなく他の面でも差別について、政治的な立ち位置に

よって、見方が変えられてしまうのはとてもおかしいことだと

も思うのです。

 

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ハーフネルソン

4

JUGEMテーマ:洋画

 

ハーフネルソン

 

「ハーフネルソン」

原題:Half Nelson

監督:ライアン・フレック

2006年 アメリカ映画 106分

キャスト:ライアン・ゴズリング

     シャリーカ・エップス

     ステファニー・バスト

     セバスチャン・ソッツィ

     アンソニー・マッキー

 

ブルックリンで公立中学の歴史教師をしているダンは、

夜はバスケットのコーチもしている。しかしある日、

トイレでコカインを吸っているところを、教え子

ドレイに見つかってしまう..。


<お勧め星>☆☆☆ 何はともあれライアン・ゴズリング。


1人では非力、1人では孤独


ライアン・ゴズリングが大好きなので出演している映画は

ほとんど見ていると言っても過言ではありません。
「完全犯罪クラブ」(2002)で初めてライアン・ゴズリング

を見たと思うのですが、内容を全く覚えていません。
「きみに読む物語」(2004)はライアン・ゴズリングと

レイチェル・マクアダムスの共演のラブストーリーの王道です。

「君はいつも戻ってきた」の一言に、ラブストーリーなんて

ちゃんちゃらおかしいわ!と思っていても号泣してしまいました。
「ラースと、その彼女」(2007)「ブルーバレンタイン」

(2010)と続き、「ドライヴ」(2011)では逃がし屋を

している寡黙な男を演じ、わたしのハートをわしづかみにして

スクリーンの向こうへ、いや、レンタルDVDとして返却され

ました。一時期PCの壁紙や携帯の待ち受けはこのライアン一色

だったものです。「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」

(2012)「オンリー・ゴッド」(2013)等を経て遂に

壁紙を一新する作品「ラ・ラ・ランド」(2016)登場です。

劇場で複数回鑑賞することはほとんどないのに、それでも飽き

足らずBlu-ray購入し、サントラも購入しました。友人によると

「あのネズミ顔の男の人のどこがいいの?」だそうで、心の中で、

「あなたのダンナはゲーハータヌキだろう!」と言い返したいのを

ぐっとこらえました。

そのライアン・ゴズリングがアカデミー賞主演男優賞にノミネート

された作品がこの映画です。この映画でも悲しい顔、寂しい顔、

はにかむような笑顔と女心をくすぐる表情を随所で見せています。

 

ハーフネルソン
 

ブルックリンで公立中学の歴史教師をしているダンは、指導

すべきこと内容ではないことを教え、生徒には人気があるの

です。また彼自身、自分が教えている「対立理論」というのが、

学校から教えるように言われている「公民権運動について」

よりも、ずっと生徒のためになると考えているらしい。

ブルックリンの貧困層が多い黒人が通う公立中学で「公民権」

について教え込むのは、彼らが苦難を経て手に入れたこの

権利を脅かす犯罪行為に走る少年少女がいかに多いかという

ことでしょうか。授業では生き生きしているダンも私生活では

コカイン中毒者であり、GFはすでに更生し、他の男性と婚約

している。しかし自分は更生に失敗し、今この状態にいると

いう泥沼から抜け出せない境遇に深い孤独と焦燥感を覚えて

いるようです。
映画の後半で、彼が行くのを避けていた自分の実家が映るの

ですが、父は極端な白人至上主義者であり、母親と弟も特に反発

していないのです。つまり彼が学校で教えようと考えていた理論は、

自分の家庭環境への反発であり、社会への反発であり、

ささやかな抵抗でもあった気がするのです。

 

ハーフネルソン
 

その彼がトイレでラリっているところを生徒のドレイに

見つかってしまいます。ドレイはシングルマザーの家庭で、

母は働きづめだし、兄はドラッグ関係で収監されているのです。

おそらくは彼女はとても賢く、この境遇でなければもっと

高等な教育を受けるチャンスがあるはずなのに、そんなことは

夢のまた夢。この2人の奇妙な友情は互いの孤独を埋める目的

だというほど深いものではなく、寂しい時間に側にいるという

だけで自然と落ち着くような感じになるものではないのかなあ。

何かを禁止したり押し付け合うことのない少しだけ和らいだ

空気感を漂わせることができる相手。

 

ハーフネルソン
 

しかし遂にドラッグ販売を手伝ってしまったドレイが、その

ドラッグを届けた先にいたのがダンなのです。互いの最後の砦、

つまりダンはドラッグを吸っているけれど、それを買う姿を

見られたくなかったし、ドレイは兄の友人で売人のフランクの

手先として動いている姿を特にダンに見られたくなかったの

でしょうね。

 

ハーフネルソン
 

ラストはダンの自宅のソファの両脇にちょこんと座る2人が

映ります。全く違う立場であり、境遇であるけれど、最低でも

「孤独」ではなくなった証であり、これからどう転ぶか予想も

できないけれど、少しだけ希望が持てるものでした。

ちなみに「ハーフネルソン」はプロレスの技の1つで「羽交い締め」

を表すそうです。ダンの状況を物語っているのかな。

 

 

 

 

 

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愛の亡命

4

JUGEMテーマ:洋画

 

愛の亡命

 

「愛の亡命」

原題:Despite the Falling Snow

監督:シャミム・サリフ

2016年 イギリス=カナダ映画 94分

キャスト:レベッカ・ファーガソン

     サム・リード

     アンチュ・トラウェ

     オリバー・ジャクソン=コーエン

 

1961年、ニューヨーク。アメリカを訪れた

ソ連使節団の1人サーシャは突如アメリカに亡命

する。1992年同じアメリカ。サーシャの

姪ローレンが展覧会開催のため、ロシアへ向かう

話を聞き、彼は妻カティアを思い出すのだった。


<お勧め星>☆☆☆ スパイ物と思っていたら、

ほぼほぼ悲恋物語でした。


雪が降っているのにもかかわらず


映画は冷戦時代のソ連とそのソ連崩壊後のロシアと

アメリカのシーンが、行ったり来たり映ります。

 

愛の亡命

 

その中で際立って美しいのが、1959年当時ソ連で

学校教師をしていたカティヤを演じるレベッカ・ファーガソン。

「ミッション:インポッシブル/ローグネーション」

(2015)より「ガール・オン・ザ・トレイン」

(2016)でヒロインの元夫の現在の妻アナ役を

演じていたことの方が印象的です。なんせスタイルは抜群、

そして整った顔立ちは美人そのものなんです。

 

愛の亡命
 

愛の亡命

 

この映画では主役のサーシャの姪ローレンも演じているの

ですが(下の写真の向かって左側)メイクや髪型、

ファッションですっかり印象が変わってしまうのだと実感。
ストーリーは1959年、ソ連の政府高官だったサーシャが

教師であるカティヤを好きになり、ほどなく結婚するも、

実は彼女はサーシャの同僚ミーシャ

 

愛の亡命

 

(サーシャ、ミーシャって猫の名前みたいに感じるけれど、

アレクサンドル、ミハイルの愛称)の指示で動くアメリカの

スパイであり...と割とありきたりなもの。カティアの両親が

反体制派だったことで処刑されたことなども拘束のシーン

のみ映像になっているだけであとはセリフで表されます。

彼女が11歳の時に両親が連行されたこと考えると

「チャイルド44」に書かれていたように国家保安省(MGB)

が反体制派を次々に摘発し、拷問、処刑した時代で、その

凄まじさは映像にしなくてよかったかもしれません。ちょっと

疑問なのは兄はアメリカに亡命し、カティアは教師という職に

就いていることで、孤児たちがひもじい暮らしを強いられて

いたのではなかったのか、これは特別なんじゃないかとか考えて

しまう。
冷戦時代のソ連ではしんしんと雪が降り、凍え切った空気感を

覚えるのですが、1992年のロシアは暖かい日差しが降り

注いでいます。敢えてそのように描いたのでしょうか。また

サーシャの姪ローレンの行動力溢れる姿が、30年という時の

変遷を感じ、彼女がロシアの政治記者マリナと恋に落ちかける

姿を見ても、自由な時代になりつつあったのだと感じるのです。
そこで冒頭から一切語られていなかったカティヤの消息はどう

なっているのか。冷戦時代、ソ連からアメリカに亡命すれば、

残された家族はおろか上司、同僚すらも責任を免れなかったと

推測するのは当然なのです。ただなぜサーシャは亡命したのか。

またカティヤはなぜスパイ行為を行い続けたのか。様々な謎が

解けてくると、まさに「悲恋話」と思ってしまいます。これが

サーシャがスパイでカティヤが何も知らないという逆の立場

だったらどう描かれたのでしょうか。
やはりスパイ物にはスリルとアクションが欲しいし、本物の

恋愛を混ぜ込むと何とも甘ったるくなってしまうなあという

のが本音です。

 

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はじまりへの旅

4

JUGEMテーマ:洋画

 

はじまりへの歌

 

「はじまりへの旅」

原題:Captain Fantastic

監督:マッド・ロス

2016年 アメリカ映画 119分 PG12

キャスト:ビゴ・モーテンセン

     フランク・ランジェラ

     ジョージ・マッケイ

     サマンサ・アイラー

     アナリース・バッソ

 

ベンと子供たち6人は森の中で自給自足の生活を

送っている。しかし病気のため入院していた妻が

自殺し、彼らは葬儀に出席するために街へと出て

いくが...。


<お勧め星>☆☆☆半 何が幸せか深く考えさせ

られる映画です。


理想の敗北は新たな一歩


見終わったときに感じたのは、主人公のベンはいったい

何を悟ったのだろうかということ。それは冒頭から

見せられる森の中で外界との接触をほぼ遮断した一家の

生活、狩猟に始まり、体力作り、そしてひたすら難しい本

を読む。全て父であるベンの設定したルールであり、

(妻も納得していたはず)それらを6人の子供たちが

極めて優秀な頭脳と運動能力をもってこなしていくわけです。

 

はじまりへの歌
 

「うわ〜すごい。こんなこともできじゃうんだ」じゃないのよ。

大体映画内で、ノーム・チョムスキーという人物を口にされた時、

全く知らない人物でさっそく調べてしまいました。彼は現存の

哲学者であり、「現代言語学の父」と評され、ベトナム戦争の

有名な批評家であったとのこと。哲学といえば大学の時、最も

単位がとりやすい講義で、コマ数の足りない学生は講義に

出なくても試験さえ受ければ単位をくれるということでこぞって

とっていました。(私もその一人)おじいちゃん教授が、とっても

小さな声で話す内容は今一つも頭に残っていません。ただ覚えて

いるのは、試験の時、できた学生から退出していいという決まりで、

多くの学生が退出したのですが、最後まで残っていたら

「早く出してください」とその教授に言われたことです。その

穏やかな教授が唯一声を荒立てたのは、違う講義を行う教授が

学生と遊びで付き合っているという話をした時ですね。

ああ、この話は本当だったんだ。そしてこの先生は学生では

なくその教授に対しものすごく腹を立てているんだと肌で感じ

ました。今思うと極めて倫理観の高い方だったのだ、もっと

しっかり講義を聞いておくべきだったと後悔しています。
この映画ではこのチョムスキーを含め、とても難しい事柄を

末の子供まで知っており、それについて自分の考えも述べる

ことができるのです。但しこれには父の思想が大きく関わって

いることも確かで、それが全てじゃないことをいつか知ること

ができるのかと途中で心配になりました。

 

はじまりへの歌
 

ある意味「楽園」であったはずのこの森の一家は、妻レスリー

が精神を病み、そして自殺してしまったことで急変します。

彼女の遺言通りに葬儀を行いたいベンは、子どもを連れて

街に向かうわけです。なぜレスリーが精神を病んだのか、

映画内ではベンの口からでしか理由は語られません。それは

ベン自身もわからなかったんだろうなあ。

 

はじまりへの歌
 

客観的に見るとかなり裕福な家庭の一人娘レスリーが親に

反発し、いわゆるヒッピーのような青年ベンと暮らし始めた

ものの、子どもが生まれた時、自分たちの求める理想を

その子供に押しつけることが正しいのかどうか深く悩んだ

のではないでしょうか。映画内で「任務」と称される万引き

行為は、実社会では明確な犯罪であり、また武器や格闘で

身を守ることが本当に重要なのかは、誰も判断できないと

思うのです。したがって自分たちのルールを守るためには、

一生森で暮らさなければならず、それは「何も知らない」

人生を子どもたちに送らせることを意味するのではないか。
序盤からずっと持ち続けた違和感は、終盤にようやく解消

されます。何でも知っていると思っていたベンが実は

「何も知らなかった」ということに気づくわけです。しかし

彼は間違っていたとは思えない。「現実」だけに生き続ける

よりも「理想」を追求し、その2つをその時々上手に折り合い

をつけて行くことが人間なんじゃないのかなと思っています。

とても難しいことだけれど。

 

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