ロブスター

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JUGEMテーマ:洋画

 

ロブスター

 

「ロブスター」

原題:The Lobster

監督:ヨルゴス・ランティモス

2015年 アイルランド=フランス=イギリス

=ギリシャ=オランダ=アメリカ映画 118分 R15+

キャスト:コリン・ファレル

     レイチェル・ワイズ

     レア・セドゥ

     ベン・ウィショー

     ジョン・C・ライリー

 

近未来、妻に捨てられたデヴィッドは独身者専用ホテル

に入る。そこでは45日以内にパートナーを見つけないと、

動物に変えられるという運命が待っていた。

 

<お勧め星>☆☆☆ 奇妙な映画ですが、動きや会話に

クスリと笑えるものがあります。

 

冒頭は馬を唐突に射殺するシーンが映ります。映画を見て

いくと、犬、クジャク、ウサギ、ラクダなど、その場に

いそうなものや、明らかにいるはずのない動物がいろいろ

出現し、おそらくはかつて人間であっただろう者の変身後

だと気づくのです。

主人公のデヴィッド役はコリン・ファレル。

 

ロブスター

 

彼は妻に別れを告げられ、犬のボブとともに独身者専用ホテル

へ入居します。ここで45日以内にパートナーを見つけないと、

最初に希望した動物に変えられるという決まりがあり、その間、

人間狩りをして滞在期間を増やしたり、パートナーがいると

こんなにステキ!などというすごくおかしい寸劇を見せられたり

するわけです。毎朝来る接客係には、性的機能が衰えないような

トレーニング?を受けるという手の込みよう。なぜか笑えて来る

から不思議です。見つけようと努力するほど相手は見つからない

もので、鼻血が出やすい女性にわざと鼻血を出して接近するズルが

いるのを見て、デヴィッドも血も涙もない女に接近して血も涙も

ないふりをしてみたりする。でも結局、彼はここを脱走し、森へ

と向かうのです。

すると森には、ホテルとは真逆の「独り身を貫く」集団がいて、

リーダー役はレア・セドゥ。

 

ロブスター

 

独り身が気楽と思ってみたものの、やはりこの集団にも決まりがあり、

男女が不必要に親しくなると「赤の接吻」などという懲罰が待って

いるのです。まあ、息苦しいったらありゃしない。人と同じように

行動することが、「秩序」を守るのであったとしても、いささかの

余裕もないグループはどちらも同じように見えます。

 

ロブスター

 

さらに、こんな時に限って自分と同じ「近視」という女が見つかり、

あっという間に恋に落ちてしまうのです。「制約」はあると破りたく

なるのが人間の本当の姿かもしれません。この不条理な世界で、

2人、特に近視の女は非情な行為を受けるわけですが、それでも

飛び出した先で、デヴィッドはどう行動するのか。同じであることが

それほどまで重要かどうかなどを含めて、いろいろ思いをはせる

ラストでした。音楽がいかにも芸術的なのが印象的です。

 

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リリーのすべて

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JUGEMテーマ:洋画

 

りりーのすべて

 

「リリーのすべて」

原題:The Danish Girl

監督:トム・フーパー

2015年 イギリス映画 120分 R15+

キャスト:エディ・レッドメイン

     アリシア・ビカンダー

     ベン・ウィショー

     セバスチャン・コッホ

     アンバー・ハード

     マティアス・スーナールツ

 

デンマークに暮らす画家の夫妻、アイナーとゲルダは

夫アイナーの風景画が世間で有名になっていた。肖像画

専門のゲルダが、ある時、友人のモデルの代わりに、

アイナーにストッキングをはかせたことで、彼は自分の

真実の心を知ることになる。

 

<お勧め星>☆☆☆ とても美しい風景画のような映像で

描かれる繊細なストーリーです。

 

第88回アカデミー賞助演女優賞をゲルダ役の

アリシア・ビカンダーが獲得しています。スウェーデン系と

フィンランド系の血筋をひいている北欧の美女ですが、肌の

色が浅黒く、ノオミ・ラパスを思い出させます。確実に

アリシアの方が可愛いと思うけれど。

 

リリーのすべて

 

彼女が感情豊かに笑い、泣き、怒り、喜ぶ姿は見事で、肌も

惜しげなく露出し、文字通り体当たりの演技を見せてくれる

のです。一方アイナー役はエディ・レッドメイン。透き通る

ほど色が白く、所作が次第に女性らしく変わっていくのを

これまた素晴らしい演技で見せてくれます。銀行の頭取の

息子でイートン校出身、「博士と彼女のセオリー」(2014)

でアカデミー賞主演男優賞を獲得するなんて、天は二物以上の

物を与えていると思う。

 

リリーのすべて

 

個人的にはアイナーの幼馴染ハンス役のマティアス・スーナールツ

がいいですねえ。「君と歩く世界」(2012)でも素敵だった。

1926年デンマーク、コペンハーゲン。アイナー、ゲルダ夫妻は

互いに画家として暮らしていたものの、アイナーの画く風景画は

好評なのに、肖像画専門のゲルダの絵は認めてもらえないのです。

それでも夫妻は深く愛し合い、子供を切望するものの授かることが

できません。そしてゲルダが友人でダンサーのウラをモデルの絵を

画いている時、ウラが約束をキャンセルしたことで、アイナーが

代わりにストッキングや靴を履き、ドレスを体に当てることに

なるのです。

 

リリーのすべて

 

この時のアイナーの指先が、ストッキングに触れ、靴を触り、

ドレスのステッチをなぞるのが大映しになり、アイナーの心の

揺れを描きます。遅れてやってきたウラがユリの花束を持って

いたことで

「あなたはリリーね」

と言われたアイナーははにかんだように微笑みます。ウラ役は

これまた私の大好きなアンバー・ハードなんだけれど、この映画

では特に美しさを感じなかったな。

アイナーの中に生まれたリリーという存在は、次第に彼の本当の

姿に変わっていきます。現代とちがって性同一障がいなどという

言葉すら存在しなかったし、研究する人もほとんどいなかった時代

ですから、アイナーは「性的倒錯者」「統合失調症」など精神疾患

と診断されてしまうのも当然なのです。このアイナーを夫として

支えつつ、その夫の内面が男でなくなっていくときも常に側に

寄り添っているゲルダは、人間としてのアイナーを愛したのですね。

リリーに変わっていくアイナーを、苦しみつつも受け入れ、彼を

支えたゲルダは本当に素晴らしい女性だと実感します。

ラストにアイナーが常に描いていた思い出の場所で、彼からもらった

スカーフが、強い風にあおられゲルダの首から離れ空へ飛んで

いきます。それはリリーとして再生し、自由を勝ち得た姿を象徴して

いるようでした。

 

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彼は秘密の女ともだち

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彼は秘密の女ともだち

 

「彼は秘密の女ともだち」

原題:Une Nouvelle Amie

監督:フランソワ・オゾン

2014年 フランス映画 107分 R15+

キャスト:アナイス・ドゥムースティエ

     ロマン・デュリス

     ラファエル・ペルソナス

     イジルド・ル・ベスコ

 

幼少期から親友同士だったローラとクレールだったが、

ローラが夫と娘を遺し病死してしまう。その死を受け

いれられないクレールは、様子を見に行ったローラの

家で、女装してミルクを与えているデヴィッドを見つけて

しまうのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆ ラストが曖昧なところがいかにもと

いう感じですが、幸せそうな姿を見られたからいいか。

 

ネタバレ

 

フランソワ・オゾン監督の映画は結構見ているのですが、

「ぼくを葬る」(2005)「危険なプロット」(2012)

などはあまり好みでなかったです。繊細な心の動きを丁寧に

描きすぎていて、その着地点が理解できないという感じ。

この映画もその類の内容です。

 

彼は秘密の女ともだち

 

ローラとクレールは、初対面の時からビビビと来て、ずっと

大親友。後にクレールの夫になるジルが、嫉妬するほど仲が

いいのです。ところがローラが病死し、夫ダヴィッドと1人娘

リュシーが遺されてしまいます。クレールもその死が受け入れ

られず、仕事どころか家事も手につかない始末。ジル役は

「黒いスーツを着た男」(2012)のラファエル・ペルソナス。

クレール役は「間奏曲はパリで」(2013)の

アナイス・ドゥムースティエ。あの映画では感じなかったけれど、

パリジャンヌという雰囲気が漂っています。

 

彼は秘密の女ともだち

 

休暇をとったクレールが、ローラの家の様子を見に行くと、なんと

そこには女装し、リシューにミルクを与えるダヴィッドの姿が

あったから、もう大変!

嫌悪感を抱く→ローラも知っていて家の中だけで女装していた

→ダヴィッドはリュシーのために父母の両方を演じている...

などと聞くと、実はローラが恋しいし、2人を守ると誓っていた

クレールは、彼の女装を認めていくのです。

 

彼は秘密の女ともだち

 

夫ジルにはもちろん内緒。かつてローラの金髪をといてあげた

クレールは今度は、ダヴィッドことヴィルジニアのウィッグを

といてあげます。きっとクレールはローラを友人以上に好きだった

んでしょうね。女装することで生きる意欲を取り戻したダヴィッド

ですが、映画館で痴漢に遭いそうになったりして、他の男性に女性

と認められそうになると、なんかクレールはイラつくんです。

さらに後半、精神科医のカウンセリングを受けて、女装を止め、

明るくなったダヴィッドを見ると、これまたクレールはイラつく。

結局、世間体を気にしているだけで、本当は女装したダヴィッドこと

ヴィルジニアがローラと同じ存在になってしまったらしい。

女性であるクレールと女装しているヴィルジニアのラブシーンは、

いったいどういうシチュエーションなのか理解しがたかったし、

からだは男と気づいてその場を走り去るクレールの気持ちもわかり

づらかったなあ。

ラストはちょっぴりお腹のふくらんだクレールとスキニーデニムを

履き女性姿のダヴィッドがリシューをお迎えに来ているんだけど、

ジルはどうなったのかな?ジルとクレールは結婚したままで、子供を

授かり、ダヴィッドことヴィルジニアとの友情は続いているという

ことかな。私はそう考えたいけれど。もっと複雑なのかもね。

 

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夏をゆく人々

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夏をゆく人々

 

「夏をゆく人々」

原題:Le meraviglie

監督:アリーチェ・ロルバケル

2014年 イタリア=スイス=ドイツ映画 

111分

キャスト:マリア・アレクサンドラ・ルング

     サム・ルーウィイック

     アルバ・ロルバケル

     サビーネ・ティモテオ

     アンドレ・ヘンニック

 

イタリア中西部で養蜂業を営む父を手伝う

ジェルソミーナは、テレビ番組への参加を父に

懇願するが聞き入れられない。そんな時、ドイツ人

少年が更生プログラムのために、この家に連れて

来られるのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆ ヨーロッパ映画らしいラスト

です。美しい自然と家族の姿が上手く描かれています。

 

第67回カンヌ国際映画祭グランプリを獲得した映画

だけあって、芸術色の濃い内容になっています。

冒頭、狩猟をする人々が

「こんな所に家があったんだ」

と口にするほどの草原の真ん中にぽつりと立つ1軒の家。

そこには、ヴォルフガンブとアンジェリカ夫妻、そして

4人の娘、ジュルソミーナ、マリネッラ、ルーナ、カテリーナ

が暮らしています。時代遅れのトラックや映りの悪い古い

カラーテレビ、ドアないトイレなど、彼らは文明とは程遠い

自給自足のような生活をしているらしい。ココという多分

ヴォルフガンブの妹も家族の一員のようです。

 

夏をゆく人々

 

強権的な夫に妻は怒りつつ、ここでの生活に不満を漏らしません。

なにがしかの理由があって喧騒のないこの生活を選んだことが

伺えるのです。そんな時テレビ番組で「ふしぎの国コンテスト」

が開かれると知り、ご当地特産品をアピールして、賞金を獲得

しようと、ジェルソミーナは考えるのですが、もちろん父は却下。

テレビ番組の司会役でモニカ・ベルッチさんが出演しています。

さすが、イタリアの宝石だけあって、ダントツきれいです。

ところが一家の営む養蜂業の製造所の改善を求める通知が食品衛生局

から届き、かなりの費用が必要になって来ます。

 

夏をゆく人々

 

「それはただの脅しだ」

父はなにか権力に対して抵抗する考えの持ち主なのでしょうか。

そして勝手にドイツの少年更生プランを引き受け、ドイツ人少年を

4か月預かることにしてしまいます。これももちろん謝礼目当て

なんだけど。

 

夏をゆく人々

 

毎日仕事に連れて行って可愛がっていたジェルソミーナをその

少年マルティンと比べて

「女はダメだな」

と言い放つ昔気質の父は、自分が主である世界をここに作っていた

のでしょうね。それがとても心地よかった。しかしマルティンが

加わったことで、この家族の中にさざ波が立ち始めます。

更生プログラムの謝礼金を、ジェルソミーナが幼い頃ねだったラクダ

購入資金に当ててしまうと、大喜びするのは下の2人の娘のみです。

父が1適も垂らすことを禁じていたハチミツが床一面にあふれ、

ヤギは売れても引き取ることさえ断られるラクダが庭につながれている。

この滑稽な光景を見ると、子供は成長するし、時代も変わっていた

ことを受け入れるのは、何がきっかけになるのか。そんなことを

考えさせられる映画でした。

 

 

 

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裁かれるは善人のみ

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裁かれるは善人のみ

 

「裁かれるは善人のみ」

原題:Leviathan

監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ

2014年 ロシア映画 140分

キャスト:アレクセイ・セレブリャコフ

     エレナ・リャドワ

     ウラジミール・ウドボチェンコフ

     ロマン・マディアノフ

     セルゲイ・ポホダーエフ

 

モスクワから遠く離れた田舎町で自動車修理工場を

営むコーリャは、自分の土地を収用しようと決定した

市を相手取って裁判を起こすことにする。彼は旧友で

モスクワで弁護士をしているディーマを呼び寄せるが。

 

<お勧め星>☆☆☆ 圧倒的な映像美と音楽を堪能

しますが、あまりに不条理なストーリーは心が暗くなる

ばかりでした。

 

2014年第67回カンヌ映画祭で脚本賞、

第72回ゴールデングローブ賞で外国語映画賞を受賞した

本作は、世界中の映画祭で26もの賞を獲得しているとの

こと。ロシアの田舎町に寂れた景色と対照的に広がる広大な

海や大地は、その大きさに息をのむほどです。

原題の「Leviathan」は、終盤酒に溺れるコーリャに対し、

ヴァシリー神父が引用した旧約聖書の1節に出てくる、

どんな武器も通用しない最強の生き物であり、つまり強大な

運命の前には、ちっぽけな1個人はなすすべもなく打ち砕かれ

ていくのだということを意味しているのでしょうか。

とはいえ、コーリャは格別善人というわけでもなく、日曜礼拝を

することや懺悔をするために教会を訪れることもないのです。

 

裁かれるは善人のみ

 

逆にこの映画で「悪」の象徴である、ヴァデイム市長は、余裕が

ある日は家族そろって日曜礼拝に出席するし、悩みごとは司祭に

相談しようと考える信心深い男。つまりロシアにおける国家権力

と教会の癒着をも皮肉っているのかもしれません。

 

裁かれるは善人のみ

 

コーリャは前妻の息子ロマと後妻リリアの3人暮らしで、彼は

自動車修理工場を営み、代々受け継いできたこの土地をどうしても

市に明け渡したくなかったのです。それは、壁にかけてある古い写真

からも十分伺えます。一方リリアは、なつかないロマに悩まされ、

さらに毎日早朝のバスで通う魚加工会社の仕事が全然楽しくない

のです。

 

裁かれるは善人のみ

 

確実に言えることは、彼女はこの町を出たかったのです。そして

モスクワからコーリャの戦友であり、今は弁護士をしているディーマが

やって来ます。明らかに不当な判決に、ディーマは市長の過去の悪事を

調べ上げ、その資料で彼と取引しようと考えるわけです。

しかし市長への告訴状はどこにも受理されず、警察、司法が全て権力と

癒着している構図を垣間見ることになります。逆にコーリャが拘束

されるという不条理の中、助けるはずのディーマが、コーリャの

家族の中に波風を立ててしまう。その後次々に彼に降りかかる不幸には、

「神」は本当に存在するのか。そしてその「神」は誰のために存在

するのか、大きな疑問を持つラストでした。

 

 

 

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パリ20区、僕たちのクラス

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パリ20区、僕たちのクラス

 

「パリ20区、僕たちのクラス」

原題:Entre les Murs

2008年 フランス映画 128分

キャスト:フランソワ・ベコドー

 

パリ20区にある公立中学校生徒は出身国も人種も

様々で、正しいフランス語を話すことすらできない。

そんな中で国語教師フランソワは、担任する生徒たち

に自己紹介文を書かせることにするが...。

 

<お勧め星>☆☆☆ ドキュメンタリータッチであり

ながら、教師の苦悩と喜びを体感できます。

 

2008年、カンヌ映画祭パルムドールを獲得した作品

です。ドキュメンタリー映画のように見えますが、生徒

24名は、全員演技経験のない本物の中学生で、7か月

にわたるワークショップの後、撮影したとのことです。

 

パリ20区、僕たちのクラス

 

あまりに行儀の悪い生徒の姿に不快感を覚えることが

しばしばありましたが、おそらく今の日本でもこんな学校生活

なのではないかと想像してしまいます。最も物事を複雑にして

いるのは、フランスが移民の多い国であり、特に映画の舞台、

20区の公立中学校は、多国籍の住民、様々な人種、宗教を持つ

人々が生活しており、彼らの子供たちが通学しているのです。

 

パリ20区、僕たちのクラス

 

映画の中で国語を教えるフランソワが、正しいフランス語の

文法を説明すると、それは「金持ちの言葉」だと言われてしまう。

さらにアフリカ系移民の子供は、スラングしか話せず、文字など

書けるはずもないのです。保護者会で通訳として兄を学校に連れて

くる母親の姿からも、彼らの家庭の事情が伺えます。

それでも教師は毎回話し合いをし、納得の上で行動を起こすので、

互いにストレスを分かち合います。中には心を病み、退職する者も

いますが。徹底的に話し合うという姿勢はフランスという国の精神

なのでしょうね。決して上から押し付けません。

今、日本で最も暴力事件が多いのは、小学校という記事を新聞で

読んだことがありますが、この親にしてこの子供というような生徒

に対し、日々苦悩する教師の姿は想像に難くありません。主役が

何人もいる学芸会なんて、外から見たら大笑いを通り越して、飽きれ

るけれど、それが「平等」だと思っているから仕方ない。

バカンスの前に、狭い校庭でサッカーに興じる教師と生徒の姿を

見ると、束の間だけれど、心が和みました。

 

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間奏曲はパリで

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間奏曲はパリで

 

「間奏曲はパリで」

原題:La ritournelle

監督:マルク・フィトゥシ

2013年 フランス映画 99分 PG12

キャスト:イザベル・ユペール

     ジャン=ピエール・ダルッサン

     ミカエル・ニクビスト

     ビオ・マルマイ

 

ノルマンディで農場を営むクザヴィエとブリジット

は倦怠期の真っ只中。ある日隣家のパーティーに

参加したスタンと知り合い、彼に再会したい一心で、

ブリジットはパリ旅行を決行するのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆半 いかにもフランス映画という

感じがする内容だけれど、見終わると少し気分の良く

なる映画です。

 

始まりは、妻を叱る夫の姿で、それは牛の品評会の直前

のできごとなのです。夫グザヴィエ役は「ル・アーブル

の靴みがき」(2011)のジャン=ピエール・ダルッサン。

武骨で生真面目な農場主役が良く似合います。そして彼の

妻ブリジット役は「愛、アムール」(2012)の

イザベル・ユペール。あの映画では冷たい雰囲気を感じまし

たが、この映画ではお茶目で好奇心旺盛、そしてまだまだ

若い心を持つ女性を演じています。息子も家を離れ、毎日

夫の指示で牛の世話をする生活の繰り返しに飽きているのは、

時折彼女がつくため息から伺えるのです。

 

間奏曲はパリで

 

ブリジットはストレスからか右胸の蕁麻疹が広がっています。

そんな時、隣家の姪がパーティーを開き、そこにパリから

スタンというイケメンが参加するのです。

「うるさすぎる」と言ってスタンはブリジットの家を訪ね、

その後彼女は誘われるまま、パーティーに参加し、若者の

楽し気な姿にすっかり舞い上がってしまう。こっそり帰宅して

ベッドに入る時、寝ているはずのクザヴィエの瞳が輝くのが

おかしい。心配でたまらないんだ。

ブリジットは音楽や本の話で盛り上がったスタンと再会しようと、

パリへ行く計画を立てるわけです。とはいえ、その過程は

さっさと描かれて、彼女の心の動きは見ている側が察する

しかないのですが。もちろん夫には「皮膚科の受診」と偽りの

理由を告げます。いけないんだー。

実はクザヴィエはかつて浮気をしたことがあって、それで妻が

傷ついていたことを知るのは映画の後半で、それも従業員の

レジスから初めて知らされる事実というのが、夫婦であっても、

すべてを知っているわけではないのだとことを表しています。

難しいよね。

さて、パリに行ってスタンとどうなるか。いえいえ、親子ほど

年が離れ、都会暮らしのスタンとは、全然意気投合できないの

ですよ。この若造は「年増の出会い系を捜せ」と言ったぞ。

せっかくパリに来たのにいいことないまま終わるのかと思って

いると、同じホテルの客でデンマークの歯科医ジェスパーと

出会うのです。ジェスパー役は「ミレニアム」シリーズの

ミカエル・ニクビスト。

 

間奏曲はパリで

 

ちなみに妻の嘘に気づいたクザヴィエが、パリまで彼女を

追って来ていると、こんな光景をばっちり目にするのです。

アンビリーバボー!

色男のジェスパーは、ブリジットの蕁麻疹をおぞましげに

見たスタンと真逆で、それを優しく愛撫してくれます。

このアバンチュールが夫妻にとっての再出発のきっかけに

なるというから、フランス人の気持ちってなかなか理解

しづらいです。変化のない生活に甘んじていた夫妻には、

このくらいの辛いスパイスが効果大だったのかしら。

ラストに死海に2人でぷかぷか浮かぶ夫妻の向きが、逆方向

から同じ方向に変わるのは、彼らの心の中そのものを表して

いるようでした。

 

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あるメイドの密かな欲望

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あるメイドの密かな欲望

 

「あるメイドの密かな欲望」

原題:Journal d'une femme de chambre

監督:ブノワ・ジャコー

2015年 フランス=ベルギー映画 96分

キャスト:レア・セドゥー

     バンサン・ランドン

     クロティルド・モレ

     エルベ・ピエール

 

パリ市内で小間使いをして暮らしているセレスティーヌは

初めて郊外の村のランレール家を紹介される。好色な主人と

人使いの荒いマダムに嫌気がさしつつも、彼女は使用人、

ジョゼフの存在が気になるのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆ レア・セドゥの魅力が堪能できます。

 

文豪O・ミルボーの名作「小間使いの日記」を映画化した

とのことですが、その原作はおろかミルボーも知りません。

ヒロイン、セレスティーヌ役は「美女と野獣」(2014)、

「007 スペクター」(2015)などで可愛いフランス

娘を演じたレア・セドゥ。わたしが一番好きなのは

「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014)のクロチルド役

です。ちょっと上を向いたお鼻が可愛いのよね。

 

あるメイドの密かな欲望

 

セレスティーヌは小間使いとしてパリ市内の名家を渡り歩いて

いるんだけど、今回紹介されたのは、郊外のランレール家。

迎えに来たその家の使用人ジョゼフ役は、「友よ、さらばと言おう」

(2014)のバンサン・ランドンです。なんか見るからに悪い

香りが漂ってきそう。

 

あるメイドの密かな欲望

 

ランレール家の主人は、とても好色だし、マダムは人使いが荒く、

意地悪なのです。セレスティーヌは不機嫌そうに「ウィ、マダム」

と言いつつ小声で悪口を言っています。そのセリフが的をついていて

とてもおかしい。この屋敷での仕事ぶりと、かつて彼女が使えてきた

家での人との関わりが回想シーンとなって流れ、彼女がここに

至るまでに、体験した笑える事実や、悲しい出来事などが描かれて

いきます。特に純真に愛した青年が、自分の腕の中で血を吐いて

亡くなる出来事は彼女にとって大きな心の傷になったはず。一方で

行きずりのの紳士と関係を持ったり、娼館にスカウトされたりする

シーンも流れます。ここでわかってくるのは、彼女は人に使われる

暮らしからひたすら脱却したいと考えていたことです。しかし彼女に

そんな機会もなかった。ところがこの家の使用人ジョゼフは、次第に

彼女に心を開き、彼女も彼に惹かれていくのです。映画の終盤に

少女の惨殺事件が起きるけれど、あれは誰が犯人なんだろう。それと

映画の内容に関係があったのでしょうか。支配されることに嫌気が

さしていたセレスティーヌは、自由を得るために自らジョゼフの

提案を承諾するのだけれど、それはジョゼフに支配されることに

飛び込んでいくということよね。ただ今までとは違う世界に向かう

ことは確かだから、彼女にとって希望に満ちた未来が開けるという

ことかしら。だといいけどね。

 

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ボヴァリー夫人とパン屋

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ボヴァリー夫人とパン屋

 

「ボヴァリー夫人とパン屋」

原題:Gemma Bovery

監督:アンヌ・フォンテーヌ

2014年 フランス映画 99分

キャスト:ファブリス・ルキーニ

     ジェマ・アータートン

     ジェイソン・フレミング

     ニール・シュナイダー

 

フランス北部の村で父から継いだパン屋を営むマルタンは、

大の文学好き。そんな彼の家の近所に1組の夫妻が転居

してきて、その名前を聞いたマルタンは「ボヴァリー夫人」

と彼らを重ねてしまうのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆ 官能的ながら、美しいフランスの田舎

の自然とそこで起きる出来事がユーモラスに描かれています。

 

WOWOWで鑑賞したのですが、R15指定にするほどのシーン

は見当たらず、ジェマ・アータートンの体は確かに豊満だけれど、

それもほとんど映らないし、ラブシーンもソフトです。だから

誰が見ても平気だよーん。「アンコール!!」(2012)と

「ビザンチウム」(2012)で全く違う女性を演じた

ジェマ・アータートンの両方の姿が見られます。

 

ボヴァリー夫人とパン屋

 

さて主人公のパン職人マルタン・ジュベールを演じるのは、

「危険なプロット」(2012)のファブリス・ルキーニ。

どこかひょうきんなルックスながら、繊細な心を持ち、実は

女性に目がないという、ごくごくありきたりの男性をうまく

演じています。彼の場合やけに文学に造詣が深いから少々

困ったさんなんです。ストーリーはそんな彼の家の近所に

イギリス人夫妻が転居してきたことから始まるのです。そして

シーンは飛び、ジェマの荷物を燃やしているチャーリーの隙を

見て、彼女の日記を持ち去り、それを読みふけるマルタンの

姿に変わります。そこから日記に書かれていたジェマの日常と

マルタンの妄想が重なり合った映像となって流れていくのです。

 

ボヴァリー夫人とパン屋

 

夫妻の名前はチャーリーとジェマと言い、名字はなんと

ボヴァリーです。チャーリーはフランス読みではシャルルだし、

ジェマはエマ。ああ、何ということだろう!マルタンの頭は

「ボヴァリー夫人」の話でいっぱいになるのです。小麦粉を

こね、パン生地を成型していくシーンは、木漏れ日が降り注ぐ中、

まるで目の前に粉が舞ってくるかのように映され、絶対に

パンが食べたくなるはず。でもマルタンは、もうジェマに夢中。

案の定ジェマはかつての富豪の息子エルヴェと浮気をするし、

夫チャーリーとも不仲になっていきます。野ネズミに悩まされる

ジェマに殺鼠剤を絶対に使うな、と強く主張するマルタンの話の

根拠は、その中にヒ素が含まれているからで、小説「ボヴァリー夫人」

の死因となっていただけのこと。じゃあどうやって退治するかと

いうと、マルタンは叩き殺します。あらら、そっちの方が残酷だわ。

ジェマの元恋人パトリックも現れ、彼女を巡って男性が争う中、

ジェマはなんとマルタンがプレゼントしたパンを喉に詰まらせて

窒息してしまう。とてつもなく悲劇なのに、残された男たちが

滑稽に思えてしまうのです。さらにもっと滑稽なのは、次に

同じ家に引っ越してきた人を、マルタンのバカ息子が

「ロシア人で、名字はカレーニナ」なんて嘘をつくものだから、

彼女が生粋のフランス人と知らず、ジェマと同様に近づいていく

マルタンの姿です。舞台となっているノルマンディー地方の

のどかな景色とともに繰り広げられる人間ドラマはなかなか

面白かったです。

 

 

 

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ある神父の希望と絶望の7日間

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JUGEMテーマ:洋画

 

ある神父の希望と絶望の7日間

 

「ある神父の希望と絶望の7日間」

原題:Calvary

監督:ジョン・マイケル・マクドナー

2014年 イギリス=アイルランド映画 102分

キャスト:ブレンダン・グリーソン

     クリス・オダウド

     ケリー・ライリー

     エイダン・ギレン

 

アイルランドの小さな町の教会の司祭ジェームズは

ある日曜日、懺悔室でかつて司祭に性的虐待を受けた

男から、自分への殺害予告を受ける。彼はその日から

1週間町民と対話をして回るが...。

 

<お勧め星>☆☆☆ コメディのジャンルに入っていて

もちろん笑える要素もありますが、同時に閉塞感で

息苦しくなります。

 

calvary=キリストの磔の地、受難

日曜日ジェームズ司祭は、教会の懺悔室で1人の男の告解を

聞くのです。しかしそれは赦しを請うものではなく、7歳の

時から5年間司祭にレイプされ続けたこと。そしてその司祭

に復讐しようにも、彼は既に亡くなってしまったこと。さらに

「悪い司祭を殺してもニュースにならないが、善良な司祭を

殺せばニュースになる」ということで、ジェームズを来週の

日曜日に殺害すると告げるのです。声だけとはいえ彼は

その声の主が、誰であるかはすぐにわかっているのです。

その日から1週間、ジェームズと町の人々との対話のシーンが

曜日ごとに映し出されていきます。しかし見ている側には、

誰が声の主であるのか、ほぼわかりません。10人そこそこの

町人との会話は、ウィットに富んだもので、クスリとさせられる

ものばかりです。

 

ある神父の希望と絶望の7日間

 

これは脚本が上手なのでしょう。字幕で見たので微妙なズレは

あるものの、相手とのやり取りは飽きることがありません。

さらにその町民がおかしな人ばかりなのです。

夫ジャックからDVを受けているベロニカは、複数の愛人がいるし、

ジャックもそれで機嫌よく家族が過ごせるならそれでいいと言う。

富豪マイケルは酒浸りで、家族はおろかメイドまで家を出てしまい、

話し相手がいないのです。バーのオーナー、ブレンダンは不況の

影響で家を没収されているし、その従業員マイロは、退屈だから

自殺するか入隊するか究極の選択を考え中。実は女性とヤレないから、

というのが本心らしい。また身の危険を感じ、相談しようと考えた

警部補スタントンの家には、男娼レオがいる。とても相談できる状況

じゃないな。また彼の娘フィオナは、男性問題が理由で自殺未遂を

したものの、手首の切り方を間違えたので自殺に失敗し、それを

町民に指摘されてばかりなのです。

 

ある神父の希望と絶望の7日間

 

その他にも作家志望の死にかけた老人やジェームズの下で働く

リアリー司祭など個性的な人物との交流は、迫りくる日曜日を前に、

どこまでものどかに続くのですが、教会に放火され、さらに愛犬を

惨殺されるなど、彼の周りはにわかに危険を帯びてきます。

「カトリック教会の司祭による性的虐待問題」が露呈してから、

アイルランド国内での聖職者への考えが変わってきたことが皮肉めいて

映し出され、ジェームズは遂には泥酔し、バーのオーナーと暴力沙汰を

起こします。皆の不平不満を聞く司祭は、ある意味そのはけ口になる

使命を持たされてしまったのかもしれません。

「一番の徳は人を赦すこと」とジェームズはフィオナに語りますが、

それがラストにフィオナが発する言葉にどう影響を与えているのか、

いろいろ考えさせられるものでした。アイルランドの牧歌的な自然に

あふれた景色が、実はシリアスな内容の映画と真逆で、心に残る映画に

なっています。

 

 

 

 

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