妹の体温

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JUGEMテーマ:洋画

 

妹の体温

 

「妹の体温」

原題:De nermeste

監督:アンネ・セウィツキー

2015年 ノルウェー映画 102分 R15+

キャスト:アイネ・マリー・ウィルマン

     シーモン・J・ベリエル

     アネッケ・ボン・デル・リッペ

 

バレエ講師のシャルロッテは、親友マルテや

その兄で恋人ダグたちに囲まれ幸せな生活を

送っている。しかし彼女には異父兄ヘンリックが

おり、彼女は彼の暮らしぶりをうらやましく思うが...。

 

<お勧め星>☆☆☆ かなりきわどい内容なのですが、

ヒロインの胸の内が静かに伝わります。

 

この映画の英題は「Homesick」だそうで、確かにその

通りの内容であれば、禁断の愛もなぜか雪が解けるように

受け入れられてしまいます。

冒頭、カウンセリングを受けるシャルロッテが映ります。

彼女は母の最近の思い出を思い出せず、欲しいものは

「自分を受け入れてくれる人」と言ったかなあ。そんな

ようなことを口にしたと思う。

じゃあ彼女は家庭に恵まれない孤独な人間かというと、

バレエ教室の講師として、子供たちに慕われ、親友マルテに

家族として受け入れてもらい、彼女の兄ダグは恋人なのです。

 

妹の体温

 

では、なぜ彼女はカウンセリングを受けているのかとか、

突然バレエ教室に現れた異父兄ヘンリックに

「家の周りをうろつくな」

と言われるのかとか、マルテの結婚式で彼女が夫からもらった

代々受け継がれてきたペンダントを盗んだのか、など色々謎が

浮かび上がって来ます。そしていくつかの事実から、彼女が

屈託なく笑っているのは、表面上の姿であり、心の中に深い闇が

あることがわかってくるのです。母親がいないか、疎遠なのかと

思うと、元気な母親がいるし、彼女と不仲でもない。ただ、母は

自分のことしか頭になく、アル中で入院中の父の前でも自分の

キャリアの話ばかりするわけです。さらに父はシャルロッテを

求めることもなく、さっさと帰ってしまった母の名を呼ぶ。彼女

には自分を受け入れてくれる「家族」というものが存在しないと

わかってきます。マルテが家族として付き合ってくれていたけれど、

彼女も夫を持ち、新しい家族を作ってしまった。それがあの悪戯に

つながったのかしら。

 

妹の体温

 

そしてヘンリックは離婚をきっかけにシャルロッテと深い関係に

なってしまうのです。ヘンリックは母親に捨てられ、新たな家庭

で生まれたシャルロッテが憎くてたまらなかったし、シャルロッテ

は、自分のことしか頭にない母に振り回され続け、家族の愛に

飢えていたわけで、この2人はあっという間に時間を共有してしまう

のです。

ダグがシャルロッテの携帯を盗み見した時、彼女からヘンリックに

送信したメールには「わたしの中に入って来て」とありました。

それは文字通りのものではなく、シャルロッテの心の中に入ってきて

ほしいという意味も込められていたのではないでしょうか。

北欧ならではの曇った空から降り続ける雪や、白く見える息などが

印象に残る映像になっています。

 

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フレンチアルプスで起きたこと

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フレンチアルプスで起きたこと

 

「フレンチアルプスで起きたこと」

原題:Turist

監督:リューベン・オストルンド

2014年 スウェーデン=デンマーク=フランス

=ノルウェー映画 118分

キャスト:ヨハネス・バー・クンケ

     リサ・ロブン・コングスリ

     クリストファー・ヒビュー

     クララ・ベッテルグレン

     ビンセント・ベッテルグレン

 

トマスとエバは子供2人とバカンスでフレンチアルプス

を訪れる。しかし2日目の昼食中、目の前で起きた雪崩

を見て自分だけ一目散に逃げたトマスに対し、エバは

不信感を募らせるのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆半 結構深いストーリーなんです。

美しいアルプスとヴィヴァルディの音楽が皮肉めいて

います。

 

 

<ネタバレしています>

 

 

スウェーデンからフレンチアルプスへバカンスに訪れた

一家は、2日目のランチの最中に、雪崩に巻き込まれそう

になるのですが、この一家の主トマスが、多分日頃から

仕事のできる人間として、会社でも家庭でも敬われる存在

だったのでしょう。目の前に雪崩が迫って来ても

「あれは大丈夫」

なんて、のん気に構えているのです。頻繁に爆発を起こして

人口雪崩を誘うことで、美しいゲレンデを作っているのは

確かなのでそうかもしれないけれど、いやもうそこまで雪が

来てますって。真っ白な雪粒が晴れると、そこにいたはずの

トマスは手袋と携帯を持って1人で逃げています。エバは

娘ヴェラと息子ハリーを守って何とか危機を切り抜けたのに...。

 

フレンチアルプスで起きたこと

 

ここで「怖くて逃げたんだ。ごめん。」と言えない男のプライド

が辛いです。一方納得のいかないエバは、ずっとネチネチと彼を

責め続けます。エバは日頃の鬱憤を晴らすかのように、彼に「非」

を認めさせようとするわけです。時には家族を置いて浮気バカンス

に来ている女性に打ち明けたり、友人カップルに当時の動画を

見せたりします。

 

フレンチアルプスで起きたこと

 

そんな行為をしているうちに夫婦の心の溝は深まり、それにいち

早く気づいた子供たちはトマスに「ママと別れないで」と

言われる始末。楽しいバカンスはどうなるのかしら。

毎日美しい雪山の朝日や夜の景色を映し、ヴィバルディの

「四季 夏」という場違いな音楽が流れます。そして1日目は4人で

歯磨きをしていたのに、日を追うごとにこの光景が変わっていく。

日常を忘れるために訪れたバカンスが、こんなにも辛いものになる

なんてね。

そして4日目、部屋のキーをなくしたトマスは、途方に暮れていると

そこにエバが現れ、彼は遂においおい泣き始めます。

 

フレンチアルプスで起きたこと

 

「自分に失望した」

彼はとっさに逃げてしまったことを一番悔いていたはずなのです。

おいおい泣くトマスは部屋に入っても大泣きし、子供も加わって泣く。

「もう仕方ないわねえ」とあきれたように抱きしめるのがエバ。

しかし千載一遇のチャンスが最終日に訪れます。吹雪の中、山を下り

始めた一家のうち最後を滑っていたエバが姿が見えなくなり、助けを

求める声がします。ここでトマス一挙にポイントアップ!!

雪の中からエバをお姫様抱っこして登場したトマスの神々しいこと。

初日のように意気揚々と帰路に着く一家の乗ったバスの運転手が

とても運転が下手で、それに怒るエバの一言でバスの乗客はバスを

下車し、とぼとぼ山道を下り始めるのです。すごい道なのよ。

いろは坂も真っ青。バスは一人客を乗せたまま走り去るんだけれど、

その客は浮気バカンス女。歩く乗客も勢いで降りたものの、本当は

乗っていても大丈夫だったと思っているはずです。特にトマスは、

他の客の勧めた煙草を吸い、息子に「パパは煙草を吸ったっけ?」

と不思議がられます。吸わなきゃやってられないんだよ。

「エバ、君は騒ぎ過ぎなんだよ」と言いたいけれど、口が裂けても

言えないトマスは、ただ歩き続けるわけです。

「男らしさ」という漠然とした概念への皮肉でもある気がします。

 

 

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グランド・セントラル

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グランド・セントラル

 

「グランド・セントラル」

原題:Grand Central

監督:レベッカ・ズロトブスキ

2013年 フランス=オーストラリア映画 94分

キャスト:タハール・ラヒム

     レア・セドゥー

     オリビエ・グルメ

     ドゥニ・メンーシェ

 

原発で働くギャリーは、上司トニの婚約者カロルと

関係を持ってしまう。しかし彼はある事故で大量被ばくし、

仕事と彼女のために線量計の偽装申告を続けるが...。

 

<お勧め星>☆☆☆ 甘い恋愛映画と思っていたら全然

違いました。

 

線量計の針がふれる音と響き渡るサイレン。1回のサイレン

は演習、2回は注意、3回は...と説明するカロルの後ろで7回

のサイレンが鳴ります。放射能被ばく事故発生なのです。

原題の「Grand Cetral」は「中央駅」と「大型発電所」を

かけているとのこと。もちろん撮影に稼働中の原発を使える

はずもないので、実際はウィーン郊外にある使われていない

原発で行われたそうです。「ダイ・ハード/ラスト・デイ」

(2013)のようなふざけた扱いではなく、放射能の怖さを映像で

明確に伝えてくれます。映画内で作業員が作業終了後、防護服

を脱ぎ、シャワーを浴びながら、必死で石鹸を使って体を洗う

のです。それでも落ちない量の被ばくをしてしまうと、女性で

あっても髪の毛を刈られてしまう。

主人公のギャリーは、なにか過去を持つ男で、親族からも

疎まれているらしい。そして手っ取り早く金になる原発作業員

に採用され、意気揚々としているのが序盤です。酒を飲み、

仲間とゲームに興じ、ロデオマシーンをなんなく乗りこなし

喝采を浴びます。

 

グランド・セントラル

 

映画内で常に稼働を続ける原子炉の姿が常に映り続け、彼らが

この得体のしれないもので仕事を得、金を稼ぎ、体を蝕まれて

いく事実の象徴と感じるのは映画の中盤くらいからでしょうか。

 

グランド・セントラル

 

ギャリーの上司トニの婚約者であるカロルが、なぜギャリーを

誘惑したのか、そして関係を持ち続けたのかがわかるのは、

彼女が妊娠を医師に告げられた時、医師が

「トニは子供を作れない体ね」と言ったことからです。カロルは

トニを愛していたけれど、子供という確かな「存在」が欲しかった

のかもしれません。ノーブラで水着のようなボディスーツの上に

ホットパンツをはいたレア・セドゥーは、小悪魔という印象が

ぴったりです。

そしてギャリーはトニの危険を救うために大量の被ばくをして

しまうのです。原発作業員はいわば「使い捨て」であり、線量が

ある量を越せば、その時点でそこの原発では働けなくなってしまう。

ギャリーは「仕事」と「愛」の両方を失わないために、線量計の

過少申告を始めるわけです。一方で同じ作業員の境遇も描かれ、

ここで仕事を求めることは、ここにしか居場所がない者ばかりで

あるとわかって来ます。

 

グランド・セントラル

 

ギャリーの偽申告はバレ、カロルはトニと結婚し、彼は原発を

去ろうとするのですが、その彼の後を追って来てしがみつく

カロルの言葉は「怖いの」。ここにいる人々がじわじわと汚染

されていく日常への恐怖を物語るかのように、またサイレンが

鳴り響くのです。

映画の終盤に落とした赤いリンゴが湧水を転がるシーンがあった

けれど、最近見たDVDで同じようなシーンがあったな。

「昔々、アナトリアで」(2011)だと気づいたけれど、特に関係ないか。

 

 

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さざなみ

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さざなみ

 

「さざなみ」

原題:45 Years

監督:アンドリュー・ヘイ

2015年 イギリス映画 95分

キャスト:シャーロット・ランプリング

     トム・コートネイ

     ジェラルディン・ジェームズ

     トリー・ウェルズ

 

結婚45周年パーティーを目前に控えた夫ジェフの

もとに、元恋人の遺体が50年ぶりに発見されたと

いう手紙が届く。妻ケイトは昔話を語り続ける夫へ

次第に不信感を募らせていくのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆半 邦題が珍しくフィットした

映画です。2人にの演技も注目。

 

2015年ベルリン国際映画祭で銀熊賞(主演男優賞、

主演女優賞)ダブル受賞など多くの賞を獲得している

映画です。主役のトム・コートネイと

シャーロット・ランプリングが実際に長年連れ添った

夫婦のような自然な演技を見せています。互いの顔に

刻まれたしわや崩れてきた体型もすべて共有しているか

のように感じます。

 

さざなみ

 

映画は結婚45周年パーティーを控えたマーサー夫妻の月曜日

から始まります。いつものように愛犬マックスの散歩から

戻ったケイトは、1通の手紙を手にしているジェフの姿に目が

留まるのです。その手紙には50年以上前に、一緒にスイスの

山に登り、氷河の割れ目に落ちてしまったジェフの当時の恋人

カチャが、1962年のままの姿で見つかったという知らせだった

のです。ケイトはカチャという名前すら忘れていたのに、

ジェフは「ぼくのカチャ」とまで口を滑らしてしまう。そもそも

ケイトと出会う前に交際をしていたのだから、カチャの顔かたち

すら知るはずもないのです。

 

さざなみ

 

目前に控えたパーティーのことは上の空で、昔話ばかり始める

ジェフにケイトは次第に不機嫌になっていきます。過去の

記憶って美しい思い出ばかりが残り、それがまるで昨日の様に

感じられるから不思議です。夜中に屋根裏で何かをしている夫。

後で調べるとカチャとの写真をスライドで見ているらしい。

それがわかってもケイトはただ天井から漏れる屋根裏の明りを

見ているだけで何を言うわけでもないのです。何も言わないことで

彼女の心の中の嫉妬や猜疑心は募るばかり。それが実際に起きて

いることなら抗議もできるけれど、50年も前に亡くなった、

会ったこともない夫の恋人に対し、何をどう訴えればいいのだろう。

でもジェフの決定的な言葉を耳にすると、ケイトは一気に心が

冷めていきます。

「生きていれば彼女と結婚していた」

これは絶対に言ってはいけない言葉なんです。元々他人である男と女

が縁あって知り合い、結婚し、子供はいないものの(できなかった

のか敢えてもうけなかったのかは不明)45年も苦楽を共にしてきた

んです。ケイトは夫に買うはずだった時計を買うのを止めてしまう。

スライドの中に明らかにお腹が大きいカチャが写っていたのも、ケイト

には大ショックだったはずです。

 

さざなみ

 

45周年パーティーでジェフはスピーチの最中、感極まって涙を

流すけれど、ケイトはどこか冷めた笑顔で彼を受け留めます。

このパーティーが土曜日。夫のみが用意したプレセント。夫妻の

今後が気になる映画でした。

 

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「僕の戦争」を探して

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僕の戦争を探して

 

「僕の戦争」を探して

原題:Virvir es facil con los ojos cerrados

監督:デビッド・トルエバ

2013年 スペイン映画 108分

キャスト:ハビエル・カマラ

     ナタリア・デ・モリーナ

     フランセス・コロメール

 

語学教師アントニオは大のビートルズファンで、

ジョン・レノンがスペインで映画の撮影をしている

と知り、彼に会いに出かける。ヒッチハイクのフアン

とベレンの3人で現地へ向かうが...。

 

<お勧め星>☆☆☆半 淡々としたストーリーですが、

色遣いやセリフ、そして美しい景色が心に残ります。

 

スペイン映画界のアカデミー賞的なゴヤ賞で監督賞など

主要6部門を獲得した映画ですが、日本では劇場公開はなく

DVDのみ。今、WOWOWや配信サービスで見られます。

まずスペインの温暖な気候を表す美しい自然に引き込まれ

ます。時代はフランコ独裁政権下のスペインであり、所々、

民衆の窮屈で貧しい暮らしぶりが映されるのです。

ストーリーは、英語とラテン語を教えるビートルズの大ファン、

アントニオが「僕の戦争」という映画を撮影中のジョン・レノン

に会うため、撮影場所のアルメリアという町へ向かうというもの。

なぜ彼に会いたいのかというと、「歌詞の空欄」を知りたかった

からで、当時は歌詞カードがついておらず、歌っていない部分の

歌詞を知るには、本人に会うしかなかったようです。

 

僕の戦争を探して

 

で、なぜか同行するのは警官の父に反発し、家出を決行した

フアンと、望まぬ妊娠をしたため施設に収容されたベレン。

ベレン役の女優さんが何とも言えない魅力的な方です。お肉の

付き具合がちょうどいい感じと言ったら失礼かな。

 

僕の戦争を探して

 

彼らが滞在する宿の隣の食堂のオーナーとその息子で障がいを

持つブルーノとの交流を交え、小さな町ですら感じる不条理な

暴力や学校の存在すら知らない貧しい子供の姿を描いて、時の

政権への批判もさらりと映します。

 

僕の戦争を探して

 

すっかり黄昏ているかのように見えるアントニオは、実は

とても満足しているのです。「怯えて生きてはいけない」と

言いつつ非暴力を貫いたアントニオが最後にクソ野郎の畑を

車でぶっ飛ばすシーンは、爽快そのものでした。若い2人に国の

未来を託したアントニオの描いたような国になっているの

でしょうか。映画内でアントニオが「ちっく  しょう」と

言うのは教師としての自覚から汚い言葉を使うことに躊躇した

のかしら。スペイン語がわからないからなんて言ったのか全然

わからなかったわ。

 

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ロブスター

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ロブスター

 

「ロブスター」

原題:The Lobster

監督:ヨルゴス・ランティモス

2015年 アイルランド=フランス=イギリス

=ギリシャ=オランダ=アメリカ映画 118分 R15+

キャスト:コリン・ファレル

     レイチェル・ワイズ

     レア・セドゥ

     ベン・ウィショー

     ジョン・C・ライリー

 

近未来、妻に捨てられたデヴィッドは独身者専用ホテル

に入る。そこでは45日以内にパートナーを見つけないと、

動物に変えられるという運命が待っていた。

 

<お勧め星>☆☆☆ 奇妙な映画ですが、動きや会話に

クスリと笑えるものがあります。

 

冒頭は馬を唐突に射殺するシーンが映ります。映画を見て

いくと、犬、クジャク、ウサギ、ラクダなど、その場に

いそうなものや、明らかにいるはずのない動物がいろいろ

出現し、おそらくはかつて人間であっただろう者の変身後

だと気づくのです。

主人公のデヴィッド役はコリン・ファレル。

 

ロブスター

 

彼は妻に別れを告げられ、犬のボブとともに独身者専用ホテル

へ入居します。ここで45日以内にパートナーを見つけないと、

最初に希望した動物に変えられるという決まりがあり、その間、

人間狩りをして滞在期間を増やしたり、パートナーがいると

こんなにステキ!などというすごくおかしい寸劇を見せられたり

するわけです。毎朝来る接客係には、性的機能が衰えないような

トレーニング?を受けるという手の込みよう。なぜか笑えて来る

から不思議です。見つけようと努力するほど相手は見つからない

もので、鼻血が出やすい女性にわざと鼻血を出して接近するズルが

いるのを見て、デヴィッドも血も涙もない女に接近して血も涙も

ないふりをしてみたりする。でも結局、彼はここを脱走し、森へ

と向かうのです。

すると森には、ホテルとは真逆の「独り身を貫く」集団がいて、

リーダー役はレア・セドゥ。

 

ロブスター

 

独り身が気楽と思ってみたものの、やはりこの集団にも決まりがあり、

男女が不必要に親しくなると「赤の接吻」などという懲罰が待って

いるのです。まあ、息苦しいったらありゃしない。人と同じように

行動することが、「秩序」を守るのであったとしても、いささかの

余裕もないグループはどちらも同じように見えます。

 

ロブスター

 

さらに、こんな時に限って自分と同じ「近視」という女が見つかり、

あっという間に恋に落ちてしまうのです。「制約」はあると破りたく

なるのが人間の本当の姿かもしれません。この不条理な世界で、

2人、特に近視の女は非情な行為を受けるわけですが、それでも

飛び出した先で、デヴィッドはどう行動するのか。同じであることが

それほどまで重要かどうかなどを含めて、いろいろ思いをはせる

ラストでした。音楽がいかにも芸術的なのが印象的です。

 

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リリーのすべて

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りりーのすべて

 

「リリーのすべて」

原題:The Danish Girl

監督:トム・フーパー

2015年 イギリス映画 120分 R15+

キャスト:エディ・レッドメイン

     アリシア・ビカンダー

     ベン・ウィショー

     セバスチャン・コッホ

     アンバー・ハード

     マティアス・スーナールツ

 

デンマークに暮らす画家の夫妻、アイナーとゲルダは

夫アイナーの風景画が世間で有名になっていた。肖像画

専門のゲルダが、ある時、友人のモデルの代わりに、

アイナーにストッキングをはかせたことで、彼は自分の

真実の心を知ることになる。

 

<お勧め星>☆☆☆ とても美しい風景画のような映像で

描かれる繊細なストーリーです。

 

第88回アカデミー賞助演女優賞をゲルダ役の

アリシア・ビカンダーが獲得しています。スウェーデン系と

フィンランド系の血筋をひいている北欧の美女ですが、肌の

色が浅黒く、ノオミ・ラパスを思い出させます。確実に

アリシアの方が可愛いと思うけれど。

 

リリーのすべて

 

彼女が感情豊かに笑い、泣き、怒り、喜ぶ姿は見事で、肌も

惜しげなく露出し、文字通り体当たりの演技を見せてくれる

のです。一方アイナー役はエディ・レッドメイン。透き通る

ほど色が白く、所作が次第に女性らしく変わっていくのを

これまた素晴らしい演技で見せてくれます。銀行の頭取の

息子でイートン校出身、「博士と彼女のセオリー」(2014)

でアカデミー賞主演男優賞を獲得するなんて、天は二物以上の

物を与えていると思う。

 

リリーのすべて

 

個人的にはアイナーの幼馴染ハンス役のマティアス・スーナールツ

がいいですねえ。「君と歩く世界」(2012)でも素敵だった。

1926年デンマーク、コペンハーゲン。アイナー、ゲルダ夫妻は

互いに画家として暮らしていたものの、アイナーの画く風景画は

好評なのに、肖像画専門のゲルダの絵は認めてもらえないのです。

それでも夫妻は深く愛し合い、子供を切望するものの授かることが

できません。そしてゲルダが友人でダンサーのウラをモデルの絵を

画いている時、ウラが約束をキャンセルしたことで、アイナーが

代わりにストッキングや靴を履き、ドレスを体に当てることに

なるのです。

 

リリーのすべて

 

この時のアイナーの指先が、ストッキングに触れ、靴を触り、

ドレスのステッチをなぞるのが大映しになり、アイナーの心の

揺れを描きます。遅れてやってきたウラがユリの花束を持って

いたことで

「あなたはリリーね」

と言われたアイナーははにかんだように微笑みます。ウラ役は

これまた私の大好きなアンバー・ハードなんだけれど、この映画

では特に美しさを感じなかったな。

アイナーの中に生まれたリリーという存在は、次第に彼の本当の

姿に変わっていきます。現代とちがって性同一障がいなどという

言葉すら存在しなかったし、研究する人もほとんどいなかった時代

ですから、アイナーは「性的倒錯者」「統合失調症」など精神疾患

と診断されてしまうのも当然なのです。このアイナーを夫として

支えつつ、その夫の内面が男でなくなっていくときも常に側に

寄り添っているゲルダは、人間としてのアイナーを愛したのですね。

リリーに変わっていくアイナーを、苦しみつつも受け入れ、彼を

支えたゲルダは本当に素晴らしい女性だと実感します。

ラストにアイナーが常に描いていた思い出の場所で、彼からもらった

スカーフが、強い風にあおられゲルダの首から離れ空へ飛んで

いきます。それはリリーとして再生し、自由を勝ち得た姿を象徴して

いるようでした。

 

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彼は秘密の女ともだち

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彼は秘密の女ともだち

 

「彼は秘密の女ともだち」

原題:Une Nouvelle Amie

監督:フランソワ・オゾン

2014年 フランス映画 107分 R15+

キャスト:アナイス・ドゥムースティエ

     ロマン・デュリス

     ラファエル・ペルソナス

     イジルド・ル・ベスコ

 

幼少期から親友同士だったローラとクレールだったが、

ローラが夫と娘を遺し病死してしまう。その死を受け

いれられないクレールは、様子を見に行ったローラの

家で、女装してミルクを与えているデヴィッドを見つけて

しまうのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆ ラストが曖昧なところがいかにもと

いう感じですが、幸せそうな姿を見られたからいいか。

 

ネタバレ

 

フランソワ・オゾン監督の映画は結構見ているのですが、

「ぼくを葬る」(2005)「危険なプロット」(2012)

などはあまり好みでなかったです。繊細な心の動きを丁寧に

描きすぎていて、その着地点が理解できないという感じ。

この映画もその類の内容です。

 

彼は秘密の女ともだち

 

ローラとクレールは、初対面の時からビビビと来て、ずっと

大親友。後にクレールの夫になるジルが、嫉妬するほど仲が

いいのです。ところがローラが病死し、夫ダヴィッドと1人娘

リュシーが遺されてしまいます。クレールもその死が受け入れ

られず、仕事どころか家事も手につかない始末。ジル役は

「黒いスーツを着た男」(2012)のラファエル・ペルソナス。

クレール役は「間奏曲はパリで」(2013)の

アナイス・ドゥムースティエ。あの映画では感じなかったけれど、

パリジャンヌという雰囲気が漂っています。

 

彼は秘密の女ともだち

 

休暇をとったクレールが、ローラの家の様子を見に行くと、なんと

そこには女装し、リシューにミルクを与えるダヴィッドの姿が

あったから、もう大変!

嫌悪感を抱く→ローラも知っていて家の中だけで女装していた

→ダヴィッドはリュシーのために父母の両方を演じている...

などと聞くと、実はローラが恋しいし、2人を守ると誓っていた

クレールは、彼の女装を認めていくのです。

 

彼は秘密の女ともだち

 

夫ジルにはもちろん内緒。かつてローラの金髪をといてあげた

クレールは今度は、ダヴィッドことヴィルジニアのウィッグを

といてあげます。きっとクレールはローラを友人以上に好きだった

んでしょうね。女装することで生きる意欲を取り戻したダヴィッド

ですが、映画館で痴漢に遭いそうになったりして、他の男性に女性

と認められそうになると、なんかクレールはイラつくんです。

さらに後半、精神科医のカウンセリングを受けて、女装を止め、

明るくなったダヴィッドを見ると、これまたクレールはイラつく。

結局、世間体を気にしているだけで、本当は女装したダヴィッドこと

ヴィルジニアがローラと同じ存在になってしまったらしい。

女性であるクレールと女装しているヴィルジニアのラブシーンは、

いったいどういうシチュエーションなのか理解しがたかったし、

からだは男と気づいてその場を走り去るクレールの気持ちもわかり

づらかったなあ。

ラストはちょっぴりお腹のふくらんだクレールとスキニーデニムを

履き女性姿のダヴィッドがリシューをお迎えに来ているんだけど、

ジルはどうなったのかな?ジルとクレールは結婚したままで、子供を

授かり、ダヴィッドことヴィルジニアとの友情は続いているという

ことかな。私はそう考えたいけれど。もっと複雑なのかもね。

 

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夏をゆく人々

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夏をゆく人々

 

「夏をゆく人々」

原題:Le meraviglie

監督:アリーチェ・ロルバケル

2014年 イタリア=スイス=ドイツ映画 

111分

キャスト:マリア・アレクサンドラ・ルング

     サム・ルーウィイック

     アルバ・ロルバケル

     サビーネ・ティモテオ

     アンドレ・ヘンニック

 

イタリア中西部で養蜂業を営む父を手伝う

ジェルソミーナは、テレビ番組への参加を父に

懇願するが聞き入れられない。そんな時、ドイツ人

少年が更生プログラムのために、この家に連れて

来られるのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆ ヨーロッパ映画らしいラスト

です。美しい自然と家族の姿が上手く描かれています。

 

第67回カンヌ国際映画祭グランプリを獲得した映画

だけあって、芸術色の濃い内容になっています。

冒頭、狩猟をする人々が

「こんな所に家があったんだ」

と口にするほどの草原の真ん中にぽつりと立つ1軒の家。

そこには、ヴォルフガンブとアンジェリカ夫妻、そして

4人の娘、ジュルソミーナ、マリネッラ、ルーナ、カテリーナ

が暮らしています。時代遅れのトラックや映りの悪い古い

カラーテレビ、ドアないトイレなど、彼らは文明とは程遠い

自給自足のような生活をしているらしい。ココという多分

ヴォルフガンブの妹も家族の一員のようです。

 

夏をゆく人々

 

強権的な夫に妻は怒りつつ、ここでの生活に不満を漏らしません。

なにがしかの理由があって喧騒のないこの生活を選んだことが

伺えるのです。そんな時テレビ番組で「ふしぎの国コンテスト」

が開かれると知り、ご当地特産品をアピールして、賞金を獲得

しようと、ジェルソミーナは考えるのですが、もちろん父は却下。

テレビ番組の司会役でモニカ・ベルッチさんが出演しています。

さすが、イタリアの宝石だけあって、ダントツきれいです。

ところが一家の営む養蜂業の製造所の改善を求める通知が食品衛生局

から届き、かなりの費用が必要になって来ます。

 

夏をゆく人々

 

「それはただの脅しだ」

父はなにか権力に対して抵抗する考えの持ち主なのでしょうか。

そして勝手にドイツの少年更生プランを引き受け、ドイツ人少年を

4か月預かることにしてしまいます。これももちろん謝礼目当て

なんだけど。

 

夏をゆく人々

 

毎日仕事に連れて行って可愛がっていたジェルソミーナをその

少年マルティンと比べて

「女はダメだな」

と言い放つ昔気質の父は、自分が主である世界をここに作っていた

のでしょうね。それがとても心地よかった。しかしマルティンが

加わったことで、この家族の中にさざ波が立ち始めます。

更生プログラムの謝礼金を、ジェルソミーナが幼い頃ねだったラクダ

購入資金に当ててしまうと、大喜びするのは下の2人の娘のみです。

父が1適も垂らすことを禁じていたハチミツが床一面にあふれ、

ヤギは売れても引き取ることさえ断られるラクダが庭につながれている。

この滑稽な光景を見ると、子供は成長するし、時代も変わっていた

ことを受け入れるのは、何がきっかけになるのか。そんなことを

考えさせられる映画でした。

 

 

 

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裁かれるは善人のみ

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JUGEMテーマ:洋画

 

裁かれるは善人のみ

 

「裁かれるは善人のみ」

原題:Leviathan

監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ

2014年 ロシア映画 140分

キャスト:アレクセイ・セレブリャコフ

     エレナ・リャドワ

     ウラジミール・ウドボチェンコフ

     ロマン・マディアノフ

     セルゲイ・ポホダーエフ

 

モスクワから遠く離れた田舎町で自動車修理工場を

営むコーリャは、自分の土地を収用しようと決定した

市を相手取って裁判を起こすことにする。彼は旧友で

モスクワで弁護士をしているディーマを呼び寄せるが。

 

<お勧め星>☆☆☆ 圧倒的な映像美と音楽を堪能

しますが、あまりに不条理なストーリーは心が暗くなる

ばかりでした。

 

2014年第67回カンヌ映画祭で脚本賞、

第72回ゴールデングローブ賞で外国語映画賞を受賞した

本作は、世界中の映画祭で26もの賞を獲得しているとの

こと。ロシアの田舎町に寂れた景色と対照的に広がる広大な

海や大地は、その大きさに息をのむほどです。

原題の「Leviathan」は、終盤酒に溺れるコーリャに対し、

ヴァシリー神父が引用した旧約聖書の1節に出てくる、

どんな武器も通用しない最強の生き物であり、つまり強大な

運命の前には、ちっぽけな1個人はなすすべもなく打ち砕かれ

ていくのだということを意味しているのでしょうか。

とはいえ、コーリャは格別善人というわけでもなく、日曜礼拝を

することや懺悔をするために教会を訪れることもないのです。

 

裁かれるは善人のみ

 

逆にこの映画で「悪」の象徴である、ヴァデイム市長は、余裕が

ある日は家族そろって日曜礼拝に出席するし、悩みごとは司祭に

相談しようと考える信心深い男。つまりロシアにおける国家権力

と教会の癒着をも皮肉っているのかもしれません。

 

裁かれるは善人のみ

 

コーリャは前妻の息子ロマと後妻リリアの3人暮らしで、彼は

自動車修理工場を営み、代々受け継いできたこの土地をどうしても

市に明け渡したくなかったのです。それは、壁にかけてある古い写真

からも十分伺えます。一方リリアは、なつかないロマに悩まされ、

さらに毎日早朝のバスで通う魚加工会社の仕事が全然楽しくない

のです。

 

裁かれるは善人のみ

 

確実に言えることは、彼女はこの町を出たかったのです。そして

モスクワからコーリャの戦友であり、今は弁護士をしているディーマが

やって来ます。明らかに不当な判決に、ディーマは市長の過去の悪事を

調べ上げ、その資料で彼と取引しようと考えるわけです。

しかし市長への告訴状はどこにも受理されず、警察、司法が全て権力と

癒着している構図を垣間見ることになります。逆にコーリャが拘束

されるという不条理の中、助けるはずのディーマが、コーリャの

家族の中に波風を立ててしまう。その後次々に彼に降りかかる不幸には、

「神」は本当に存在するのか。そしてその「神」は誰のために存在

するのか、大きな疑問を持つラストでした。

 

 

 

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