オンリー・ザ・ブレイブ

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JUGEMテーマ:洋画

 

オンリー・ザ・ブレイブ

 

「オンリー・ザ・ブレイブ」

原題:Only the Brave

監督:ジョセフ・コジンスキー

2017年 アメリカ映画 134分

キャスト:ジョシュ・ブローリン

     マイルズ・テラー

     ジェームズ・バッジ・デール

     ジェフ・ブリッジス

     テイラー・キッチェ

     ジェニファー・コネリー

 

アリゾナ州、プレスコット市に誕生した

ホット・ショット隊は、エリックを隊長として

過酷な訓練を重ねながら、森林火災に出動しては

見事に鎮火に成功していた。その一員でかつて

ドラッグ中毒だったブレンダンもすっかり隊員の

1人して活躍し始めているのだったが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ 予想よりはるかに見ごたえ

のある映画で、ただ男臭い集団の熱い姿だけでは

なく様々な側面を描いています。


燃える熊


アメリカではつい最近も、カリフォルニア州で大規模な

山火事が起き、多くの森林と建物を焼き尽くして鎮火

したばかりです。毎年のように起こる山火事は、たとえ

遠く離れた地域に住んでいても空は煙で覆われ、空気

にはすすが混じり、マスクなしでは外出できないとの

こと。山火事よりも建物火災への恐怖が強い日本では

考えられないことです。
そして「ファイヤーマン」と呼ばれる消防士のうち、

建物火災ではなく森林火災専門のエリート消防士チームが

「ホット・ショット」と呼ばれるのです。彼らは水を

かけて火を消すのではなく、(それは空からヘリや

飛行機で行う)風向き、天候などから炎の行方を予測し、

シャベルで地面を掘って防火帯を作り、木を切り倒したり、

さらには燃料つまり、そこに生えている樹木に敢えて火を

放って火災を食い止めるという、極めて危険な任務を遂行

していくのです。
ホット・ショット隊になるための「審査」が実際の森林火災

への対処法を見るというのも、いかにもアメリカらしい感じ。

(どういう感じかわからないけれど、それだけたくさん火災が

起きているということ)

 

オンリー・ザ・ブレイブ
 

この森林火災のシーンはものすごい迫力で、炎がまるで

火山噴火の溶岩が流れ出すかのように、みるみるうちに迫って

きます。また「飛び火」と呼ばれるものは、それこそ噴石が

飛び散るかのようにあちこちに向かい、それによって思い

がけない方向まで火災が広がってしまうのです。

これはとても怖いです。
題名やあらすじを読むと、どう考えても、体育会系の男たちの

映画のように思えますし、実際の訓練風景を見ても、その通り

男臭いです。ただその中に家族愛、友情、部下への愛情などが

散りばめられていて思いのほかすんなり入り込めるのです。

 

オンリー・ザ・ブレイブ
 

プレスコット市で初めて誕生したホット・ショットの隊長は

ジョシュ・ブローリン演じるエリック。彼の妻は相変わらず

可愛いジェニファー・コネリー演じるアマンダです。二人は

子供を作らないと決めて結婚したらしい。その理由は映像を見

ていればわかります。

 

オンリー・ザ・ブレイブ

 

またドラッグ中毒で自堕落な生活を送っていたのに、別れた

彼女に子供ができたことから、心機一転この仕事を志望する

のは「セッション」(2014)のマイルズ・テラー演じる

ブレンダン。序盤のヘタレ具合は、その映画をつい思い出し

ます。訓練初日にはランニングする列から一人遅れ、皆が

下山する頃に上っていくけれど、そこに陰湿ないじめはなく、

なんとなくこの隊のメンバーが善良な人たちばかりだと実感

するのです。実在した人物を描いているから当然なんだろうな。

もちろん彼らの人間臭い面、たとえば、ブレンダンの元カノを

けなすマックとか、喧嘩の絶えないエリックとアマンダの姿、

火災への出動で生まれた子供にろくに会えず、泣かれてしまう

ブレンダンなどいろいろなシーンを織り交ぜているので、

そこにいるのはごく普通の人間たちばかりだとも思えます。
エリックがかつて森林火災の時に見た火の中から駆け出して

きた燃え盛る熊があまりに美しいもので、もしもそれに魅せらて

いたとしたら、彼はある意味では狂気に包まれていたのかも

しれません。

熱い男たちの熱い映画だけれど、決して彼らをヒーローとして

押し付けてくるような内容ではなく、ただただ

「すごい仕事をこなす人たちなんだ」

と素直に感動できるものでした。

 

 

 

 

 

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ブリグズビー・ベア

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JUGEMテーマ:洋画

 

ブリグズビーベア

 

「ブリグズビー・ベア」

原題:Brigsby Bear

監督:デイブ・マッカリー

2017年 アメリカ映画 97分 PG12

キャスト:カイル・ムーニー

     マーク・ハミル

     ジェーン・アダムス

     グレッグ・キニア

     クレア・デーンズ

 

ジェームスは25年に渡って両親と偽る夫婦に

シェルターに監禁され続け、謎の教育ビデオを

見せられていた。そしてその夫婦が逮捕され、

実の両親の元に戻った彼は、例のビデオの主人公

「ブリグズリー・ベア」を忘れられず、続きの

ビデオを自分で作ろうと計画するのだったが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ 短い時間にいろいろな

ドラマが入っていて、それが多くのことを教えて

くれます。


新しい世界


誘拐、監禁という言葉を聞くと、辛く、苦痛に

満ちた日々を送っていたかのように感じられるの

ですが、この主人公ジェームスは実は、大へん愛情

深い夫妻によって彼らなりの教育方針で育てられて

きたのです。
外気を吸うと菌に侵されると言われ、外に出る時は

ガスマスクを装着する父テッドの姿を見ると、全く

関係ないのに

「10 クローバーフィールドレーン」(2016)を

少し思い出してしまいました。
外は本当に汚染された空気に包まれているのかしら。

いやそれではなくて..。

 

ブリグズビーベア
 

しかし映画ではあっという間に偽両親が逮捕され、25年間

彼を捜し続けた実の両親と再会します。感涙にむせぶ両親と、

複雑な顔をしているジェームスとこれまた複雑な顔をしている

のが、実妹オーブリーで、存在すら知らなかった兄妹が、今日

会って大喜びするはずもないな、などと妙に納得するのです。
監禁物といえば「ルーム」(2015)が記憶に新しく、

しかしあの映画のようにどうやって逃げ出すかをジェームスは

考えることもなく、そもそも外の世界を知らないまま

25年生きてきたわけですから、当然のことながら、

今この時からが彼にとっての新しい人生の始まりでもあるの

ですよね。

 

ブリグズビーベア
 

さらにジェームスは世の中のことを全く知らないわけではなく、

虐待を受けていたわけでもありません。偽の両親が願う夢や

想像の世界を自由に駆け回っていたという感じでしょうか。

いやそれもある意味虐待かもしれません。
そしてジェームスは新しい家族(本物の)との生活を始めます。

ところがジェームスが25年間見続けていたのが、週に一度

送られてくる「ブリグズリー・ベア」のビデオばかりで、彼の

頭の中はそれでいっぱいなのです。もちろん外の世界の人にも

大人気だと思っていたら、誰一人としてそれを知らないし、

逆に全く知らない音楽やSFオタクのスペンスに「スタートレック」

の話をされる始末。でも映画作りに興味があるスペンスとは

すぐに意気投合し、ジェームスは一気に「話の続きを撮影しよう」

という気持ちになるわけです。

 

ブリグズビーベア

 

このジェームスは、自分だけが「ブリグズリー・ベア」の
ファンであり、感想を送って、「イイネ」をたくさんもらって

いたのも全て偽物だったと知っても決してへこたれないん

ですよね。この強い気持ちはどこから生まれてきたんだろう。
さらに誘拐事件の担当刑事ウォーゲルがかつて舞台演劇を

かじったことがあったのも強い援護射撃になります。こんなに

とんとん拍子でいいのかしら?と思っているとやはりそこには

落とし穴があります。
さらに実の親、特に父親との気持ちの乖離もあるのです。

ここは多くの映画ではしんみり描かれることが多いけれど、

さっさと話が進むのも気分がいいです。
さあ、ジェームスはどうやって新しい人生のスタートを切るのか。

犯罪行為ではあったけれど、深い愛情を持って育てた偽の両親の

心と、実の両親の同じく深い愛情、妹、友人、まさかのあの人!
何かを成し遂げることが、次のステップに進むのに重要だという

ことを教えてくれます。最近、重い内容の映画を見る機会が

多かったので、このようにほんわかとした気持ちになれる映画が
とても心地よく感じられました。

 

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レディ・バード

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レディ・バード

 

「レディ・バード」

原題:Lady Bird

監督:グレタ・カーウィグ

2017年 アメリカ映画 94分 PG12

キャスト:シアーシャ・ローナン

     ローリー・メトカーフ

     トレイシー・レッツ

     ルーカス・ベッジズ

     ティモシー・シャラメ

 

カトリック系の高校に通う17歳のクリスティンは

自らを「レディ・バード」と名乗っている。彼女は

自らが暮らすサクラメントの町を出て東海岸の大学を

志望していたが、それに反対する母親とはしょっちゅう

喧嘩ばかりしている。彼女は親友ジュリーと参加した

ミュージカルのオーディションで知り合ったダニーに

恋心を抱くが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ ヒロインの気持ちが手に取る

ようにわかり、はるか昔の青春の日々が蘇ります。


愛情は注意を払うこと

 

 

<ネタバレしているかも>


ヒロインのシアーシャ・ローナンは、わたしの大好きな

女優さんの一人です。

「つぐない」(2007)

「ハンナ」(2011)

そして「ビザンチウム」(2012)では透き通るような

白い肌を持つ孤独な16歳の少女クララ役がぴったりでした。

ちょっとうつむいた時の眼差しに悲しさとか寂しさとかを

感じさせます。
さらに2015年映画「ブルックリン」は、今まで観た

映画のベスト5に入るものです。アイルランドの閉鎖的な

田舎町とニューヨーク、ブルックリンに恋人を持つ二股女、

などと酷評する人もいたけれど、あれは地方出身で都会に

移住したことがある人たちには必ずわかる胸の内だと思います。

ずっと都会に住み続けている人、また地方で一緒暮らし続ける

人には、決してわからないと思いかもしれません。良くも

悪くも思い出が詰まり、知り合いがいっぱいの地元と、

顔見知りはいなくて新しい生活を一から始める都会とでは、

そこにいる「自分」が全く別に感じられます。それは客観的に

見ても同じこと。
そういう映画は他にもあって、「ラ・ラ・ランド」(2016)

を見て「ミアはなぜに2年ぽっちが待てなかったんだ」という

疑問を口にする友人がたくさんいました。あのミアの気持ちは

セブと公園のベンチで語り合ったシーンを見ればわかるし、

夢を叶えることと恋愛を成就させることが必ずしも同時に

できるとは限らないのですよ。
さてヒロイン、クリスティンは自らを「レディ・バード」と

名乗り、サンフランシスコの北東のサクラメントに住む裕福

ではない家庭の娘なのです。この都市に住む2割が貧困線以下

であり、特に若年層は3割がそれに入っているという。

レディ・バードの兄で養子のミゲルが有名大学を出たのに

スーパーのレジ係なのは、この町では仕事を探すことがかなり

困難なことが伺えるのです。

 

レディ・バード
 

精神科医の母マリオンは「金持ちの真似をしないで」が口癖で、

とにかく娘の行動を否定し、干渉しまくります。これはかなり

鬱陶しい。父は学歴はあるのにリストラ寸前だし、狭い家には

ミゲルの恋人も同居しています。バスルームが1つ、狭い

キッチンという家の様子を見ても、この家が裕福どころか貧しい

家庭なのだとわかるのです。

 

レディ・バード
 

とはいえ話は暗いものばかりではなく、カトリック系の高校で

親友ジュリーと聖体をポリポリ食べながらエロ話に興じる姿を

見ると、ダイエットしたい気持ちは食欲には勝てないな、などと

笑ってしまうし、未体験のことへの妄想には「ほほぅ〜」

そんな風に考えるのかと思ってしまう。
映画ではこのレディ・バードの親子(特に母親)関係、友人関係、

恋愛関係、学校生活と様々な角度から、視点を変えて日常を

描いていきます。どれをとってもすぐにうまくいかないのが「青春」
そのもの。

 

学内ミュージカルのオーディションで知り合ったダニーに恋をし、

初体験の準備

 

レディ・バード

 

感謝祭のイベントでバンド演奏をしていたカイルと遂に

童貞&処女の感動の初体験

 

レディ・バード
 

内申点を上げて何とか東海岸の大学に合格したい


ここで対照的な女子生徒ジュリーとジェナが登場し、

レディ・バードは背伸びをしたくて、金持ちの仲間入りが

したくて、とにかく初体験をすませたくて、親友をジュリー

からジェナに変えちゃうんです。この辺りの気持ちがすごく

よくわかります。今ある日常を劇的に変化させて、新しい

自分を見つけたいという欲望の塊、つまり未来が限りなく

広がっているからこそできる冒険なんだと思うのです。
プロムに行くためのドレスを試着すると、パツンパツンで

「パスタをお替りするからよ」と母親に言われ、激おこの

レディ・バード。それでも悲しくて辛いときは「食べる」が

一番。一緒に付き合ってくれるのは人間的にバカでない

相手ですよ。
18歳の誕生日を迎えた途端、タバコとエロ本を買いに

行ってIDを誇らしげに見せるのも、高校卒業した時に、

まず化粧品店に行ってメイクアップ商品を買った時代を

思い出します。今は中学生でもお化粧する時代なんだよねえ。

ラスト付近の急性アルコール中毒は、人間生きていたら

一度は経験があるもので、翌朝正気を取り戻すと、すごく

恥ずかしくて、二度とお酒なんか飲まないと固く決意する

のに、やはりそんな気持ちはあっという間に消える儚いものだ

と実感しています。(マーライオンは1度しかしたことない。)
レディ・バードことクリスティンは、故郷を懐かしむことは

あっても戻ることはなく、他の場所で新しい自分を見つけて

いくんだろうな、そして母はずっと娘を心配し続けるんだろうな

と考えながら鑑賞終了でした。いい映画だったな。

 

 

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ワンダー 君は太陽

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ワンダー

 

「ワンダー 君は太陽」

原題:Wonder

監督:スティーブン・チョボウスキー

2017年 アメリカ映画 113分

キャスト:ジュリア・ロバーツ

     ジェイコブ・トレンブレイ

     オーウェン・ウィルソン

     マディ・パティキンソン

     ダビード・ディグス

 

トリーチャーコリンズ症候群のため幾度となく

手術を繰り返してきた10歳のオギーは、初めて

学校へ通うことになる。しかし支えてくれた家族の

いない学校生活では、周囲のイジメや好奇の目に

晒される日々の連続であり、彼は幾度となく

へこたれそうになるが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ 最も苦手なジャンルの映画

なのですが、すんなり心に入り込み素直に感動できます。


心は未来、顔は過去


「辛いときは楽しいことを空想する」オギーが登校を

開始し、周囲の生徒から避けられ、誰も口をきいてくれない

時に、彼の心の中に浮かぶ言葉は、彼が宇宙飛行士として

人気を博する姿の映像で現れます。オギーのように外見が

普通と異なるということだけでなく、何かのきっかけで

周りから暴言を吐かれたり、いじめられたり、無視され

たりすることは、人生の中で幾度も経験すると思います。
そんな体験が1つもない人がいるのでしょうか。しかし

それを乗り越えた時、辛い時間を過ごしていた自分、

さらにはその前の自分よりもぐっと成長していると感じる

のは、自分の人生から思い返しても断言できるのです。

それが「成長」なのかもしれません。

 

ワンダー
 

オギーはトリーチャーコリンズ症候群という遺伝子の異常に

よる病のため、生まれつき顔の形成が不完全で、27回もの

手術を受けてきたのですが、それでもやはり外見はかなり

特徴的なままなのです。
10歳まで自宅学習をしてきたオギーの父、母、姉は各々

個性にあふれており、決して彼を邪魔者扱いしないし、逆に

彼を軸に家族がまとまってきたようにも感じられます。
映画の視点はオギー、姉ヴィア、オギーの同級生ジャック、

ヴィアの親友ミランダの順に描かれ、彼、彼女たちが

どのように考えて今を生きているのかが順にわかってくるのです。

オギー役は「ルーム」(2015)の息子役を演じた

ジェイコブ・トレンブレイ。12歳のわりにはまだまだ小柄で

あり、映画の設定の5年生としてもかなり小さく感じます。
ところでこの映画の監督スティーブン・チョボウスキーは

2013年に「ウォールフラワー」という映画を製作しており、

これは彼が書いた青春小説の映画化であり、スクールカースト

最下層にいる内気な高校生チャーリーの姿を涙と笑いを交えて

楽しく描いていました。いや衝撃的な内容もあったか。

日本での2012年映画「桐島、部活やめるってよ」を彷彿と

させる内容でしたが、前者には恋愛があり、後者にはなく、
映画部前田の姿を学校のスター的存在桐島が突然バレー部を

辞めると言った事件から波及する生徒内の混乱の中で描いていて

全く異なるものでした。エンドロールに流れる自主製作映画を

本当に作っていたらもっと楽しかったのに、などと今さらながら

考えています。2007年映画「グラインドハウス」で使われた

偽予告編「マチェーテ」がダニー・トレホ主演で2010年に

実際に公開されていて結構な評価を得ていたので、ぜひとも

するべきだったよなあ。

 

ワンダー
 

さて、家族の胸の内、特にヴィアの心を知ると、家族の中でも

複雑な思いを持っていることがわかります。とても優しくて、

弟を心の底から愛しているのに、やはり母がオギー中心に生活

しているのが辛いのです。自分の方も少しは見てほしい。

私だって辛いことがあるのを知ってほしい。
また映画の中盤でオギーの唯一の友人となるジャックや

ヴィアと親友だったのに急に冷たくなったミランダの心は映像で

見ると、あの表情にそんなことが隠されていたのかと驚くばかり

です。

 

ワンダー

 

ただ、当然のことながら嫌な奴は存在し、金持ちで大人の前

ではいい子を演じるジュリアンがそれなのです。これさ、

映画では優れた校長先生や教員がいたからわかったけれど、

普通は見抜けないと思う。

 

ワンダー
 

終盤に校長先生が遂に彼の両親を呼び出すのですが、両親は

一切認めないし、逆に「息子はそんなことはしない。家は

多額の寄付金をしている」(ここでこの学校は多分私立だと知る)

「教育員会に知人がいる」と開き直り脅すような言葉を投げ

かけるわけです。その時の校長先生の言葉が重いです。
「オギーは見た目を変えられない。だから見る側が変わらないと」
それに対する母親の言葉も事実であることは確か。
「世間は甘くない。傷つけ合うものよ」
それでもジュリアンはまだ10歳であり、自分のしたことが

悪かったと素直に反省できる年頃なのです。これを見ると親の

エゴがその後の子供の人格形成に大きく影響を及ぼすことを

実感します。誉めて認めて「いい子だよ」と言うだけが正しい

わけではなく、悪いことは悪い、と教え込むことも極めて重要な

ことで、特に第三者からそれを指摘されると、頑なに我が子愛を

振りかざすのは、決して良いことではないと思います。

それはただの自己満足に過ぎない。
この映画に対して実際にこの病に苦しむ人々からは、

「過酷な現実を無視している」

「感動ポルノだ」という批判も上がったそうですが、この病を

映画で見て初めて知る人も多いわけで、外見だけで人を判断する

のではなく、内面の価値を理解する努力を常にするべき、という

当たり前のことを確認できる内容だったと思います。

わたしは「感動ポルノ」とは思いません。

 

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アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル

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アイ、トーニャ

 

「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」

原題:I,Tonya

監督:クレイグ・ギレスピー

2017年 アメリカ映画 120分 PG12

キャスト:マーゴット・ロビー

     セバスチャン・スタン

     アリソン・ジャネイ

     ジュリアンヌ・ニコルソン

     ポール・ウォルター・ハウザー

 

貧しい家庭に育ったトーニャは母ラヴォナの暴力や

暴言に耐えながらスケートの練習に打ち込む。しかし

若くして結婚した夫ジェフからも暴力を受け、試合

では審査員の評価が低く、彼女は不満を募らせるが、

1991年の大会でトリプルアクセルに成功するの

だった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 当時大ニュースだった事件の

裏側を知るとトーニャに対する思いが全く変わります。


アメリカには敵が必要


トーニャ・ハーディングといえばすぐに思い浮かぶのが、

1994年のナンシー・ケリガン襲撃事件であり、

イメージとしてはトーニャ=悪、ナンシー=善という

ものが出来上がっていました。
またトーニャ・ハーディングは1991年にアメリカ女子

フィギュアスケート界で初めてトリプルアクセルを成功

させています。トリプルアクセルといえば浅田真央さん?

いやいや、やはり世界で初めてトリプルアクセルを成功

させた伊藤みどりさんを真っ先に思い出します。

マツコ・デラックスが以前テレビ番組で語った通り、綺麗な

衣装をひらひらさせて愛嬌を振りまきながら美しさを競う大会
だった女子フィギュアスケートを一変させた人物なのです。

伊藤みどりさんはアスリート!

最近彼女の当時の競技の映像を見る機会があったのですが、

ジャンプがものすごく高いです。あれなら5回転くらい
跳べる...ような気がしました。これは本当に日本人の誇るべき

人物だと思うんです。そこから思い返すと1972年の

札幌オリンピックで、ジャネット・リンが見事にしりもちを

ついたのに芸術点では満点をもらえ、そして銅メダルを獲得

したのも、その愛くるしい表情が審査員の心を揺さぶったん

だろうな。いや本当に可愛いかったです。

 

ジャネット
 

映画では、当時を回想するトーニャ、母ラヴォナ、元夫ジェフ、

ジェフの友人ショーンと共に、その時代が再現されていきます。

労働者階級かつ父親が家を出た貧しい家庭のトーニャは、

下品で暴力的かつ強権をふるう母ラヴォナの言う通りに行動

します。それでも殴られ、暴言を吐かれ、何一つ褒めて

もらえません。4才のトーニャをスケートリンクに連れて

行きコーチに無理やり押し付けるときのラヴォナの柄の悪さは、

本当にこの人本人が演じているのかと思うほどです。

 

アイ、トーニャ

 

まあ、親が親なら子も子とはよく言ったもので、トーニャは

ろくでもない男ジェフと交際開始するわけです。(ラヴォナは
5回も結婚離婚を繰り返している)

 

アイ、トーニャ

 

最初優しかったジェフもすぐに暴力をふるう男に変身。

DV男の典型例のように、暴力をふるった後は

「愛している。許してくれ」

と優しくなるのでトーニャは離れられないわけです。

暴力母から逃げ出して幸せになるはずが、ここでも暴力に

さらされる。トーニャは誰かに「愛されたかった」のです。

序盤に登場した、ラヴォナの夫がトーニャの実父でしょうか。

彼について行こうと泣き叫ぶ彼女の顔が忘れられません。

それでもスケートの才能に満ちていた彼女はひたすら練習に

打ち込むのですが、どれだけ良い演技をしても点数が

上がりません。「芸術点」が低いんです。最近は技の

「出来栄え点」が採用されていてジャッジの主観が極力

出ないようになっているとのことですが、素人が見て

「あれ?この人全部クリアしたのに、なぜにこんなに点数が

上がらないの?」と思うことが多々あります。これが当時は
「芸術点」という漠然としたものだったのですから、

審査員に詰め寄り「なぜなのか」と尋ねるトーニャの

気持ちもわかるのです。答えは

「完ぺきなアメリカの家族のイメージがない」。
美しいものを美しいと思う気持ちは人それぞれだけれど、

そこに豊かさを求められたら、結局は限られた人々しか

参加できない競技になってしまうのではないでしょうか。
母と絶縁し、ジェフと結婚したものの相変わらず暴力に

耐える日々が続くのです。伊藤みどりさんが銀メダルを

獲得したアルベールビル五輪では4位に終わり、スポンサーは

つかず、ボンビーでウェイトレスをするしかありません。

ラヴォナもウェイトレスをずっと続けていたから貧乏の

連鎖は断ち切れないんだろうなと絶望的な気分になります。
フィギュアスケート=お金がかかるスポーツというのは

どこに国でも同じなんですね。衣装、靴、リンク使用代、

コーチング料、遠征費...一人前になるまでに家が一軒建つ

というのはプロスケーターの本田武史さんの言葉。
と考えるとスポンサーのつかなかったトーニャの苦労と焦りも

理解できるのです。ここで今さらながらに気づくのは、

トーニャ=悪という考えが変わっていったこと。それは当時の

マスコミの報道を鵜呑みにしていたからなのですね。

向かって右が本人です。

 

アイ、トーニャ
 

これ以降は誰が真実を語っているのかは判断できません。

トーニャに届いた脅迫状、そしてナンシー・ケリガン

殴打事件発生。トーニャの周りにいる既に別れたものの

付きまとうDV男ジェフ、勝手にトーニャのボディガードと

語る虚言癖のあるショーン、その仲間などみんなアホ過ぎて

あきれ返ります。それゆえにトーニャが愛しく感じられる

のです。いや相変わらず柄は悪いですよ。
全米スケート協会から永久追放されたと描かれていた映画の

内容とは異なり、トーニャは、その後プロスケーターとして

活躍するも、暴力事件を起こし、プロボクサー、総合格闘家

へと転身。その激動の人生も今は嵐が去った後の静けさを

取り戻したかのように、ワシントン州で再婚し、一児を

もうけて穏やかに暮らしているといいます。彼女にとって

どうしても欲しかった「愛されること」を手に入れた
のだと思いたいなあ。
映画内でナンシー・ケリガン事件を追うマスコミが急に

ジェフの家の前から消えたのは、1994年6月、

O・J・シンプソン事件が起きたことを知ると、アメリカには

「敵」が必要なのだと語ったトーニャの言葉にただ頷く

のみでした。

 

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ボブという名の猫

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ボブという名の猫

 

「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」

原題:A Street Cat Named Bob

監督:ロジャー・スポティスウッド

2016年 イギリス映画 103分

キャスト:ルーク・トレッダウェイ

     ジョアンヌ・フロガット

     アンソニー・ヘッド

     キャロライン・グッドオール

 

ドラッグ中毒から家族に見放され、ストリート

ミュージシャンとして路上生活を送るジェームズ。

彼はある時一匹の野良猫と出会う。ボブと名付けた

その猫と共に路上で歌うと、たちまち人気者になるの

だった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 人間は弱い存在だけれど、

何かの支えで強く変われるのだと実感します。


セカンドチャンスは逃すな、あきらめるな


「茶トラは意志が強く、一生そばを離れない」いや、

猫はみんな意志が強く、気ままで、人見知りで、臆病で..

でもないか。小さい時から何匹もの猫を飼ってきましたが、

みながそれぞれ性格が異なり、それだから楽しいものです。

誰にでもすぐに懐く子、あらゆる物を破壊していく子、

どんな扉も開けることができる子、猫なのに高い所が

苦手な子、家族以外が訪れると姿を一切見せない子、語り

始めると一晩でも足りません。

 

ボブという名の猫
 

主人公のジェームズは、ホームレスでストリート

ミュージシャンをしているものの、その稼ぎはほとんど

なく、またドラッグを断ち切ることに何度も失敗しています。

そこには彼を支えるのが、ソーシャルワーカー、ヴァル

だけであり、彼女も月に数回の面談とドラッグを断つために

メタドンの服用の確認をするのみです。「更生プログラム」

の存在や街中に路上生活者がいたり、麻薬の売人が登場する

のを見ると、イギリスにおける社会問題も垣間見えます。
彼がもっともラッキーだったのは、住居の提供があったことで

あり、そこへ一匹の野良猫が現れたことなのです。そもそも

家がなければ、猫と出会うこともなく、お互いにホームレス

同士、ただすれ違って行くだけだったでしょう。
とはいえ、その幸運をしっかり活用して社会復帰できるか

どうかは、やはり本人次第なのです。
映画では視点が、ジェームズ、ボブ(猫)、そして彼らを映す

ものと3つあり、特に興味深いのがボブ視点です。トムと

ジェリーのように、ジェームズの家の壁の穴から登場する

ネズミを追うボブのプクプクした手が何ともいえません。

これは猫好きにはたまらないと思います。

 

ボブという名の猫
 

そして今までジェームズを避けて通っていた街の人々が、

ボブを連れて出歩き始めると、途端に優しくなり、歌を

歌えば観客がどんどん集まってくるのです。ロンドンバスの

2階の一番前の窓から外を眺めるボブの好奇心に満ちた表情は

必見ですね。そこから見えるロンドンの名所もこれまた必見

です。

 

ボブという名の猫

 

それからジェームズのアパートにたまたま住んでいるベティの

存在も忘れてはいけません。彼女がジェームズを完ぺきに

サポートするのではなく、困っている時に少しだけ手を差し

伸べるそのスタンスも彼の自立に大きな影響を与えたと思って

います。彼女が兄に抱いていた思いを彼が更生することで
達成感に変えたような気もするのです。したがってそれは

ベティにとっても成長したということになります。
ボブは実際のボブが演じたそうで、本当に人間に慣れた賢い

猫でした。また原作者自身がラストのサイン会に現れ、

ジェームズに「僕と同じだ」というセリフを言うのもお茶目です。
幾つもの障害を乗り越え、さらには実父との長年の確執が

消える瞬間は、さすがに目頭が熱くなります。それもこれも

ボブがジェームズを支えてくれたからだと思うと、彼らの

二人三脚が永遠に続くといいなと心から思うのです。

 

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ブランカとギター弾き

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JUGEMテーマ:洋画

 

ブランカとギター弾き

 

「ブランカとギター弾き」

原題:Blanka

監督:長谷川宏紀

2015年 イタリア映画 75分

キャスト:サイデル・ガブデロ

     ピーター・ミラリ

     ジョマル・ビスヨ

     レイモンド・カマチョ

 

フィリピンのスラム街のストリートチルドレンで

あるブランカは、段ボールハウスに一人で暮らし、

盗みを働いて生活している。そんな彼女は盲目の

ギター弾きピーターと出会うのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 血縁はなくとも心の底から

信じ合える相手との絆は本当に強く固いと感じます。


鶏は空を飛ぶ


多くの人々が行きかうフィリピンのスラム街には、

路上に眠っている少年少女があちこちにいるし、家と

呼べるものがあったとしても、ボロボロ。その光景

からは食べ物のにおいと人の汗の臭いが混じり合い、

今にも画面から漂ってきそうな雰囲気を感じます。

 

ブランカとギター弾き
 

そんな街で、旅行者から金を奪うグループの一員である

ブランカは、常に何かを渇望し、危険を察知するかのような

ギラギラと輝く野生の瞳をしています。彼女自身の口から

後に語られる身の上は、生まれた時からいない父親と、

いつも酒を飲んでいて男と逃げてしまった母親を持つという

絶望的なものなのですが、このスラム街にはそんな子供たちは

幾らでもいるわけで、その悲惨さを打ち消すほどのエネルギーを

彼女たちから感じます。それは負のエネルギーでもあるん

ですけどね。
そして盲目のギター弾きピーターのギターの音色に聞き入り、

1度目は金を入れたものの、次はそこから金を奪おうとする

ブランカ。この時ピーターのかける言葉がいいんです。
「この前は金をくれたのに今度は盗むのかい?朝飯代だけ

残しておくれ」
このような優しい言葉を彼女は生まれた時からかけてもらった

ことがあったのしょうか。有名な女性がホームレスの子供を

養子にしているニュースを見て、彼女は

「母親を3万ペソで買う」ということを思いつくのです。

「子どもを買う大人がいるのに大人を買う子どもがなぜ

いけないのか」幼さゆえの純粋さが、このような突拍子も

ない行動へと彼女をかきたてたのだと思う。3万ペソと

いう金額は、たまたま一緒にテレビを見ていた大人が適当に

答えた金額だし、そもそも母親が欲しいのではなく、普通の

暮らし、つまり学校に行ったり、一緒に遊びに行ったり、

買い物に出かけられるような環境が欲しかったに過ぎない

のかもしれません。映画の中盤でピーターと遊園地で遊ぶ

ブランカの喜びに満ちた顔がそれを物語ります。

このシーンは本当に幸せにあふれ、二人の笑顔が目に焼き

付いています。

 

ブランカとギター弾き
 

ピーターのギターに合わせて歌を歌うことになったブランカが、

最初はとてもか細い声なのに、次第に自信を持っていく姿を

見ていると、彼女の底知れぬエネルギーを感じます。しかし

そんな生活も短く、結局路上生活に逆戻りするのです。その時、

再びブランカは野生の瞳に戻り、ラウル、セバスチャンと共に

泥棒を重ねていきます。

 

ブランカとギター弾き

 

ラウルは13,4才くらいかな。ブランカが同じ年齢であった

ならば、きっと「夢」など抱くこともなく、彼のようにここで

生き続けることしか考えなかったと思う。逆にブランカよりも

年下らしいセバスチャンは、彼女と同じで「家族」が欲しい

わけです。その幼さがまだ純粋な部分を保ち続けられる理由

でもあるかもしれません。
「見えるものにこだわりすぎる」と語るピーターは、「目の

見えない者ばかりなら戦争は起きない」と語ります。おそらくは

ブランカのようにストリートチルドレンであったピーターが

どうして優しく穏やかなのかは、そこに起因しているので

しょうか。終盤、ブランカを襲う危険は、実際にそういう場所に

入り込んでしまった少女がいくらでも存在することを物語ります。

そしてそれに手を貸すラウルのような少年もいれば、セバスチャン

のように、そこで踏みとどまり人間としての誇りを保つ者も

いるのでしょう。幼いというだけでは片づけられないと思う。
ラストに見られる3人の笑顔は、過酷な状況でも、深くつながり

合った心の強さを感じ、未来への希望を物語るものでした。

 

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ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

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ペンタゴン・ペーパーズ

 

「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」

原題:The Post

監督:スティーブン・スピルバーグ

2017年 アメリカ映画 116分

キャスト:メリル・ストリープ

     トム・ハンクス

     サラ・ポールソン

     ボブ・オデンカーク

     トレイシー・レッツ

 

ベトナム戦争が泥沼化し、反戦気運の高まる

1971年のニクソン政権下のアメリカ。

ニューヨーク・タイムズ紙がペンタゴン・ペーパーズ

の存在を暴露する。それは政府から差し止め要請を

受けるが、同じ頃ワシントン・ポスト紙のデスクに

謎の女性からその文書の一部が持ち込まれるのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ まさにタイムリーなそして骨太な

映画です。


報道が仕えるのは国民


ウォーターゲート事件と聞くと、時のニクソン大統領の

再選を完全に阻み辞任へと追い込んだ大事件という記憶

だけしかないのですが、この映画のラストには、その

ウォーターゲート事件の始まりが映ります。ニクソンの

再選を望む共和党運動員が、ワシントンのウォーター

ゲートビル内にある民主党本部に盗聴器を仕掛けようと

した事件で、これを報道したのもワシントン・ポスト紙

だったとのこと。インターネットが普及していなかった

時代はハッキングもなく、このような方法で相手陣営の

動向を探っていたのだと思うと、時代の変遷がとても早く

感じられます。
このワシントン・ポスト紙は、メリル・ストリープ演じる

キャサリンの父親が社主だった会社で、後を継いだ

夫フィリップが自殺を遂げたため、自らの意志ではなく、

家族経営ということでそのまま社主になったキャサリンの

自信のない姿を彼女がとてもうまく演じています。

 

ペンタゴン・ペーパーズ

 

映画の前半では、政財界の大物と語り合うものの、政治の

話になるとキャサリンも含めて女性は別の部屋に移動し、

料理やファッション、ゴシップなどの話題で盛り上がります。

それが楽しいかどうかは別として、この時代、女性が政治に

口出しすることが極めて少なかった時代であることがわかる

のです。古き良きアメリカは、夫は外で働き、妻は家で子育て

と料理をして家庭を守っていた...なんて映画をいくつも見て

きました。きっと今でもそう思っているアメリカ人がいるん

だろうな。ましてや日本ではどれだけの数の人間がそう思って

いるのかわからない。気の遠くなるほど高いガラスの天井が

上に張り巡らされているんだろうな。

(ヒラリーのあのスピーチには泣けちゃったな。)
キャサリンは、株式公開にあたっても周りの役員に全て決定を

委ねるわけで、それを発表するときのスピーチの稚拙さが、

彼女の自立していない姿を表しているような気がしました。

映画の終盤に登場する彼女の娘の方がずっと意志が強そうに

感じられます。

 

ペンタゴン・ペーパーズ
 

報道の現場は、当然のことながら男性がほとんどであり、

通信手段は固定電話、秘密の内容は公衆電話という1970年代

の姿をリアルに描いています。コインを入れながらメモを取り

続けるというかなり困難な状況で仕事をこなしていくのです。
そして最高機密文書であるペンタゴン・ペーパーズは、

国務長官マクナマラの指示でまとめたもので、内容はベトナム

戦争へのアメリカの介入状況や当時の戦況が如実に記されて

いたわけで、アメリカの誤った決定の連続が4人の大統領の下で

行われ、戦争が無意味に続き、多くの兵士の命が奪われていた

ことを示すものだったのです。こんなものを世の中に出しちゃ

困る。6年も前に勝てないと分かっていた戦争を今も続けている

政権への大打撃にほかなりません。だから、

ニューヨーク・タイムズの記事を差し止めることを司法に訴え、

さらには情報提供者を捜し出そうとします。そんな時に

ワシントン・ポスト紙の編集長ブラッドリーは、新聞としても

使命を果たすために後追い記事を書こうと考えるわけです。それ

にはその情報の詳細が必要。同僚のバグディキアンに情報提供者
との接触を依頼。彼の行動はドキドキの連続です。公衆電話で

接触を図ると、電話を変えろと言われ、違う電話機に変える。

するとメモを取っているので小銭をぶちまけてしまう。それを

拾いながら言われた番号を復唱して再び電話をする..。
このように苦労して入手した文書は最高機密という個所がカット

されたため、ページがバラバラのものが4000枚以上あり、

数人が読み上げながらその文書の順番を整えていきます。大事な

文書は今でも紙で残すといけれど、ページをバラバラにしたら、

事件や登場する政府高官の名前などで組み合わせていく必要があるし、

間違っても廃棄なんてしちゃいけないよなあ。
しかしこの記事を新聞に載せるか否かでまた新聞社の幹部と現場が

対立するのです。投資家や銀行は危ない橋は渡りたくないし、

政権に歯向かうことでこの地方紙が訴えられたら、社の存続だけ

でなく、記者や社主が投獄される可能性も大きいのです。映画内で

発せられたのは「共謀罪」「法廷侮辱罪」「反逆罪」だったと思う。

 

ペンタゴン・ペーパーズ

 

最後の決定を迫られたキャサリンは、ゆっくりとそして数回

「やりましょう」
と答えるのです。この「間」が絶妙で、ものすごく深く考え、

あらゆる悪いことを想定したうえでの言葉にしては、

「寝る前に一言」的な雰囲気で発せられるのが対照的に思えます。
「私の会社」の「新聞の使命」を果たすために何をなすべきか。
政権、特定個人への疑問や批判を国家への反逆と考える大統領は

「私が国家」と言っているようなものだと述べる情報源の

エルズバーグの言葉が頭に叩き込んでおきたいです。この時から

約半世紀経ち、それでも米国憲法修正第1条で保障された表現や

宗教の自由を守っているアメリカの報道機関の姿勢は素晴らしい

と思います。それほど憲法は重い意味を持つのです。

 

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ソウルガールズ

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ソウルガールズ

 

「ソウルガールズ」

原題:The Sapphires

監督:ウェイン・ブレア

2012年 オーストラリア映画 98分

キャスト:クリス・オダウド

     デボラ・メイルマン

     ジェシカ・マーボイ

     シャリ・セベンズ

 

1960年代末、アボリジニとして差別を受けて

いた3人の姉妹は、カントリーミュージックの

グループを組み、コンテストに参加するがあえなく

落選。しかしその歌を聴いたデイヴは、彼女たちに

ソウルミュージックを歌わせて、ベトナムでの

アメリカ軍慰問の仕事につかせようと考えるが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ ストーリーはすこしほころびも

あるけれど、歌が素晴らしい。とにかく元気になれる

映画です。


アボリジニへの差別


先住民族への差別は、世界各国に存在し、最近見た

「サーミの血」(2016)ではスウェーデンにおける

それを描いていました。
オーストラリアではアボリジニが存在し、映画の冒頭で

1967年まで市民権がなく、動植物扱いだったと文字が

流れると、独自の文化を持ちコミュニティを形成してきた

民族へ、後から入植した人々の非道な扱いに憤りを感じます。

アボリジニは1968年まで特定の居住区住まいを強いられ、

70年代まで続いた「白人同化政策」で、肌の白い

アボリジニの子供を、政府が合法的に拉致し、白人家庭で
育てる行為を続けていたと知ると、ある意味「民族浄化」

だったのではないかと思ってしまう。
ただ映画ではこの辺りは、それほど深く重く描かれず、

主なストーリーは、アボリジニ出身の4人の女性がいかに

してベトナムで見事な歌声を聴かせるまでになったかを、

幾つかの恋愛も絡めて映し出されていくのです。
これはほんの数年間のことであり、実在した彼女たちのグループ

「ザ・サファイアズ」がメジャーデビューするわけでもなく、

その後故郷でアボリジニのために様々な活動を続けている

期間の方が長いのです。

長女ゲイルは、鋼の心臓を持ち、すべてにおいて決定権が

ある。次女シンシアは陽気で惚れっぽい。三女ジュリーは

抜群の歌唱力を誇るシングルマザー。そして従妹のケイは、

例の政策で「白人」として育てられ、「白人」として暮らして

いるのです。このケイがなぜ3人に加わったのかそこの

心境の変化は少しわかりづらいかな。

 

ソウルガールズ
 

3姉妹で挑戦したコンテストに落選し、(ウルトラ下手

くそな白人の女性が優勝)そこで司会をしていた白人の

デイヴに「ソウルミュージック」を歌うことを勧められる

のです。

 

ソウルガールズ

 

彼女たちの歌は「カントリーミュージック」であり、どちらも

「喪失」を歌っているけれど、カントリーミュージックは

「喪失から懐かしい故郷に戻る」ことを歌い、

ソウルミュージックは「喪失からその失ったものを取り戻す」

ことを歌っているとデイヴは言ういます。それは彼のソウル

好きの思いをそのまま語ったのだと思うけれど、なんだか納得。

 

ソウルガールズ

 

そしてカイも加わり「サファイアズ」としてベトナム戦争中の

アメリカ軍慰問の仕事に就くわけですが、このベトナムでの

シーンも歌のシーンは素晴らしいけれど、戦争中であることの

恐怖は終盤に少し感じるくらいで、かなり表面的にしか描かれ

ません。ただベトナムから逃げるために乗ったヘリコプターで

白人の兵士が、カイの恋人で黒人兵ロビーに傷を触られると

「その汚い黒い手で触るな!」と怒鳴るわけです。そういう

差別が映画のあちこちに挟み込まれ、その都度胸が痛くなるの

です。しかしやはりそのシーンを引きずらず、彼女たちの

生き生きした姿を見せ続けるのは、この映画のテーマが
差別への批判ではなく、夢に向かって突き進んだ女性たちの

姿を見てほしいということではないでしょうか。
4人の女性が自分たちの民族に誇りを持ち、その思いを同じ

民族の人々に伝えていく姿はとにかく爽快でした。映画内で

歌われていた歌はどれもすてきで、サントラが欲しくなります。

 

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犬ヶ島

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犬ヶ島

 

「犬ヶ島」

原題:Isle of Dogs

監督:ウェス・アンダーソン

2018年 アメリカ映画 101分

声:コーユー・ランキン

  リーブ・シュレイバー

  ブライアン・クランストン

  エドワード・ノートン

  ボブ・バラバン

 

ドッグ病が蔓延したメガ埼市では、市長が全ての

犬を犬ヶ島へ追放すると宣言し、自身の養子アタル

の警護犬スポッツが第一号としてゴミ島に追放される。
ゴミの中で生き延びていた犬たちの前に、ある日

アタルの乗った小型飛行機が降り立つのだった...。


<お勧め星>☆☆☆☆

犬好きかつウェス・アンダーソンの世界が大好きな人

にはたまらない映画です。映像も音楽も楽しい。


命には微妙なバランスがある


ウェス・アンダーソン監督の映画は

「ダージリン急行」(2007)、

「ムーンライズ・キングダム」(2012)、

「グランド・ブタペストホテル」(2013)と

鑑賞しましたが、どれもまるでおとぎ話のような世界観

と独特の色調を見せつつ、その中に深いストーリーを

忍ばせていました。笑いの中に悲しみや恐怖が見え隠れ

する、そんな感じです。
この「犬ヶ島」に登場する人間や犬はすべて1つ1つ

手作りで、900体もの人形を作ったとのこと。あの

ふさふさと風になびく犬の毛は1本1本植えて行った

のですね。それを動いている姿に見せるために気が遠く

なるほどのカットを撮影したんだろうな..などと少しだけ

考えたものの、そんなことよりストーリーがわくわく

するんです。犬好きにとっては冒頭からぷんすかする

内容で、メガ埼市の小林市長が反犬アレルギーを煽り、

犬をゴミ島へ追放すると宣言します。この理由はドッグ病

という謎の病気が蔓延し、犬たちがさまざまな症状を表し、

人間に危害を加えるものも出てきたためで、科学党の

渡辺教授が「有効な血清の存在」を主張しても一向に

聞き入れられません。恐怖を煽ることは権力を一点に

集中するのには最も有効な手段なのかもしれませんね。

 

犬ヶ島
 

そして追放される犬第一号は、市長の養子アタルの警護犬

スポットなのです。青い瞳を見開いたまま、ケージはツーっと

移動して島へ運ばれ、ドサッとゴミの中に落とされます。

相変わらず見開いたままの青い瞳がその絶望感を物語るの

です。

 

犬ヶ島
 

そして6か月後、チーフ、レックス、キング、デューク、

ボスという5匹の犬がかつての名札をつけたまま登場。あ、

チーフは野良犬なので名札はなしか。時々ノミだかダニが

毛の間から動き回るのが見えるほどリアリティに富んでいます。
その未来のないゴミ島に、突然1機の小型飛行機が降り立ち

ます。それに乗っていたのがスポッツの飼い主のアタルで、

彼は「スポッツを捜す」それだけの思いで養父の言いつけに

背いて訪れたのです。

 

犬ヶ島
 

実は、というか当然のことながらドッグ病の蔓延にはからくり

があり、自分の権力を盤石にするために、病気を利用、

捕獲員業者、犬型兵器業者と裏でつながっている様が、

こっそり描かれ、やーね、まったく。こんなことで命を粗末に

扱うなんて人間の風上にも置けないわと人間として思って

しまう。一方で市長に反対する愛犬派団体も当然存在する

けれど、「敵」とみなした相手を徹底的に攻撃する手法
に対抗するにはあまりにも微力すぎるのです。

 

犬ヶ島
 

映画内で高校の留学生のトレイシーが真実を追求しようと

仲間と戦う姿を見ると、若い力の強さも感じます。真実を

追求しようと思考することが大事なんですよね。見たままを

信じ込んだり、自分の信じたいものだけに接することの

恐ろしさをもっと知らないといけないし、想像力を働かせる

努力を常にしないといけないと思う。
犬ヶ島にいる犬たちはほぼ元飼い犬であり、人間のエゴで

様々な虐待を加えられたものもいるわけです。力の弱い者に

力を持った者が好き放題していいはずがない。
中盤に登場するナツメグという元ショードッグはとても

綺麗でやけに声が色っぽいと思ったら、

スカーレット・ヨハンソンが担当していました。ナツメグと

恋仲になるチーフとスポッツの意外なつながりなどとても

よくできたストーリーだし、スポッツとチーフがそれを

知ったときに流す涙(犬は涙を流すのかなあ)がまことに

リアルで胸がきゅっと痛くなります。そしてラストを迎えた時、

こんな世界になったらいいなあと思うばかりでした。そうそう

日本が舞台なので相撲や和太鼓、能などが見られ、言語も

日本語と英語が入り乱れているものの全く違和感がなく、

犬語を混ぜても(あるのか?出せるのか?)理解できるような

気がしてしまいました。

 

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