ぼくを葬る

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ぼくを葬る

「ぼくを葬る」
原題:Le Temps qui reste
監督:フランソワ・オゾン
2005年 フランス映画 81分 R15+
キャスト:メルヴィル・プボー
ジャンヌ・モロー
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
ダニエル・デュヴァル

パリに住む売れっ子カメラマン、ロマンは脳腫瘍が
転移し、余命3か月と宣告される。彼は同棲相手の
サシャに一方的に別れを告げ、家族の元に向かうが
病気を言い出せず、逆にいさかいを起こしてしまう。

<お勧め星>☆☆☆ 設定は別として、消えゆく命を
受け入れていく青年の姿が美しく描かれています。


「がん患者への余命宣告」って最近では、いとも簡単に
行われるのです。わたしの父の場合も、若い医師が
「ガンであり、かつステージ4の末期だけれども、
抗ガン剤+放射線治療を受ければ助かるかも」と言おうと
するのを「かぎりなくステージ4に近い」と言い直して
もらうように医師に耳打ちしたことを思い出します。
父の場合は82歳だったから受け止め方も異なるかも
しれませんが、この映画の主人公ロマンは31歳で
売れっ子カメラマン。ゲイであるがゆえに家族とも距離
を置かれているけれど、可愛いサシャという恋人もいる。
そんな彼が突然ガンが見つかり、余命3か月と宣告されたら
こんな感じになるのかな、と映像を見ていました。


ぼくを葬る

彼は恋人サシャにきわめて酷い言葉を投げつけて別れを告げ、
自らの病気を打ち明けに家族の元に向かうも、確執のある姉を
怒らせる言葉を吐き、父にも意地悪な話を仕掛けるのです。
時折入り込む少年時代の思い出は、彼の頭が少しずつぼんやり
していく様を描いているようです。


ぼくを葬る

そしてジャンヌ・モロー演じる祖母ローラの家に行き、初めて
自分の病気を打ち明け涙を流します。
「なぜ私だけに話したの?」
「おばあちゃんは、一番死に近いから」
ローラは、夫に死なれた後、息子であるロマンの父を捨て、家を
出て他の愛人と暮らしていたという。なぜ家を出たのかは
「生存本能が働いた」
つまり、こよなく愛した夫を失ったとき、夫そっくりの息子と
暮らしていたら、自らの生きる道を失っていたからだと言うの
です。彼女にもらったバラが少しずつしおれていくようにロマン
も弱っていきます。


ぼくを葬る

そして実は祖母の家に行く途中で立ち寄ったダイナーの主人夫婦
から、「妻の子供をもうけてくれ」と頼まれていたのです。
オーナーは不妊であり、妻は正常であるから、ロマンに相手を
してほしいということ。子供嫌いでゲイのロマンが、まさに死期を
悟った時にこの申し出を思い出し、それを受け入れるのは、
「生存本能が働いた」
のかもしれませんね。
ラスト、痩せた体で1人ビーチに行き、少年時代を思い出しつつ、
砂浜に身を横たえます。太陽が傾き、やがて周りの人々が去って
いき、夜の闇夜が来ようとするときになっても、彼は目をつぶって
横たわったままなのです。それはいつだったのか。日没とともに
消えていく彼の命を描きながら、余韻の残るラストになっていました。



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サウルの息子

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JUGEMテーマ:洋画


サウルの息子

「サウルの息子」
原題:Saul fia
監督:ネメシュ・ラースロー
2015年 ハンガリー映画 107分
キャスト:ルーリグ・ゲーザ
モルナール・レベンテ
ユルス・レチン
トッド・シャルモン
ジョーテール・シャンドール

1944年、アウシュビッツ収容所で、同胞の死体処理班
として働くサウルは、ガス室で息子そっくりの少年が
生き残ったのを見つける。彼は即処刑されるが、サウル
は少年を解剖せずに、何とか手厚く埋葬したいと願う...。

<お勧め星>☆☆☆ 全編に漂う重苦しい雰囲気はラスト
直前の一瞬だけ明るさを帯びます。


第68回カンヌ国際映画祭グランプリ、第88回アカデミー賞
外国語映画賞を獲得した作品です。
同胞をガス室送りにし、その処理までこなすユダヤ人
「ゾンダーコマンド」を描いた映画は「灰の記憶」(2001)
で初めて知りました。あの映画では、ゾンダーコマンドが生き
残っていた1人の少女を隠すのと、収容所内の爆発計画を
スリリングに描いていましたが、この映画はほぼサウルの
視点でのみ映像が進みます。したがって彼の後ろで行われて
いるガス室に入っていくユダヤ人の姿や、その後響き渡る悲鳴、
そして死体処理などが、ほとんどぼやけた映像で表されるのです。


サウルの息子

ハンガリー系ユダヤ人であるアウスランダー・サウルは、同胞を
ガス室に誘導し、その死体を処理する任務にあたることで、ガス室
送りを先延ばしにされていわけで、彼らの先には確実に同じ運命が
待っているのです。自らの手を汚したくなかったナチスドイツの
極めて卑劣な手法は、幾度見ても耐え難い映像です。
そんな毎日を送るサウルは、ある日、ガス処理後生き残っている
1人の少年を発見します。しかし少年は医師によってすぐに殺害
され、解剖へと回されることになるのです。サウルはその少年が
「自分の息子」だと主張し、解剖医(彼もおそらくユダヤ系)に
解剖せず、埋葬してほしいと懇願します。解剖医も自らの意志で
そんな行為をしているわけではありません。彼が少しの間隠した
死体をサウルは持ち帰り、何とかユダヤ教の司祭ラビの手で葬儀
を行おうと行動します。彼がここまで葬儀にこだわった理由は

彼自身の罪悪感なのでしょう。強制されたとはいえ同胞をガス室
に送り、その死体を処理するゾンダーコマンドとして行動すること
で、自らの命を延ばすという日々が、おそらくはとても辛いこと
だったはずです。
映画内でサウルは親しいユダヤ人に幾度も
「お前に息子はいない」
と言われます。
「俺の妻の子じゃないんだ」
サウルは言葉に詰まってこう答えるのです。

毎日の過酷に任務とカポと呼ばれる監視者(これもユダヤ人)の目を
かいくぐって捜し当てたラビは、彼のせいで射殺されます。


サウルの息子

それでもサウルはラビを捜し続けるのです。少年の死体を隠した
医師も
「死体を1つ用意しろ」
とサウルに耳打ちする。彼もいずれ処理される運命であり、この
行為のせいでそれが早まるかもしれないのです。


サウルの息子

そして終盤ラビと称する人物を見つけた時には、収容所内で暴動
が発生しており、サウルたちは逃げるしかありませんでした。
彼らが到着を待ったソ連軍は、終戦後ハンガリーを占領下に置き、
再び彼らを苦しめることになるのです。
サウルに本当に息子がいたのか、ということより、サウルの心は
救済されたのか、ということを訴えたかったのでしょうか。BGM
は一切なくサウルのラビを捜したいという強い意志のみが描かれて
いる映像でした。



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愛してる、愛してない

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愛してる、愛してない

「愛してる、愛してない」
原題:A La Folie...Pas Du Tout/He loves me...
He loes me not
監督:レティシア・コロンバン
2002年 フランス映画 96分
キャスト:オドレイ・トトゥ
     サミュエル・ルービアン
     イザベル・カレ
     クレマン・シボニー

画学生のアンジェリクは、外科医ロイックと不倫中。
彼とフィレンツェに旅行することが決まり、彼女は
胸を躍らせて空港で待つが、彼は一向に現れないのだった。

<お勧め星>☆☆☆半 おしゃれな恋愛ものと思っていたら
まさかの展開に、びっくり!そしてうまく作られていると実感
します。


<ネタばれ>
ヒロイン、アンジェリク役は「アメリ」(2001)の
オドレイ・トトゥ。


愛してる、愛してない

とても可愛いし、まさにパリジェンヌという感じです。絵画
学校に通う学生らしくファッションもおしゃれです。
アンジェリクはただいま恋の真っ最中で、相手は
ロイック・ルガレックという心臓外科医。彼女の頭の中は彼の
ことでいっぱいなので、モデルを見てデッサンしても顔は
ロイックになってしまう始末です。
でもロイックには妻ラシェルがいて、いわば「不倫」なんだけど、
彼は妻とは別れると言っていくれる。ロイックが「ゲス」で
なければ、大丈夫でしょう...。でもなぜかアンジェリクと
約束をしてもいつも彼はすっぽかすのです。おまけにラシェルは
妊娠5か月だという。
アンジェリクに心を寄せる医学生ダヴィッドは、彼女を弄んでいると
怒るけれど、当のアンジェリクは、誕生日に自画像を贈ってその後
食事、ともうウキウキしています。


愛してる、愛してない

アンジェリクがとても純粋に彼を愛しているのがわかるので、
ロイックが「悪者」で、妻に離婚を切り出せないいい加減な男と
思えてきます。ただ、少し心にひっかかるのが、ベビーシッターを
している縁で留守宅の植物の手入れを頼まれたアンジェリクが、
その世話を一切せず、散らかし放題だし、まるで自分の家のように
その家を使うことなんです。さらにバイトにも遅れ、友人に借りた
バイクは大きく破損し、彼女はケガもしています。恋に夢中で
いろいろなことがおろそかなのかしら。
じゃああんなに楽しみにしていたフィレンツェ旅行に行くために
空港で待つアンジェリクをロイックがすっぽかしたのななぜ?
やっぱり彼はアンジェリクを弄んだのね。その後ロイックの周りで
様々な事件が起き、それでもラシェルを選んだロイックを見て
遂にアンジェリクはガス栓を開きます。その心臓の鼓動のシーンから
再び冒頭に戻るのです。


愛してる、愛してない

すると今度はロイックの視点で同じシーンが描かれなおします。
あれまびっくり!彼は妻とものすごく仲がいいし、患者の愚痴に
辟易しているけれど妊娠中の妻のために献身的な態度をとっています。
あら、アンジェリクはいずこへ〜。オープニングのシーンでロイックの
誕生日にバラ1輪を届けたのは、彼は完全に妻だと思っているし、
自画像を贈ったのもどこかのだれかわかないと言う。
つまりアンジェリクがロイックに恋愛妄想を抱き、完全にストーカー
状態だったことがわかるのです。彼がたまたまアンジェリクを
家まで送って行ったのもアンジェリクが留守番を頼まれた家が、
ロイックの家の向かいだったからで、夜中に窓ガラスをコンコン
したのは妻のために牛乳を借りたかったから。さらに受付のアニタを
クビにしたことでダヴィッドが怒ってきたと勘違いしていたのです。
すべての勘違いが、彼自身だけでなく妻をも苦しめ、さらに妻は
突然バイクにはねられ子供を流産してしまう。

バイク事故?そうかそうだったのね。またやたらボディタッチを求める
患者に遂にブチ切れたロイックは彼女を平手打ちすると、彼女から告訴
されます。この事件のニュースもアンジェリクがじっと見ていたのは、
この苦境から彼を救いたい一心だったのね。ここまでくるとアンジェリク
の怖さと、誰かわからない人間から届く手紙や贈り物にひどく戸惑う
ロイックの恐怖心が強く伝わります。
そしてアンジェリクの存在を知らずに向かいの女性がガス自殺を
図ったと知り、必死で人工呼吸するロイックが映るのです。やめて、
あなたはまた狙われるわよ!
ラストシーンは精神治療施設から退院するアンジェリクの晴れやかな
顔が映ります。


愛してる、愛してない

でも彼女が飲んでいたはずの薬は、彼女の病室の壁にこんな風に
貼り付けてあったのよ。つまり彼女の病は全然治っておらず、怪我を
させられ、必死のリハビリを妻と乗り切り、娘をもうけて静かに暮らす
ロイックへの思いはまだ消えていないことに気づくと愕然とします。
冒頭の1本のバラは、妻の出産を喜び花束を買ったロイックが、
たまたまシッターに来ていたアンジェリクに1本あげただけのことで、
それが彼女は2人が恋に落ちたと思い込むきっかけになったという
皮肉なものでした。アンジェリクのファッションや自然あふれる景色や
パリの美しい姿とは裏腹にサスペンスタッチの内容が印象的でした。


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ふたつの名前を持つ少年

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JUGEMテーマ:洋画

2つの名前を持つ少年

「ふたつの名前を持つ少年」
原題:Lauf Junge Lauf/Run Boy Run
監督:ペペ・ダンカート
2013年 ドイツ=フランス映画 107分
キャスト:アンジェイ・トカチ
     カミル・トカチ
     ジャネット・ハイン
     ライナー・ボック

ポーランドのユダヤ人強制居住区から脱走したスルリック
は、森の中のヤンチック夫人の家の前で倒れてしまう。
彼女はスルリックに「ポーランド人の孤児ユレク」として
生きる術を教えられ、あちこちの農家を渡り歩くのだが...。

<お勧め星>☆☆☆半 ラストを見るとまた新たな民族
問題を感じてしまいます。


主人公のユレクを演じたのは、アンジェイ・トカチと
カミル・トカチという一卵性双生児だそうで、農家の食料
を盗んだり、SS将校に断固とした態度をとる姿はアンジェイが、
犬の死や自分の身の上に泣きじゃくったり、束の間の遊びに
興じて無邪気に笑う姿はカミルが演じたそうです。そういえば
微妙に顔が異なっていたような気もします。
オープニングは1942年〜43年冬、農家の男の上着を
盗もうとして見つかり、男に殴られるスルリックの姿です。
降りしきる雪の中を凍った地面を踏みしめながら前に進む
スルリックの靴の中の足は傷だらけなのです。


2つの名前を持つ少年

その彼の脳裏には、ゲットーから脱走した時、父に言い聞かされた
「名前を捨てて、絶対に行き抜け。但し父や母を忘れてもユダヤ人
であることは忘れるな」という言葉が焼き付いており、ひたすら
生き抜くのです。安全な隠れ家を探して家族を連れに来る、と言った
父の言葉を信じて。


2つの名前を持つ少年

スルリックはやがて森の中の一軒の家をノックします。その家は
夫と息子がパルチザンであるヤンチック夫人の家であり、民族は
違えど、迫害を受けた身の上を理解し、彼女はスルリックに
「ポーランド人の孤児ユレク」としてこれから生きていく方法を
教えてくれます。自分の生い立ちから両親の死、キリスト教の
お祈りの方法などを身に着けて、ユレクとなったものの、彼には
「割礼」という決定的な体の特徴があるため、裸になればユダヤ人
であるとわかってしまいます。

冬から春、そして夏とあちこちの農家を渡り歩き、ユダヤ人と
バレそうになったり、バレてしまうと、再び森へと逃げ込みます。
この過程でユレクを救うふりをして、ゲシュタポに引き渡し、
幾ばくかの報酬を得るような夫妻も現れ、この時代のポーランド
でのユダヤ人への迫害が、必ずしもナチスドイツだけによるもの
ではないと、改めて気づくのです。
ポーランド系ドイツ人の農場で働いていたとき、ユレクは右手に
大けがを負うのですが、ポーランド医師は、彼がユダヤ人であると
見極めると、「手術はしない」と言う。翌日他の医師が処置した時
には既に手は壊死し切断さざるを得なくなっています。このシーンも
ポーランド国内で反ユダヤ主義が強かったことが伺えるものです。


2つの名前を持つ少年

そして1944年、ソ連軍がドイツの攻め入るということで、彼は
ひたすら東へ向かいます。そこでアリーナという少女の家で働き
始め、右腕を使わなくても仕事が手伝える方法を主人から教わり
家族同様の生活を送ります。この映画では、逃亡→平穏→逃亡の
繰り返しであり、この家で終戦を迎え、喜びのあまり、教会の鐘を
打ち鳴らすユレクの姿が、このままでは終わらないと印象付ける
のです。その通り彼の下へ1台の車がやって来ます。「ユダヤ人
支援評議会」。このままポーランド人として生きる選択もできた
状況でしたが、ユレクことスルリックの選んだ道は、あの時父に
言い聞かされた言葉に従ったものでした。

ラストシーン。イスラエルの浜辺で一族で楽しそうに過ごすスルリック
を見ると、この国にはパレスチナ問題という大きな民族問題があり、
この浜辺を見られず高い壁で隔てられた地区には、貧しく、日々
攻撃を恐れる人々が暮らしているのだということに気づくのです。
それにしても邦題はダサいなあ。

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雪の轍

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JUGEMテーマ:洋画

雪の轍

「雪の轍」
原題:Kis Uykusu
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
2014年 トルコ=フランス=ドイツ映画 196分
キャスト:ハルク・ビルギナー
     メリッサ・ソゼン
     デメット・アクバア
     アイベルク・ペクジャン

元舞台俳優のアイドゥンは、父から受け継いだホテル
を経営しながら、執筆活動を行っている。そんな彼が
乗る車に石を投げつけ窓ガラスを待った少年が、家賃を
1年も滞納している一家の息子だとわかってしまう。

<お勧め星>☆☆☆半 とにかく長いです。ただ言葉に
ならない余韻を残す映画になっています。


チラシには、チェーホフをベースにシェイクスピアの
一節を引用し、シューベルトで仕上げられた世界が
カッパドキアを舞台に繰り広げられると書いてあります。
しかしカッパドキアの景色は雪のシーンが多く、そもそも
建物の中での話が主体なので、それほど見ることはでき
ません。


雪の轍

そしてこの映画は「フォックス・キャッチャー」や
「Mommy/マミー」などを抑え、第67回カンヌ国際映画祭
のパルムドールを受賞したとなると、期待が高まるのです。
登場人物は、元舞台俳優で今は、ホテル オセロのオーナー
をしながら、執筆活動をしている裕福なアイドゥンと若い妻
ニハル、そしてアル中の夫と別れて出戻った妹ネジラが中心
です。


雪の轍

アイドゥンの秘書のような役割をするビターエットや友人で
農場を営むスアーヴェ、ニハルが起こした慈善活動の指導的
立場の教員レヴェントも登場しますが、最も大きな存在と
なるのは、序盤にアイドゥンが乗った車に石を投げつけ
窓ガラスを割った少年イリヤスですね。彼の視線がまことに
冷たいのです。


雪の轍

イリヤスの家は、アイドゥンの所有のものであり、家賃を1年
滞納したため、強制執行によって家財道具を持ち去られています。
イリヤスの父イスマイルは、刑務所帰りで職がなく、弟ハムディ
はイスラム教の同師なので、何とか互いを納得させよう奔走
するも、それが却って根本にある問題をややこしくさせてしまう。
一方、アイドゥンとネジラとニハルが「貧困や苦悩」について
議論し始めるとそれは、かみ合わない言葉の投げつけ合いに
なってしまうのです。「悪にあらがわず、悪人に敢えて無抵抗
であることが、悪人に後悔する機会を与える」と主張するネズラ
の論理はどうも納得がいかない。それでは悪人を野放しにする
のか、というアイドゥンの話のほうが説得力があると思う。

その後も兄妹で不毛な論議を繰り返し、終盤には夫婦の議論へと
変わります。「勝手、恨みがましく、皮肉屋」とニハルに言われた
アイドゥンは確かにそうかもしれません。しかし彼がイスタンブール
へ向かうと言って家を出た後ニハルのとった行動は、「傲慢」
そのものではなかったでしょうか。持つものが持たざる者へ施し
を与えることは、人間の尊厳を貶める行為にも変わる恐ろしさを
含んでいるのです。
映画内で最近見たばかりの「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」
のロケでオマー・シャリフが訪れたという話をしていたのは、この
ホテルから20kmほど離れた村のことだったのかな。
鳴り響くピアノの美しい音色と真っ白な雪に覆われたカッパドキアが
本当に美しかったです。


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イブラヒムおじさんとコーランの花たち

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イブラヒムおじさんとコーランの花たち

「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」
原題:Monsieur Ibrahim et les Fleurs du Coran
監督:フランソワ・デュペイロン
2003年 フランス映画 95分
キャスト:オマー・シャリフ
     ピエール・ブーランジェ
     イザベル・アジャーニ

1960年代、初頭のパリに父と暮らすモイーズは
せっせと貯めた小銭をトルコ系移民の老人の店で
両替し、遂に初体験を済ます。老人はモイーズの
ことはすべてお見通しで、彼も次第に老人の話に耳
を傾けるようになるのだった。

<お勧め星>☆☆☆半 見終わるとほのぼのします。
しかし今こんな状況ではないのが辛いです。


音楽が懐かしいものばかりなのです。そして映画の
終盤、モイーズとイブラヒムおじさんが、おじさんの
故郷を目指す旅をするとき、画面いっぱいにスイス、
アルバニア、ギリシャの街並みや遺跡、景色が美しく
広がるのです。
話の始まりは、パリに住むユダヤ人モイーズ少年が
ブタの貯金箱を壊して、小銭を取り出すシーンからです。
へーヨーロッパにもブタの貯金箱ってあるんだ。この
金を何に使うかって?それは道路で立ちんぼをしている
娼婦と初体験をするためだとわかると、彼がなぜ鏡を
前に、声のかけ方やしぐさを練習していたのか理解でき
てしまう。なんだかいじらしい。

やっと35フラン貯まったので、向かいのイブラヒム
おじさんの店で両替してもらい、ついでにちょいとお菓子
をくすねて、遂に目的達成。


イブラヒムおじさんとコーランの花たち

モイーズの母は優秀な兄ポポルを連れて家を出ており、
彼は仕事で忙しい父に代わって食事を作るのです。この
父がなんとも陰気な男で、終盤に実はモイーズは母が不倫
して生まれた子であり、兄などいなかったとわかると、この
陰気さもうなづけるのです。


イブラヒムおじさんとコーランの花たち

モイーズとはろくに会話もしない父と違い、イブラヒム
おじさんは、彼のことをなんでもお見通しなのです。もち
ろん万引きも知っていて
「くすねるならこの店でしろ」
と言ってくれるのです。さらに
「父親は適当なものでいい。モイーズはいいものを食べろ」
と父には賞味期限切れのキャットフードなどをパテとして
食べさせることを助言します。
「これはうまいなあ」
だって。

このイブラヒムの教えはコーランに基づいており、1つ1つが
モイーズの生き方の指針となっていくのです。
「金持ちは笑う」
というモイーズに
「笑うから幸せになる」
と教えます。そうそうこの街で映画のロケがあり、女優として
登場するのが、イザベル・アジャーニです。


イブラヒムおじさんとコーランの花たち

この人にもお水をたかーく売っちゃう。
しかし陰気な父は会社をクビになり、さらに陰気となり、
遂にはわずかな金を残して失踪するのです。するとイブラヒム
は彼を自分の養子にしようと奔走します。自分の母との関係も
理解したモイーズとイブラヒムは本当の親子のように、いや
孫とおじいさんのようにだな、生活するのです。
イブラヒムの信仰はイスラム教のスーフィ主義といい、戒律に
とらわれず、内面を重んじるもので、現在のISが主張する教義
とは全く異なるものだと思われます。とにかく平和な笑顔の
絶えない考え方なのです。

終盤、イブラヒムは真っ赤なスポーツカーを買います。もちろん
モイーズとともに自分の故郷へ向かうためです。...がおじさん
には免許がなかったとわかり、そこからモイーズの助けも借りて
何とか免許取得し、旅に出ます。
イブラヒムの言うスローライフが幸せの証、というにぴったりの
景色を見ながら、突然の悲劇に襲われます。それでもイブラヒム
は笑いながら目をつぶるのですよ。イブラヒムは故郷の町へ入る
砂漠の道で事故を起こし、それがもとで亡くなるのです。
そして今、同じ店でモイーズは同じように物を売っています。
ほら小僧が万引きしていったよ。それを笑って見ているモイーズ
はイブラヒムそのもののようでした。
オマー・シャリフがとても味のあるおじいさんになっています。


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ストックホルムでワルツを

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JUGEMテーマ:洋画


ストックホルムでワルツを

「ストックホルムでワルツを」
原題:Mnonica Z
監督:ベル・フライ
2014年 スウェーデン映画 111分
キャスト:エッダ・マグナソン
     スベリン・グドナソン
     シェル・ベリィクビスト

スウェーデンの田舎町で電話交換手をしている
モニカは、一人娘エヴァ=レナの世話を両親に
任せ、夜はジャズクラブのステージに立っている。
そんな彼女にニューヨークで歌を歌うチャンスが
舞い込むのだが...。

<お勧め星>☆☆☆半 色遣いやファッションが
素敵だし、何よりジャズメロディが心地よいです。


スウェーデンの伝説的な歌手モニカ・ゼタールンド
の半生を描いた作品で、その役を演じている
エッダ・マグナソンは人気のジャズシンガーで、
その味わい深い歌声とともに美しい顔だけでなく
ヌードも披露する体当たり演技を見せています。


ストックホルムでワルツを

また1960年代のファッション、髪型、車、街並み
などが見事に再現されており、どこか郷愁を誘う雰囲気を
漂わせているのです。
スウェーデンのハークウォッシュという田舎町に住む
モニカは、電話交換手をしながら、夜はジャズクラブで
歌を歌うシングルマザー。家には自身の両親がいて、孫で
あるエヴァ=レナの世話をしているんだけれど、モニカ
は特に父とそりが合わないのです。


ストックホルムでワルツを

映画内で幾度となく繰り返される口論の中で、父は
「お前はなぜ木登りで上を目指すんだ。同級生が途中
であきらめても、お前は頂上を目指し、見事に木から
落ちたじゃないか。」
と言い、モニカは
「わたしは上からの景色をみたいのよ。」
と言い返すのです。後半にわかるのですが、実は父も
かつてジャズのトランぺッターであったらしい。結局
夢破れた自分を顧みて、現状に満足することを諭すわけ
です。

モニカに舞い込んだニューヨークでステージに立つ、と
いう話は、浮かれて舞台で歌った彼女の前から客が立ち
去るという現実と、尊敬するジャズシンガーからの酷評
で打ち砕かれるのです。この時代ジャズは黒人の歌で
あり、その歌を聴きに来るのは白人で、まさかモニカの
ような北欧の金髪女性が歌うなどとは思わなかったの
でしょう。それでいて彼らに楽屋はなく、モニカが自分
の楽屋を使って、とまで言っています。またモニカの
あこがれのジャズシンガーに自分の歌を聴いてもらうも
「心で歌いなさい。真似だけでは歌えない。」
と言われるのです。

失意のまま帰国したものの、こんなことにモニカは
負けません。再びスウェーデンでのツアーに参加し、
’スウェーデンの言葉でジャズを歌いたい’
と考えます。バンドのチェリスト、ストゥーレが渡した

ベッペの詩集から曲がスラスラ思いつくあたりは彼女
の天性の才能を感じさせます。ただ酒とたばこが手放せない
姿が多く映され、モニカの歌のレッスンシーンがほぼ
見られないのは少し残念です。

さらにモニカは、自分の目的のために有名な男性を利用
していくのですが、それがことごとく成功し、国内での
トップ歌手に登りつめます。この辺りはあまり好感の
持てる姿ではありません。しかし現実にはこんな世界
なのでしょうね。娘のために豪華な家を買い、派手な
パーティーを開くものの、それは当時の恋人ヴィルゴット
に受け入れられるものではなかったのです。そして
ユーロビジョン・ソング・コンテストにスウェーデン代表
で参加し、自慢の歌を披露したものの、ジャンルが
ふさわしくないということで、なんと零点に終わってしまう。

彼女の挫折は続きます。この辺りはとてもテンポよく
描かれ、ヴィルゴットと別れ、いつもそばにいると思って
いたストゥーレの婚約、新しい恋人の浮気、流産など
彼女は大きな打撃と苦痛を受けるのです。しかし舞台上
では相変わらずモニカを演じ続けます。けれど一旦自宅に
戻るとたった一人で大きな屋敷にいることの孤独に押し
潰されそうになるわけです。何かを得るには何かを犠牲
にしないといけない、と言うけれど、彼女の得たいものは
あまりに大きな犠牲を伴ったのかもしれません。

ラストに再びニューヨークに呼ばれ、観衆の前で自身の
歌をスウェーデン語で歌うと拍手喝さいを浴びます。その
歌を地元では両親がラジオで聴いているのですよ。父は
その歌を聴き初めて涙を見せます。
「挑戦すれば成功できたのに」
とモニカに言われた通り、挑戦すれば成功したかもしれ
なかったけれど、それを今自分の娘が手にしているのです。
ラストはストゥーレとの結婚式の後、どんどん高く上がって
いくモニカが映ります。彼女はまさに今、木の上からの
景色を眺めているのだなと実感するシーンでした。
その後のモニカ・ゼタールンドは、重い脊柱側弯症のため
引退し、車いす生活を強いられた後に、悲劇的な自宅火災で
亡くなっているとのこと。彼女の最高の時期でエンディング
にしたことは、気分の良いまま見終わることができました。





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ターナー、光に愛を求めて

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ターナー

「ターナー、光に愛を求めて」
原題:Mr.Turner
監督:マイク・リー
2014年 イギリス=フランス=ドイツ映画 PG12
キャスト:ティモシー・スポール
     ドロシー・アトキンソン
     マリオン・ヘイリー
     ポール・ジェッソン
     レスリー・マンビル

19世紀のロンドンの画家ターナーは、若い頃から
その作品に高い評価を受けており、自由気ままに旅
をしながらその題材を求めていた。しかし最大の理解者
である父を亡くした後、失意の彼は旅宿を営むブース夫人
と出会う...。

<お勧め星>☆☆☆ 有名な画家ターナーの後半生を如実
に描いており、秀逸な作品ですが、やや単調です。


ターナーは、昨年美術館で展覧会があり、その絵を鑑賞
しました。モネなどの印象派の画家たちに影響を与えた
だけあって、その絵画からはリアリティーではなく、光を
上手く使った独特の雰囲気が漂っていました。
でもそもそも絵画に疎い自分にとって、最も印象に残って
いるのは、彼自身が描いた自画像で、それがかなりハンサム
だったことです。1枚だけ他の人物がターナーを描いたもの
がありましたが、そこに描かれていたのは、自画像とは似ても
似つかない醜い小男でした。そんなわけで、このターナー役
を演じるティモシー・スポールがとてもよく似合っています。


ターナー

19世紀、ロンドンで画家をしているターナーは、そのよき
理解者である父を持ち、自由にあちこち旅行しては、絵を
描いていたのです。帰宅すると猫背のハンナという女中がおり、
ターナは自分の慰み物として扱うだけで、彼女の存在など
ないかのようにふるまいます。
さらに元恋人との間に娘2人がいるものの、認知もせず、孫が
生まれたと言って全員で訪ねてきても、大して関心も見せま
せん。彼の作風にある通り、光の部分だけ求め、影となる部分
は避けていたのかもしれません。
そしてたまたまスケッチ旅行で立ち寄った宿のブース夫人と
出会うわけです。


ターナー

ブース夫人は2回めの結婚をしており、その夫は元奴隷船の
船大工をしていたことで、彼から奴隷船の話を聞かされるの
です。帰宅するとその船の姿をキャンバスに描きなぐるターナー
が映ります。そして彼の父が亡くなり、失意の彼はブース夫人の
船宿を訪れると、彼女も夫を亡くしていたのです。ターナーは
なぜかブース夫人を気に入り、そのまま深い関係になります。
ターナー曰く「キミの鼻が好きだ」。(確かに鼻は大事だな)
一方ターナーの作品は時代の流れで、受け入れられない存在に
変わっていきます。その前にロイヤル・アカデミー内の醜い争い
も描かれ、彼の苦悩も伝わるのです。


ターナー

ターナーは病に冒され、ブース夫人の家に入りびたりになると、
ハンナは人づてにそこを訪ねて行きます。彼女はそこで、夫婦
同然に暮らす2人の話を聞き、彼の顔を見ずに戻るわけですよ。
ハンナの悲しみなどきっとターナーはこれっぽっちも気づか
なかったでしょうね。
ターナーが題材を求めた先の景色がとても美しく描かれていて
まるで彼の絵画そのもののようでした。





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アンナと過ごした4日間

3
JUGEMテーマ:洋画

アンナ

「アンナと過ごした4日間」
原題:Cztery noce z Anna
監督:イエジー・スコリモフスキ
2008年 ポーランド=フランス映画 94分
キャスト:アルトゥール・ステランコ
     キンガ・プレイス
     イエジー・フェドロヴィチ
     バルバラ・コウオジェイスカ

ポーランドの田舎町に住むレオンは、病院の火葬場で
働きながら、病気の祖母の世話をしている。彼の唯一
の楽しみは、隣接する看護師寮に住むアンナの部屋を
のぞき見することだった。

<お勧め星>☆☆☆ これを純愛ととるべきか、変態と
とるべきか、見る側に尋ねているように感じます。


冒頭、斧を買う男が映り、彼のおどおどした様子と、次に
映る人間の手を燃やすシーンから、まるで殺人鬼であるか
のような映画を想像します。しかしそれは全く間違いであり、
映画の全貌がつかめるのが、ラスト付近の法廷でのシーン
という手の込んだ作り方になっています。画面全体は暗く、
ポーランドの寂れた町の厳しい気候を物語っているかのよう
です。
主人公レオンは、病気で寝たきりの祖母の世話をしつつ、
病院の火葬場で働いているらしい。これが冒頭の手を燃やす
シーンだったのです。そこでも手にはめてあったはずの指輪
を盗んだと疑われてしまうほど、レオンは他人に受け入れて
もらえない存在かつ、はっきり否定もできない気弱な男なの

です。そんな彼の唯一の楽しみは、祖母を寝かしつけてから
こっそり隣接する看護師寮の部屋をのぞき見すること。


アンナ

彼の息遣いと手にした小さな灯り、そして煙草の火だけが
輝き、いつ相手に見つかるのかとドキドキします。この看護師
はアンナという女性で、かなり豊満な人。後で説明がありますが、
レオンは非嫡出子であり、祖母に育てられた生い立ちから、自分
なりの母親像を求めていたのかもしれません。
そして突然釣りの帰り道、農場の納屋で女性がレイプされて
いる現場を目撃します。これが急に入り込むので、いつのこと
なのか、これが誰なのか、少々混乱するのです。さらに警察での
レオンでの取り調べシーンも映りこみます。そこでも彼は自分の
意見をはっきり主張できないのです。


アンナ

そして祖母が亡くなり、遺品を燃やしているとそこからなぜか
アコーディオンが出てきます。その音色ももの悲しく、唯一の
身内を亡くした彼の孤独を物語っているようです。


アンナ

それから祖母の睡眠薬を、アンナの部屋の砂糖に混ぜ、熟睡した
彼女の部屋に忍び込むことを考え付きます。もちろんれっきとした
犯罪なんだけど、レオンがあまりにビクビクしているので、逆に
滑稽に見えてしまうのです。
1日目、アンナの白衣の匂いを嗅ぎ、取れかけたボタンを器用に
縫い付け、彼女の枕に少しだけ頭をのせる。
2日目、途中で眠ってしまったアンナに代わって、彼女の足の指の
ペティキュアを縫ってあげる。
3日目、この日は焼却場閉鎖のため、彼は仕事を解雇され、退職金
で指輪を買うのです。ちょうどアンナの部屋では彼女の誕生日パーティ
が開かれている。遠くから同じように乾杯し、酔いしれて行くレオン。
どこまでも悲しく感じますが、レオンにとっては、至福の時間なの
ですね。そして部屋に侵入し、バラを飾り、パーティの残り物を
食べ、指輪をはめてあげると、アンナの指には大きすぎるんです。

そうこうするうちに指輪は転げ落ちて、床板の間に入り込んでしまう。
悲しい姿なのに、やはり滑稽に映ります。さらに、同じ様に眠りこみ、
翌朝大慌てで彼女のベッドの下に隠れるレオン。ベッドの下からの
視点でアンナは映され、その結構太い脚が目の前に出てきます。
4日目、彼女の部屋の鳩時計を修理し、戻しに行った所で、パトカー
に見つかる。この時も慌てすぎたレオンは、部屋のカーテンに
絡まって転がるのです。この姿こそ本当の悪人ではない、ただの内気
で孤独な男であることを象徴している気がします。

そして彼が実はかつて、アンナのレイプ犯として有罪となっていた
ことがわかるのです。刑務所内での他の囚人からの暴行シーンも映り、
レオンの不幸さをさらに物語るものになります。この冤罪を経て
彼はアンナを愛するようになり、それは「のぞき見」という形で表現
することしかできなかった。さらにエスカレートし、「侵入」という
形になってしまった。
彼が法廷で、なぜ再びあんなに近づいたのかと尋ねられた時、明確に
「愛だからです」
と答えていました。レオンが自信を持って「愛」を訴えたところで、
それは普通の人間であれば、気味が悪いとしか受け取れないのは当然
のことなのです。アンナも然り。

ラストに釈放されたレオンが自宅に戻ると、隣の看護師寮の前には
高い壁が出来上がっています。これはどんなに彼が思いを伝えようと
しても超えられない壁が存在するということの例えなのかもしれません。





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サンドラの週末

4
JUGEMテーマ:洋画

サンドラの週末

「サンドラの週末」
原題:Deux jours une nuit
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ
2014年 イタリア=フランス=ベルギー映画 
95分
キャスト:マリオン・コティヤール
     ファブリツィオ・ロンジョーネ
     オリビエ・グルメ
     モルガン・マリンヌ

病気で休職していたサンドラは、会社がサンドラの
解雇と引き換えにボーナスを支給する投票をしたこと
を知る。復職を目指すサンドラは、社長に再投票を
頼み、週末に同僚たちの家を訪ねて復職への投票を
依頼するが...。

<お勧め星>☆☆☆ 静かな映画で、ラストのサンドラ
の明るい表情だけがよかったな。


予告編はとてもおもしろそうだったし、サンドラがどれ
だけ奮闘するのか、そしてどんな苦難に遭うのか、想像
しながら見始めました。けれどかなり静かな映画で、
サンドラを演じるマリオン・コティヤールのほぼすっぴん
の美しさだけが目立ちます。


サンドラの週末

体調不良による休職からの復帰を目指すサンドラは会社から
解雇通告を受け、絶望のどん底にいるのです。会社側は彼女
の復職かボーナス1000ユーロ支給かを同僚たちに投票させ、
14−2でボーナスに決まってしまったのです。彼女がどれ
だけ休職していたのかわかりませんが、その間彼女なしで
臨時雇いを含めて仕事が回っていたようなので、ものすごく
スキルが必要な仕事内容ではないと思われます。
落ち込むサンドラを支えるのは、彼女の支持に回った2人の
同僚と夫のマニュで、彼女をベッドから起こし、同僚に直接
話をさせようと奮い立たせるのです。このサンドラの家も
彼女が働かないと家賃が払えなくなるという厳しい経済状況
であり、サンドラが向かった同僚の家もどこも決して裕福とは
言えない生活をしています。


サンドラの週末

多分サンドラは心の病であったと思われ、映画内で薬をバカバカ
飲みまくっているのです。これってどう見てもまだ病気だよね。
もちろん福利厚生のしっかりした会社であれば、社員への保障
も手厚いでしょう。しかし彼女の解雇とボーナスを同僚に投票
させ、その上、主任が解雇に入れるように入れ知恵をするような
会社です。多分会社自体も経営がうまくいっていないのです。
再投票を社長に認めさせ、週末に同僚の家を回るも、皆お金が
欲しい人ばかり。内緒で仕事を掛け持ちしている者、ボーナス
がないと家賃が払えない者、子供の学費が必要な者。たった
1000ユーロとは言っても現金が手に入るのならば、同僚間の
感情など<<<<<という感じです。でも彼女は多分とても優しい

人柄だったのでしょう。復職に投票するという人も現れるのです。
落ち込んだサンドラと立ち直るサンドラが幾度となく映り、この
単調なストーリーに飽きてきた頃、遂に月曜日を迎えます。
ラストのサンドラの決断を見ると、彼女の表情は生き生きしており、
これで確実に病は完治に向かうのだろうと予感させます。



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