華麗なるリベンジ

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JUGEMテーマ:韓国映画全般

 

華麗なるリベンジ

 

「華麗なるリベンジ」

原題:A Violent Prosecutor

監督:イ・イルヒョン

2015年 韓国映画 126分

キャスト:ファン・ジョンミン

     カン・ドンファン

     イ・ソンミン

     パク・ソンウル

     シン・ソユル

 

正義感は強いが暴力で取り調べを行ってしまう

検事ジェウクは、取り調べ中の容疑者が亡くなった

ことにより殺人罪で起訴される。彼は懲役15年を

宣告され、刑務所に収監されるが、そこで知り合った

詐欺師のチウォンの言葉から自分が大きな罠に嵌めら

れたことを悟るのだった。


<お勧め星>☆☆☆ ラストにスカッとするので小さい

ことは気にしません。


カン・ドンウォン らぶ♡


警察、検事、裁判官がいずれも権力者と深くつながり、

利権を得ながら互いの目的を達成していく、そんな構図は

韓国映画では頻繁に見られます。なので冒頭のリゾート

開発を巡るデモ隊と警察のにらみ合いの際に、開発側が

仕込んだ人間を入り込ませ、逮捕劇に発展するほどの行動を

させることで、世間を開発側の味方につけるやり口は、

いかにも、と思ってしまいます。しかしこの手法が日本で
使われていない確信がもてるだろうか。それを考えると

怖くなる。

 

華麗なるリベンジ
 

さて、正義感は人一倍強いし、エリートではなくたたき上げの

検事であるジェウク役は、ファン・ジョンミン。この人優しい

瞳をしているけれど、堺雅人さんのように笑顔で全ての表情を

表すわけではないのです。
彼が検事として権力者の側にいた時と、服役囚となり、かつて

彼が刑務所に送った男にボコボコにされる時とが全く異なる

表情になります。前者の自信にみちたものが、まるで肉食獣を

恐れるシマウマのそれのように変わると、これは同一人物なのか

と思うほど。顔が無残に腫れあがり、痣が幾つもできたあげく、

作業中に指をミシン針で縫ってしまうと、思わず「いたっ!」。
しかし、彼が検事の経験を生かして、刑務官の裁判案件を解決

すること5年。遂に「先生」と呼ばれ、刑務所内でも一目

置かれた存在となっているのです。そこに入所してきたのが、

詐欺などで前科9犯のチウォン。

 

華麗なるリベンジ

 

これはカン・ドンウォンが演じており、「あいつの声」

(2007)ではほとんど見られなかった顔、そして

「義兄弟」(2010)では北朝鮮工作員として華麗な

アクションを見せてくれたあのお方が、それはそれは

きれいなお顔とすらりと伸びた長い手足を見せてくれます。

このきれいな顔だとチャラい男の役がなんて似合うんだろう。

やはりイケメンって罪よね。自称ペンシルバニア州立大卒

なのに英語が小学生程度と言われると、「クヒオ大佐」

(2009)を思い出し、主役が堺雅人さんだったことに

気づくと、なんだか変な気分(たぶん私だけ)。
そのチウォンが発した言葉で、ジェウクは、自分が嵌められた

ことに気づき、それが誰によるもので、何の目的だったのかが

全て繋がるのです。ジェウク、激おこです。そりゃそうだ。

「罪を認めれば正当防衛が成立する」と言われたのに、

認めたら懲役15年なんだもの。

 

華麗なるリベンジ

 

自分を嵌めたやつらは世間でどんどん勢力を拡大しているわけ

ですよ。じゃあどうするか。チウォンをできるだけ早く出所させ
自分の再審請求のための情報集めに活用するんです。

頭いいでしょう。この時チウォンの華麗なダンスシーンが

見られるのも楽しいです。いや、そんな楽しんでばかりでは

ないのです。詐欺師とはいえ頭がキレるチウォンも幾度となく

危機に瀕します。それでもこの映画ではほとんど血を見ることが

なく、暴力も軽めのものばかりなので逆に内容も浅く感じて

しまう。ドロドロしているものの、とことんではなく、

「新しき世界」(2013)での怖いヤクザを演じた

パク・ソンウルさえ、割と穏やかな検事役で、何かしでかすかと
思えばいやいや結構この人えらいじゃんという感じ。

 

華麗なるリベンジ

 

でもパク・ソンウルを見ると、眼差しが鋭くて恐怖を感じるの

よね。心が冷たいように思えてしまう。
最大の見せ場である裁判シーンは、再審請求という目的以上の

ことを話し出しても、裁判官は制止しないし、検事と弁護士の

役割分担がなくなっているのはご愛敬かしら。とりあえず終わり

よければすべて良しということかなあ。コメディサスペンスと

いう映画で、ちょっと物足りなさも感じました。

 

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トレイン・ミッション

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

トレインミッション

 

「トレイン・ミッション」

原題:The Commuter

監督:ジャウム・コレット=セラ

2018年 アメリカ=イギリス映画 105分

キャスト:リーアム・ニーソン

     パトリック・ウィルソン

     サム・ニール

     エリザベス・マクガバン

 

10年務めた保険会社を解雇されたマイケルは、

失意のまま帰宅の電車に乗り込む。しかしそこで謎の

女から大金と引き換えに「プリン」という人物を捜す

話を持ち掛けられる。彼は前金のありかを見つけそれを

カバンに入れてしまうのだった。


<お勧め星>☆☆☆ ストーリーは割と単純なので、

リーアム・ニーソンのアクションが十分楽しめます。


崇高な精神


リーアム・ニーソン主演でジャウム・コレット=セラ監督

映画は
「アンノウン」(2011) 学会に出席する途中、

交通事故に遭った博士が意識を取り戻すと、妻は別の

男性の妻であり、自分のことを知らないと言う。ボクは誰?

なぜに命を狙われ始めるんだろう?
これはすっかり騙されました。
「フライト・ゲーム」(2014) 空を飛ぶ旅客機という

最高の密室の中で、大金を振り込まないと20分ごとに

1名乗客を殺していく、という脅迫を受ける警備員の

リーアム・ニーソンが、狭い機内で暴れる、暴れる。怪しい

人物が多すぎて、これまた騙されてしまいます。
「ラン・オールナイト」(2015) 長年仕えたマフィアの

ボスを敵に回してしまい、一晩中追われ続ける酒浸りおやじの

姿をこれまたリーアム・ニーソンが抜群のアクションを駆使

して演じています。監督は異なりますが「96時間」

(2008)のものすごく強いパパのイメージはこの映画でも

見せてくれます。
この「トレイン・ミッション」でも、冒頭から家族のために、

来る日も来る日も電車通勤する父親マイケルを、同じシーンを

少しずつ変えて映していき、こよなく家族を愛する男を印象

づけます。
警察官を辞め、保険会社に入って10年。住宅ローンあり、

私立大学の学費必要、しかし貯金ゼロというマイケルが上司の

「キミは会社に必要でなくなった」の一言で無職になってしまう

のです。60歳にして無職は厳しいよなあ。なぜに共働きなのに

貯金ゼロなのかなどと考えてはいけません。いろいろ必要だった

んだろうと推理する想像力を持ちましょう。
大きな体のマイケルが肩を落として帰りの電車に乗り込む姿は、

「なんてカレンに言おうかな」

「息子の学費の支払いはどうしようかな」暗い、とにかく、暗い。

警察官であった時の勘は働かず、駅での不穏な雰囲気を感じ

取ることもできず。いやあのラッシュアワーなら仕方ないかも

しれない。しかし日本の通勤ラッシュに比べたら可愛いものです。

あの混雑ぶりは日本の平日の昼間の時間帯くらいのものだと思う。

年に何回か通勤ラッシュの時間帯に電車に乗ることがあるの

ですが、誰かに足を踏まれるか、下車時に押されるか、腕がねじ

曲がりそうになって吊り輪を持つとか、イヤフォンからの音漏れ
にイラつくとか、楽しいことは決して起きません。

毎日通勤ご苦労様です。

 

トレイン・ミッション
 

で、ズタボロの心のマイケルの前に、ベラ・ファーミガ演じる

ジョアンナと名乗る女性が現れるのです。

「僕、既婚者なんだ」

こら、勘違いするなんて超恥ずかしいぞ。彼女曰く、「プリン

という偽名で、いつもはこの電車に乗らず、カバンを持っていて、

終点コールドスプリングで下車する人物を捜してほしい」

これは強制じゃないんです。あなたが興味があったら
あなたの意志でするんです。でも報酬は前金25000ドル、

成功すれば75000ドル追加...。やるよね、絶対に。
ここから列車の狭い通路を行ったり来たりする大男マイケルの

姿が延々と見られます。警察官だった時の経験を生かして、

捜す方法を考えるけれど、あまりに怪しい人物が怪しすぎて、

マイケル困っちゃう。
やれ、鼻持ちならない証券マンやら鼻ピー女、バカでかい

荷物を持った挙動不審女子、半泣きのナースなど、次から次へ

と怪しさ全開なんです。その上、なぜか彼が冒してもいない

のに死体が増えていくので、逆に彼は追われる身の上になって

しまう。もう気づくはずですよね。「誰がプリンなのか」と

いうことより「なぜ俺なのか」を考えるほんの少しの心の

余裕があれば、何も起きなかったんじゃないだろうか。

 

トレイン・ミッション
 

でもそれじゃあリーアム・ニーソンの格闘や列車内外での

危機的なシーンも見られなかったからなあ。せっかく手に

入れたお金の入ったバッグが列車の外金具にひっかかって、

バッグが破れ、お金さいなら〜のシーンは辛いはずなのに、

さすがマイケル。正義に燃えるマイケル。家族第一のマイケル。
真相は薄々わかってくるけれど、最後までスリルのある映画

でした。

 

トレイン・ミッション

 

それと「死霊館」シリーズで超常現象研究家ウォーレン夫妻を

演じた、ベラ・ファーミガとパトリック・ウィルソンの登場は
あの映画を思い出してまた観たくなりました。あれは本当に

怖い映画です。

 

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ノクターナル・アニマルズ

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ノクターナル・アニマルズ

 

「ノクターナル・アニマルズ」

原題:Nocturnal Animals

監督:トム・フォード

2016年 アメリカ映画 116分

キャスト:エイミー・アダムス

     ジェイク・ギレンホール

     マイケル・シャノン

     アーロン・テイラー=ジョンソン

     アーミー・ハマー

 

画廊の経営者スーザンは、裕福な夫ハットンと

豪華な邸宅に暮らしている。ある日彼女の元に

19年前に別れた元夫エドワードから「夜の獣たち」

という小説が届き、その内容はかつて彼が書いてい

たものとは全く異なった暴力的なもので、彼女は

驚きを隠せなくなるのだった。


<お勧め星>☆☆☆半 美しい映像と音楽を堪能しつつ、

登場人物の胸の内について深く考えさせられる内容です。


「悲しく美しい瞳」

 

<ちょっとネタバレ>


監督は「シングルマン」(2009)のトム・フォード。

あの映画同様にスタイリッシュな映像が見られます。
ストーリーは、3つに分かれており、それらが組み合わさって

映画が進んでいきます。

 

ノクターナル・アニマルズ
 

1つは現在のスーザンの姿。画廊を経営し、展覧会も成功

させて順風満帆な人生かと思いきや、不眠症に悩み、

夫ハットンは負債を抱えたあげく浮気をしている。彼女が

現在住んでいる住居はまことに豪華であるものの、そこから

漂う無機質な感じが、この夫妻の関係を物語っているようです。
2つめは19年前に別れた元夫エドワードから送られてきた

「夜の獣たち」という小説の内容で、登場人物や事件が

そのまま映像となって映し出されていきます。これが残酷

極まりないもので、その小説の主人公トニーの苦悩はスーザン

の心としっかり重なっています。

 

ノクターナル・アニマルズ

 

ノクターナル・アニマルズ
 

3つめはスーザンと元夫エドワードの過去の姿。身分違いの

結婚を反対する母の意見をはねのけて結婚したものの、才能

を信じていたエドワードに対し、実際に生活してみると彼の

精神的な弱さばかりが目立ってしまう。結局彼女は自分の

嫌いだった母親と同類であり、どうしても上からでしか

エドワードを見ることができず、自分から別れを告げるのです。

それも強引に。

「君といた時の作品とは違う」という手紙入りのFor Susanと

記された「夜の獣たち」のページをめくるたびに、スーザンは

ハッと息をのみ、ページを閉じます。それは幾度も繰り返され、

またその小説の主人公トニーは彼女の頭の中ではエドワードに

変わっており、これは彼女への復讐なのではないかと思い始める

かもしれません。
小説内のトニーがシャワーを浴びる時、スーザンもシャワーを

浴び、バスタブにつかる..。いやこれは復讐ではなく彼女への

メッセージではないのだろうか。

 

ノクターナル・アニマルズ
 

小説内で悪い奴が出てくるのですが、そのうちの1人レイ役は

アーロン・テイラー=ジョンソン。こんな姿を見せてほしく

なかったわあ。
さっさと金持ちの身分相応の男に乗り換え、その上身ごもって

いたエドワードの子供を中絶してしまったことは、小説内で

妻娘を失ったトニーの心と同じであり、「正義の遂行」は

エドワードではなくスーザンが受けるべきことなのです。

そしてそれに全く気付かず、昔のようにエドワードを待つ

スーザンの姿を見ると、時間が経ち、店の客がどんどん減り、

スーザンたった一人になった時に、変わっていないのは
「スーザンだけ」だと確信します。

「人生の中で私たちがなす選択がもたらす結果。そしてそれを

諦めてしまうことへの警告」と監督が言っている通り、決して

手放してはいけないものを手放したら、それは二度と戻って

こない、ということだと思っています。いつの間にか見下して

いた相手から見下される存在になっていたことにスーザンはま

ったく気づいていなかったし、あのレストランで気づいたの

でしょうか。
小説の舞台になる西テキサスの夕焼けの空や真っ青な空、そして

真っ暗闇に浮かび上がるセンターラインなど、映像を見るだけ

でも素晴らしいものだと思います。

 

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祈りの幕が下りるとき

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JUGEMテーマ:邦画

 

祈りの幕が下りるとき

 

「祈りの幕が下りるとき」

監督:福澤克雄

原作:東野圭吾

2018年 日本映画 118分

キャスト:阿部 寛

     松嶋菜々子

     溝端淳平

     田中麗奈

     小日向文世

 

東京のアパートの一室で女性の腐乱死体が発見

され、その身元が判明すると、その女性と有名

演出家、浅居博美が旧友だったことがわかる。

一方発見現場のアパートの住民と見られる男が、

同時期に荒川の河川敷で焼死体で見つかった

ホームレスと同一人物と特定され、捜査はこの2人の

接点を求めて進んでいくのだった...。


<お勧め星>☆☆☆半 泣けはしませんが、点と点が

うまくつながっています。ただ重い。


マザコンですから


東野圭吾「新参者」シリーズ最終作で、連日テレビ

CMが流れ、JUJUが歌うエンディングテーマ曲が

頭に残っています。原作は未読。かつては東野圭吾

さんの小説が大好きで新作が出ると読みまくった

ものです。「白夜行」はその中でも最も好きな小説で、

これは、日本と韓国で映画化されました。いやいや

韓国版が断トツ見ごたえがありましたね。
また「浪花少年探偵団」シリーズはとてもライトな

内容でありつつ、ちょっぴりしんみりするというもので、

こちらも大好きです。多部未華子さん主演のテレビドラマ

は楽しかった!
そして「容疑者Xの献身」で遂に直木賞を獲得したあたり

から、内容が主人公や周りの人々の悲しく重い過去に

起因するものが多くなり、それらがほぼ映画化されると、

とにかく泣きを要求されている気がしてしまうのです。
あくまでも個人の好みなのですが、「麒麟の翼」は、よく

できた作品でしたがあまりに悲しいと思っています。

ガリレオシリーズの「真夏の方程式」も同じ感じ。

 

祈りの幕が下りるとき
 

今回は「新参者」シリーズの主人公、加賀恭一郎の過去と

実際に起きた殺人事件との接点を、能登、彦根、仙台、

女川、日本橋と場所を変え、その風景を映しつつ、加賀と

松宮(溝端淳平)が捜査をしていくのですが、この

ややこしい人物相関図が、映像を見ているだけで理解できて

しまうのは、監督の手腕だと思う。上手く画面を切り替えて、

現在脚光を浴びている有名演出家浅居博美の過去に迫って

いきつつ、加賀の親子関係を遡るのも、スルスルと頭に

入ってきます。

 

祈りの幕が下りるとき
 

祈りの幕が下りるとき

 

浅居博美役の松嶋菜々子より、14歳の彼女を演じた

桜田ひよりの演技は素晴らしく、ちょっと泣き過ぎかなと

思うけれど、父親役の小日向文世さんの抑えた演技と上手く

組み合わさって、本当に苦しく悲しい過去を見せてくれる

のです。気になるのは二人が標準語を話すことかな。

キムラ緑子演じる母と松嶋菜々子が話すとき、キムラ緑子は

コテコテなので当たり前だけれど、松嶋菜々子も一応

関西ことばを話しています。それが上手いのかどうか

わからないし、滋賀の呉服店の店主だった父が標準語で娘と

会話するのはやっぱりおかしい。そこは内容に全然関係

ないからいいのかな。
長い悲劇に幕を下ろすとしても、あまりに悲劇が重なり

すぎていて、見終わっても気持ちは明るくなりません。よく

できた映画ですが、わたしは二度と見たとは思いません。

でも息子は母を大切に思う気持ちが強く、娘は父を大切に

思う、そんな姿を見ると、男性にマザコンが多くて、女性に

ファザコンが多いのもなんとなくわかるような気がします。

そうだよな〜、わたし個人も父をすごく慕っていたからなあ。

 

 

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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア

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聖なる鹿殺し

 

「聖なる鹿殺し 

キルング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」

原題:The Killing of a Sacred Deer

監督:ヨルゴス・ランティモス

2017年 イギリス=アイルランド映画 121分 

PG12

キャスト:コリン・ファレル

     ニコール・キッドマン

     ハリー・コーガン

     ラフィー・キャシディ

     サニー・スリッチ

 

心臓外科医スティーブンは、手術中に亡くなった元患者

の息子マーティンに過剰なほど気を遣っている。そして

ある日彼を自宅に招いた後、スティーブンの2人の子供

が相次いで歩けなくなってしまう。マーティンは

「最悪の時が始まった」と語るのだったが...。


<お勧め星>☆☆☆半 頻繁に流れる耳障りな楽器の音と

時折流れる讃美歌のような歌が、この映画の歪んだ内容を

表しているようです。


命を与えた者が奪える

 

 

<ちょっとネタバレ>


監督は「籠の中の乙女」(2009)「ロブスター」

(2015)のヨルゴス・ランティモスです。

「籠の中の乙女」では。父親が絶対的な権力者である一家の

姿が、その一家だけに存在する言葉や行動が外から

見るとまことに滑稽で、しかしながらその世界を出て

生きて行くことが不可能に近いことを知ると暗闇に

包まれたような気分になりました。
「ロブスター」はさらにおかしな世界で、独身者が収容

されたホテルで45日以内にパートナーを見つけないと

動物にされてしまうという話です。とにかく相手を

見つけることだけに必死になる姿はやはり滑稽であり、

一方で「人間でいたい」ためだけにパートナーを探すと

いう行為があまりに人間の心とかけ離れていて、ある意味

人間が隠し持っている醜い部分の1つを見せつけられた

ような気がします。
さて、この映画は「ロブスター」と同じく主演は

コリン・ファレル。蜂の巣のようなひげをたくわえています。

 

聖なる鹿殺し
 

冒頭はドクドクと動き続ける心臓の大アップで、これが

「命」であるということを映像で表しているかのよう。
スティーブンは心臓外科医であり、妻アナは眼科医、そして

娘キムと息子ボブとで豪華な屋敷に暮らしているのです。

ところがスティーブンはなぜかマーティンという少年と

外で会ったり、豪華なプレゼントを贈ったりしています。
彼は誰で、その理由は何だろう。実はマーティンは、

スティーブンが手術をし、術中に亡くなった元患者の息子

なのです。多くの手術をこなしているから、亡くなる患者

も幾人もいるわけで、なぜに彼だけ大事にするのかは、

そこにスティーブンの罪悪感が存在しているに違いありません。

でもさ、自宅にまで招いて家族を紹介することが、とてつ

もなく恐ろしい結果を招くなんて誰も気づかないですよね。

 

聖なる鹿殺し
 

マーティン役のバリー・コーガンは「ダンケルク」(2017)

で小型船で救助に向かう男の役を演じていましたが、この映画

ではめちゃくちゃ不気味なんです。純朴そうな少年かと思って

いると少しずつその姿を変え、得体のしれない何者かに

変わっていくかのように見えるのです。食べ方、飲み方が

下品極まりない。まさに「悪魔」が宿っているとしか思えない。
一方突然足が動かなくなるボブは一旦回復して病院の

エスカレーターを降りた途端バタンと倒れ、姉キムはコーラスの

練習中、本当に突然崩れ落ちるのです。この予想できない展開

には驚きばかりです。
しかしながらまだ子供であるボブと初潮を迎え、大人の女性に

なりつつあるキムとでは、自分に起きたことへの受け止め方が

大きく違うことがとてもうまく描かれています。
マーティンの言葉だと「子どもと妻が次々に発症する」とあった

けれど、なぜか妻アナは無事なんです。それはアナがボブを

スティーブンがキムを溺愛しているのに、夫婦間には深い愛情が

存在していなかった証拠かもしれません。それともスティーブンの

支配下になかったからかもしれない。つまり対等な関係であったと

いうこと。

 

聖なる鹿殺し
 

聖なる鹿殺し

 

終盤には思い余ったスティーブンは、マーティンを地下室に

拉致監禁し、彼の支配から逃れようとしますが、そこでも

妻や娘はマーティンに逆に媚びるような行動をとってしまう。

さらには究極の選択を迫られたスティーブンに対し、3人が

3様の行動で忠誠心を、それもその場限りのものを見せる時は、

人間の醜さというより悲しさを感じてしまいます。
古代ギリシア悲劇のひとつ「アウリスのイピゲネイア」を基に

している話と言われていますが、ラストにダイナーで、キムが

ポテトに真っ赤なケチャップをいっぱいかけて、一番始めに

それを口にし、さっと3人で店を後にする一家のうちスティーブン

だけ振り返りません。それは悪魔との完全な決別宣言なの

でしょうか。大好きなポテトは一番最後に食べると序盤に

語ったマーティンとは違う人間であるということを示している

のでしょうか。それにしてもバリー・コーガンのブルーの瞳が

怖かったです。

 

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犯人は生首に訊け

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犯人は生首に訊け

 

「犯人は生首に訊け」

原題:Bluebeard

監督:イ・スヨン

2017年 韓国映画 118分 

キャスト:チョ・ジヌン

     キム・デミョン

     イ・チョンア

 

妻と離婚したスンフンは、精肉店の経営する

アパートへ引っ越してくる。しかし彼はその

精肉店の冷凍庫にあったゴミ袋入りの生首を

持ち帰り自室の冷蔵庫に隠してしまうのだった...。


<お勧め星>☆☆☆ いやいやこれはずるい。

見る側に説明不足すぎないだろうか。


チョ・ジヌンの演技がすごい。


韓国語の原題の意味は「解氷」。漢江は冬には凍結し、

その氷が解ける季節まで...というナレーションと

つながります。英題の「Bluebeard」は「青ひげ」で、

グリム童話の初版におさめられていて後に削除された

という恐ろしい妻殺しの男の話に出てくる人物です。
「赤ひげ」なら人助けをする医者なのに全く反対だな

と思いつつ、どちらも意味が理解できるのは日本人

だけだと思うと、なんだか笑えてきます。
とにかく主人公スンフン役のチョ・ジヌンの演技力に

尽きるのです。「お嬢さん」(2016)では上月と

名乗る富豪の役を演じていました。濃厚なのはルックス

だけでなく演技も同じで、時々過剰すぎるなと思うほど

だけれど、ラスト付近でその意味もわかってきます。
スンフンは内科医であり、仕事熱心なのですが、なぜか

ボロアパートに一人暮らしなのです。ところがこの

ボロアパート、オートロックだけはバッチリで、

1回1回ピロロ〜ンと開閉の音がします。
何度も繰り返されるのでこれが本当に耳障りだし、

なぜかスンフンの夢落ちのシーンが多いので前半は

少々ダレます。

 

犯人は生首に訊け
 

最初からものすごく怪しい精肉食堂の親子のうち、息子が

牛を解体する音は、ギコギコと不気味に響き、

「そこはこの刃物を使え」

と突然立ち上がる父親は認知症なのに、彼が動かす刃物の

音はさらに力強くギコギコと響いて、いつまでも耳に残ります。

牛や豚の解体→「悪魔のいけにえ」「八仙飯店之人肉饅頭」

「人肉ラーメン」..。思い出しますよね。絶対に思い出しますよね。
この父親の妻も息子の前妻も突然姿を消しているという。

 

犯人は生首に訊け

 

さらにスンフンが勤務するクリニックの看護師ミヨンは、

可愛い子と思ったのに、睡眠薬を盗み出しているのを目撃

してしまうのです。まともな人間いませんか〜?

 

犯人は生首に訊け
 

またスンフン自身も妻と離婚したのは病院が倒産したためで、

息子とは2週間に1回しか会えないという辛い境遇。妻は息子

に厳しく当たりすぎているんじゃないだろうかと、悩みは

尽きないわけです。ほとんどがスンフンの視点なので、周りの

人たちの思いはスンフンを通してでしか伝わりません。

したがってなぜ、スンフンはアパートに戻らないのかとか

毎日同じシャツを着ているのかとか前妻と喧嘩したとき二人

とも下着姿だった理由など全然わからないのです。だって

わかるはずないじゃない。極めてわずかな情報しか見せられ

ないんだもの。
時々姿を現す帽子の男は誰だろう?

そして自宅に侵入していた男は?

全て終盤に説明されるけれど、それについての前フリがないに

等しいので予想できるはずもありません。これはずるい。
さらにそうか、そういうことなのか、と思うと、やっぱり...。

ああ、これは不条理すぎる。韓国映画は結構好きなんだけれど、

この映画に関してはチョ・ジヌンの演技力だけが素晴らしいに

尽きます。

 

 

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最悪の選択

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最悪の選択

 

「最悪の選択」

原題:Calibre

監督:マット・パーマー

2018年 イギリス映画 101分

キャスト:ジャック・ロウデン

     マーティン・マッチャン

     トニー・カラン

 

寄宿学校の同級生だったマーカスに誘われ、身重の恋人

を残しヴォーンは鹿狩りに出かける。しかしヴォーンが

放った銃弾は鹿ではなく一人の子供に当たってしまうの

だった。


<お勧め星>☆☆☆半 見終わると気持ちが暗くなります。


命の代償


原題のcalibreはアメリカ英語ではcaliberと書く「口径」

という意味の単語。この映画で男たちが手にしている

狩猟用の銃の口径を指しているのでしょうか。主人公

2人のうちマーカス役は「ゾンビ・サファリパーク」

(2015)でヒロインの恋人を演じた

マーティン・マッチャン。確かヒロインは生き残った

けれど、彼はズルしたあげくゾンビに噛まれてそれから...

だったような。もう1人のヴォーン役は「ダンケルク」

(2017)で英国空軍のスピットファイアのパイロット

を演じたジャック・ロウデン。

 

最悪の選択

 

そう言われてもラストのトム・ハーディのパイロット姿

しか思い出せないなあ。さてこの2人はヴォーンが授かり婚

(今はこう言うのよね)をすることになったので、その前に

遊んじゃおうということで、イギリス北部の田舎へ鹿狩り

に出かけるのです。大体、山に向かってよかった映画はないと

思う。「処刑山ーデッド・スノウ」(2009)「フローズン」

(2010)で登場人物が「山でなくて海に行けばよかった」

と言っていたじゃない。でも海に行っても「オープンウォーター」

(2003)や「海底47m」(2017)のようにサメに

襲われることもあるからなあ。旅行はちゃんと下調べをして

計画的に行わないといけません。

この映画の舞台のイギリスってロンドンの街を外れるとすぐに

田舎になって森林地帯や田園風景が広がると聞いたことがあるし、

そもそもお国柄が閉鎖的であり、階級意識が強く残っていると

思っているのですが、今回はそのうちに2つがズバリ当て

はまるのです。
映画の中で田舎町の娘アイオナが、自然あふれてのどかな町を

ほめるヴォーンに対し「この町は全然よくないのよ」という

セリフがあって、その理由を単純にわかったつもりでいると、

終盤、次々に繰り出される衝撃的なシーンによって、よくない

どころか、よそ者に冷酷であり、独自のルールを持っていると

知るのです。ここはものすごく怖い。

 

最悪の選択
 

鹿と間違えて子供を撃ってしまったヴォーン。その子供の

父親がヴォーンに銃を向けるとマーカスは彼を撃ってしまう。

ヴォーンが持っている銃はマーカスのものだし、おまけに飲酒

している。さあどうするか。ここでの決断はマーカスがとても

速いんです。彼の仕事が開発と投資と言っていたけれど、

そこに漂ううさん臭さは最後まで解明されなかったな。逆に

ヴォーンはものすごくヘタレであり、「子どもができたから

結婚してよ」と迫られたようにも思えるほど、意志が弱いの

です。(ここは関係ない)どこかで引き返すべきだったと誰でも

思いますが、人生は「あとのまつり」ということが本当に多い。
個人的にはマーカスには同情の余地はないと考えてしまいます。

といってヴォーンがあれで正しかったのかと考えると、やはり

ラストにヴォーンが浮かべている表情に尽きると思うのです。
少しずつボロが出て、そこから追い詰められていく2人の姿には

ハラハラし通しでした。最後の決断こそ最悪の選択だけれど

他の選択はあったのでしょうか。

 

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クローズド・バル

4

JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

クローズド・バル

 

「クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的」

原題:El bar

監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア

2017年 スペイン映画 102分

キャスト:ブランカ・スアレス

     マリオ・カサス

     ジェイミー・オルドネス

     カルメン・マチ

 

マドリードの一軒のバルで、客が外に出た途端一発の

銃弾に倒れる。さらに様子を見に行った客も同じ

ように狙撃されてしまう。店内の客たちは人気の

なくなった街で何が起きているのか恐怖に襲われて

いくのだった。


<お勧め星>☆☆☆ 先が全く読めす、さらに

見終わってからも考え込む内容です。


バルの中と外は何が違う?


監督は「気狂いピエロの決闘」(2010)

「刺さった男」(2011)などの

アレックス・デ・ラ・イグレシアです。前者はスペイン

内戦やそれ以降の国内の混乱状態をピエロを使って

見事に皮肉っていました。ピエロは、道化師とは

思えないですよね。最近ではホラーの定番になりつつ

あります。最近でもないけれど「IT/イット」(1990)

に始まり「道化してるぜ」(2012)「クラウン」

(2014)「IT/イット ”それが見えたら終わり”」

(2017)などあの顔を見て笑う子供がいるのだろうか、

誕生日パーティーにわざわざ呼んで、一向にやって来ない

から父親自らピエロに扮したらそれが脱げなくなるん

じゃないか、(「クラウン」ね)そんなことしか思い

浮かばなくなりました。しかし「気狂いピエロの決闘」

はホラーではなく、1人の女性を取り合うはずが、多く

の物を失い、破壊し、自らも傷つけ、結局取り返しの

つかないラストを迎えるというまことに悲劇的な内容です。
後者の「刺さった男」は、文字通り鉄の棒が刺さった男

を巡る周囲の人々とその男自身の思惑を極めて滑稽に

描きつつ、ラストは、人の不幸を売り物にすることは

人間の尊厳を踏みにじる行為であると痛感させられる

のです。どちらの映画もメッセージ性が強い。
さてこの映画はどうでしょう。マドリードの交差点に

ある1軒のバルに取り残された?いや、たまたま

居合わせた人々の悲劇を、やはりコミカルな要素を入れ

つつ描いています。オープニングクレジットの背景に

何かの菌が増殖していく姿が映し出され、ものすごく
気持ち悪いのと同様に何の意味があるのだろうと思って

いると、その意味に気づくのは映画が始まってかなり

後です。とにかくなぜ外に出た客が突然射殺されたのか?

そしてその男を確かめに行ったもう一人の客もなぜ狙撃

されたのか?さらに遺体が無くなっているのはなぜか?
「なぜ」の連続で、菌のことなど微塵も思い出しません。

 

クローズド・バル

 

店の中では、バッグに爆弾が入っているだの、銃を持って

いるのはなぜかだの、見知らぬ人々同士が互いを疑い合う

醜い姿が見られ、さらに極限状態が進むと、それが

エスカレートしていく一方なのです。

 

クローズド・バル
 

外には装甲車が出現し、防毒マスク姿の人間が何やら燃やし

始める。ここに来てピンとくるわけですよ。あ、客も同じ

だった。ピンと来るポイントが同じなんて!そういえば冒頭に

トイレに駆け込んできた客がいたし、その男は、トイレ内

でものすごく膨らんで死んでいます。ここからは、日頃

親しくしていた人間同士でも、自分の安全のために仲間

割れし、助け合っているように見せておいて、実は欺こうと

する人も出現して、これでもかと人間のエゴ丸出しの姿を

見せつけていきます。

 

クローズド・バル
 

さらに「銃」という武器を持つことによって、立場がくるくる

変化していくのも、端から見ていると本当に虚しい限り。

登場する中でただ一人若くて美人のエレナが、下着姿に

なり体にオリーブオイルを塗って、下水溝に降りていく姿は

かなりエロティックですが、その姿に鼻の下を伸ばす男たち

を見ると、こんな状況でもスケベ心が消えないのかと、

ハリセンで頭をはたきたくなります。
結局何も知らないまま命を落とした人たちの不憫さと、

その出来事が一切伝えられず、見せかけのニュース映像や

報道を信じることへの恐怖を痛感するのみでした。

 

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リトル・アクシデントー闇に埋もれた真実

4

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リトル・アクシデント

 

「リトル・アクシデントー闇に埋もれた真実」

原題:Little Accident

監督:サラ・コランジェロ

2014年 アメリカ映画 105分

キャスト:エリザベス・バンクス

     ボイド・ホルブルック

     ジョシュ・ルーカス

 

炭鉱事故で10名が犠牲となり、エイモスただ

一人が生き残る。彼は被害者家族と会社側との

板挟みとなり、心を閉ざしていく。一方その事故

で父を亡くしたオーウェンは些細なきっかけで友人

ジェイティーを死なせてしまうのだった。


<お勧め星>☆☆☆ 静かな映画ですが、登場人物

の胸の内を丁寧に描いています。


窒息しそうな空気が漂う町

 

 

<ネタバレしています>


始まりから映像は薄暗く、それは炭鉱の坑道へ向かう

男たちを映しているので当たり前なのですが、その

どんよりとした閉塞感が最後まで続きます。ボンフォード

炭鉱にそこに暮らす人々の多くが依存している田舎町で

炭鉱事故が起き、10人が犠牲となり、たった一人

エイモスが生き残るのです。障害が残ったものの

生きているエイモスに対し、表面上はみな「おめでとう」

と言うけれど、その胸の内がエイモスにはわかってしまう

からこそ辛い。被害者の多くは一家の大黒柱であり、

後には妻子が残されているのです。被害者家族が起こそう

としている集団訴訟の証言を迫られ、逆に口を閉ざすことを

迫る会社側。そこにただ一人生き残ったことへの罪悪感も

加わった時、エイモスの心は彷徨うばかりで行き先が

定まりません。

 

リトル・アクシデント
 

一方、その事故で父を亡くしたオーウェンは、事故の賠償金が

入ったことを、遊び仲間に指摘され、いじめの対象になって

しまう。このような状況はどこかで見たような気がします。

 

リトル・アクシデント

 

皆が貧しい中で突然大金を手にしたであろう人たちを認知

すると、おそらくは自分たちの貧しさの鬱憤をその人たちに

向けてしまうのが常なのでしょうか。ところがこのいじめる

仲間の中に炭鉱の責任者ビルの息子ジェイティーがいるの

です。それもほぼ中心人物です。大人社会での構図がそのまま

子どもたちにも反映されてしまうのだろうか。
そういえば自分の保育園時代、とても意地悪な子がいたけれど、

彼女は町にたった1つあった病院の娘で、お遊戯会ではいつも

主役だったし、子供心に「この子は違う世界の子なんだ」と

思っていたような気がします。大人たちの気持ちは意外と幼い

子どもにも伝わってしまうのだと今まさに気づきました。
そしてとても不条理な目に遭ったオーウェンは、ジェイティーに

石を投げつけると彼が転び、運悪く岩で頭を打ってしまうのです。

見ていたのはオーウェンの弟で知的障がいのあるジェームズのみ。
なかったことにして2人は森から立ち去るのです。

 

リトル・アクシデント
 

ジェイティーが行方不明になってから家庭がすさんでいくのは、

これまで裕福に暮らしていた彼の家族であり、特に妻のダイアナ

は夫ビルとの確執が強まり、エイモス同様に心が彷徨い始める

わけです。彷徨う者同士、惹かれる?いや傷を癒し合うという

方が正しい気がします。そこには決して「愛情」は存在しないし、

2人でいるときが、現実逃避できる時間だったのでしょう。
罪悪感に苛まれるオーウェンは、たまたまダイアナの家の片づけ

を手伝うことになってしまうと、ジェイティーがいかに恵まれて

いたかを知るとともに、同じように母親からの愛情を受けていた

ことを実感するわけです。しかしオーウェンが真実を話すことは

自分の家族を傷つけることになる。それはエイモスも同じであり、

エイモスが真実を話すことは、ダイアナの夫ビルの責任を証明

することになり、ひいてはダイアナを傷つけることになって

しまう。この心の葛藤が丁寧に描かれています。
「炭鉱で働きたいなら話すんじゃない」と語ったエイモスの父の死。

「黙っていろよ」と諭し続けたジェームズがずっとおねしょを

している。守るべきものは何だったのだろうか。
最終的にエイモスもオーウェンも真実を話す選択をとるわけですが、

彼らはそれで救われたのでしょうか。いや決してそんなことは

ないと思ってしまいます。
全く出口の見えないトンネルに迷い込んだような気分になりました。

 

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ベイルート

3

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ベイルート

 

「ベイルート」

原題:Beirut

監督:ブラッド・アンダーソン

2018年 アメリカ映画 109分

キャスト:ジョン・ハム

     ロザムンド・パイク

     ディーン・ノリス

     ラリー・パイン

     シェー・ウィガム

 

1982年、内戦状態のレバノンで、アメリカ

政府職員が武装組織に拉致される。かつてレバノン

で妻を失ったメイソンは既に外交官を辞めていたが、

当時の友人を奪還するため、レバノン行きを指示

されるのだった。


<お勧め星>☆☆☆ 中東における国や組織の複雑な

駆け引きの構図を垣間見ることができます。


交渉能力


脚本はボーンシリースのトニー・ギルロイ。後でこの

ことを知ると、複雑なストーリーや身内の裏切り、交渉

の姿などが巧みに描かれていることも納得です。
主役の元外交官メイソン役は「ベイビー・ドライバー」

(2017)でバディ役を演じたジョン・ハム。セクシー

な恋人を連れたインテリ風な姿でしたが、今回もやはり

インテリ風。映画内では、幼少期から交渉術を学ぶ家庭で

育っていたと話します。家庭内の交渉術=父母間の信頼の話。

まあそこにも交渉が必要で、一方だけの主張を通すのは

後々問題が起こる種になるというものです。
さてのどかで優雅なホーム・パーティーのシーンは1972年

のレバノン、ベイルート。メイソンは妻ナディアと養子で

パレスチナ人のカリームと共に要人をもてなしているのです。

ここでピンとくるのは1972年という年です。この年の

9月にはミュンヘンオリンピック選手村でパレスチナ武装勢力が、

イスラエル選手、コーチを11名殺害する「黒い九月事件」

が起きたその年なのです。この事件は2005年に

スティーヴン・スピルバーグ監督が「ミュンヘン」として

映画化しており、事件前後の様子と、これに報復する

イスラエル諜報組織モサドの作戦が実にリアルな映像で描かれ、

モサドのそれはそれはすごい情報収集能力と残虐さ

(これはどこのスパイ組織でもそうなんだろうけど)
を思い知らされた気がしました。そういえば、ナチの戦犯

アイヒマンを潜伏先の南米で拉致したのもモサドだったなあ。
したがってこのパーティーの途中で起きる爆撃事件は

「黒い九月事件」に関連して起きたものだと想像できるのです。

とにかくPLO、イスラエル、アメリカ、そしてこの国レバノン

の立ち位置をしっかり把握していないと話について行けないし、
それをすることで今再び悲惨な出来事が起こっている中東情勢

について知るきっかけにもなります。宗教、民族、領土、

すべてが絡んだ場所での紛争に大国の思惑が絡み合うと、

本当に収拾がつかないのではないかと絶望的な思いにもなるの

です。
カリームは爆撃したメンバーに連れ去られ、(彼の兄は

「黒い九月事件」によって逮捕されている)妻ナディアを失った

メイソンは、そのままアメリカへ戻り、10年後、アルコール

に溺れながら法律事務所で民間企業専門の仲裁を行っている。

そこへ突然ベイルート行きの話を持ち掛けらるのです。あれほど

美しかった街並みはことごとく破壊され、10年間の内戦の

爪痕がそこかしこに残り、要所では民兵が検問をしている。

遠くで砲撃の音やすぐそばで銃撃音が鳴り響く街。

 

ベイルート
 

その中でメイソンに課せられた任務は、武装集団に誘拐された

アメリカ人2人を連れ戻すこと。このうちの1人は彼の

友人カルだったため、メイソンが呼ばれたらしい。ここで

頭が混乱するのですが、メイソンはどこに雇われたのか。

ロザムンド・パイク演じるサンディやゲインズ、そしてカル

はCIAのスパイらしい。ルザック大佐は国家安全保障会議(NSC)、

さらにはウォーレン大使もいて、それぞれの思惑が必ずしも

一致しないし、相対するのが、イスラエル軍なのか、PLOな

のか、民兵組織なのか、今一つ理解できません。しかしながら

話はとてもスリルにあふれており、カリームが成長してすっかり

武装組織の一員としてふるまっていたり、カルとメイソンの会話が

暗号を含んでいたりと、その都度はっと思わされることばかり

なのです。

 

ベイルート

 

但し人物相関図はなんとなーくあやふやなままラストに突入。

「ブリッジ・オブ・スパイ」(2015)のように人質の

交換シーンは、まさに時間との争いもあり、手に汗を握る

ものです。しかしこれを見ると、ラストに流される当時の

レーガン大統領の「中東に平和と安全を」という言葉が

いかに薄っぺらなものであるのか痛感してしまうのです。
この作戦は上手くいったと言えるのだろうか。そもそもこの

状況を作り出したのはなにがきっかけだったのだろうか。

 

 

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