失われた少女

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失われた少女

出典:IMDb

 

「失われた少女」

原題:Perdida

監督:アレハンドロ・モンティエル

2018年 アルゼンチン映画 103分

キャスト:ルイサナ・ロピラト

     マライア・サラマンカ

     ラファエル・スブレゲルブルド

 

2003年、アルゼンチン、パタゴニアでコルネリアと

いう少女が行方不明になる。14年後警官となった彼女

の親友マヌエラは、今なお娘の行方を捜し続ける彼女の

母親の願いを聞き、再び捜査を開始するが..。


<お勧め星>☆☆☆ 後半、特に終盤の展開が早すぎて、

サスペンスの醍醐味にやや欠けます。


いろいろ複雑


非常によくできたサスペンスという評もあれば、凡庸な

ストーリーという評もあり、期待半分位のモードで鑑賞を

開始しました。
冒頭の映像は2003年、パタゴニアで何かを、おそらくは

人を捜索する人々と犬を真上から映し出します。そして

とても寒そうな草むらの中に唯一見つかるのがペンダント

です。これが何を意味するのか、とか、この後何かが

見つかったのか、とか胸がわくわくしますが何も映らず、

時は過ぎて14年後。ブエノスアイレスで、1軒の家に

単独で侵入する女性警官マヌエラの姿に変わります。

このシーンがやけにハラハラするんです。

 

失われた少女
出典:IMDb

 

これがかつての出来事と関係があるのでしょうか。いえいえ

これはマヌエラがチーフ、ラモンの指示に従わないし、相棒

マルティンを毛嫌いしているのを印象付けるためだけのもの

みたい。それにしてもマヌエラったらやけに格闘に強いじゃ

ありませんか。このマヌエラ役の女優さんがあまりきれいでは

なく、スタイルもいまいちなんですよね。逆にこの後登場する

女性たちはみな割と綺麗なんです。
それはさておき、このマヌエラの親友コルネリアが14年前に

失踪しており、それがずっと他人との間に壁を作っている模様。

コルネリアのミサに出席することもできず、終わってから

こっそり出かけたりするのはその表れだし、セラピーにも通って

いたらしい。
それでもコルネリアの母クララに再捜査を懇願されると、急に

マヌエラにやる気スイッチが入るのです。そのスイッチが入った

のは、ミサの行われた教会から知らないブロンド女性が出て

来たことや教会に置いてあったコルネリアの写真が持ち去られた

ことなど不可思議な出来事が重なったせいもあるのかしら。
マヌエラはラモ
に制止されながらも勝手に捜査を再開するのです。

この強引さはテレビドラマでよくあるパターンで、たとえば

「科捜研の女」が殺人事件の捜査をしたり、「赤い霊柩車」

では葬儀屋が推理をするし、温泉若女将までも捜査に参戦する

ものもあって、「2時間ドラマだから許せる」という程度の内容に

感じてしまいます。京都を舞台にしたサスペンスドラマで、

当事者が誰も京都言葉を話さないこととは問題にもならない

くらいに現実離れしていると思う。
映画では 時系列が中盤バラバラになり、現在と7年前カナリア諸島

での売春婦の姿、14年前のマヌエラ、コルネリア、レオノーラ

など5人の少女の姿が次々に現れます。さらには、例の金髪女性と
スキンヘッドの男が何やら不審な動きをする。

 

失われた少女

出典:IMDb

 

ああ、そんなところで猫を捜しに行ったらアカン!

ほらね。言った通りでしょう。
ちょっと引っかかることはあれこれあって、だいたいこの

辺りで事件の真相は分かってくるんだけど、話の根本はまだ先

にあるんですよね。その終盤の展開がすごく早いです。

あら、あの人ここに来たの?
あれこの人も来たの?

距離感がわからないのですが、ブエノスアイレスを南に下ると

パタゴニアがあってその中にトゥニク村がある。ここはあっと

いう間に移動できるのかしら。マヌエラは小型飛行機に乗って
いたからやはり遠いと思うなあ。
1つ1つの出来事や日付、年齢などすべてがうまく繋がるものの、

それが一気に回収されるのはちょっと面白みに欠ける気がします。

それと最重要人物の「いろいろ複雑なんだ」というセリフで
全てが納得できるはずもないです。う〜ん、あと一歩!!

 

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切り裂き魔ゴーレム

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切り裂き魔ゴーレム

出典:IMDb

 

「切り裂き魔ゴーレム」

原題:The Limehouse Golem

監督:フアン・カルロス・メディナ

2016年 イギリス映画 109分 R15+

キャスト:ビル・ナイ

     オリビア・クック

     ダグラス・ブース

     ダニエル・メイズ

     サム・リード

     エディ・マーサン

 

19世紀のロンドンで連続して猟奇殺人事件が起こる。

捜査を担当するキルデア警部補は、容疑者4人のうち

ジョンという男が最近毒殺されており、その妻リジーが

逮捕されていることを知り、彼女に面会してジョンに

ついて尋ねるのだったが..。


<お勧め星>☆☆☆ ラスト付近のどんでん返しは全く

想定外だったけれど、じっくり見ていたら必ずわかると

思いちょっと悔しい。


またの登場


「未体験ゾーンの映画たち 2018」上映作品です。

19世紀のロンドンを舞台にしており、まさに名探偵

シャーロック・ホームズの世界そのもの。霧が深く、

どんより曇った日々が続き、シーンの多くが夜であり、

道端には娼婦や物乞いがあふれていた時代に、1人の

男が服毒死しているのを妻リジーが発見します。

リジー役は

「ぼくとアールと彼女のさよなら」(2015)

のオリビア・クック。この映画は実はとても悲しい内容

なのに、お涙頂戴シーンはほとんどなく、ちょっと

こじらせ屋さんの少女とスクールカースト底辺の少年2人

との奇妙な交流を描いていて大好きな作品です。

そしてそのリジーに不利な証言をするのがメイドの

アヴァーリンで、リジーは夫殺しの罪で逮捕されるのです。

アヴァーリンとリジーの関係も後に説明されて、不利な証言

をする理由も十分理解できます。

 

切り裂き魔ゴーレム
出典:IMDb

 

一方ビル・ナイ演じるキルデア警部補はロンドンで連続して

起きている猟奇的な殺人事件の捜査を担当することになります。

キルデアは優秀ではあるけれど、男色家と疑われ出世が遅れて

いるし、迷宮入りになったらキャリアが傷つくということで、

ロバーツ警部から無理やりに押し付けられちゃう。

 

切り裂き魔ゴーレム

出典:IMDb

 

この時代の差別感情も垣間見ることができます。
しかし現場保全もプライバシー保護も一切ない時代の事件です。

捜査の邪魔になるからと勝手に遺体を動かすし、記者が現場に

入り込むし、指紋捜査もされなかったのでしょう。「目撃証言」と
「筆跡鑑定」が捜査の主になります。これでは冤罪が幾つも

生まれたんだろうな。それこそシャーロック・ホームズのように

頭のキレる探偵に存在が求められたのも当然ですね。また民衆も

多くが貧しく、悲劇と血を求め、それを見たり聞いたりして

好奇心を満たして楽しんでいたのです。
そしてギルデアは図書館で、犯人が残したと思われる落書きされた

本を発見し、その日に図書館を利用した人物を容疑者として探し

始めるわけです。その中の一人が冒頭に毒殺されている劇作家

ジョンであり、犯人として逮捕されている妻リジーに話を聞きに

行きます。ここがまた地下牢のような場所で、薄暗くジメジメ

しているんですよ。ああ、地下牢だから当然か。

リジーの口から語られる自らの身の上はまことに悲惨であり、

キルデアはかなり彼女に同情的になってしまうのもわかります。

リジーは大変人気のある大衆演劇女優なんですが、その地位に

上り詰めるまでの苦労は幼少期に遡って少しずつ再現されて

いくのです。そう、この再現シーンが何度もあり、例えば容疑者

としてあがった4人がそれぞれ犯行に及ぶ姿を4回映します。

これがやや単調に感じられてしまう。しかしそのシーンが

次第にリアルに再現されていくので血が怖い人は要注意です。

この中にはカール・マルクスも含まれていて、あの人はこの時代

の人だったのかと驚いてしまいました。

 

切り裂き魔ゴーレム
出典:IMDb

 

リジーがダン・リーノという喜劇役者の劇団に入り、そこで

頭角を表していくけれど、なぜか彼女を侮辱する人物は亡くなって

います。リジーに近づく男性は「不幸な女性を救い満足を求める者」
であり、それがジョンでもあったわけです。そしてリジーは

というと、とにかく「後世に名を残す役を演じたい」という

根っからの役者。怪しげな人々が多くあらわれ、

こいつか!いやあいつか!いや絶対に彼だ!

と何度思ったことでしょう。
キーポイントはやはり図書館なんです。あの時に図書館の

職員とキルデアの会話をしっかり聞いて疑問に思わなかった

自分が悔しすぎる。なのでラストまでしっかり見ると大変

見ごたえのある内容です。
ビル・ナイの役は亡きアラン・リックマンが演じる予定だった

そうで、最後に「アラン・リックマンに捧ぐ」とい文字で

締めくくられています。

 

 

 

 

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ヒドゥン・チャイルド 埋もれた事実

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ヒドゥン・チャイルド

出典:IMDb

 

「ヒドゥン・チャイルド 埋もれた事実」

原題:Tyskungen/The Hidden Child

監督:ペール・ハネフィヨルド

2013年 スウェーデン=ドイツ映画 106分

キャスト:クラウディア・ガリ

     リカルト・ウルフセーテル

     イーヴァ・フリショクソン

 

警官である夫パトリックとの間に子供が生まれた

ばかりの作家エリカは、交通事故で両親を亡くして

しまう。そして実家を相続し、そこに引っ越してきた

その日、「お前の兄だ」と名乗る男が突然訪ねてくる。
さらにその男が殺され、エリカと血のつながりがある

と証明されたことで、彼女は母の過去を探り始めるの

だった。


<お勧め星>☆☆☆ ミステリー要素はバッチリで、

意外な結末には驚きとともに悲しみを覚えました。


孫を抱けなかった理由


第二次世界大戦中スウェーデンは中立国を宣言していた

ものの、同じ中立国を宣言したデンマーク、ノルウェーが

ドイツ軍に侵攻されたため、ソ連が侵攻したフィンランド

も含めると、複雑な状況に置かれていたのです。それでも

他国との貿易、交通が維持できたのは、スウェーデン独自

の外交政策の賜物であり、戦後連合国からも一定の評価が

得られたというようなことを歴史で学んだのははるか昔のこと。

 

地図

出典:wikipedia
 

ドイツと直接的な戦闘は行われなかったとはいえ、隣国

ノルウェーで働く同胞のために、レジスタンスとして活動

した者も多くいたわけで、ここが映画のキーポイント

でもあります。
娘エリカが、子供を出産しても、なぜか複雑な表情の

母エルシーは、その病院からの帰路、夫トレのわき見運転

による事故で、共に命を落とすのです。このシーンは

「運転中に携帯を渡したらいかん」
「運転者がなぜに落とした携帯を拾うんだ」

などと、『今から事故が起きます』の典型的なパターンです。
そして両親のフィエールバッカの家を相続したエリカは、

一家でそこに住むことになるのです。しかし引っ越して

きたその日、ヨーランという男が突然訪ねてきます。

引っ越しの様子をうかがう車やその運転手の腕に入っている

海兵隊のタトゥー、さらにはノックもなしに侵入したり、

全く分かりづらい説明話は極めて怪しい。怪しすぎる。

妹しかいないエリカに「お前の兄だ」と名乗るなんて

どうかしてるわ。
エリカは有名な小説家なので、「熱烈なファン」が押し掛けた

ということで片付けると、その男がホテルで殺害され、

さらにDNA鑑定でエリカの実兄であると証明されるのです。
娘を出産した喜びに浸る間もなく両親を亡くし、実兄を

追い返してしまい、もう2度と会うことができないエリカは

悲嘆にくれます。でも世間よりも早くヨーランとの血縁関係が

証明されることやこの後起きる事件に警察が早く動くのも、

全て夫パトリックが警官であること功を奏しているんですね。

ここはちょっと苦しい点です。

 

ヒドゥン・チャイルド
出典:IMDb

 

母の過去を知ろうと、実家の屋根裏部屋を探ると、そこには

母の日記と写真、そして鉤十字の勲章が見つかります。

鉤十字=ナチスドイツ。
ここから映画は、その写真の人物に会いに行くエリカの姿と、

1943年の母エルシーを含めた仲良し5人組、ブリッタ、

アクセル、フランス、エリックの姿が交互に映り始めます。

エリカが訪ねていく母の友人は次々に命を落としていくし、

何やら怪しい人物も登場します。北欧特有の曇天や雨降りが続き、

「特捜部Qシリーズ」や「ミレニアムシリーズ」「湿地」を

思い出さずにいられません。いつも思うのですが、欧米の人々は
「傘」というものをほとんどさしませんね。どんなに土砂降り

でもパーカーやジャケットで頭を覆うだけで走っていきます。

この映画のエリカなんて赤ちゃんを抱いて土砂降りの中を走ります。
「置き傘」とか「天気予報活用」という文化がないのでしょうか。

・フランス「大した雨じゃない。雨に慣れている」
・スコットランド「雨はヘッチャラ」
・スウェーデン「私たちの肌は雨に強いんだよ!」
というインタビュー結果もあるらしい。ふーん。
映画の中盤に「ん?」と感じた点はラスト付近で全く異なる形で

映像として現れます。そういえば序盤の回想シーンで、その

シーンが1カット入っていたことをすっかり忘れていたな。

悔しい。
結局戦争がなければ、苦しくても胸の奥に秘めておくしか

なかった出来事は起こらなかったわけだし、それを考えると、

戦争というものがいかに人間の心を悪魔のように変えてしまう

のかと、改めて気づかされるのです。

 

 

 

<文句のネタバレ>

あのじいさんには無理な行動ばかり。それともったいつけて

いる人は、ラッキーにも心臓発作。そうでなかったらもっと

早く真相がわかったのになあ。

 

 

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ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女強姦殺人事件

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ゴッド・セイブ・アス

出典:IMDb

 

「ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女

強姦殺人事件」

原題:Que Dios nos perdone

監督:ロドリゴ・ソロゴジェン

2016年 スペイン映画 127分

キャスト:アントニオ・デ・ラ・トレ

     ロベルト・アラモ

     ルイス・サエラ

     モニカ・ロペス

 

マドリードのアパートで老女が殺害される。単純な

強盗殺人に見えたその事件が、実は強姦事件でもあった

ことに気づくベラルデは、相棒のアルファロと捜査を

開始するが、ローマ法王来訪を控え、上層部から

捜査終了を告げられるのだった。


<お勧め星>☆☆☆半 全く個性が異なる2人の刑事が

見せる殺人事件の捜査が大変興味深いです。


同じ花を飾る


スパニッシュ・ホラーは何作品か見たことがあり、

「REC/レック」(2007)

「スペイン一家殺人事件」(2010)

などつらつらと名前を思い浮かべていると、ものすごい

映画がありました!
「スパニッシュ・ホラー・プロジェクト 悪魔の管理人」

(2006)です。これはわずか62分の映画ですが、

とにかく「すごい」に尽きます。
そして今作は、スパニッシュ・ミステリーの傑作と言われ、

スペインのアカデミー賞、ゴヤ賞など数多くの賞を獲得して

いるそうです。ワクワクしますね。
まず主人公の刑事2人が紹介される映像が流されます。

 

ゴッド・セイブ・アス

出典:IMDb

 

「マーシュランド」(2014)で被害者姉妹の父親役

だったアントニオ・デ・ラ・トレ演じるベラルデと

「私が、生きる肌」(2011)
で使用人の息子役だったロベルト・アラモ演じるアルファロは

相棒として任務にあたっています。すぐに頭に血が上って

壮絶な暴力行為を繰り出すアルファロは、家庭では反抗期の

娘を心配しつつ、留守がちで妻に迷惑をかけていることを

かなり気にしているらしい。一方のベラルデは、クラッシック

が好きで、きれい好きかつ捜査能力にたけているけれど、

吃音のため人前で話すのが苦手だし、アパートの掃除人女性に

心を惹かれつつ、ドアのカギ穴からのぞき見するような、

かなりいびつな心を持っている感じ。ちなみに家族なし。
そんな時起きた老女殺人事件です。ベラルデは「アンフェア」の

篠原涼子のように遺体の横たわった状況通りに自分も

寝転がります。そこでビビビとくるのかしらね。

しかし、そこで、なんと、この老女が
「強姦」

されていたのではないか、と推理するわけです。70歳を

超えた女性を強姦。しかし鑑定結果もそれを示し、犯人は

「巨大なペニス」の持ち主だというのです。これはこの犯人の

殺害動機と何か関係があるのか、確かプロファイリングを

するルビオが説明していたけれど、あまりよくわかりません

でした。何かの屈辱の裏返しとかなんとか。

 

ゴッド・セイブ・アス
出典:IMDb

 

さあ、捜査開始だと思ったら、上層部から「捜査終了」を

告げられるんですよ。その理由はローマ法王の訪問を控え、

老女強姦殺人事件などという事件などあってはならない、

というのです。あってはならないとか言われてもあったわけ

だし、調べたら同じような事件が前にも起きています。そこで

2人は秘密裏に捜査を続行するわけです。韓国映画ではよく

警察や検察の腐敗ぶりを描いていますが、それってスペイン

でもあるんですね。もしかしたらどこの国でもあるのかも

しれないなあ。権力によって捜査を妨害されることがきっと

あるんだろうなあ。
ニュースにもならないし、新聞にも報道されない事件を捜査

していく2人は、なかなか核心に迫れません。折しも

マドリード市内はワールド・ユース・デーで公費支出への

反対デモでごった返しているため、犯人らしき人物を見失って

しまいます。

惜しい、まことに惜しい。

さらにフェイントめいたシーンも挟み込まれて、消えたり

ついたりする電球の明かりの下でドキドキしてしまいます。
アルファロは公私ともに恵まれないし、それに...。
ようやく犯人の目星がついてきたときに、映し出されるのは、

スペインにおける「聖職者の傲慢さ」です。それを皮肉って

いることもこの映画がスペイン国内で大ヒットした一因なんで

しょう。
そうそう、犯人の特徴である「巨大なペニス」が、その人が

下着姿で歩くシーンでまさしくその通りだったのはちょっと

笑いました。

 

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殺人者の記憶法

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殺人者の記憶法

出典:IMDb

 

「殺人者の記憶法」

原題:Memoir of a Murderer

監督:ウォン・シニョン

2017年 韓国映画 118分

キャスト:ソル・ギョング

     キム・ナムギル

     キム・ソリョン

     オ・ダルス

 

アルツハイマーにより記憶を失いつつあるビョンスは、

かつて連続殺人犯だったが今は娘ウンヒと静かに暮らし

ている。しかし隣町で連続殺人事件が起き、ビョンスは

たまたま追突事故を起こした相手がその犯人ではないか

と疑い始めるのだった..。


<お勧め星>☆☆☆半 どこまでが真実でどこまでが妄想

なのかだんだん混乱してきて何回でも見直したい映画です。


記憶を信じるな


主役のキム・ビョンスを演じるソル・ギョングは、この役の

ために体重を10kg減量させ老人に扮したそうです。

「あいつの声」(2007)

「監視者たち」(2013)

「ソウォン/願い」(2013)
などで何度も見ていますが、確かに別人のように思えます。

 

殺人者の記憶法

出典:IMDb

 

一方ミン・テジュ巡査を演じるキム・ナムギルは14kg増量

したといいます。「無頼漢 渇いた罪」(2015)の時

同様に、顔はイケメンだからこの映画の役を演じるとすごく怖い。

終盤のスマホの明かりに浮かび上がる彼の姿はホラー映画並み

だし、そこで繰り広げられるアクションは凄まじいものです。
冒頭、トンネル内で立ちすくむ男性ビョンスが映ります。

それはラストと同じ光景で、霧のかかる中彼の視線の先を映す

のはラストのみ。

そしてそれを見ると何回目かの「ハッ」を感じるのです。
アルツハイマーを発症したビョンスは、その原因が17年前に

起こした交通事故であり、それは彼が行っていた連続殺人の

最後の事件の直後だったのです。その事件の相手をなぜ殺した

のか思い出せないのはなぜだろう。
しかし彼が連続殺人事件を起こすきっかけとなった家庭内の

出来事はあまりに悲惨であり、だからといって許されるもので

はなく、その後彼が「正当な殺人」と思って行ったことも、

決して「正当」ではないのです。そもそも誰が「正当な殺人」

と決めるのか。それは終盤、テジュの語る言葉のも裏付け

されており、他人にとっては、いや肉親であっても、全く異なる

思いを抱いているかもしれないのです。
犯罪加害者を保護するという行為に対し、加害者のみならず

その家族も罪人のように扱うべきだという暴論もありますが、

逆に加害者の更生を支えたいと思う人も存在します。100人

いれば100通りの答えがあり、どれが正しいかは誰も判断が

できない。ただこのビョンスのように「存在価値のないクズ」を

殺してきたことが「正しい行為」だと思うような人間には

なりたくないと思うのです。
さて可愛い娘ウンヒと暮らすビョンスは、日ごとに

アルツハイマーの症状が悪化し、獣医の仕事もできなくなります。

それでも娘は「できる限り支えるよ」と肉まんまで差し入れて

くれるんです。

 

殺人者の記憶法
出典:IMDb

 

もう、この子が本当に可愛いし、なんならアイドルにして歌わせ

たいぐらい。ところがそのウンヒが、ビョンスが「こいつ怪しい」

と思った男と交際を始めるわけですよ。パパとしたら許すわけに

はいかないし、その男もどうもビョンスの秘密を知っているみたい。

あらあらどっちもどっちなの?

ところがビョンスは、顔が痙攣すると記憶が消えるため、突然

違う場所や違う時間にかわったりするのです。
だから今目の前の出来事が「事実」なのか「妄想」なのか、途中で

すっかりわからなくなります。ソル・ギョングの演技に負けました。

いや、もっとしっかり見直さないといけないのだろうな。

 

殺人者の記憶法
出典:IMDb

 

ビョンスの顔なじみの警官ビョンマン役のオ・ダルスが今回も

アイドル並みに素敵でした。(それは違う)
でもよく考えてみると、

 

 


ここからはネタバレ

 

 


遺体は1つ運ばれただけだったし、「なぜミン巡査を殺したんだ?」

とビョンスは警察官に聞かれていたから、もしかしたらあの人も...。

ああもう一回見直して確認しないと、モヤモヤする。

 

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目撃者 瞳の中の闇

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目撃者

出典:IMDb

 

「目撃者 瞳の中闇」

原題:目撃者 Who Killed Cock Robin

監督:チェン・ウェイハオ2017年 

台湾映画 117分 PG12

キャスト:カイザー・チュアン

     ティファニー・シュー

     アリス・クー

     クリストファー・リー

     メイソン・リー

 

新聞社の敏腕記者シャオチーは、自分が買った

ばかりの中古車が事故車だったことを知り、その

事故について調べる始める。するとその車は彼が

9年前に目撃した衝突事故の被害者の車だったことが
わかる。その事故の被害者で重傷を負った女性の

所在を調べると次々に不審な出来事が起き始め..。


<お勧め星>☆☆☆半 すべてはラストシーンに集約

されています。入り組んだストーリーを読み解いて

いく醍醐味があります。


最後のページが一番怖い


冒頭、雨の中、車の中で眠る男の前を一台の車が通り過ぎ、

すぐに大きな音がします。男は車から降り、そちらへ

向かいますが、何が起きたのかは全ては映りません。

このシーンは幾度となく繰り返され、様々な人物の

視点から見ることができるのです。それは全てが真実で

あるとは限りません。
そして時は移り、衝突事故発生の警察無線を聞いた

新聞記者シャオチーは、路側帯を走り、現場へ駆けつけ、

勝手に写真を撮っています。多くの人が思い出すのは

「ナイトクローラー」(2014)

でジェイク・グレンホールが演じた狂気に満ちた

フリーのカメラマンです。しかしそれとはまったく異なり、

彼はちゃんと新聞社に勤務する記者なのです。しかしこの

記事がスクープではなく、事実誤認があったことで、彼は

新聞社を解雇されてしまうのです。

くっそ〜!おまけに愛車のBMWで衝突事故を起こしてしまう。

これ先月中古で買ったばかりなんだよなあ。

 

目撃者
出典:IMDb

 

ところが車を修理に出した修理工場のジーは、

「これは事故車」

と言うのです。その事故がかなり大きなものだったらしいと

聞かされ、シャオチーは、得意の警察のコネを使ってその

事故について調べます。おいおい個人情報を金で渡して

いいのかい。いやいかにもありそうだ。
調べるとその事故は9年前、なんとシャオチーが目撃した

衝突事故だとわかり、彼はさらに一層深く調べようと

知るのです。この辺りの繋がり方は、やや強引すぎる気が

しますが、そこから話が始まるのでとりあえず先を見ていくと、

胡散臭い人物が次々に登場するし、そもそもシャオチー自体が

誰かに尾行されているみたい。Why?

 

目撃者
出典:IMDb

 

新聞社のボスだったマギーと二人で事故の被害者アイティンに

会いに行ったものの、彼女の話が偽りばかりだし、そもそも

身を隠している意味がわかりません。いや、とりあえず

シャオチーがこの事故にこだわり過ぎることが気になりますね。

なぜでしょうね〜。
またシャオチーの後ろ盾になっている、元新聞社員で今や

国会議員となったチウとマギーは、どうやらいけない関係。

え?でもシャオチーとも...。この辺りは次々にカードを

出される感じで、それをどのように組み合わせていくかを

試されているような気がします。
さらにさらに新人警官ウェイがめっちゃ不審人物なのです。

よくぞ、警官になれましたね!

他にも怪しげな人物がどんどん現れるので、最初に自分が

想像していたストーリーとは全く違っていくことにそろそろ

気づいてきますよ。(いや、気づかなかったんだよね)
例の交通事故の日に、少女の誘拐殺人事件が起きたことは

関係があるのか、ないのか。

幾度となく繰り返される当時の状況の映像で少しずつ分かって

くると、なるほど!と思うものの、これ、絶対にわからない

じゃんとも思ってしまう。
マスコミ、警察、当て逃げ犯、自動車修理工、そして被害者。

この中で誰が真実を言っているのでしょうか。または真実は

誰も語っていないのでしょうか。
ラストのシャオチーの言葉は、2日ほど考えて自分なりに

納得しました。最後付近はものすごい展開になり、とても

怖いので要注意です。

 

 

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女は二度決断する

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女は二度決断する

 

「女は二度決断する」

原題:Aus dem Nichts

監督:ファティ・アキン

2017年 ドイツ映画 106分 PG12

キャスト:ダイアン・クルーガー

     デニス・モシット

     ヨハネス・クリッシュ

     サシア・シャンクラン

 

カティヤは最愛の夫と息子を爆発事件で失ってしまう。

容疑者はすぐに逮捕され、ネオナチ思想に染まった

夫婦だとわかるが、裁判では十分な証拠があるにも

かかわらず、無罪となってしまうのだった。


<お勧め星>☆☆☆半 綺麗ごとでは済まされない

ヒロインの胸の内が強く伝わります。


憎悪の連鎖

 

 

<ネタバレしているかも>


ヨーロッパ映画がとても好きなのでしばしば見るのですが、

その映画で直接的に描かれる自分の知らなかった歴史的悲劇、

事件に驚き、また映像の奥に隠されたメッセージを読み取ると、

見終わってしばらくその世界に浸り続けます。
監督はファティ・アキン。最も有名なのは「愛、死、悪」に

関する三部作

「愛より強く」(2004)

「そして、私たちは愛に帰る」(2007)

「消えた声が、その名を呼ぶ」(2014)で、
この中では「消えた声が、その名を呼ぶ」が最も印象に残って

います。第一次大戦中に起きたオスマン帝国による

アルメニア人へのジェノサイド。トルコ政府が今でも認めて

いないその事実を壮大なスケールで描いていました。

そのほかにも2009年映画「ソウル・キッチン」のような

コメディもあり、笑いの中に移民としての苦労を織り交ぜると

いう内容になっています。

 

女は二度決断する
 

この映画の主人公一家ヌーリ、カティヤ、息子ロッコのうち

ヌーリはトルコからの移民であり、冒頭に何かの罪で

(後に薬物売買とわかる)で収監されていたことを知ると、

つまり前科持ちなのだなとわかります。そして突然起こった

彼の事務所の爆発事件。ダイアン・クルーガー演じるカティヤの

悲しみの深さは、声にならない泣き方、体の震わせ方、焦点を

失った瞳の動きなど全てで、見る側にその思いを伝えます。
事件当日に捜査が開始され、カティヤが事情聴取を受ける

警察では

「イスラム教徒か」

「クルド人か」

「政治的な活動をしていたか」

「敵はいたか」

「薬物取引のトラブルはなかったか」とあまりに偏見に満ちた

質問が放たれます。カティヤ一家の住む家がかなりの豪邸であり、

「保証金はどこから出たのか」とまで言われてしまう。実は

ヌーリの実家はトルコでは裕福な不動産業を営んでいるらしく
ここでも警察の移民への偏見が見え隠れするのです。
この被害者がドイツ人だったらどういう質問をされたのだろう。
そしてすぐに容疑者が捕まると、カティヤの予想通りネオナチの

夫婦なのです。ここで改めてドイツの過去を遡らずにはいられ

ません。この夫婦のうち夫の父親は、息子とは思想の違いで絶縁

していた。ナチスドイツの蛮行を恥じ、決して受け入れることの

できない思想なのに、息子があろうことかそのような思想に染まり、

納屋で爆発物を製造していたのです。世界で再び広がっている

移民排斥、ヒトラー崇拝思想については嘆かわしいとしか

言いようがない。どんな思想だったか少しでも調べたら、決して

関わってはいけないと思うのに、またナチス式の敬礼すら法律で

禁止されているのに、他国では「かっこいいから」と真似を

したり、SSの姿をコスプレしたり、頭のネジを締めなおして来い

と言いたい。

 

女は二度決断する
 

しかしそんなドイツにおいても、少なからずその思想は受け

継がれているのを感じるのは、この事件の裁判風景です。

弁護士が容疑者を擁護するのは当然ですが、弁護側が用意した

証人、証拠が明らかにねつ造であるのに、それを認める裁判官を

見ると、移民への差別意識を強く感じます。
「顔のないヒトラーたち」(2014)で、アウシュビッツ裁判

開始までのある検事の険しい道のりが描かれていました。しかし

その裁判にかけられなかった相当数のドイツ人が普通に暮らし、
その子孫が生き続けているとしたら、同じ考えを持っていない

保証はないのです。それでもドイツでは「負の歴史」として

ナチスドイツを認識し、「なぜこうなったのか」を問い続けて

いることは素晴らしいと思っています。

 

女は二度決断する
 

映画内の裁判で、証拠不十分として無罪になってしまった

容疑者に対し、カティヤはどう対処するか。
上告するのが最も正当な方法だけれど、そこに正当な裁判が

存在するのか、ということは一審で十分理解できました。

その結果カティヤはある決断をします。それは2回。1回目と

2回目の違いは憎しみの連鎖を断ち切るか否かだと私は思って

います。もちろんそこに、カティヤ自身を海の中へ誘う、

iphoneの中のヌーリとロッコの姿があったのも確かですが。
移民受け入れに寛容だったドイツが遂にその方針を転向した今、

ヨーロッパでの極右政党の台頭が勢いを増し、中東の混乱で

移民、難民が急増しているのを新聞で読むと、再び悪夢が訪れる

のではないかと遠く離れた国から思うばかりです。
ラストのギリシャの真っ青な空、そして美しい海面。それを

見る人々が誰も同じように「綺麗だ」と思える世界は来るの

でしょうか。

 

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マザー!

4

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マザー!

 

「マザー!」

原題:Mother!

監督:ダーレン・アロノフスキー

2017年 アメリカ映画 121分 PG12

キャスト:ジェニファー・ローレンス

     ハビエル・バルデム

     エド・ハリス

     ミシェル・ファイファー

 

郊外の一軒家に暮らす詩人と妻。妻は創作が

進まない夫を支え静かな生活を送っていたが、

ある夜見知らぬ男が訪ねてくるのだった。


<お勧め星>☆☆☆ セリフや登場人物の姿から

宗教色が強い内容と分かり、今一つ入り込めません

でした。


理解不能な登場人物


<ネタバレしています>

 

 


主演はジェニファー・ローレンスとハビエル・バルデム。

 

マザー!

 

体の線がはっきりわかる部屋着姿のジェニファーは、

本当に優しく慈悲深い雰囲気を漂わせています。一方、

夫で詩人のハビエルは「臭いだろ」と本人が映画内で

言う通り、臭そうな濃い顔族のおじさん。

「ノーカントリー」(2007)の無表情な殺し屋、

「007 スカイフォール」(2012)のとことん

悪い奴のイメージがどうしても蘇ってしまい、この

組み合わせは美女と野獣だよなと絶対に感じると思います。
一番最初にこの詩人が光る石を台に置くと、なんという

ことでしょう。すすけた家がみるみるうちに色づいていく

のです。そして妻が目覚める。これが何を意味するのか、

石に魔法がかけられていて実はこの家や妻の存在は

男の幻想なんじゃないのだろうか、と普通は考えますよね。

けれど登場人物のセリフが全くかみ合っていなくて、時折

キリスト教色を感じさせるので、見終わって調べてみると、
やはり登場人物は聖書の中に存在するものそのものらしい。
妻=地球
夫=創造主
最初の訪問者=アダム(創造主が初めて作り出した初めての男)

 

マザー!
 

訪問者の妻=イブ(アダムの肋骨から作られた初めての女)
この訪問者に「結婚していたの?」と疑問を投げかける詩人の

妻のセリフや「出ていけ」と言われても出て行かず訪問者夫妻が

いけない行為をしているのは、エデンの園でリンゴを食べた

ことを意味しているのかしら。
その後訪れる訪問者の息子で兄=カイン(人類最初の殺人を行った)
その弟=アベル(人類最初に殺された)
その間にどんどん増える訪問者、大衆=キリスト教の信者
突然妊娠し、喧騒の中で生まれた赤ちゃん=イエス・キリスト
このような内容を読み、映画のシーンを思い返してもキリスト教

に全く疎いので、そう言われればそうかもね、程度にしか

感じません。ひたすら壁を塗り続ける妻は
「この家は古いけれどこの手で作り直しているの」

と嬉々として語るけれど、多くの人々がどんどん破壊していきます。
またトイレに詰まっていた物はなんだろう?さらにちょくちょく

胸の痛みを覚える妻が口にする黄色の粉の意味するものは?

ああ、わからないことだらけです。

 

マザー!
 

日本で公開中止になったのは、妻への過剰な暴行シーンや赤子の

惨殺、そしてその肉を口にする人々のシーンがあったからだそう

ですが、宗教色の濃い映画だからこそ反発を招くのを恐れたような

気もします。次第に家が破壊され、水があふれ、銃撃、火事、

爆破とそれはエスカレートしていきます。
屋敷=この世
世界の終わりのカウントダウンが始まると人々は混乱し、逃げ惑い、

倒れこむ。妻は絶望し、いっそこの世を破壊してしまおうと決意

するのです。それは純粋で優しさゆえの行為でしょうか。
焼け焦げた妻の胸から取り出したすすけた石を手でこすり再び

台の上に置く。創造主は理想の世界を作りために何度も破壊を

繰り返し続けているのだと思うラストでした。
でもさ、実際の話としてあの詩人はあり得ないものを求めすぎて

いると思うわ。などと考えながら、ハビエルの顔が濃すぎると

実感しつつよく分からないまま二度と見ることのない映画だと

思ってしまいました。

 

 

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アンセイン 狂気の真実

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アンセイン

 

「アンセイン 狂気の真実」

原題:Unsane

監督:スティーブン・ソダーバーグ

2018年 アメリカ映画 98分

キャスト:クレア・フォイ

     ジョシュア・レナード

     ジェイ・フェイロー

     ジュト・テンプル

 

ストーカー被害を受け、故郷を離れ一人暮らしを

始めたソーヤーは不安な状況を打開できず、ある

病院のカウンセリングを受ける。しかしいくつかの

書類にサインした後、彼女は突然措置入院させれて

しまうのだった。


<お勧め星>☆☆☆半 真実は何かより、ヒロインが

置かれ続けた状況が怖いです。


ずっと君を見ていた。


unsaneは英語のinsane「正気とは思えない、狂気」を

もじった造語だそうです。
監督はオーシャンズシリーズ、

「コンテイジョン」(2011)

「マジック・マイク」(2012)など名作を手掛けた

スティーブン・ソダーバーグ。個人の好みで

「マジック・マイク」は大好き!
チャニング・テイタムの男の色気たっぷりの鍛え抜かれた

身体とダンスパフォーマンスに目が釘付けでした。だから

「ヘイトフル・エイト」(2015)ではあんな最後に

まさかのチャニング・テイタム!そしてあっという間に

退場チャニング・テイタム!と唖然茫然。

あの映画は長かったなあ。劇場で座っていてお尻が痛く

なったし、そもそも本題に入るまでが長く、やはり

あちこちでいびきが聞こえていました。
さてこの映画は全編をiPhone7プラスで撮影したというと

いうのが斬新であり、まるで手元にあるスマホで動画を

撮ったかのような印象を受け...ません。そもそも手元に

あるのはiPhone8だし。

固定された映像、望遠、暗視、P.O.Vと様々な手法をフ

ルに活用し、根底に漂うヒロインの不安感を伝えている

かのようです。
ソーヤーは銀行の融資係?として働き、その能力を

認められつつも何やら黒いバックパックを背負った黒髪の

男性の幻影を見るという恐怖と不安から逃れられない状況

にある模様。この胸の内は同僚への冷たい言葉、上司に

対する疑念、母とものすごく久しぶりに電話で会話する姿、

さらには出会い系で知り合った男を部屋に誘ったものの

直前に拒否してしまうという姿で描かれ、どんな辛い体験を
受けたのかとそこを知りたくなります。

そして彼女はハイランド・クリーク病院内のストーカー被害

の会のカウンセリングを受けるわけですが、何かの書類に

サインした後、突然入院させられてしまうのです。

 

アンセイン
 

「ちょっと、わたしは相談に来ただけよ」
怖いのは、こういう病院が実際に存在するということ。内容は

詳しくは書きませんが、閉鎖的な空間に入れられ、周りが

精神疾患の人たちばかりならば、絶対に自分は「普通」と

思い続けられるだろうか。
そして反抗的なソーヤーは拘束されたり、薬を増やされたり

するわけです。さらに病院の職員にあろうことかストーカーの

加害者デビッドがいるではありませんか。これがデビッドなのか

どうかも実は見ている側には確信が持てません。

ダサい眼鏡なのは確かだな。

 

アンセイン
 

「あんたデビッドじゃないの!fff」
数回映る病院の経営者の女性が「自分たちはこういう人たちを

救っていて感謝もされている」と信じ込んでいることも怖いです。

また診察する医師が、すべての患者がみな病を持っており、

患者の言うことに一切耳を貸さない、信用しない。さらに

警察も事件が起こるまでは全く介入できないし、する気もない。

どうしよう。自分がこんな状況に置かれたら..。
画面が乱れ、投薬の影響かソーヤー自身が、自らまともなのか

どうか不安になっていくのを見ていると

「もしかして全てが彼女の妄想?」と思い始めてしまいます。

 

アンセイン
 

アンセイン

 

後半は幾つもの要素が加わり、ちょっととっ散らかった感じが

しましたが、「心の傷」は受けた期間より、それを消し去る

ための時間がずっと長く必要だし、もしかしたら一生引きずる

かもしれないと思ってしまいました。
そうそう、ソーヤーがストーカー被害を受けた時に相談する

探偵?役でマット・デイモンが出ていましたね。

 

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シドニー・ホールの失踪

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シドニーホールの失踪

 

「シドニー・ホールの失踪」

原題:The Vanishing of Sidney Hall

監督:ション・クリステンセン

2017年 アメリカ映画 119分

キャスト:ローガン・ラーマン

     エル・ファニング

     ミシェル・モナハン

     ネイサン・レイン

     プイル・チャンドラー

 

ベストセラー作家のシドニー・ホールは突然

表舞台から姿を消す。そして各地で彼の本が

焼かれる事件が起き、彼自身が犯人ではないかと

疑われるのだった。


<お勧め星>☆☆☆半 ラストシーンの映像が

とても気に入っています。


5月25日に会いましょう


Rotten Tomatoes 13%という評価。しかし他の

レビューサイトでは割と高評価なので、その低い

理由を必死で読んでみましたが、

「謎が多すぎてドラマの要素が面白くない」の

ようなことが書いてありました。ふーん。
映画は確かに、謎が多いです。そもそも舞台が、

高校時代、ベストセラー作家になってから、失踪した後

の3つの分かれており、それらのシーンがランダムに

放り込まれています。一応その舞台ごとに順番に

描かれていたと思うけれど、これがものすごく話を

面白くさせているかと言ったら、そうでもないんだな。

 

シドニーホールの失踪
 

シドニー役は「ウォールフラワー」(2012)で内気な

高校生を演じたローガン・ラーマン。あの映画と同様に今回も

内気でほとんど友人がいないけれど、類まれなる小説を書く

才能を持っている人物です。冒頭の国語の宿題で書いた作文の

内容はいただけないけど。
一方その才能を開花させてベストセラー作家になったものの

妻との離婚話で悩み、さらには髭ボーボーの姿で失踪中の

シドニーがどうつながるのか、もう画面を追うしかないのです。

この目で1つずつ理解していくしかないのです。

 

シドニーホールの失踪
 

シドニーにはブレッドというアメフトの花形選手で父は高名な

判事という幼なじみがいるけれど、彼が捜している、かつて

一緒に埋めた箱の中身は何?またシドニーの母はなぜに彼を

干渉し、束縛し、彼の持ち物を漁るのだろう。母役は

ミシェル・モナハン。ちょっともったいない使われ方です。

彼女がなぜ不幸な顔をしているのかもセリフでの説明のみですね。

 

シドニーホールの失踪

 

そしてシドニーはエル・ファニング演じるメロディと胸キュン

ラブで逃避行するのに、彼が成功した後に不仲になるのはなぜ?

 

シドニーホールの失踪

 

ああ、なぜだらけだわ。まさにとっ散らかった話かも

しれませんね。まだ謎はあって、成功したシドニーは

ちょいちょい幻影を見るんですよ。これは何かの呪いか、

祟りか、心の病か。

高校の教師が彼の小説について

「人の心を操る力がある」

と言って絶賛したけれど、それが後の自分の本を焼く行為と

関係しているのか。あれ、これらの謎はどこかでつながった

だろうか。つながったような気がするけれど、こんなにたくさん

「謎」を描き出す必要はあったのだろうか。
最大の謎「シドニー失踪の原因」がわかった時、椅子から

がたんと転げ落ちそうになります。いや、この理由は発端に

すぎず、小説を書いた時から、彼は極めて危うい、まるで

細い塀の上を歩いているかのような状況にいたんだろうなあ。

そこにいくつもの障害が立ちはだかり、それをよけ続けて

きたんだろうな。
ラストシーンの音楽と映像がとても印象に残り、それだけで

見た甲斐があったと思ってしまいました。

 

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