ワンダー 君は太陽

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JUGEMテーマ:洋画

 

ワンダー

 

「ワンダー 君は太陽」

原題:Wonder

監督:スティーブン・チョボウスキー

2017年 アメリカ映画 113分

キャスト:ジュリア・ロバーツ

     ジェイコブ・トレンブレイ

     オーウェン・ウィルソン

     マディ・パティキンソン

     ダビード・ディグス

 

トリーチャーコリンズ症候群のため幾度となく

手術を繰り返してきた10歳のオギーは、初めて

学校へ通うことになる。しかし支えてくれた家族の

いない学校生活では、周囲のイジメや好奇の目に

晒される日々の連続であり、彼は幾度となく

へこたれそうになるが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ 最も苦手なジャンルの映画

なのですが、すんなり心に入り込み素直に感動できます。


心は未来、顔は過去


「辛いときは楽しいことを空想する」オギーが登校を

開始し、周囲の生徒から避けられ、誰も口をきいてくれない

時に、彼の心の中に浮かぶ言葉は、彼が宇宙飛行士として

人気を博する姿の映像で現れます。オギーのように外見が

普通と異なるということだけでなく、何かのきっかけで

周りから暴言を吐かれたり、いじめられたり、無視され

たりすることは、人生の中で幾度も経験すると思います。
そんな体験が1つもない人がいるのでしょうか。しかし

それを乗り越えた時、辛い時間を過ごしていた自分、

さらにはその前の自分よりもぐっと成長していると感じる

のは、自分の人生から思い返しても断言できるのです。

それが「成長」なのかもしれません。

 

ワンダー
 

オギーはトリーチャーコリンズ症候群という遺伝子の異常に

よる病のため、生まれつき顔の形成が不完全で、27回もの

手術を受けてきたのですが、それでもやはり外見はかなり

特徴的なままなのです。
10歳まで自宅学習をしてきたオギーの父、母、姉は各々

個性にあふれており、決して彼を邪魔者扱いしないし、逆に

彼を軸に家族がまとまってきたようにも感じられます。
映画の視点はオギー、姉ヴィア、オギーの同級生ジャック、

ヴィアの親友ミランダの順に描かれ、彼、彼女たちが

どのように考えて今を生きているのかが順にわかってくるのです。

オギー役は「ルーム」(2015)の息子役を演じた

ジェイコブ・トレンブレイ。12歳のわりにはまだまだ小柄で

あり、映画の設定の5年生としてもかなり小さく感じます。
ところでこの映画の監督スティーブン・チョボウスキーは

2013年に「ウォールフラワー」という映画を製作しており、

これは彼が書いた青春小説の映画化であり、スクールカースト

最下層にいる内気な高校生チャーリーの姿を涙と笑いを交えて

楽しく描いていました。いや衝撃的な内容もあったか。

日本での2012年映画「桐島、部活やめるってよ」を彷彿と

させる内容でしたが、前者には恋愛があり、後者にはなく、
映画部前田の姿を学校のスター的存在桐島が突然バレー部を

辞めると言った事件から波及する生徒内の混乱の中で描いていて

全く異なるものでした。エンドロールに流れる自主製作映画を

本当に作っていたらもっと楽しかったのに、などと今さらながら

考えています。2007年映画「グラインドハウス」で使われた

偽予告編「マチェーテ」がダニー・トレホ主演で2010年に

実際に公開されていて結構な評価を得ていたので、ぜひとも

するべきだったよなあ。

 

ワンダー
 

さて、家族の胸の内、特にヴィアの心を知ると、家族の中でも

複雑な思いを持っていることがわかります。とても優しくて、

弟を心の底から愛しているのに、やはり母がオギー中心に生活

しているのが辛いのです。自分の方も少しは見てほしい。

私だって辛いことがあるのを知ってほしい。
また映画の中盤でオギーの唯一の友人となるジャックや

ヴィアと親友だったのに急に冷たくなったミランダの心は映像で

見ると、あの表情にそんなことが隠されていたのかと驚くばかり

です。

 

ワンダー

 

ただ、当然のことながら嫌な奴は存在し、金持ちで大人の前

ではいい子を演じるジュリアンがそれなのです。これさ、

映画では優れた校長先生や教員がいたからわかったけれど、

普通は見抜けないと思う。

 

ワンダー
 

終盤に校長先生が遂に彼の両親を呼び出すのですが、両親は

一切認めないし、逆に「息子はそんなことはしない。家は

多額の寄付金をしている」(ここでこの学校は多分私立だと知る)

「教育員会に知人がいる」と開き直り脅すような言葉を投げ

かけるわけです。その時の校長先生の言葉が重いです。
「オギーは見た目を変えられない。だから見る側が変わらないと」
それに対する母親の言葉も事実であることは確か。
「世間は甘くない。傷つけ合うものよ」
それでもジュリアンはまだ10歳であり、自分のしたことが

悪かったと素直に反省できる年頃なのです。これを見ると親の

エゴがその後の子供の人格形成に大きく影響を及ぼすことを

実感します。誉めて認めて「いい子だよ」と言うだけが正しい

わけではなく、悪いことは悪い、と教え込むことも極めて重要な

ことで、特に第三者からそれを指摘されると、頑なに我が子愛を

振りかざすのは、決して良いことではないと思います。

それはただの自己満足に過ぎない。
この映画に対して実際にこの病に苦しむ人々からは、

「過酷な現実を無視している」

「感動ポルノだ」という批判も上がったそうですが、この病を

映画で見て初めて知る人も多いわけで、外見だけで人を判断する

のではなく、内面の価値を理解する努力を常にするべき、という

当たり前のことを確認できる内容だったと思います。

わたしは「感動ポルノ」とは思いません。

 

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アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル

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アイ、トーニャ

 

「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」

原題:I,Tonya

監督:クレイグ・ギレスピー

2017年 アメリカ映画 120分 PG12

キャスト:マーゴット・ロビー

     セバスチャン・スタン

     アリソン・ジャネイ

     ジュリアンヌ・ニコルソン

     ポール・ウォルター・ハウザー

 

貧しい家庭に育ったトーニャは母ラヴォナの暴力や

暴言に耐えながらスケートの練習に打ち込む。しかし

若くして結婚した夫ジェフからも暴力を受け、試合

では審査員の評価が低く、彼女は不満を募らせるが、

1991年の大会でトリプルアクセルに成功するの

だった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 当時大ニュースだった事件の

裏側を知るとトーニャに対する思いが全く変わります。


アメリカには敵が必要


トーニャ・ハーディングといえばすぐに思い浮かぶのが、

1994年のナンシー・ケリガン襲撃事件であり、

イメージとしてはトーニャ=悪、ナンシー=善という

ものが出来上がっていました。
またトーニャ・ハーディングは1991年にアメリカ女子

フィギュアスケート界で初めてトリプルアクセルを成功

させています。トリプルアクセルといえば浅田真央さん?

いやいや、やはり世界で初めてトリプルアクセルを成功

させた伊藤みどりさんを真っ先に思い出します。

マツコ・デラックスが以前テレビ番組で語った通り、綺麗な

衣装をひらひらさせて愛嬌を振りまきながら美しさを競う大会
だった女子フィギュアスケートを一変させた人物なのです。

伊藤みどりさんはアスリート!

最近彼女の当時の競技の映像を見る機会があったのですが、

ジャンプがものすごく高いです。あれなら5回転くらい
跳べる...ような気がしました。これは本当に日本人の誇るべき

人物だと思うんです。そこから思い返すと1972年の

札幌オリンピックで、ジャネット・リンが見事にしりもちを

ついたのに芸術点では満点をもらえ、そして銅メダルを獲得

したのも、その愛くるしい表情が審査員の心を揺さぶったん

だろうな。いや本当に可愛いかったです。

 

ジャネット
 

映画では、当時を回想するトーニャ、母ラヴォナ、元夫ジェフ、

ジェフの友人ショーンと共に、その時代が再現されていきます。

労働者階級かつ父親が家を出た貧しい家庭のトーニャは、

下品で暴力的かつ強権をふるう母ラヴォナの言う通りに行動

します。それでも殴られ、暴言を吐かれ、何一つ褒めて

もらえません。4才のトーニャをスケートリンクに連れて

行きコーチに無理やり押し付けるときのラヴォナの柄の悪さは、

本当にこの人本人が演じているのかと思うほどです。

 

アイ、トーニャ

 

まあ、親が親なら子も子とはよく言ったもので、トーニャは

ろくでもない男ジェフと交際開始するわけです。(ラヴォナは
5回も結婚離婚を繰り返している)

 

アイ、トーニャ

 

最初優しかったジェフもすぐに暴力をふるう男に変身。

DV男の典型例のように、暴力をふるった後は

「愛している。許してくれ」

と優しくなるのでトーニャは離れられないわけです。

暴力母から逃げ出して幸せになるはずが、ここでも暴力に

さらされる。トーニャは誰かに「愛されたかった」のです。

序盤に登場した、ラヴォナの夫がトーニャの実父でしょうか。

彼について行こうと泣き叫ぶ彼女の顔が忘れられません。

それでもスケートの才能に満ちていた彼女はひたすら練習に

打ち込むのですが、どれだけ良い演技をしても点数が

上がりません。「芸術点」が低いんです。最近は技の

「出来栄え点」が採用されていてジャッジの主観が極力

出ないようになっているとのことですが、素人が見て

「あれ?この人全部クリアしたのに、なぜにこんなに点数が

上がらないの?」と思うことが多々あります。これが当時は
「芸術点」という漠然としたものだったのですから、

審査員に詰め寄り「なぜなのか」と尋ねるトーニャの

気持ちもわかるのです。答えは

「完ぺきなアメリカの家族のイメージがない」。
美しいものを美しいと思う気持ちは人それぞれだけれど、

そこに豊かさを求められたら、結局は限られた人々しか

参加できない競技になってしまうのではないでしょうか。
母と絶縁し、ジェフと結婚したものの相変わらず暴力に

耐える日々が続くのです。伊藤みどりさんが銀メダルを

獲得したアルベールビル五輪では4位に終わり、スポンサーは

つかず、ボンビーでウェイトレスをするしかありません。

ラヴォナもウェイトレスをずっと続けていたから貧乏の

連鎖は断ち切れないんだろうなと絶望的な気分になります。
フィギュアスケート=お金がかかるスポーツというのは

どこに国でも同じなんですね。衣装、靴、リンク使用代、

コーチング料、遠征費...一人前になるまでに家が一軒建つ

というのはプロスケーターの本田武史さんの言葉。
と考えるとスポンサーのつかなかったトーニャの苦労と焦りも

理解できるのです。ここで今さらながらに気づくのは、

トーニャ=悪という考えが変わっていったこと。それは当時の

マスコミの報道を鵜呑みにしていたからなのですね。

向かって右が本人です。

 

アイ、トーニャ
 

これ以降は誰が真実を語っているのかは判断できません。

トーニャに届いた脅迫状、そしてナンシー・ケリガン

殴打事件発生。トーニャの周りにいる既に別れたものの

付きまとうDV男ジェフ、勝手にトーニャのボディガードと

語る虚言癖のあるショーン、その仲間などみんなアホ過ぎて

あきれ返ります。それゆえにトーニャが愛しく感じられる

のです。いや相変わらず柄は悪いですよ。
全米スケート協会から永久追放されたと描かれていた映画の

内容とは異なり、トーニャは、その後プロスケーターとして

活躍するも、暴力事件を起こし、プロボクサー、総合格闘家

へと転身。その激動の人生も今は嵐が去った後の静けさを

取り戻したかのように、ワシントン州で再婚し、一児を

もうけて穏やかに暮らしているといいます。彼女にとって

どうしても欲しかった「愛されること」を手に入れた
のだと思いたいなあ。
映画内でナンシー・ケリガン事件を追うマスコミが急に

ジェフの家の前から消えたのは、1994年6月、

O・J・シンプソン事件が起きたことを知ると、アメリカには

「敵」が必要なのだと語ったトーニャの言葉にただ頷く

のみでした。

 

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ボブという名の猫

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ボブという名の猫

 

「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」

原題:A Street Cat Named Bob

監督:ロジャー・スポティスウッド

2016年 イギリス映画 103分

キャスト:ルーク・トレッダウェイ

     ジョアンヌ・フロガット

     アンソニー・ヘッド

     キャロライン・グッドオール

 

ドラッグ中毒から家族に見放され、ストリート

ミュージシャンとして路上生活を送るジェームズ。

彼はある時一匹の野良猫と出会う。ボブと名付けた

その猫と共に路上で歌うと、たちまち人気者になるの

だった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 人間は弱い存在だけれど、

何かの支えで強く変われるのだと実感します。


セカンドチャンスは逃すな、あきらめるな


「茶トラは意志が強く、一生そばを離れない」いや、

猫はみんな意志が強く、気ままで、人見知りで、臆病で..

でもないか。小さい時から何匹もの猫を飼ってきましたが、

みながそれぞれ性格が異なり、それだから楽しいものです。

誰にでもすぐに懐く子、あらゆる物を破壊していく子、

どんな扉も開けることができる子、猫なのに高い所が

苦手な子、家族以外が訪れると姿を一切見せない子、語り

始めると一晩でも足りません。

 

ボブという名の猫
 

主人公のジェームズは、ホームレスでストリート

ミュージシャンをしているものの、その稼ぎはほとんど

なく、またドラッグを断ち切ることに何度も失敗しています。

そこには彼を支えるのが、ソーシャルワーカー、ヴァル

だけであり、彼女も月に数回の面談とドラッグを断つために

メタドンの服用の確認をするのみです。「更生プログラム」

の存在や街中に路上生活者がいたり、麻薬の売人が登場する

のを見ると、イギリスにおける社会問題も垣間見えます。
彼がもっともラッキーだったのは、住居の提供があったことで

あり、そこへ一匹の野良猫が現れたことなのです。そもそも

家がなければ、猫と出会うこともなく、お互いにホームレス

同士、ただすれ違って行くだけだったでしょう。
とはいえ、その幸運をしっかり活用して社会復帰できるか

どうかは、やはり本人次第なのです。
映画では視点が、ジェームズ、ボブ(猫)、そして彼らを映す

ものと3つあり、特に興味深いのがボブ視点です。トムと

ジェリーのように、ジェームズの家の壁の穴から登場する

ネズミを追うボブのプクプクした手が何ともいえません。

これは猫好きにはたまらないと思います。

 

ボブという名の猫
 

そして今までジェームズを避けて通っていた街の人々が、

ボブを連れて出歩き始めると、途端に優しくなり、歌を

歌えば観客がどんどん集まってくるのです。ロンドンバスの

2階の一番前の窓から外を眺めるボブの好奇心に満ちた表情は

必見ですね。そこから見えるロンドンの名所もこれまた必見

です。

 

ボブという名の猫

 

それからジェームズのアパートにたまたま住んでいるベティの

存在も忘れてはいけません。彼女がジェームズを完ぺきに

サポートするのではなく、困っている時に少しだけ手を差し

伸べるそのスタンスも彼の自立に大きな影響を与えたと思って

います。彼女が兄に抱いていた思いを彼が更生することで
達成感に変えたような気もするのです。したがってそれは

ベティにとっても成長したということになります。
ボブは実際のボブが演じたそうで、本当に人間に慣れた賢い

猫でした。また原作者自身がラストのサイン会に現れ、

ジェームズに「僕と同じだ」というセリフを言うのもお茶目です。
幾つもの障害を乗り越え、さらには実父との長年の確執が

消える瞬間は、さすがに目頭が熱くなります。それもこれも

ボブがジェームズを支えてくれたからだと思うと、彼らの

二人三脚が永遠に続くといいなと心から思うのです。

 

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ブランカとギター弾き

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ブランカとギター弾き

 

「ブランカとギター弾き」

原題:Blanka

監督:長谷川宏紀

2015年 イタリア映画 75分

キャスト:サイデル・ガブデロ

     ピーター・ミラリ

     ジョマル・ビスヨ

     レイモンド・カマチョ

 

フィリピンのスラム街のストリートチルドレンで

あるブランカは、段ボールハウスに一人で暮らし、

盗みを働いて生活している。そんな彼女は盲目の

ギター弾きピーターと出会うのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 血縁はなくとも心の底から

信じ合える相手との絆は本当に強く固いと感じます。


鶏は空を飛ぶ


多くの人々が行きかうフィリピンのスラム街には、

路上に眠っている少年少女があちこちにいるし、家と

呼べるものがあったとしても、ボロボロ。その光景

からは食べ物のにおいと人の汗の臭いが混じり合い、

今にも画面から漂ってきそうな雰囲気を感じます。

 

ブランカとギター弾き
 

そんな街で、旅行者から金を奪うグループの一員である

ブランカは、常に何かを渇望し、危険を察知するかのような

ギラギラと輝く野生の瞳をしています。彼女自身の口から

後に語られる身の上は、生まれた時からいない父親と、

いつも酒を飲んでいて男と逃げてしまった母親を持つという

絶望的なものなのですが、このスラム街にはそんな子供たちは

幾らでもいるわけで、その悲惨さを打ち消すほどのエネルギーを

彼女たちから感じます。それは負のエネルギーでもあるん

ですけどね。
そして盲目のギター弾きピーターのギターの音色に聞き入り、

1度目は金を入れたものの、次はそこから金を奪おうとする

ブランカ。この時ピーターのかける言葉がいいんです。
「この前は金をくれたのに今度は盗むのかい?朝飯代だけ

残しておくれ」
このような優しい言葉を彼女は生まれた時からかけてもらった

ことがあったのしょうか。有名な女性がホームレスの子供を

養子にしているニュースを見て、彼女は

「母親を3万ペソで買う」ということを思いつくのです。

「子どもを買う大人がいるのに大人を買う子どもがなぜ

いけないのか」幼さゆえの純粋さが、このような突拍子も

ない行動へと彼女をかきたてたのだと思う。3万ペソと

いう金額は、たまたま一緒にテレビを見ていた大人が適当に

答えた金額だし、そもそも母親が欲しいのではなく、普通の

暮らし、つまり学校に行ったり、一緒に遊びに行ったり、

買い物に出かけられるような環境が欲しかったに過ぎない

のかもしれません。映画の中盤でピーターと遊園地で遊ぶ

ブランカの喜びに満ちた顔がそれを物語ります。

このシーンは本当に幸せにあふれ、二人の笑顔が目に焼き

付いています。

 

ブランカとギター弾き
 

ピーターのギターに合わせて歌を歌うことになったブランカが、

最初はとてもか細い声なのに、次第に自信を持っていく姿を

見ていると、彼女の底知れぬエネルギーを感じます。しかし

そんな生活も短く、結局路上生活に逆戻りするのです。その時、

再びブランカは野生の瞳に戻り、ラウル、セバスチャンと共に

泥棒を重ねていきます。

 

ブランカとギター弾き

 

ラウルは13,4才くらいかな。ブランカが同じ年齢であった

ならば、きっと「夢」など抱くこともなく、彼のようにここで

生き続けることしか考えなかったと思う。逆にブランカよりも

年下らしいセバスチャンは、彼女と同じで「家族」が欲しい

わけです。その幼さがまだ純粋な部分を保ち続けられる理由

でもあるかもしれません。
「見えるものにこだわりすぎる」と語るピーターは、「目の

見えない者ばかりなら戦争は起きない」と語ります。おそらくは

ブランカのようにストリートチルドレンであったピーターが

どうして優しく穏やかなのかは、そこに起因しているので

しょうか。終盤、ブランカを襲う危険は、実際にそういう場所に

入り込んでしまった少女がいくらでも存在することを物語ります。

そしてそれに手を貸すラウルのような少年もいれば、セバスチャン

のように、そこで踏みとどまり人間としての誇りを保つ者も

いるのでしょう。幼いというだけでは片づけられないと思う。
ラストに見られる3人の笑顔は、過酷な状況でも、深くつながり

合った心の強さを感じ、未来への希望を物語るものでした。

 

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ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

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ペンタゴン・ペーパーズ

 

「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」

原題:The Post

監督:スティーブン・スピルバーグ

2017年 アメリカ映画 116分

キャスト:メリル・ストリープ

     トム・ハンクス

     サラ・ポールソン

     ボブ・オデンカーク

     トレイシー・レッツ

 

ベトナム戦争が泥沼化し、反戦気運の高まる

1971年のニクソン政権下のアメリカ。

ニューヨーク・タイムズ紙がペンタゴン・ペーパーズ

の存在を暴露する。それは政府から差し止め要請を

受けるが、同じ頃ワシントン・ポスト紙のデスクに

謎の女性からその文書の一部が持ち込まれるのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ まさにタイムリーなそして骨太な

映画です。


報道が仕えるのは国民


ウォーターゲート事件と聞くと、時のニクソン大統領の

再選を完全に阻み辞任へと追い込んだ大事件という記憶

だけしかないのですが、この映画のラストには、その

ウォーターゲート事件の始まりが映ります。ニクソンの

再選を望む共和党運動員が、ワシントンのウォーター

ゲートビル内にある民主党本部に盗聴器を仕掛けようと

した事件で、これを報道したのもワシントン・ポスト紙

だったとのこと。インターネットが普及していなかった

時代はハッキングもなく、このような方法で相手陣営の

動向を探っていたのだと思うと、時代の変遷がとても早く

感じられます。
このワシントン・ポスト紙は、メリル・ストリープ演じる

キャサリンの父親が社主だった会社で、後を継いだ

夫フィリップが自殺を遂げたため、自らの意志ではなく、

家族経営ということでそのまま社主になったキャサリンの

自信のない姿を彼女がとてもうまく演じています。

 

ペンタゴン・ペーパーズ

 

映画の前半では、政財界の大物と語り合うものの、政治の

話になるとキャサリンも含めて女性は別の部屋に移動し、

料理やファッション、ゴシップなどの話題で盛り上がります。

それが楽しいかどうかは別として、この時代、女性が政治に

口出しすることが極めて少なかった時代であることがわかる

のです。古き良きアメリカは、夫は外で働き、妻は家で子育て

と料理をして家庭を守っていた...なんて映画をいくつも見て

きました。きっと今でもそう思っているアメリカ人がいるん

だろうな。ましてや日本ではどれだけの数の人間がそう思って

いるのかわからない。気の遠くなるほど高いガラスの天井が

上に張り巡らされているんだろうな。

(ヒラリーのあのスピーチには泣けちゃったな。)
キャサリンは、株式公開にあたっても周りの役員に全て決定を

委ねるわけで、それを発表するときのスピーチの稚拙さが、

彼女の自立していない姿を表しているような気がしました。

映画の終盤に登場する彼女の娘の方がずっと意志が強そうに

感じられます。

 

ペンタゴン・ペーパーズ
 

報道の現場は、当然のことながら男性がほとんどであり、

通信手段は固定電話、秘密の内容は公衆電話という1970年代

の姿をリアルに描いています。コインを入れながらメモを取り

続けるというかなり困難な状況で仕事をこなしていくのです。
そして最高機密文書であるペンタゴン・ペーパーズは、

国務長官マクナマラの指示でまとめたもので、内容はベトナム

戦争へのアメリカの介入状況や当時の戦況が如実に記されて

いたわけで、アメリカの誤った決定の連続が4人の大統領の下で

行われ、戦争が無意味に続き、多くの兵士の命が奪われていた

ことを示すものだったのです。こんなものを世の中に出しちゃ

困る。6年も前に勝てないと分かっていた戦争を今も続けている

政権への大打撃にほかなりません。だから、

ニューヨーク・タイムズの記事を差し止めることを司法に訴え、

さらには情報提供者を捜し出そうとします。そんな時に

ワシントン・ポスト紙の編集長ブラッドリーは、新聞としても

使命を果たすために後追い記事を書こうと考えるわけです。それ

にはその情報の詳細が必要。同僚のバグディキアンに情報提供者
との接触を依頼。彼の行動はドキドキの連続です。公衆電話で

接触を図ると、電話を変えろと言われ、違う電話機に変える。

するとメモを取っているので小銭をぶちまけてしまう。それを

拾いながら言われた番号を復唱して再び電話をする..。
このように苦労して入手した文書は最高機密という個所がカット

されたため、ページがバラバラのものが4000枚以上あり、

数人が読み上げながらその文書の順番を整えていきます。大事な

文書は今でも紙で残すといけれど、ページをバラバラにしたら、

事件や登場する政府高官の名前などで組み合わせていく必要があるし、

間違っても廃棄なんてしちゃいけないよなあ。
しかしこの記事を新聞に載せるか否かでまた新聞社の幹部と現場が

対立するのです。投資家や銀行は危ない橋は渡りたくないし、

政権に歯向かうことでこの地方紙が訴えられたら、社の存続だけ

でなく、記者や社主が投獄される可能性も大きいのです。映画内で

発せられたのは「共謀罪」「法廷侮辱罪」「反逆罪」だったと思う。

 

ペンタゴン・ペーパーズ

 

最後の決定を迫られたキャサリンは、ゆっくりとそして数回

「やりましょう」
と答えるのです。この「間」が絶妙で、ものすごく深く考え、

あらゆる悪いことを想定したうえでの言葉にしては、

「寝る前に一言」的な雰囲気で発せられるのが対照的に思えます。
「私の会社」の「新聞の使命」を果たすために何をなすべきか。
政権、特定個人への疑問や批判を国家への反逆と考える大統領は

「私が国家」と言っているようなものだと述べる情報源の

エルズバーグの言葉が頭に叩き込んでおきたいです。この時から

約半世紀経ち、それでも米国憲法修正第1条で保障された表現や

宗教の自由を守っているアメリカの報道機関の姿勢は素晴らしい

と思います。それほど憲法は重い意味を持つのです。

 

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ソウルガールズ

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ソウルガールズ

 

「ソウルガールズ」

原題:The Sapphires

監督:ウェイン・ブレア

2012年 オーストラリア映画 98分

キャスト:クリス・オダウド

     デボラ・メイルマン

     ジェシカ・マーボイ

     シャリ・セベンズ

 

1960年代末、アボリジニとして差別を受けて

いた3人の姉妹は、カントリーミュージックの

グループを組み、コンテストに参加するがあえなく

落選。しかしその歌を聴いたデイヴは、彼女たちに

ソウルミュージックを歌わせて、ベトナムでの

アメリカ軍慰問の仕事につかせようと考えるが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ ストーリーはすこしほころびも

あるけれど、歌が素晴らしい。とにかく元気になれる

映画です。


アボリジニへの差別


先住民族への差別は、世界各国に存在し、最近見た

「サーミの血」(2016)ではスウェーデンにおける

それを描いていました。
オーストラリアではアボリジニが存在し、映画の冒頭で

1967年まで市民権がなく、動植物扱いだったと文字が

流れると、独自の文化を持ちコミュニティを形成してきた

民族へ、後から入植した人々の非道な扱いに憤りを感じます。

アボリジニは1968年まで特定の居住区住まいを強いられ、

70年代まで続いた「白人同化政策」で、肌の白い

アボリジニの子供を、政府が合法的に拉致し、白人家庭で
育てる行為を続けていたと知ると、ある意味「民族浄化」

だったのではないかと思ってしまう。
ただ映画ではこの辺りは、それほど深く重く描かれず、

主なストーリーは、アボリジニ出身の4人の女性がいかに

してベトナムで見事な歌声を聴かせるまでになったかを、

幾つかの恋愛も絡めて映し出されていくのです。
これはほんの数年間のことであり、実在した彼女たちのグループ

「ザ・サファイアズ」がメジャーデビューするわけでもなく、

その後故郷でアボリジニのために様々な活動を続けている

期間の方が長いのです。

長女ゲイルは、鋼の心臓を持ち、すべてにおいて決定権が

ある。次女シンシアは陽気で惚れっぽい。三女ジュリーは

抜群の歌唱力を誇るシングルマザー。そして従妹のケイは、

例の政策で「白人」として育てられ、「白人」として暮らして

いるのです。このケイがなぜ3人に加わったのかそこの

心境の変化は少しわかりづらいかな。

 

ソウルガールズ
 

3姉妹で挑戦したコンテストに落選し、(ウルトラ下手

くそな白人の女性が優勝)そこで司会をしていた白人の

デイヴに「ソウルミュージック」を歌うことを勧められる

のです。

 

ソウルガールズ

 

彼女たちの歌は「カントリーミュージック」であり、どちらも

「喪失」を歌っているけれど、カントリーミュージックは

「喪失から懐かしい故郷に戻る」ことを歌い、

ソウルミュージックは「喪失からその失ったものを取り戻す」

ことを歌っているとデイヴは言ういます。それは彼のソウル

好きの思いをそのまま語ったのだと思うけれど、なんだか納得。

 

ソウルガールズ

 

そしてカイも加わり「サファイアズ」としてベトナム戦争中の

アメリカ軍慰問の仕事に就くわけですが、このベトナムでの

シーンも歌のシーンは素晴らしいけれど、戦争中であることの

恐怖は終盤に少し感じるくらいで、かなり表面的にしか描かれ

ません。ただベトナムから逃げるために乗ったヘリコプターで

白人の兵士が、カイの恋人で黒人兵ロビーに傷を触られると

「その汚い黒い手で触るな!」と怒鳴るわけです。そういう

差別が映画のあちこちに挟み込まれ、その都度胸が痛くなるの

です。しかしやはりそのシーンを引きずらず、彼女たちの

生き生きした姿を見せ続けるのは、この映画のテーマが
差別への批判ではなく、夢に向かって突き進んだ女性たちの

姿を見てほしいということではないでしょうか。
4人の女性が自分たちの民族に誇りを持ち、その思いを同じ

民族の人々に伝えていく姿はとにかく爽快でした。映画内で

歌われていた歌はどれもすてきで、サントラが欲しくなります。

 

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犬ヶ島

3

JUGEMテーマ:洋画

 

犬ヶ島

 

「犬ヶ島」

原題:Isle of Dogs

監督:ウェス・アンダーソン

2018年 アメリカ映画 101分

声:コーユー・ランキン

  リーブ・シュレイバー

  ブライアン・クランストン

  エドワード・ノートン

  ボブ・バラバン

 

ドッグ病が蔓延したメガ埼市では、市長が全ての

犬を犬ヶ島へ追放すると宣言し、自身の養子アタル

の警護犬スポッツが第一号としてゴミ島に追放される。
ゴミの中で生き延びていた犬たちの前に、ある日

アタルの乗った小型飛行機が降り立つのだった...。


<お勧め星>☆☆☆☆

犬好きかつウェス・アンダーソンの世界が大好きな人

にはたまらない映画です。映像も音楽も楽しい。


命には微妙なバランスがある


ウェス・アンダーソン監督の映画は

「ダージリン急行」(2007)、

「ムーンライズ・キングダム」(2012)、

「グランド・ブタペストホテル」(2013)と

鑑賞しましたが、どれもまるでおとぎ話のような世界観

と独特の色調を見せつつ、その中に深いストーリーを

忍ばせていました。笑いの中に悲しみや恐怖が見え隠れ

する、そんな感じです。
この「犬ヶ島」に登場する人間や犬はすべて1つ1つ

手作りで、900体もの人形を作ったとのこと。あの

ふさふさと風になびく犬の毛は1本1本植えて行った

のですね。それを動いている姿に見せるために気が遠く

なるほどのカットを撮影したんだろうな..などと少しだけ

考えたものの、そんなことよりストーリーがわくわく

するんです。犬好きにとっては冒頭からぷんすかする

内容で、メガ埼市の小林市長が反犬アレルギーを煽り、

犬をゴミ島へ追放すると宣言します。この理由はドッグ病

という謎の病気が蔓延し、犬たちがさまざまな症状を表し、

人間に危害を加えるものも出てきたためで、科学党の

渡辺教授が「有効な血清の存在」を主張しても一向に

聞き入れられません。恐怖を煽ることは権力を一点に

集中するのには最も有効な手段なのかもしれませんね。

 

犬ヶ島
 

そして追放される犬第一号は、市長の養子アタルの警護犬

スポットなのです。青い瞳を見開いたまま、ケージはツーっと

移動して島へ運ばれ、ドサッとゴミの中に落とされます。

相変わらず見開いたままの青い瞳がその絶望感を物語るの

です。

 

犬ヶ島
 

そして6か月後、チーフ、レックス、キング、デューク、

ボスという5匹の犬がかつての名札をつけたまま登場。あ、

チーフは野良犬なので名札はなしか。時々ノミだかダニが

毛の間から動き回るのが見えるほどリアリティに富んでいます。
その未来のないゴミ島に、突然1機の小型飛行機が降り立ち

ます。それに乗っていたのがスポッツの飼い主のアタルで、

彼は「スポッツを捜す」それだけの思いで養父の言いつけに

背いて訪れたのです。

 

犬ヶ島
 

実は、というか当然のことながらドッグ病の蔓延にはからくり

があり、自分の権力を盤石にするために、病気を利用、

捕獲員業者、犬型兵器業者と裏でつながっている様が、

こっそり描かれ、やーね、まったく。こんなことで命を粗末に

扱うなんて人間の風上にも置けないわと人間として思って

しまう。一方で市長に反対する愛犬派団体も当然存在する

けれど、「敵」とみなした相手を徹底的に攻撃する手法
に対抗するにはあまりにも微力すぎるのです。

 

犬ヶ島
 

映画内で高校の留学生のトレイシーが真実を追求しようと

仲間と戦う姿を見ると、若い力の強さも感じます。真実を

追求しようと思考することが大事なんですよね。見たままを

信じ込んだり、自分の信じたいものだけに接することの

恐ろしさをもっと知らないといけないし、想像力を働かせる

努力を常にしないといけないと思う。
犬ヶ島にいる犬たちはほぼ元飼い犬であり、人間のエゴで

様々な虐待を加えられたものもいるわけです。力の弱い者に

力を持った者が好き放題していいはずがない。
中盤に登場するナツメグという元ショードッグはとても

綺麗でやけに声が色っぽいと思ったら、

スカーレット・ヨハンソンが担当していました。ナツメグと

恋仲になるチーフとスポッツの意外なつながりなどとても

よくできたストーリーだし、スポッツとチーフがそれを

知ったときに流す涙(犬は涙を流すのかなあ)がまことに

リアルで胸がきゅっと痛くなります。そしてラストを迎えた時、

こんな世界になったらいいなあと思うばかりでした。そうそう

日本が舞台なので相撲や和太鼓、能などが見られ、言語も

日本語と英語が入り乱れているものの全く違和感がなく、

犬語を混ぜても(あるのか?出せるのか?)理解できるような

気がしてしまいました。

 

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グレイテスト・ショーマン

3

JUGEMテーマ:洋画

 

グレイテストショーマン

 

「グレイテスト・ショーマン」

原題:The Greatest Showman

監督:マイケル・グレイシー

2017年 アメリカ映画 105分

キャスト:ヒュー・ジャックマン

     ザック・エフロン

     ミシェル・ウィリアムズ

     レベッカ・ファーガソン

     ゼンデイヤ

 

仕立て屋の息子に生まれたフィニアスは父を亡くした

後に、幼馴染の令嬢チャリティと駆け落ち同然に結婚

する。彼は妻子を幸せにするため、「ユニークな人間

を集めたショー」を計画し、人気を博するが..。


<お勧め星>☆☆☆☆ 体の奥からエネルギーが沸き

起こる気分になれる映画です。


愛を欲張らないで


上流の美徳と、冒険による笑顔が対照的に映るシーンが

見られるのですが、縁もゆかりもない上流階級の方々は、

きっと大口を開けて笑うようなこともないのだろうと勝手に

想像しています。ただ「エンターテインメント」に関して

言うと、わたしの身内でも「お笑い番組を見て笑うのは

くだらない」と考える人がおり、「ええ〜!こんな楽しい

のにくだらないの一言ですませるのか」と憤慨してしまい

ます。この点については個人の好みであり、また「笑い」の

ツボというのはそれこそ一人一人異なると思うので敢えて
気にしないようにしています。

「ラ・ラ・ランド」(2016)はストーリーとしては

単純な男女の出会いと恋愛とその後の人生を夢物語のように

描いており、映画内の音楽はどれも素晴らしく、ついつい

ハミングできるものばかりでした。「Another Day of Sun」

は気持ちを高揚させるために今もしばしば聴いています。
この映画では主役のフィニアスを演じるヒュー・ジャックマンの

歌声の素晴らしさは「レ・ミゼラブル」(2012)と同様に

太く力強く響き渡ります。

 

グレイテストショーマン

 

と同時に「ペーパーボーイ 真夏の引力」(2012)
のザック・エフロンが演じるフィリップも負けず劣らず美声を

わたしの耳に届けてくれました。ルックスも好み。
ストーリーの本筋は、フィニアスが、妻子のために借金をして

「アメリカ博物館」から「ユニークな人を集めショーを開く」と

いう事業に変更し、人々の人気を集めながらも、マスコミや

レイシストや上流階級の人々から批判され、挫折し、それでも

成功し、さらに何もかも無くし..というもので、その中に

フィリップとアフリカ系女性アンとの恋物語が挟みこまれた感じ

です。「フリークス」という1932年の映画がイギリスでは

30年間公開禁止になっていたように、やはりこの映画の中に

登場する「ユニークな人々」というのはフィニアスの事業、つまり

金儲けのための人集めに使われているように思えます。それを

真っ向から否定し、自由と平等を声高に語るフィニアスに対しても

少し違和感を感じてしまうことは確かです。ただこの映画を

大々的に公開し、「ユニークな人々」について、それが個性で

あると思わせてくれるのは、アメリカの良い部分の象徴であり、

その個性を受け入れる寛容さを持ち合わせた人々が多くいることは、
ぜひとも強調したい部分でもあります。そのテーマを避けて

作り出す映画こそ表面的な内容なものに終わってしまうとも

感じてしまうのです。

 

グレイテストショーマン
 

フィニアスが作ったサーカスは、庶民には人気を博するけれど、

芸術的には受け入れられず、新聞でも「ペテン師」と酷評されて

しまいます。それでも前を向くパワーは、彼が妻子を幸せにしたい

という強いエネルギーで支えられているのです。フィニアスの

妻チャリティ役のミシェル・ウィリアムズは
「マリリン 7日間の恋」(2011)「フランス組曲」(2014)

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2015)と個人的には

好きな映画ばかりに出演していますが、アカデミー賞獲得は
まだしていないようです。

 

グレイテストショーマン

 

「フランス組曲」はこの中でも最もお勧め映画です。
そしてフィリアスはさらなる上を目指し、オペラ歌手

ジェニー・リンドの興行を手掛けることになるのですが、

それは自分が最初に作り上げたショーの仲間を軽んじることに

つながり、始めから彼に向けられていた批判が蓄積され続けて

いたことすら忘れてしまっていたという大きな落とし穴に

はまる結果を向かえるわけです。

 

グレイテストショーマン

 

まさに成功と挫折。フィリアスはジェニーに去られ、借金を抱え、

劇場は焼失、フィリップは、ニューヨーク社交界だけでなく

両親からも拒否されてしまう。そこに何が残っていたか。残って

いたものの価値の大きさに気づければ、またそこから這い

上がればいいのです。家族、仲間、友人、恋人との愛、信頼、

友情は、苦しみを半減させ、喜びを倍増させる、喜びは共有する

者が多いほどその大きさが無限大に広がると思っています。
オープニングの「THE GREATESTSHOW」では足が自然とステップ

を踏み出すこと間違いなしです。

 

 

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シェイプ・オブ・ウォーター

4

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シェイプオブウォーター

 

「シェイプ・オブ・ウォーター」

原題:The Shape of Water

監督:ギレルモ・デル・トロ

2017年 アメリカ映画 124分 R15+

キャスト:サリー・ホーキンス

     マイケル・シャノン

     リチャード・ジェンキンス

     マイケル・スタールバーグ

     オクタヴィア・スペンサー

 

研究所の掃除係として働く声が出せないイライザは、

ある日研究対象として持ち込まれた「彼」を目撃する。

ストリックランド博士により虐待される「彼」にいつ

しか心を寄せるようになるが、その「彼」が生体解剖

されると聞き、何とか研究所から連れ出そうと計画する

のだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 純粋な愛の姿を美しい光や水の

映像と音楽で描いています。


喪失は愛で補填される。


ギレルモ・デル・トロ監督作品で一番好きなのは、やはり

「パンズラビリンス」(2006)でしょうか。童話の

世界観に浸り、美しい迷宮での生活を楽しんでいるうちに

突然訪れる現実世界にはそのギャップの大きさから、ただ

ただ悲しみが残りました。
この「シェイプ・オブ・ウォーター」よりアカデミー賞

作品賞は「スリー・ビルボード」が獲ると予想して先に劇場

にて鑑賞。とてもよく練りこまれた作品であり、ラストに

かすかな希望が感じられる秀作でした。
ところが作品賞ではなかったんですよね。そして今頃配信で

鑑賞しました。この映画は絶対に大スクリーンで見るべき

ものだったととても後悔しています。とはいえストーリーは

一言で言うと切なく美しい「究極の愛」の物語なんです。
映画内に登場する「彼」は1954年映画「大アマゾンの半魚人」

に似ているというけれど、半魚人と思いたくない。この

「彼」は知性と意志を持ち、さらには...。

 

シェイプ・オブ・ウォーター
 

登場するのは声が出せないイライザ、彼女と同居する

リストラされたゲイのジャイルズ、イライザの同僚の黒人女性

ゼルダ、そしてアマゾン部族から神のように崇拝された異形の

「彼」とマイノリティばかりなのです。そして時は1962年の

東西冷戦時代ですから、ソ連のスパイも登場する。さらに

圧倒的な存在感を放つのが、この「彼」を捕獲し、研究対象と

して虐待するストリックランド博士です。この役は

マイケル・シャノン。

 

シェイプ・オブ・ウォーター

 

彼の場合は性格が異形なのかと思うほど嫌な男で、その役を

とても上手に演じています。R15指定かつ一か所ボカしがある

というので、どこかと思ったら何のことはない、

マイケル・シャノンのお尻でした。別に気にもならなかったわ。
「美女と野獣」のように甘い恋愛映画かと思っていると、かなり

残酷なシーンが幾つも見られ、血を見るのが苦手だったり、

爬虫類が苦手な人は、お勧めしない映画です。
そしてゆで卵1つで始まったイライザと「彼」の心のつながりは、

ロシアのスパイ、ストリックランド、イライザの3つ巴で、

(いや、スパイとイライザはタッグを組んだか。)遂には

イライザの自宅のバスルームに「彼」をかくまい、そして愛を

はぐくむこととなります。同居人のジャイルズが「彼」を見て

「美しい」と言ったのは。自分がうわべだけ着飾った醜い人間を

数多く見てきたからかもしれません。

 

シェイプ・オブ・ウォーター
 

バスルームにお湯をはって、それもバスルームいっぱいにはって、

交わされるラブシーンは本当にまるで絵画を見ているような

思いになります。ラスト付近はまさに手に汗を握る展開であり、

その直前にイライザが妄想するシーンは「ラ・ラ・ランド」の

終盤を思い起こさせるもので、イライザの口から美しい歌声も

聞かれるのです。

 

シェイプ・オブ・ウォーター

 

この緩急の差がまた見ている側を飽きさせません。
気持ちが高まると青く光る「彼」の体やイライザの首にある

傷など、いろいろなことに想いを馳せつつ、夢物語に包まれた

ように映画は終了します。緩やかな幸福感を味わえる映画でした。

 

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LION/ライオン〜25年目のただいま〜

3

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ライオン

 

「LION/ライオン〜25年目のただいま〜」

原題:Lion

監督:ガース・デイビス

2016年 オーストラリア映画 119分

キャスト:デブ・パネル

     ルーニー・マーラー

     ニコール・キッドマン

     デビッド・ウェンハム

 

5歳のサルーは兄の仕事について行き、駅ではぐれて

しまう。彼はストリートチルドレンとなった後に施設に

収容され、幸いなことにオーストラリア人夫妻の養子と

して迎えられる。彼は何不自由なく育ち大学生になるが、
ある時自分がインドで迷子だったことを鮮明に思い出す

のだった。


<お勧め星>☆☆☆☆


自分のルーツ


キャッチコピーは「迷った距離1万キロ、探した時間25年、

道案内はGoogle Earth」。実話ベースの映画ですが、少し

ずつ実際と異なることもあるようで、特に主人公サルーが

生家を探すのに使ったのは、Google Earthだけでなく

facebookもあったそうです。

 

ライオン
 

成人したサルー役は「スラムドッグ$ミリオネア」(2009)

「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」(2013)などの

デブ・パネル。彼の恋人ルーシー役は「キャロル」(2016)

のルーニー・マーラー。

 

ライオン
 

また養母スー役はニコール・キッドマンが演じています。

ニコール・キッドマンの抑えた演技も素晴らしいです。
黄色い蝶の大群に囲まれた5歳のサルーから始まるこの映画

では、時折その蝶が姿を見せ、見終わった後で調べてみると、

彼の守護神のような意味を表しているのだと知りました。

とはいえ、この壮大な家族探しの旅は、幼いサルーが兄グドゥの

仕事に無理やりついて行ったことから始まります。どんなに

力持ちでもどんなに真面目でも、5歳児なんですよ。サルーは

駅で兄とはぐれてしまい、おまけに回送電車ではるか遠い

カルカッタまで向かってしまうのです。人々がひしめき合う駅の

雑踏で、小さなサルーは柱をよじ登り「グドゥ〜」と呼び続けます。

この姿は彼が襲われているものすごく大きな不安を感じ取れる

もので、見つかるはずもない兄の名を呼ぶ声がいつまでも響き渡り、

耳から離れません。

 

 

ライオン
 

かつて実姉が「インドへ旅行したい」と言って突然出かけた

ことがあって、それも初めての海外旅行であり、

「どうしてインドに行きたい?」と尋ねたところ

「ガンジス川でで沐浴をしたい」との答えが返ってきました。
それがこのサルーが迷った時期とちょうど重なります。姉は

沐浴の夢はかなわなかったし、ついでに帰国時に下痢の症状が

あり、検疫で止められ、さらにはその後保健所にも行く羽目に

なったことを思い出しました。
サルーの困難な状況はここで数多く映されます。ストリート

チルドレンとなり、それを捕まえに来た大人に追われ、人身売買

に巻き込まれそうになり、さらには劣悪な環境の施設に収容

されます。サルーは幸いなことに5ヶ月で里親に恵まれたことが、

その後のサルーの人生が大きく変わったと思うのです。そして

オーストラリアへ渡り、何不自由ない家庭の子供として育って

いきます。翌年同じように養子の弟マントッシュを受け入れた

この家庭はマントッシュの問題行動に苦労するわけですが、

それは彼の養子に出されるまでの過酷な生活の積み重ねであっ

たことは想像に難くないのです。
ではなぜサルーは本当の母や兄を探したい欲求にかられたの

でしょうか。それは映像で見られるように、時折浮かぶ故郷の村や

母や兄の姿、そしていくつもの出来事が頭から離れなかったに

他ならないと思うのです。「自分探しの旅」と称して世界を放浪

するバックパッカーがいる中で、自分のルーツを探しに行く者は

ほとんどいないと思う。自分のルーツがオーストラリアになく、

インドにあることはわかっているのに、その過去を探すことは

今の養父母を裏切ることにもなる。サルーの心の葛藤は続きますが、

それでも過去の記憶を取り戻し、これから先の人生を歩みたいと

切望するサルーの気持ちもなんとなくわかる気がするのです。

本当に何となくですが。
インドで施設に収容されている時、サルーは顔写真付きで新聞に

親探しの記事を載せられるのですが、反応はありませんでした。

それはなぜか。彼の母は新聞どころか「文字」が読めなかったのです。
ちなみにインドにおける識字率は1991年当時48.2%に過ぎず、

田舎の村に住む母が文字を読めなかったとしても当然のことなのです。
一方里親であるジョンとスーは決して子供が持てないから養子を

選択したのではなく、「恵まれない子たちを助ける方が意義がある」

という崇高な志を持っていたことを知ると、また感動します。
その経緯も神秘的であり、彼らとサルーの結びつきも運命的なもので

あったのかもしれません。
「闇の子供たち」(2008)ではタイにおける臓器移植を目的と

した幼い子供の人身売買や幼児売買春を描いていましたが、インドに

おけるストリートチルドレンは世界で最も多く、その中から人身売買

で連れ去られる者もかなりの数いるのです。
但しこの映画ではあくまでも自分のルーツを探すことを主に描いており、

それが叶う時には感動するとともに、兄グドゥがなぜ戻らなかったのか

理由を知ると、サルーの脳裏に浮かぶのは兄と2人で線路を飛び跳ねて

遊んだこと、一緒に石を運んだこと、自転車に乗せてもらったことなど

楽しいものばかりであり、彼の記憶の中ではグドゥは永遠にあの時の

まま存在し続けるのだろうと思ってしまいました。

Google Earthと自分の断片的な記憶をつなぎ合わせて目的を達成

したサルー。そしてラストに映画の題名の意味が分かるのです。

住んでいた場所をいくら大人に伝えても伝わらなかったのは、
「ガネストレイ」ではなく「ガネッシュタライ」だったからで、

自らの名前すら「サルー」ではなく「シェルウ」だったと知ると

サルーがいかに幼かったのかを改めて実感します。

 

ライオン
 

シェルウの意味は「ライオン」

 

 

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