ターナー、光に愛を求めて

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JUGEMテーマ:洋画

ターナー

「ターナー、光に愛を求めて」
原題:Mr.Turner
監督:マイク・リー
2014年 イギリス=フランス=ドイツ映画 PG12
キャスト:ティモシー・スポール
     ドロシー・アトキンソン
     マリオン・ヘイリー
     ポール・ジェッソン
     レスリー・マンビル

19世紀のロンドンの画家ターナーは、若い頃から
その作品に高い評価を受けており、自由気ままに旅
をしながらその題材を求めていた。しかし最大の理解者
である父を亡くした後、失意の彼は旅宿を営むブース夫人
と出会う...。

<お勧め星>☆☆☆ 有名な画家ターナーの後半生を如実
に描いており、秀逸な作品ですが、やや単調です。


ターナーは、昨年美術館で展覧会があり、その絵を鑑賞
しました。モネなどの印象派の画家たちに影響を与えた
だけあって、その絵画からはリアリティーではなく、光を
上手く使った独特の雰囲気が漂っていました。
でもそもそも絵画に疎い自分にとって、最も印象に残って
いるのは、彼自身が描いた自画像で、それがかなりハンサム
だったことです。1枚だけ他の人物がターナーを描いたもの
がありましたが、そこに描かれていたのは、自画像とは似ても
似つかない醜い小男でした。そんなわけで、このターナー役
を演じるティモシー・スポールがとてもよく似合っています。


ターナー

19世紀、ロンドンで画家をしているターナーは、そのよき
理解者である父を持ち、自由にあちこち旅行しては、絵を
描いていたのです。帰宅すると猫背のハンナという女中がおり、
ターナは自分の慰み物として扱うだけで、彼女の存在など
ないかのようにふるまいます。
さらに元恋人との間に娘2人がいるものの、認知もせず、孫が
生まれたと言って全員で訪ねてきても、大して関心も見せま
せん。彼の作風にある通り、光の部分だけ求め、影となる部分
は避けていたのかもしれません。
そしてたまたまスケッチ旅行で立ち寄った宿のブース夫人と
出会うわけです。


ターナー

ブース夫人は2回めの結婚をしており、その夫は元奴隷船の
船大工をしていたことで、彼から奴隷船の話を聞かされるの
です。帰宅するとその船の姿をキャンバスに描きなぐるターナー
が映ります。そして彼の父が亡くなり、失意の彼はブース夫人の
船宿を訪れると、彼女も夫を亡くしていたのです。ターナーは
なぜかブース夫人を気に入り、そのまま深い関係になります。
ターナー曰く「キミの鼻が好きだ」。(確かに鼻は大事だな)
一方ターナーの作品は時代の流れで、受け入れられない存在に
変わっていきます。その前にロイヤル・アカデミー内の醜い争い
も描かれ、彼の苦悩も伝わるのです。


ターナー

ターナーは病に冒され、ブース夫人の家に入りびたりになると、
ハンナは人づてにそこを訪ねて行きます。彼女はそこで、夫婦
同然に暮らす2人の話を聞き、彼の顔を見ずに戻るわけですよ。
ハンナの悲しみなどきっとターナーはこれっぽっちも気づか
なかったでしょうね。
ターナーが題材を求めた先の景色がとても美しく描かれていて
まるで彼の絵画そのもののようでした。





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アンナと過ごした4日間

3
JUGEMテーマ:洋画

アンナ

「アンナと過ごした4日間」
原題:Cztery noce z Anna
監督:イエジー・スコリモフスキ
2008年 ポーランド=フランス映画 94分
キャスト:アルトゥール・ステランコ
     キンガ・プレイス
     イエジー・フェドロヴィチ
     バルバラ・コウオジェイスカ

ポーランドの田舎町に住むレオンは、病院の火葬場で
働きながら、病気の祖母の世話をしている。彼の唯一
の楽しみは、隣接する看護師寮に住むアンナの部屋を
のぞき見することだった。

<お勧め星>☆☆☆ これを純愛ととるべきか、変態と
とるべきか、見る側に尋ねているように感じます。


冒頭、斧を買う男が映り、彼のおどおどした様子と、次に
映る人間の手を燃やすシーンから、まるで殺人鬼であるか
のような映画を想像します。しかしそれは全く間違いであり、
映画の全貌がつかめるのが、ラスト付近の法廷でのシーン
という手の込んだ作り方になっています。画面全体は暗く、
ポーランドの寂れた町の厳しい気候を物語っているかのよう
です。
主人公レオンは、病気で寝たきりの祖母の世話をしつつ、
病院の火葬場で働いているらしい。これが冒頭の手を燃やす
シーンだったのです。そこでも手にはめてあったはずの指輪
を盗んだと疑われてしまうほど、レオンは他人に受け入れて
もらえない存在かつ、はっきり否定もできない気弱な男なの

です。そんな彼の唯一の楽しみは、祖母を寝かしつけてから
こっそり隣接する看護師寮の部屋をのぞき見すること。


アンナ

彼の息遣いと手にした小さな灯り、そして煙草の火だけが
輝き、いつ相手に見つかるのかとドキドキします。この看護師
はアンナという女性で、かなり豊満な人。後で説明がありますが、
レオンは非嫡出子であり、祖母に育てられた生い立ちから、自分
なりの母親像を求めていたのかもしれません。
そして突然釣りの帰り道、農場の納屋で女性がレイプされて
いる現場を目撃します。これが急に入り込むので、いつのこと
なのか、これが誰なのか、少々混乱するのです。さらに警察での
レオンでの取り調べシーンも映りこみます。そこでも彼は自分の
意見をはっきり主張できないのです。


アンナ

そして祖母が亡くなり、遺品を燃やしているとそこからなぜか
アコーディオンが出てきます。その音色ももの悲しく、唯一の
身内を亡くした彼の孤独を物語っているようです。


アンナ

それから祖母の睡眠薬を、アンナの部屋の砂糖に混ぜ、熟睡した
彼女の部屋に忍び込むことを考え付きます。もちろんれっきとした
犯罪なんだけど、レオンがあまりにビクビクしているので、逆に
滑稽に見えてしまうのです。
1日目、アンナの白衣の匂いを嗅ぎ、取れかけたボタンを器用に
縫い付け、彼女の枕に少しだけ頭をのせる。
2日目、途中で眠ってしまったアンナに代わって、彼女の足の指の
ペティキュアを縫ってあげる。
3日目、この日は焼却場閉鎖のため、彼は仕事を解雇され、退職金
で指輪を買うのです。ちょうどアンナの部屋では彼女の誕生日パーティ
が開かれている。遠くから同じように乾杯し、酔いしれて行くレオン。
どこまでも悲しく感じますが、レオンにとっては、至福の時間なの
ですね。そして部屋に侵入し、バラを飾り、パーティの残り物を
食べ、指輪をはめてあげると、アンナの指には大きすぎるんです。

そうこうするうちに指輪は転げ落ちて、床板の間に入り込んでしまう。
悲しい姿なのに、やはり滑稽に映ります。さらに、同じ様に眠りこみ、
翌朝大慌てで彼女のベッドの下に隠れるレオン。ベッドの下からの
視点でアンナは映され、その結構太い脚が目の前に出てきます。
4日目、彼女の部屋の鳩時計を修理し、戻しに行った所で、パトカー
に見つかる。この時も慌てすぎたレオンは、部屋のカーテンに
絡まって転がるのです。この姿こそ本当の悪人ではない、ただの内気
で孤独な男であることを象徴している気がします。

そして彼が実はかつて、アンナのレイプ犯として有罪となっていた
ことがわかるのです。刑務所内での他の囚人からの暴行シーンも映り、
レオンの不幸さをさらに物語るものになります。この冤罪を経て
彼はアンナを愛するようになり、それは「のぞき見」という形で表現
することしかできなかった。さらにエスカレートし、「侵入」という
形になってしまった。
彼が法廷で、なぜ再びあんなに近づいたのかと尋ねられた時、明確に
「愛だからです」
と答えていました。レオンが自信を持って「愛」を訴えたところで、
それは普通の人間であれば、気味が悪いとしか受け取れないのは当然
のことなのです。アンナも然り。

ラストに釈放されたレオンが自宅に戻ると、隣の看護師寮の前には
高い壁が出来上がっています。これはどんなに彼が思いを伝えようと
しても超えられない壁が存在するということの例えなのかもしれません。





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サンドラの週末

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JUGEMテーマ:洋画

サンドラの週末

「サンドラの週末」
原題:Deux jours une nuit
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ
2014年 イタリア=フランス=ベルギー映画 
95分
キャスト:マリオン・コティヤール
     ファブリツィオ・ロンジョーネ
     オリビエ・グルメ
     モルガン・マリンヌ

病気で休職していたサンドラは、会社がサンドラの
解雇と引き換えにボーナスを支給する投票をしたこと
を知る。復職を目指すサンドラは、社長に再投票を
頼み、週末に同僚たちの家を訪ねて復職への投票を
依頼するが...。

<お勧め星>☆☆☆ 静かな映画で、ラストのサンドラ
の明るい表情だけがよかったな。


予告編はとてもおもしろそうだったし、サンドラがどれ
だけ奮闘するのか、そしてどんな苦難に遭うのか、想像
しながら見始めました。けれどかなり静かな映画で、
サンドラを演じるマリオン・コティヤールのほぼすっぴん
の美しさだけが目立ちます。


サンドラの週末

体調不良による休職からの復帰を目指すサンドラは会社から
解雇通告を受け、絶望のどん底にいるのです。会社側は彼女
の復職かボーナス1000ユーロ支給かを同僚たちに投票させ、
14−2でボーナスに決まってしまったのです。彼女がどれ
だけ休職していたのかわかりませんが、その間彼女なしで
臨時雇いを含めて仕事が回っていたようなので、ものすごく
スキルが必要な仕事内容ではないと思われます。
落ち込むサンドラを支えるのは、彼女の支持に回った2人の
同僚と夫のマニュで、彼女をベッドから起こし、同僚に直接
話をさせようと奮い立たせるのです。このサンドラの家も
彼女が働かないと家賃が払えなくなるという厳しい経済状況
であり、サンドラが向かった同僚の家もどこも決して裕福とは
言えない生活をしています。


サンドラの週末

多分サンドラは心の病であったと思われ、映画内で薬をバカバカ
飲みまくっているのです。これってどう見てもまだ病気だよね。
もちろん福利厚生のしっかりした会社であれば、社員への保障
も手厚いでしょう。しかし彼女の解雇とボーナスを同僚に投票
させ、その上、主任が解雇に入れるように入れ知恵をするような
会社です。多分会社自体も経営がうまくいっていないのです。
再投票を社長に認めさせ、週末に同僚の家を回るも、皆お金が
欲しい人ばかり。内緒で仕事を掛け持ちしている者、ボーナス
がないと家賃が払えない者、子供の学費が必要な者。たった
1000ユーロとは言っても現金が手に入るのならば、同僚間の
感情など<<<<<という感じです。でも彼女は多分とても優しい

人柄だったのでしょう。復職に投票するという人も現れるのです。
落ち込んだサンドラと立ち直るサンドラが幾度となく映り、この
単調なストーリーに飽きてきた頃、遂に月曜日を迎えます。
ラストのサンドラの決断を見ると、彼女の表情は生き生きしており、
これで確実に病は完治に向かうのだろうと予感させます。



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あの日の声を探して

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JUGEMテーマ:洋画

あの日の声を探して

「あの日の声を探して」
原題:The Search
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
2014年 フランス=グルジア 149分
キャスト:ベレニス・ベジョ
     アネット・ベニング
     マクシム・エメリヤノフ

1999年のチェチェン紛争で両親を失ったハジは
幼い弟を民家の軒先に置いた後、町をさまよっている
ところをEUの人権委員会のキャロルに保護される。
一方ロシアのペルミで警察に捕まった19歳のコーリャ
は、兵士になるための訓練を受けるのだった。

<お勧め星>☆☆☆半 様々な方向からチェチェン紛争
について描いたためにやや中途半端な描き方になりましたが
見ごたえのある内容でした。


チェチェン紛争といっても日本から見るとはるか遠くの話
であり、幾たびか悲劇が繰り返されてきたのに、記憶から
すぐに消えてしまいます。しかし彼らは今も厳しい状況に
置かれていることは変わりがないのです。特にこの映画は
グルジアとフランスの共同制作ですが、パリでの同時多発
テロが起きた現在、フランス人がイスラム教徒である
チェチェンの人々へ前と同じように寛容であるかどうかは
わかりません。
ストーリーは3人の視点から描かれます。1999年、
第二次チェチェン紛争で両親をロシア兵に射殺され、姉と
はぐれたハジが幼いヴァクハを連れて逃げ出す姿。


あの日の声を探して

そしてロシアのペルミで警官に捕まった19歳のコーリャが
その年齢ゆえ刑務所に送られず、兵士となるために訓練を受け
始める姿。


あの日の声を探して

もう一人はフランス人でありEUの人権委員会のキャロルの
姿です。
冒頭、のんびりとVTRカメラを回す若い兵士の声が聞こえ、
彼が軽く話すその先には、「スパイ」と呼ばれ銃を突き付け
られているチェチェン人夫妻と娘が命乞いをしているのです。
アラーへの祈りを始めた途端、父は銃殺され、続いて母も
銃殺されます。家の窓からそれを見ていた幼いハジは赤ん坊
の弟ヴァクハを抱きながら銃の音にビクリと体を反応させ、
そして泣き叫ぶ弟の声を聞きつけて入って来た兵士から身を
隠します。兵士はヴァクハにおしゃぶりをしゃぶらせて去って
行くのです。彼はそれを見ると弟を抱えて必死で逃げ始めます。
どこへ行ったらいいのだろう。姉ルイーサは兵士が連れて行って
しまった。途方に暮れたハジが瞳から大粒の涙をこぼします。
この姿は本当に辛い。

一方ロシアのペルミでドラッグを持っていたことで警官に捕まった
コーリャは、どうも不良らしく、年齢が19歳ということで、
刑務所へは送られず、そのまま兵士として訓練を受けることに
なります。そこでの非情なしごきと暴力、暴言は彼から人間と
しての心を奪っていくのでしょうか。先輩だけでなく、大佐すら
問答無用の暴力を振るいます。さらに彼の仕事は、戦死した
兵士を遺体袋に収め、書類を書く仕事を与えられるのです。
彼はこのチェチェン紛争について何の知識もないまま、ただ
戦闘の訓練を受け、いずれは戦地に送られるという、戦争の中の
弾薬の1つ程度にしか存在価値がないかのように描かれます。
彼は先輩から「チェチェン人はみんなスパイだ。」という憎しみ
だけを植え付けられていくのです。これはもしかしたらウクライナ
派兵されたロシア兵も同じなのかもしれない。

ハジは、赤十字に保護されたものの、言葉を発しません。それは
目の前で起きた恐怖と悲しみで、人への接し方を忘れてしまった
のでしょう。彼のリュックから弟のセーターが出てきたのを
見つけられ、ハジは、その場から逃げ出してしまうのです。この
気持ちもよくわかります。自分が世話をすべきだったのに、手に
負えず置いてきてしまったことへの罪悪感。
そんなハジを見つけたのは、EU人権委員会のキャロルです。
キャロルの話す言葉はフランス語なので、ハジにわかるはずもない。


あの日の声を探して

キャロル自身も何も言葉を発しないハジへの接し方に戸惑う
のです。ここでEUと国連との立場の相違も描かれます。国連は
ロシアに配慮して、チェチェン紛争への介入を仲裁することは
しません。目の前にこれほど難民が押し寄せているのに、大国への
配慮が国連の仕事なのでしょうか。それはシリア然り。
ストーリーはラスト付近に奇跡的な再会を描きますが、その後、
オープニングのVTR映像の意味が分かります。あれは時間軸を
ずらして映していたことにやっと気づくのです。あの若い兵士
はコーリャだったと。

チェチェン紛争について人々の記憶を呼び戻したことは価値が
ありますが、この映画で何を一番訴えたかったのかということは
見終わってもわかりませんでした。

キャロルが言葉を発しないハジに絵を描くことを勧め、家族や
家を描いて渡すと、それを1つずつ消しながら涙をこぼすハジ
の姿には見ている側も涙を流さずにはいられませんでした。


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最初の人間

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JUGEMテーマ:洋画

最初の人間

「最初の人間」
原題:Le Premier Homme
監督:ジャンニ・アメリオ
2011年 フランス=イタリア=アルジェリア映画
105分
キャスト:ジャック・ガンブラン
     カトリータ・ソラ
     ドゥニ・ポダリデス

1957年、パリに住む作家ジャックは、生まれ育った
故郷アルジェリアを訪れる。しかしフランス軍の蛮行への
アラブ人の反発は強まっており、彼のスピーチは非難の的
のなってしまう。そんな彼は危険を冒しながら、実母や
かつての知り合いを訪ね始めるのだった。

<お勧め星>☆☆☆ いい映画だと思うのですが、とにかく
睡魔との闘いでした。


「異邦人」「ペスト」などを書き、ノーベル文学賞を受賞した
アルベール・カミュの未完の自伝的小説「最初の人間」を
映画化したものです。彼の死にはKGBが絡んでいるという噂も
ありますが、1960年に友人の運転の車の事故で死亡して
います。
映画内で映し出される1950年代と1920年代のアルジェリア
の景色は、海の青と美しい自然が映え、まことに美しいです。
時折兵士やそれらを乗せた軍の車が走るのや、路上で物乞いを
する人の存在、そして爆発事件発生などが、この時期のこの国
の混乱した状況を物語ります。

「抑圧者による暴力が被抑圧者の暴力を生む」
パリでの同時多発テロが起きたばかりの今、この言葉の重みを
感じざるを得ません。
主人公のジャック・コルムリは、フランスからアルジェリアに
入植した者の息子であり、その父は第一次大戦で戦死を遂げ、
母と叔父、祖母とともに貧しい暮らしをしていたのです。
ストーリーは今や小説家として成功し、パリに妻子と共に住む
ジャックがアルジェリアを訪れるところから始まりますが、当時
元々住んでいたアラブ人と入植者であるフランス人との間に
対立が深まっており、フランス軍は、彼らの破壊活動を封じ込め
ようとしていました。それは、不当逮捕、不衛生な環境での拘留、
拷問、処刑などであったわけです。アラブ人居住区の劣悪な環境と
彼らから痛いような視線を受けるジャックの姿を映像が克明に
描きます。
ジャックはそれを全て知ったうえで、どちらが「悪」と敢えて
明言せず、どちら側にも謙虚に誠実に接していきます。彼がなぜ
ここまで暴力を否定したのかは、幼い頃から祖母に激しい体罰
を受けてきたからかもしれません。
貧しいけれど、才能がある彼の見出してくれた恩師ベルナール先生。


最初の人間

最初の人間

2人の会話は重みのある内容だった気がするのですが、ただ
わかったことは、ジャックは自分が「アルジェリア人」であると
考えていることです。「アルジェリア」という祖国がある人物
はアラブ人でもフランス人でもなく「アルジェリア人」なのです。


最初の人間

「パリに来ないか?」と年老いた母親にジャックが言葉をかけても
「わたしの祖国はここよ」と答えが返ってきます。ジャックが
生まれた農場の今の持ち主も、親はマルセイユで暮らしているが、
自分はここが故郷だと言う。
宗教や人種を超えて、1つの国の国民として、謙虚に誠実に生きて
いくことが、再び今の世界に必要になっているのかもしれません。





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15歳、アルマの恋愛妄想

4
JUGEMテーマ:洋画

15歳、アルマの恋愛妄想

「15歳、アルマの恋愛妄想」
原題:Fa meg pa,for faen!
監督:ヤンニッケ・シースタ・ヤコブセン
2011年 ノルウェー映画 76分
キャスト:ヘレーネ・ベルグスホルム
     ヘンリエッテ・ステーンストルプ

15歳のアルマは、片田舎の生活の飽き飽きし、
テレフォンセックスにふけっている。ある日
パーティーに参加したアルマは、片思い中の
アルトゥールから思いがけない行為を受け、それを
友人にしゃべったことから、学校で仲間外れになる
のだった。

<お勧め星>☆☆☆ ティーンのおバカ映画と思った
ら、結構爽快感が残るラストになっています。


スコッデハイメンというノルウェーの田舎町が冒頭から
映り、よく言えば自然豊かでのどかな風景、悪く言うと
何も変化もないつまらない印象を受けます。この町に
住む15歳の高校生アルマは、とことんこの町に飽き飽き
し、それを1つずつの景色を映しながら、彼女の言葉で
表現していくのです。そしてテレフォンセックスにふける
彼女の姿が見られ、ちょっとショッキングだけれど、これ
くらいの刺激が欲しい年頃なんだろうとも納得します。
雑誌や映画、テレビ番組での恋愛模様が、現実世界でも
起きると信じる年頃ってあったよなあ。例えば、上靴の中
にラブレターが入っていたり、「好きです」と告白したら
「実は僕も前から好きだったんだ」とかっこいい先輩に
言われる。そんな夢物語に妄想を膨らませたものです。
とはいえ北欧の女子はかなりマセているので、妄想がかなり
リアル。

アルマと親友で双子のイングリットとサラ姉妹は、バスで
高校へ通うのですが、町の名前が書いてある看板にいつも
中指を立てるわけです。


15歳、アルマの恋愛妄想

バス停でのこの風景は映画内で何度も見られ、その都度3人
の状況が異なるのが少しだけ笑えます。
そんなアルマは、青少年センターのパーティーで、片思い中の
アルトゥールと何度も目が合ってしまう。絶対に彼は自分に気が
あるな、と思って外に出ると、彼も出てくるわけです。ここで
キス?いえあろうことかアルトゥールは、自分の局部を出し、
それをアルマの太ももに押し付けてくるのです。


15歳、アルマの恋愛妄想

アルマは驚いたものの、その先を妄想し、ちょっと喜びながら
イングリットに話すわけです。すると自分に気があると思って
いる彼女に否定され、あげくのはてにアルトゥール自身にも
「ひどいな」
と言われてしまう。これで全ておじゃんですね。次の日から
アルマは学校で仲間はずれになり、「ちんちんアルマ」という
不名誉なあだ名ももらうことになるのです。このイジメのシーン
は陰湿に描かれず、割と明るめの内容なので、アルマの孤独も
悲しげには映りません。但し、その後も妄想にふけるアルマと
娘の早熟な行動に戸惑う母親の姿が映ると、日本でのティーンの
姿と重なって見えてくるのです。


15歳、アルマの恋愛妄想

一方でイングリは、高校のコーラス部であり、そのギター担当が
アルトゥール。これがださい歌ばかり歌っているんですよ。また
サラは、なぜか死刑を廃止するためにテキサス州へ行きたいと
考え、死刑囚と文通しようとせっせと手紙を書いています。
なんで死刑囚と文通したいんだろう。実はこの手紙はポストに
投函されず、引き出しにためていることが終盤わかります。その
頃にはヒャルダンというちょっと臭い(なんでかわからない)
男の子と恋に落ちている。サラとイングリットの好対照な姉妹
はその姿も全く異なるので最初は双子と思わなかったです。
そしてバイト先でポルノ雑誌を盗んだアルマは、それが母に
知られ外出禁止になります。じゃあ、もうこんな町捨ててやる!
おまけにアルトゥールは突いたことは認めたのに、恋人がいる
何て言うし。

アルマはサラ達の姉マリアの暮らすオスロを目指してヒッチハイク
を始めます。ずっと外の空が明るいのは白夜だからかしら。
姿が見えないアルマの行方を知っていたのが、いつも覗き見して
いる隣家のマクダというのもおかしいです。それも時刻も行き先
もばっちり当てるんです。どれだけ覗いていたんだろう。
ラスト付近にアルトゥールに
「僕たちは似た者同士だ」
と言われたアルマが、きっぱり
「違うわ。わたしは弱虫じゃない」
と言ったのはかっこよかった。そうさ、キミは変態気味だよ。
そして夢のようなアルトゥールの行動。妄想じゃなくて現実に
なってよかったねえ。






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トレインスポッティング

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JUGEMテーマ:洋画

トレインスポッティング

「トレインスポッティング」
原題:Trainspotting
監督:ダニー・ボイル
1996年 イギリス映画 93分 R15+
キャスト:ユアン・マクレガー
     ユエン・ブレムナー
     ジョニー・リー・ミラー
     ロバート・カーライル
     ケリー・マクドナルド

ドラッグ中毒のマークは、不況真っただ中の
スコットランドで、仲間と共に退廃的な生活を
送っている。しかし逮捕をきっかけにドラッグ
を絶ち、ロンドンでまともな仕事にありついた
マークだったが...。

<お勧め星>☆☆☆ 内容は別にして、音楽と
映像がスタイリッシュです。


当時無名だったユアン・マクレガーがこの映画を
きっかけにスターになっていった作品です。話は
はっきり言ってどうしようもないぐうたらな青年
達の姿を延々と流し続けるのですが、一瞬ごとに
彼らの苦悩や葛藤が見受けられ、それが様々な色調
の映像と共に目の間に映ると、なんとも不思議な感覚
になります。
マーク、シック・ボーイ、ベグビー、スパッド、トミー
はドラッグ仲間であり、処方箋をくすねたり、偽造
したりして、毎日ありとあらゆるドラッグに身を委ねて
いるのです。但し、トミーだけは、ドラッグはやらず
ひたすらナンパ専門。その彼が終盤には、女にフラれ
ヤク中となり、エイズにもかかったあげく、それでは
ない要因で悲惨な死を遂げるという哀れな一生を送る
のです。


トレインスポッティング

この時の描写はセリフで語られるんだけど、それだけで想像
できるような内容。
冒頭から何回目かのドラッグ絶ちを試みるマークは、
「最後の1本」
と言って(これも何度言ったか分からない)ヘロインを打つと
途端に体がフワーと軽くなり、音楽もポップなものが流れます。
一方で、スパッドと共に遂に逮捕されたマークが、自宅で監禁
され、ドラッグ絶ちを行う時の禁断症状のシーンでは、様々な
幻覚が走馬灯のように映し出され、ジャンキーだったアリソンの
子供で死んでしまったボーンが天井を這ってくる。そしてその
首がくるりと180度回転すると、彼の絶望感そのもののような
顔つきを見せるのです。


トレインスポッティング

皆クズなんだけど、喧嘩中毒のベグビーのキレっぷりは尋常では
ないですね。多分頭がイカれているんだな。そんなベグビーは
宝石店強盗で指名手配され、ポン引きになったシック・ボーイと
共にまともに働き始めたマークの元へ押しかけるわけです。結局
もとの木阿弥状態。
それでも最後はベグビーを出し抜き、仲間を裏切ったことで、マーク
は「普通の生活」に戻ろうと行動します。
「若気の至り」とよく言いますが、まさに若いからできたことで、
それをいつまでも続くと考えるのはとことんバカなのかもしれません。



    
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木洩れ日の家で

4
JUGEMテーマ:洋画

木洩れ日の家で

「木洩れ日の家で」
原題:Pora Umierac
監督:ドロタ・ケンジェルサヴスカ
2007年 ポーランド映画 104分
キャスト:ダヌタ・シャフラウルスカ

ワルシャワ郊外の古い屋敷に91歳の老女
アニエラは1人で暮らしている。彼女は愛する
この家で、一人息子家族との同居を望むが拒否
され、楽しみは愛犬フィラとの会話と両隣の家
をのぞき見することだった。

<お勧め星>☆☆☆半 全編モノクロながら、
まるで明るい日差しがさしているかのような
ラストシーンになっています。


一番素敵だったのは、老婦人アニエラの愛犬フィラ
の演技です。


木洩れ日の家で

もちろん編集の技に決まっていますが、食事をするアニエラ
を見つめ、口から流れるよだれを何度も飲み込む姿、電話が
鳴り、2階から降りるアニエラの動きが遅く、ベルが鳴り終え
てしまうのを繰り返すうちに、先に駆けおりて受話器を外す
ことを覚える姿、叱られると何かに隠れる姿など、どれを
とっても芸達者に見えます。
オープニングシーンは、女医の無作法な言葉に怒るアニエラ
の姿です。撮影当時この女優さんも91歳であり、それゆえの
味わいのある表情をいくつも見せてくれます。
アニエラはワルシャワ郊外の森深くに建つ古い家に1人暮らし。




この家がまことにおとぎ話に出てくるような時代を感じさせる
作りなのです。彼女はこの家をこよなく愛し、かつてここで
起きた出来事を毎日思い出しては、良き時代の思い出に浸って
います。しかし時折物忘れをするし、めまいにも襲われる、
という健康の不安から、一人息子ヴィトゥシュ一家との同居
を願うのですが、のらりくらりとはぐらかされ、たまにやって
来ても息子はすぐに帰っていきます。この家の庭には手作りの
ブランコがあり、かつて息子が楽しく乗ったものなのに、彼の
娘、つまりアニエラの孫は太り過ぎていて、ブランコをこぐこと
すらできません。
映画の中盤付近で、あまりに無作法な孫娘に
「あんたはクジラみたいに太っている子!」
とアニエラが言い放つと、みるみる顔をゆがめ、泣き出す孫娘。
ここはちょっとしてやったりだわ。幼いことと行儀が悪いことは
同列には扱えないもの。
アニエラの楽しみは両隣の家を双眼鏡でのぞき見することなのです。


木洩れ日の家で

片側の家は、金持ちの愛人が住んでいるらしく、もう片側では
少年少女のために音楽クラブが開かれ、へたくそな演奏をして
います。
アニエラの日課は、ラジオをつけ、掛け時計のネジを巻き、口紅
をひくことから始まるのです。それがテンポよく描かれ1日1日
と過ぎて行き、ある日突然見知らぬ少年が家に入り込んできます。
フョードルと名乗る少年は音楽クラブの子どもで、どうやら孤児
らしい。彼はとてもうれしそうに例のブランコをこいでいくのです。
そしてアニエラは、息子がこの家を母から譲られた後、愛人持ちの
金持ちの隣人に売ろうとしていることを知ってしまうのです。
あんなに可愛いかった息子が...。そして嫌っていた嫁がアニエラの
ことを逆に気づかうなんて。
アニエラは息子の写真を踏みつけある所へ電話をし、そしてカーテン
を閉め、喪服を身にまとい、鏡にカバーをして、ろうそくをともし、
ベッドに横になります。
「さて、死ぬ時が来た」

...「冗談じゃない」
アニエラは大好きな庭のブランコをこぎます。その姿はブランコを
こぐアニエラの視点で、木々や空が揺れて描かれていきます。その
姿はなんと生き生きとしているのでしょう。
そしてアニエラは、この家を音楽クラブに譲る決断をします。少し
ばかりの宝石は、この家の補修費用に充て、このままの姿で残し、
ずっと使い続けることが条件なのです。それを喜んで受け入れる
クラブの主催者と再び息を吹き返したこの家のにぎやかさに喜ぶ
アニエラの姿は、見ていてとても心地よいものです。
ラストは彼女の愛用のティーカップが割れ、違うカップで紅茶を
入れて上の階の彼女の元へ子供が運んでいくと、彼女の返事は
ありません。ただフィラだけが彼女の足の間に体を委ねているの
です。BGMも美しく、気持ちの安らぐものになっています。





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僕がいない場所

5
JUGEMテーマ:洋画

僕がいない場所

「僕がいない場所」
原題:I am/Jestem
監督:ドロタ・ケンジェルザヴスカ
2005年 ポーランド映画 93分
キャスト:ピョトル・ヤギェルスキ
     アグニゥシカ・ナゴジツカ
     バジア・シュカルバ

孤児院に収容されているクンデルは、友人も
おらず母親恋しさにそこを脱走する。しかし
母親は見知らぬ男と寝ており、絶望した彼は
川の上の廃船で暮らし始める。そしてそこに
1人の酒に酔った少女が訪れるようになり...。

<お勧め星>☆☆☆半 原題の意味を考えると
心が暗くなります。


ピアノ、バイオリンなどの明るく美しいBGMが
流れる中、どこまでも暗いストーリーが映し出されて
いきます。
国立孤児院で暮らすクンデルは、周囲とも打ち解けず、
職員に叱られた勢いで、そこを脱走するのです。どこ
までも続く草原をボロ靴で歩き続ける幼い少年の爪は
垢で真黒です。


僕がいない場所

そして彼はママの元へ向かうのです。彼に母親がいた
ことも驚きですが、この母親なら子供を育てられない
だろうと一目でわかる姿で現れます。彼女は見知らぬ男
とベッドで眠っており、明らかにドラッグもしている
模様。
「可愛い坊や」
と言ってクンデルを抱きしめるけれど、彼女のバスローブ
がはだけると全裸が見え隠れします。
「ママは誰かに愛されたいし、寂しいのよ」
これはクンデルが言いたかった言葉そのものです。抱きしめる
ママに噛みつき、クンデルはその場を走り去りますが、彼は
なぜか町の不良たちにも追われているのです。その理由は

わかりません。ただ行き場のないクンデルは、川に浮いて
いた廃船で暮らし始めます。そしてそこに捨ててあった缶を
売りに行って小銭を稼ぐのです。しかしここで支払いをする
男も実は彼の母親の客であり、その罪悪感から施しを行っている
とわかるのは映画の終盤。
船の曇ったガラス越しに見える裕福な一家は、クンデルには
限りなく縁遠いものであり、一家の大人もクンデルの存在を
知りつつ、ゴミにしか思っていないのです。
そしてある晩、クンデルの船に明らかに酒に酔ったクレツズカ
がやって来ます。彼女は例の一家の娘
あり、美しく賢い姉に
対し劣等感を持っているのです。それで酒に溺れている。


僕がいない場所

実はクンデルも美しい姉に心を惹かれているらしく、ちょくちょく
彼女の姿を覗いています。だからクレツズカがどんなに親しく
しようとしても、彼は冷たくしてしまう。けれど孤独な2人は
次第にいろいろな話をするようになるわけです。クレツズカが
袋に入れてぶら下げるパンにかぶりつくクンデルの姿は本当に
飢えているかのよう。少年の演技が光ります。
しかし不良たちに居場所を知られたクンデルは町を出ようと
クレツズカに話し、母に別れを告げに行くのです。ところがその
母は、クンデルのせいで男が来ないことに怒り
「二度と来ないで」

と追い返すのです。これは缶を売りに行った店の男が捨て猫を
川に捨てたのと同じで、愛情を受けられないものは、世話を
してもらえず、捨てられるしかないということを表すのです。
で、クンデルは川に飛び込むけれど、なぜか助かり、衣服を
乾かします。彼の吐く息が白いこと、いつもガラスが曇って
いることで、ポーランドの寒い気候を如実に物語ります。
その服はいつから着ているだい?
そして唯一心を寄せてくれたクレツズカと町を出ようと決めた
日に彼女の美しい姉が1本の電話をかけます。


僕がいない場所

姉はもしかしたら、いつでも自分が愛されていることに
慣れていて、妹が誰かに慕われることに嫉妬したのかもしれません。
通報した後、妹ヘッドフォンをつけさせる。彼女はそこから
流れてくる騒々しい音楽にひたすら喜んでいる一方で、曇った
窓ガラスの向こうでは、警官たちに連れられて行くクンデルの
姿が映りつづけます。
そして自らの名前すら話すことを拒否するクンデルの口から
「ぼくはぼくだ」
という言葉が出てきます。彼は二度と大人に心を開くことは
ないのだと深く感じるのです。







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よりよき人生

3
JUGEMテーマ:洋画

よりよき人生

「よりよき人生」
原題:Une Vie Meilleure
監督:セドリック・カーン
2011年 フランス映画 110分
キャスト:ギョーム・カネ
     レイラ・ベクティ
     スリマン・ケタビ
     
シェフを目指すヤンは、9歳の息子がいるナディアと
恋に落ちる。彼はパリ郊外にレストランにぴったりの
物件を見つけ、購入を決意する。しかし頭金を闇金で
まかなった上、消防署の許可が下りなかったことから
借金はどんどん膨らんでいくのだった。

<お勧め星>☆☆☆半 転がり落ちるような人生を見て
いるとつらいですが、明るいラストに希望が持てました。


主人公のヤンは、大したスキルもなく、経験も豊富でない
学食の従業員にすぎないのに、シェフを目指し、自らを
レストランに売り込むほど考えの浅い男です。一方、彼が
働こうと考えたレストランのウェイトレス、ナディアも
彼に誘われたその晩にベッドインしてしまう、という奔放
な女性。ついでに彼女はレバノンからの移民であり、父の
わからない9歳の息子スリマンがいるのです。どうもこの
2人は同じ土俵に立っている気がします。惹かれ合ったのは
同じ匂いがしたからかもしれません。


よりよき人生

たまたま見つけた物件を気に入り、頭金すら考えずにまず
購入を決める。決めた後で頭金は、複数の闇金から借りる
という行き当たりばったりの行動。さらに改装費用をケチ
ったために、消防署の検査に不合格になってしまうのです。
ほんの少しでも助言を求めなかったのか不思議ですが、友人
だという改装業者も何も言わず仕事を進め、支払いが滞ると
確実に回収しようとします。それは銀行も同じであり、融資
先注意リストに彼を入れ、わずかな金すらも貸さなくなるのです。
こうなると「金」のことばかり頭にあって、同僚に小金を借り
まくるヤンの姿はもう悲惨そのもの。ナディアはスリマンが
欲しがるクレープ1枚すら買えないのです。そして彼女は
倍の時給がもらえるということで、店のオーナーの話に乗り、
カナダへ渡ります。

「1ヵ月でスリマンを呼び寄せるから」
彼女のこの言葉には現実味は全然ないんですよ。スカイプで
話をしていたのはわずかな期間で、連絡が途絶え、手紙も来なく
なるのは想定内の状況ですね。
目の前の危機から脱出すればとりあえず何とかなる、なんて
脳天気に考えていたヤンは、いかにも怪しげなマルクという男に
営業権とトレーラーハウスを売却します。ここで全てを売却
しないところが、まだ自分の店を持てると思っている浅はかさ
の表れでしょうか。そして2人で雨漏りのするボロアパートへ
引っ越します。貧困は必ずや犯罪の温床になるもので、スリマン
は新しい靴を万引きしてくるのです。


よりよき人生

それを問いただすヤンの姿を見ると、実は彼は実直な人間であり、
ただ単純なだけなのだとわかります。一方のスリマンの言い訳が
この子も悪いことを教えられて育った子供ではないことがわかる
のです。「同級生にもらってその子は昨日引っ越した」
ヤンが素晴らしいのは、これを店まで返しに行き、「買い取り」
を迫られるとちゃんとそれを支払ってくるところです。
「貧しいが泥棒はいない」

とは言っているくせに、その後、勤務先の冷蔵庫から食材を盗み
それを2人で売りさばくという行為もします。それでもヤンと
スリマンの絆は深まっていくのが、映像から伝わってくるのです。
この辺りは美しい自然と共に描かれ、醜い人間社会を忘れさせて
くれる時間です。
そしてマルクに店を格安で売り渡すように求められてしまう。
するとヤンは、なんと彼を待ち伏せし、数々の人々から搾取した
金を盗むために暴行を加えます。もろ犯罪じゃん。
見ている方では、弱者を食い物にする奴がやっつけられて気分が
いいけれど、その罪や残った借金をフランスにそのまま置いて
カナダへ渡るヤンとスリマンの姿はちょっと違和感あり。まあ、
どっちもどっちかな。空港で出国できるかどうかはスリルがあった
けれど、ここも引きずることなくすぐに飛行機に乗れます。


よりよき人生

カナダで捜し当てたナディアの所在は、なんと刑務所の中でした。
わたしはてっきり売り飛ばされてどこかで死んでいるのだろうと
思ったので、彼女の罪を聞いて少しほっとしました。

マルクから盗んだ金も結構あるし、家も借りたし、仕事も見つかる。
これからこの地で3人は少しまともな生活を送れるのかな。
ちょっと不安だけど。



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