パレードへようこそ

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JUGEMテーマ:洋画

パレードへようこそ

「パレードへようこそ」
原題:Pride
監督:マシュー・ウォーカス
2014年 イギリス映画 121分
キャスト:ビル・ナイ
     イメルダ・スタウトン
     ドミニク・ウェスト
     パディ・コンシダイン
     ジョージ・マッケイ

1984年同性愛者の権利を求めて時の政権と戦う
マークは、同じく政権に迫害されている炭鉱労働組合
を支援するグループを組織する。互いに手を組めば
勝利を獲得できると信じる彼らだったが、世間の反発
は大きく...。

<お勧め星>☆☆☆☆ ラストに流れる字幕での彼ら
のその後の説明が、映画の中身を濃くしています。


イギリスでは、労働者階級、特に炭鉱夫は虐げられ、
前に見た映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の
涙」でも確か経済立て直しのため、極端な緊縮財政や
労働紛争への妥協なき対抗が描かれていました。結局
それが彼女の退陣を招いたんだけれど。
そして同じ年代、同性愛者も数々の圧力を受けていた
わけです。だからマークが、敵が同じなら一緒に戦えば
力が増す、という考えも理解できます。
とはいえ敢えて男社会の典型のような炭鉱夫労働組合を
選ぶというのは、ものすごくチャレンジ精神の持ち主で
なければ考え付かなかっただろうし、それが成功する
とはとても思えませんでした。
マーク役のベン・シュネッツァーは、アメリカ出身ですが

イギリスで演劇を学び、クイーンズイングリッシュが得意
とのこと。なかなかのイケメンです。


パレードへようこそ

全国の炭鉱夫労働組合に電話をかけても、「同性愛」という
言葉を聞いただけで話は途切れてしまいます。そんな彼らに
唯一手を差し出したのが、ウェールズの田舎町、デイライス
労働組合です。そもそもLGSM(炭鉱夫支援同性愛者)のLを
ロンドンと聞き間違えただけなのですが、この町の住民が
フレンドリーな人が多いのです。田舎=閉鎖的という考えは
先入観にすぎないのですね。
イメルダ・スタウトンをはじめとする女優さんのはじけっぷり
も楽しいですし、ビル・ナイやパディ・コンシダインの演技も
渋く光ります。映画の序盤に見られるドミニク・ウェストの
ダンスはものすごくかっこいいですよ!


パレードへようこそ

パレードへようこそ

しかしウェルカムな人々ばかりではないのは当たり前のこと。
モーリーンなる女性は徹底的に彼らを差別し、陰湿な迫害を

進めます。当時AIDSの存在が明らかになった頃で、同性愛者
への偏見はかなり強かったはずなので、彼女たちの行動も
理解できるものです。朝ドラじゃないんだからよそ者にウェルカム
な人ばかりのはずがない。ああ、また言ってしまった。
すべてのストーリーのテンポがよく、マークたちの活動は
田舎町で自分の能力に気づいていない人々を覚醒する力を与えた
ような気がします。それは全国炭鉱労働組合の勝利だけでなく
同性愛者の権利も獲得する道へつながり、互いの手を取り合う
ことが、新しい時代の始まりにつながるのだと実感します。


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だれのものでもないチェレ

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JUGEMテーマ:Horror

だれのものでもないチェレ

「だれのものでもないチェレ」
原題:Arvacska
監督:ラースロー・ラノーディ
1976年 ハンガリー映画 89分
キャスト:ジュジャ・ツインコーツィ
     ヨージェフ・ビバリ
     アンナ・ナジ
     マリアン・モール

孤児のチェレは、養父母の虐待に耐えかね、その家を
脱走する。しかし再び養子に出され、そこでも養母に
激しい折檻を受けるのであった。

<お勧め星>☆☆☆☆ 秀逸な映画だと思いますが
見終わるとどよよーんとなります。


チェレを演じた少女は1年かけて7000人の中から
選ばれた当時7歳のジュジャ・ツインコーツィ。やや
色黒ながら金髪のそばかす顔です。
始まりはどこまでも続く草原を1人の少女が牛を追って
走っていくシーンです。少女は靴はおろか衣服を1枚も
身につけておらず、なぜそんな姿なのかは、彼女が孤児
であり、養父母から「この家にお前の者は1つもない」と
言われているからだとわかるのは、少したってから。


だれのものでもないチェレ

1931年、ホルティ独裁政権下のハンガリーでは、民衆は
貧しく、孤児たちは、その養育費目当てに富農達に養子に
出され、奴隷のようにこき使われていたのです。チェレも
その中の1人であり、家の他の子供は服も食事も学校すら
行っているのに、彼女だけは何もありません。空腹ゆえに
スイカを盗んで食べたことを知られると、そこの父親に
焼けた石を手のひらに押し付けられるという折檻を受ける
のです。もう見るに耐えません。日本でも「おしん」の
ように貧しい農家が口減らしのために、娘を女中奉公に出した
時代がありました。その時もこんな状況があったのでしょうね。
チェレは遂にその家から脱走するのですが、再び養子に出され
ます。今度の家は衣服はくれたけれど、ヒステリックな夫人
の折檻の日々が続きます。


だれのものでもないチェレ

なぜにこんなに不機嫌なんだろうと思うぐらい、夫人はチェレ
を傷めつけます。これは暗に共産政権下で貧しい人々が抑圧を
受け続けていたことをほのめかしているのでしょうか。
さらにこの家の馬小屋にはヤーノシュという老人が住んでいて
チェレに優しくしてくれるのですが、どうやら彼の土地や家を
この一家が奪ったらしいと気づくのは中盤付近です。それが
憲兵に知られるのが怖くて、彼女はヒステリックだったのか。


だれのものでもないチェレ

二人で教会へ行った時チェレはヤーノシュにキリストについて
尋ねるのです。丁寧にそして既に自分の行き先を決めているかの
ように話して聞かせるヤーノシュは、唯一のチェレの心の支え
となるのですが、彼は、憲兵に告げ口することを恐れた夫人に
毒殺されるのです。いや、「憲兵におしゃべりしないクスリ」が
入っているミルクをもらった時点で彼は自分の人生を決めていた
のでしょうね。
その後、ヤーノシュの持ち物を燃やす夫人の姿を見たチェレは、
「お母さんにここにいると伝えて」
と家を訪れた憲兵に頼みます。しかし夫人は自分の罪を告げ口
されるのが怖くて、彼女さえも毒殺しようとするのです。人間を
ここまで貶めるのは何だったのか。どこまでも人間の醜さを
描きつつ、ラストにチェレは、プレゼントもごちそうもない一人

ぼっちのクリスマスを馬小屋で祝うのです。ろうそくに見立てて
火をともしていくと、それはやがてすべてを燃やし尽くしていきます。
チェレがとった行動は偶然だったのか、それとも父も母も実は
この世におらず、ヤーノシュと同じところにいると悟ったのか。
いやそんなに理解力のある年齢ではないか。おそらくは、説明に
ある通り、人間の尊厳と自由を訴えたラストだったのでしょう。
でもどこまでも暗かったよ。


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ぼくらの家路

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JUGEMテーマ:洋画

ぼくらの家路

「ぼくらの家路」
原題:Jack
監督:エドワード・ベルガー
2013年 ドイツ映画 103分 PG12
キャスト:イヴォ・ピッツカー
     グオルグ・アームズ
     ルイーズ・ヘイヤー
     ネル・ミュラー=ストフェン

ベルリンに暮らす10歳のジャックは、弟マヌエル
と奔放な母ザナの3人家族である。家を空けることが
多い母に変わってジャックは家事や弟の世話をして
いたが、あるアクシデントから彼だけ施設に預けられる
ことになる...。

<お勧め星>☆☆☆☆ 良かったですね。ラストも気に
入っています。


<少しネタバレしてたらごめんなさい>
多くの方が気づかれるように、この映画のテーマは「誰も
知らない」(2004)と共通する点が多いです。しかし
あの映画ほど長い期間のことを描いていなのので、子供達
も見るのが辛いほどすさんでいくことはありません。また
どこかに書いている人がいましたが、ドイツの教育ーつまり
小さな頃から他人との対立やトラブルを自分たちで解決させる
というものが反映されているのも一因かもしれません。


ぼくらの家路

10歳のジャックと6才のマヌエル兄弟は、母ザナと3人暮らし
なのですが、冒頭から若い友人たちと大はしゃぎするザナの姿が
映り、夜には、帰宅の道順をジャックに教え、友人たちと遊びに
出かけて行くのです。これに象徴されるように若いザナは、子供
を愛しているけれど、自分の恋愛や遊びを最優先に考えています。
一緒にいる時は、優しいし、何度も抱きしめてくれる。しかし
ジャックが空腹を訴えて夜に母の部屋に行くと、彼女は男とSEXを
しているのです。
「やきもちをやいているの?」

このピントのズレたザナの質問には彼女の幼さも感じますが、その
間、彼女は全裸のままなのです。
そしていつものように母が家を空け、ジャックが家事をこなして
いるとマヌエルは風呂でやけどを負ってしまいます。
このアクシデントでジャックは児童養護施設に入ることになります。
「わたしの息子よ。サインなんかしないわ。」
と怒りまくるザナの姿は、こういう母や父は日本でもいくらでも存在
するのだろうと思ってしまう。

施設での生活は、食事も勉強もしっかりできて快適ではあるけれど、
ジャックはやはり母が恋しいし、弟とも会いたいのです。施設の中で
ワルがいるのは、予想通りの展開だけれど、彼とのある事件によって
ジャックは施設へ戻れない、と確信してしまいます。そして家に
戻っても鍵がかかっているし、いつも隠してあるところにも鍵はない。
弟が預けられている家に行くと、もう厄介者を追い払うかのように
弟は放り出されます。ジャックの容貌がしっかり者のようで、マヌエル
が真逆の弱々しく庇護が必要な雰囲気なので、これから母を捜す行動
も、兄、弟が好対照に描かれていきます。


ぼくらの家路

ひたすらエレベーターのないアパートの4階まで階段を駆け上り、
母の不在を知っては手紙を書くジャック。彼らは、母の交際相手の
居場所を捜しては、母の行方を尋ねたり、食事をご馳走になったり
するわけです。しかし誰も母の居場所を知らない。中にはドラッグ
に溺れている者もいます。その男たちを見てジャックはどう考えて
いるのかは、見ている側が推測するしかありません。
3日後部屋に明かりがともっているのを見たジャックの喜びは、子供
が持つ本来の感情そのものだったと思います。そして、にぎやかな
食事を終え、ガリガリ歯を磨くジャックの瞳は一切笑っていないの
です。ずっと心配に思っていたことは、大丈夫であり、また施設の
ルームメイトにどうしても返さなければいけない物がある。それは
反社会的な行為で獲得したんだけどね。そして玄関の箱の中に彼が
書いた手紙があるかどうか確かめに行く。

3日間で一気に大人の仲間入りをしたジャックが下した決断はある意味
悲しいけれど、最高のものではなかったでしょうか。
監督が語るように、子供たちは絶対に壊れることのない、人生と
将来の信念を持っていると感じられる映画でした。



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陽だまりハウスでマラソンを

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JUGEMテーマ:洋画

陽だまりハウスでマラソンを

「陽だまりハウスでマラソンを」
原題:Sein Letztes Rennen
監督:キリアン・リートホーフ
2013年 ドイツ映画 105分
キャスト:ディーター・ハラーフォルデン
     ターチャ・サイブト
     ハイケ・マカッシュ
     フレデリック・ラウ

かつてメルボルン五輪のマラソンで金メダルを
獲得したパウルも病気がちな妻マーゴと余生を
送る日々。しかしマーゴの体調悪化をきっかけに
老人ホームへ入居する。しかしそこでの退屈な
暮らしに飽き飽きした彼は、再びマラソンをする
ことを決意するが...。

<お勧め星>☆☆☆☆ ありきたりの設定ながら
俳優の素晴らしい演技とストーリ展開でラストは
ハッピーになれます。


同じようなテーマの映画として思い出すのは、2012年
の「アンコール!!」ですが、この映画はまた違った視点
から老人のパワーを感じさせます。
パウル・アヴォホフは、1956年のメルボルン五輪の
マラソンでドイツに金メダルをもたらした人物。しかし
それも今や、補聴器をつけ、病気がちな妻マーゴと静かな
日々を送っているのです。しかしマーゴは日に3度も倒れる
という体調であり、一人娘ビルキットの勧めもあり、2人で
老人ホームへ入居するのです。

日本の老人ホームでもよく見られるように、施設では規則に
したがって画一化されたサービスがなされます。医学的根拠
に基づいて折り紙やら、唱歌の合唱やら、ボール遊び等々。
これって彼らのプライドを損ねてはいないかと思っていても
1人1人に合ったサービスなど行える人員もいないし、時間も
ないのです。


陽だまりハウスでマラソンを

パウルが入ったホームでもひたすら栗で人形作りをさせられます。
療法士ミュラーによると、「目標を持つこと」が「生きがい」に
つながるのだそうな。なるほど。そして「ここは終の住処」であり
「心穏やかに過ごす場所」だそうです。
パウルはそんなの御免だと、早速妻と帰宅する支度をします。実は
パウルは少し認知力は衰えているようで、自分が家を売ってここに
来たことは忘れているのです。
一人娘のビルギットはCAをしているが、未だ未婚だし、ずっと両親
の束縛を受け、今は彼らの世話に縛られています。彼女の気持ちも
すごくよくわかる。
パウルは妻マーゴの後押しもあって、再びマラソンをすることを
決意するのです。


陽だまりハウスでマラソンを

その姿を見て、彼の過去の功績を思い出す老人たちは、急に心が
わくわくしてくる。(1名を除いて)


陽だまりハウスでマラソンを

今まで言われるままに、栗人形を作り、賛美歌を歌い、何も自分で
考えず、1日を送っていた人々が、急に輝き始める瞬間です。この
笑顔がいいですね。
しかしそんなパウルを見たミューラーは、彼が「老人性鬱」の初期
段階ではないかと疑い始めるのです。


陽だまりハウスでマラソンを

彼女も決して間違っていないし、彼女は老人の手助けをしたくて
ここにいるわけです。しかし両者に信頼関係が築けていないと、
それは全く異なった結果を生むのだと実感します。ミューラーが
パウルに精神科医のカウンセリングを受けさせるシーンは、確かに
パウルは年齢相応の認知力の欠如はあるけれど、病気とは思えない。
しかし施設としては、型にはまったままでいてくれないと、他の
入居者への対応に追われることになってしまうのです。これは
ある意味「虐待」なのかもしれませんが、彼女はパウルの過去も
知らないし、彼が「走る」などと考えること自体理解できないの
でしょう。彼女は「孤独な老人の手助けをしたい」つまり、ここに
いる老人は皆可哀想で、静かな最期を看取るのが使命だと燃えて
いるのです。

そして最愛の妻マーゴが亡くなり、パウルはそれでも彼女との
約束「最後まで走る」ということを果たそうとします。しかしそこに
再び立ちはだかるのが施設の規則なのです。

幾度となく困難なシーンが出てきて、見ている側もくじけそうに
なりますが、ラストのベルリンマラソンのシーンは、本当に感動
します。年齢を重ねて体力は衰えても、こういう力はずっと健在だし、
それによって再び再生していくのだと実感します。まさに「人生は
マラソン」なのですね。


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蝶の舌

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JUGEMテーマ:洋画

蝶の舌

「蝶の舌」
原題:La lengua de las mariposas
監督:ホセ・ルイス・クエルダ
1999年 スペイン映画 99分
キャスト:マヌエル・ロサノ
     フェルナンド・フェルナル・ゴメス
     ウシア・ブランコ

1936年スペインの田舎町に住む喘息持ちの
モンチョは、1年遅れで学校に入学する。担任の
グレゴリオ先生は、決して叱らず、様々なことを
子供たちに教え、蝶の舌に興味を持ったモンチョ
と虫取りにも出かける。しかし国内情勢が緊迫し...。

<お勧め星>☆☆☆☆ 時の政権によって国民が
翻弄される姿を、幼い少年の目を通して描いています。


モンチョ以外の話が、あまり本題とつながりがないと
思ったら、原作のいくつかの話の中から、監督の好み
で組み合わせたとのこと。それならモンチョの兄と
中国娘の淡い恋や、モンチョの父の愛人の娘の存在など
の話が、突然挿入されるのも納得できるのです。

<ネタバレしています>
1936年、スペイン、ガリシア地方の田舎町。8歳の
モンチョは、喘息持ちで、1年遅れで小学校に入学する
のです。兄アンドレスからは
「学校では先生が叩く」
と脅され、同級生にからかわれたモンチョはお漏らしを
してしまい、初日から学校を脱走するのです。


蝶の舌

彼は深夜まで山に隠れており、人見知りながら信念の強い
少年であることが伺えるのです。
そんなモンチョに対し、担任のグレゴリオ先生は、まず
彼の自宅に謝罪に来ます。先生は決して子供を叩かず、
自由な発想で授業をしていきます。そんな先生が話す自然の
話にはモンチョはひときわ耳をそばだてます。見たことの
ないティノリンコという鳥や蝶が花の蜜を吸うときに伸ばす
という舌。
しかし町の有力者は、鶏を手土産に教室へ入り込み

「算数をしっかり教えろ」
と威張り散らしていくのです。
「ぼくは鶏肉は医者から食べないように止められているんだ」
あくまでも穏やかな先生の姿に、モンチョはどんどん好きに
なっていきます。モンチョの父は仕立て屋で、喘息の発作を
起こしたモンチョを救った先生のためにスーツを仕立てます。
実は父は共和派であり、母は敬虔な教会信者なのです。ここが
この映画での重要な点であり、のどかな田舎の風景を描きながら
少しずつ国内が変化していく姿を映していくのです。

モンチョの母は「悪いことをした人間は地獄に落ちる」と言います。
しかし先生は「地獄は人間が作る」と言うのです。この後で
フランコ将軍が起こす軍事クーデターで、スペインは軍事政権下
に置かれますが、教会は軍部よりだったことから、先生の考え
がいかに危険なものであるかは、ラストシーンの凝縮されて
いるのです。
先生が退職される時、
「君たちは自由にはばたけ」
と話すと、町の有力者は怒って席を立ちます。「自由に考え
自由に行動すること」に何の問題があるのでしょうか。1つの考え
を押し付け、異論を唱える人々を糾弾することは、とてつもなく
危険な行為であることを理解しなければなりません。


蝶の舌

映画のラストに、信念を変えない人々が拷問を受け、トラックの
荷台に乗せられて行くシーンが映ります。彼らは銃殺という運命が
待っているのです。その中に、アンドレスが入っていた楽団の
メンバーもいるし、グレゴリオ先生までいます。モンチョの母は
「あなたも怒鳴りなさい」
と言い、
「アテオ(無神論者)、アカ、アナーキスト」
と怒鳴りつけます。父は自分の信念を捨て、涙をこぼしながら
怒鳴るのです。先生のスーツは彼が仕立てたものでした。そして
子供たちが走っていくトラックに向かって
「アテオ、アカ、アナーキス」
と怒鳴りながら、石さえ投げつけるのです。その中にモンチョも
入っており、表情を失った顔で、同じ言葉を叫び、石を投げる。

しかし彼は
「ティノリンコ、蝶の舌」
と叫ぶのです。8歳の少年は、なぜ先生が連れていかれるのか、
理解できるはずもないのです。ただ彼に対し、彼に教わった言葉を
投げつけるだけなのです。いつか成長し、この事実を理解した時
モンチョはどんな思いを抱くのでしょうか。
グレゴリオ先生の哀しげな表情とモンチョの怒りに満ちた表情が
心を打ちました。


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ジミー、野を駆ける伝説

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JUGEMテーマ:洋画

ジミー、野を駆ける伝説

「ジミー、野を駆ける伝説」
原題:Jimmy's Hall
監督:ケン・ローチ
2014年 イギリス映画 109分
キャスト:バリー・ウォード
     シモーヌ・カービー
     ジム・ノートン
     フランシス・マギー

1932年、内戦後のアイルランドへ10年ぶりに
戻ったジミーは、かつて自らが運営していたホールを
再建する。そこは庶民の憩いの場となり、日夜賑わい
を見せるのだが、聖職者や一部の富裕層は共産主義の
温床になるとして弾圧を始めるのだった。

<お勧め星>☆☆☆☆ 少しアイルランドについて予習
しておいた方がよくわかる映画です。


1919年〜21年に独立を求めて大英帝国と戦争をし、
見事独立を果たしたものの、その際凍結された自治法を
めぐって、1922年には独立賛成派と反対派とで内戦が
起きるのです。結局自治領としてイギリスから完全に独立
したアイルランドでしたが、同国民で争った経緯や不法に
土地を奪われる農民などが続出し、疲弊した国内経済も
重なって極めて手不安定な状態にあったようです。と書いて
みてもわかったようなわからないような。
その10年後の1932年アメリカからジミー・グラルトン
が帰国する姿が映ります。この彼を演じるのがバリー・ウォード
というアイルランドの俳優さんでかなりイケメンです。


ジミー、野を駆ける伝説

ジミーはかつての恋人ウーナや投獄されていた友人、そして
実母とも再会し、みんな彼を温かく迎えます。アイルランドの
田舎の静かな自然に満ちた風景が美しいです。
しかしそんな彼の帰国を喜ばないのがカトリック教会の
シェルダン神父なのです。彼はかつてジミーが開いていた
ピアース=コノリー・ホールが、反政府主義者の温床に
なっており、教会の権威を失墜させる芸術や文化の広がりを
恐れていたわけです。映画では10年前と現在のジミーの姿
が映り、どのようにしてアメリカへ逃れたか、そして今なぜ

ホールを再開したのかが描かれていきます。そこには純粋に
ダンスや歌、芸術、スポーツをしたいと考える庶民と、それが
共産主義への道へとつながると考える聖職者、権力者との考えの
隔たりがあるわけで、次第に両者の緊張感が高まっていくのが
伺えるのです。ケン・ローチ監督作品なだけに、主役は労働者
や弱者ですが、彼はどちらが「悪」と決め付けているわけでも
ないことがわかります。


ジミー、野を駆ける伝説

シェリダン神父は彼の信条にしたがって行動したのであり、
それを利用した権力者や富裕層には、神父自身もラストに
侮蔑の言葉を投げかけていることから伺えます。


ジミー、野を駆ける伝説

労働者階級の救世主として崇められる存在となるジミーは
敵対組織の格好のターゲットでもあったのです。ラストに
ジミーが乗せられた車自転車で追いかける若者の集団を見ると、
この国の明るい未来を感じざるを得ません。でも今はどうなん
だろう。遠い国に思えてしまう。


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博士と彼女のセオリー

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JUGEMテーマ:洋画

博士と彼女のセオリー

「博士と彼女のセオリー」
原題:The Theory of Everything
監督:ジェームズ・マーシュ
2014年 イギリス映画 124分
キャスト:エディ・レッドメイン
     フェリシティ・ジョーンズ
     エミリー・ワトソン
     チャーリー・コックス

1963年、ケンブリッジ大で物理学を学ぶスティーヴン
は同じ大学の女子学生ジェーンと恋に落ちる。しかし同時
に彼は体の不調を感じ始めるのだった。

<お勧め星>☆☆☆☆ 素直に感動できるのです。主役の
演技も光ります。


題材から個人的に最も苦手な部類の映画だと思っていたの
ですが、見始めるとその映像美と音楽、そしてなにより
主演の2人の演技が素晴らしいのです。特にホーキンス博士
を演じたエディ・レッドメインは、身体活動の衰えを演じ
つつ、知的活動は天才的である姿を表現するために、膨大な
時間をかけて研究したそうです。


博士と彼女のセオリー

1963年、ケンブリッジ大で物理学を学んでいる
スティーヴン・ホーキンスは、文学部の女子学生
ジェーン・ワイルドと恋に落ちるのです。実は始めから
スティーヴン達の話やら受けている講義についてはちんぷんかんぷん
なので、彼の理論を描いた映画でなくてよかったと感じてしまう。
そう、この映画はスティーヴンの私生活を中心に描かれた伝記物
なのです。
そしてスティーヴンはなぜか自転車こぎが遅くなる、ペンを落とす、
コーヒーカップを倒すなど様々な身体の異変を感じます。それは
ジェーンとの恋愛が進んで行くのと同時であり、彼がALSと診断
され、余命が2年と知ってもジェーンは彼と結婚するのです。


博士と彼女のセオリー

2年だと思っていたから結婚したのかもしれません。本当のところは
わかりませんが、2人の結婚生活は、子供と彼の世話に追われる
ジェーンの苦闘の日々の始まりでもあったのです。それでも彼は
知的活動を続け、研究の成果を上げていきます。でも家族として
行動するとき、荷物を持つのも車を運転するのも、キャンプのテント
張りさえ彼女の仕事なのですよ。そして何よりジェーンももっと
学びたかったのです。


博士と彼女のセオリー

彼女一家を支えてくれる教会のジョナサンの存在も周りから見ると
どうしても違和感を覚えるのでしょう。スティーヴンではなく
ジェーン自身で彼とは距離を置くことにするのです。ジェーンの心の
支えはどこにあったのだろう。もちろんスティーヴンへの愛もあった
でしょうが、安らぐ時間はあったのでしょうか。
そして終盤にスティーヴン自身で、言語療法士のエレインとの生活を
選択します。ジェーンの言葉、

I have loved you.
字幕では「愛してたのよ」
と完了形になっていましたが、あれは「継続」ではないかと思って
います。
ラストシーンの時を遡る光景は、宇宙の始まりへと戻り、彼の
研究そのものを映していたのでしょうね。よくわからなかったけど。
でもとてもいい映画でした。


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ミックマック

5
JUGEMテーマ:洋画

ミックマック

「ミックマック」
原題:Micmacs
         Micmacs a tire-Larigot
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
2009年 フランス映画 104分
キャスト:ダニー・ブーン
     アンドレ・デュソリエ
     オマール・シー
     ドミニク・ピノン
     ジュリー・フェリエ

ビデオ店の店員バジルは、発砲事件に遭い、銃弾が
頭に残った状態になる。職を失い、ホームレス生活
をしていた彼は、ガラクタ修理屋プラカールと出会い、
彼の仲間と共同生活を始めるのだった。

<お勧め星>☆☆☆☆ 個性的な登場人物でヘビーな
内容の割にはおしゃれ感あふれる楽しい映画になっています。


オープニングはかなり暗いんです。もちろんテンポよく
描いているので、それを感じさせませんが、主人公の
バジルは、1979年、西サハラで地雷除去中の事故で
父親を亡くし、母に捨てられ、寄宿学校でも疎まれ...。
というものすごく暗い幼少期を経て30年後、彼は
レンタルビデオ店の店員になっています。彼の特技は
リップ・シンク=口パクですが、これが特に役に立つ
こともなく、店の前で起きた発砲事件の流れ弾を頭に受け、
病院の手術室に運ばれます。ここで医師が銃弾を取り出す
か否かをコインの裏表で決める辺りは、コメディの世界です。


ミックマック

職を失いホームレス生活に身を落としたバジルの姿も特に
悲壮感はなく、そこかしこで彼のやさしい一面を知ることが
できます。で、彼はプラカールというガラクタ修理屋と出会う
のです。連れていかれた彼の住まいには、それはものすごい
個性の人たちばかりがそろっています。


ミックマック

計算機少女、民族史学者、料理番、発明アーチストetc.
これらは一度ではとても覚えきれないけれど、映画が終わる
時にはしっかり覚えられるという上手い演出です。


ミックマック

冷蔵庫から出てきた軟体女性にはびっくりしたなあ。
実はその人々も皆決して笑えない過去を持っているのです。
しかし共同生活をすることでそれを笑いに変えていく強さを
培っているみたい。バジルも初めて落ち着ける場所を得た
気分になるのです。ところがひょんなことから、自分の頭
に残る銃弾を作った会社と、かつて父の命を奪った地雷を
製造した会社を知ってしまいます。彼はそのどちらにも復讐
しようと考えるわけです。彼の怪しい行動はすぐに皆にバレて
全員で復讐計画実行!となります。でもだいたいおかしな人
ばかりなので、考えるプランも突拍子もないイタズラ。いや
イタズラでも人が死んでいくからちょっと笑えないか。
一つずつ進めていくイタズラが、ちょいちょい失敗もしでかし
ながら、最終的には2つの会社の社長を陥れることへとつながる
のです。

「笑い」をふんだんに織り交ぜながら、真の「悪」を浮かび
上がらせていく、という手法。もちろんあり得ない展開ばかり
ですが、それはラストの幸せなシーンで、もう帳消しにしちゃう。
世界平和への強いメッセージを持った映画です。


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さよなら子供たち

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JUGEMテーマ:洋画

さよなら子供たち

「さよなら子供たち」
原題:Au Revoir Les Enfants
監督:ルイ・マル
1987年 フランス=西ドイツ映画 103分
キャスト:ガスパール・マネッス
     ラファエル・フェジト
     フランシーヌ・ラセット

1944年、ナチス占領下のフランスで、カトリック
寄宿学校で生活するジュリアンは、ジャンという転校生
と同じクラスになる。そしてある時、彼は自分より
何事も優秀なジャンがユダヤ人であることを知ってしまう
のだった。

<お勧め星>☆☆☆☆ 題名の意味がラストにわかり、
戦争の不条理さを痛感します。


1987年ベネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞して
います。1977年以来アメリカで活動していたルイ・マル
監督が、10年ぶりにフランスに戻り、自伝的な内容の
濃い映画を作り上げました。
1944年、クリスマス休暇を終え、パリから列車で
カトリックの寄宿学校へ戻るジュリアン・カンタンが映り
ます。彼は12才なのに母親に甘え、泣きべそをかいている
のです。パリからの列車の車窓越しに見える彼のおでこには
母がキスした跡がくっきりついていて、その幼さを十分すぎる
ほどに物語ります。

時はナチス占領下のフランスであり、食糧難にあえぎながらも
彼らは極めて恵まれた生活を送れていることは、冒頭のジュリアン
の母親が着ていた毛皮のコートからも伺えます。


さよなら子供たち

そして寄宿学校の彼のクラスにジャン・ボネという転校生が
入って来ます。子供特有の好奇心で彼の両親について尋ねると
父は捕虜で、母とは3か月も音信不通とのこと。僕だって、
パパとは全然会っていないし、ママとも当分会えないから同じ
だな、と思ったジュリアンですが、どうもジャンの様子が
おかしいことに気づきます。


さよなら子供たち

給食の豚肉は食べないし、なにやら夜中にお祈りをしている。
校長先生もジャンと一緒に来た他の2人をなぜか匿うような
素振りをします。ここで気づくのは、ドイツ兵が全て悪人と
は描かれておらず、逆にフランス人の中にも親独義勇兵なる
集団がいて、ユダヤ人狩りを行っていたという事実を正面から
描いていることです。ここは特にすばらしい。
さらに聖体拝領祭での校長先生の説教は、恵まれた者への警告
を容赦なく行い、途中で席を立つ紳士もいたほどです。しかし
その後で「富や権力にすがる人々にも愛を」と話します。戦争下
での人間の本質をつきつつ、人間の善良な面への期待をこめて
いたのでしょう。

ある日ジュリアンは、ジャンの私物を盗み見して、彼が実は
ユダヤ人であり、この学校に匿われていることを知ってしまいます。
でも彼にはユダヤ人がなぜ罪人なのかわからないのですよ。逆に
ジャンとは、本を読んだり、ピアノを連弾したりして親しく
なっていきます。そう、聖体拝領祭の後で、ジュリアンの母と
兄とともにジャンがレストランで食事をしていると、突然義勇兵
が入って来ます。その時のフランス人客や店主の対応はまさに
誇り高いものでした。レジスタンス活動が活発化したのも納得
できます。
しかしそんな楽しい日々も長くは続きません。密告によって
校長以下ジャン達3人がゲシュタポに連行されます。


さよなら子供たち

この密告者の事情が実は、ジュリアン達にも責任がないわけでは
なく、幼い彼でもそこは理解できたはず。
学校を後にする校長に、誰からともなく
「さよなら、神父様」
という声が聞こえはじめ、それが広がります、そして校長も
「さよなら、子供たち」
と返事をするのです。この「さよなら」が本当の別れであることを
ジュリアン達は理解できていたのでしょうか。ただ、何が正しい
のかは絶対にわかっていたと思いたいです。
戦争の不条理さが胸に残る映画でした。








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シャトーブリアンからの手紙

4
JUGEMテーマ:洋画

シャトーブリアンからの手紙

「シャトーブリアンからの手紙」
原題:La Mer a l'aube/Calm at Sea
監督:フォルカー・シュレンドルフ
2011年 フランス=ドイツ映画 91分
キャスト:レオ=ポール・サルマン
     ウルリッヒ・マテス
     マルタン・ロワズィヨン
     ヴィクトワール・デュポワ

1941年、ナチス占領下のフランスで、1人の
ドイツ軍将校が暗殺される。ヒトラーはその
報復として150人のフランス人の処刑を命じる。
その処刑者リストは、政治犯を中心作られ、その
中には17歳の少年ギィも含まれていた。

<お勧め星>☆☆☆☆ 静かな中にナチスの暴挙
だけでなく戦争への批判を感じます。


1979年映画「ブリキの太鼓」で有名な
フォルカー・シュレンドルフ監督作品です。
1941年、フランス、シャトーブリアンにあるシュワゼル
強制収容所は、スリ、ポン引きなどの軽犯罪者から
政治犯まであらゆる囚人を収容していたのです。しかし
冒頭は、塀越しにオデットと戯れるギィやそれをからかう
クロードの姿や、収容所内での徒競走シーンが描かれ、

極めてのんびりとした光景が見られるのです。
しかし10月20日、ナントで1人のドイツ軍将校が暗殺される
事件が起きたことから、状況は一変します。この暗殺計画は
また違う角度から描かれ、それが正当化されないのも興味
深いものです。
さて、いち早く事件を知ったベルリンのナチスは、報復として
150人のフランス人の処刑を要求してきます。

「ドイツ人の命は重い」
この命令には、フランス人の役人だけでなく、在仏ドイツ軍
司令部も従うことをためらい、何とか真犯人を見つけ、命令
の執行を止めようと画策するのです。その中にフランス人で
ありながら、個人的な恨みから、処刑を進める考えの人もいて
人間の良心というものの曖昧さを感じます。

しかし命令は命令なのです。フランス人の副知事も、処刑者
リストを作ることは、1つの公務に過ぎないのです。
そしてリストに入った人々は政治犯主体であり、処刑1時間前に
それぞれが、最後の手紙を書き始めます。1つ1つが声となって
映しだされていき、この後、フランス、レジスタンス神話の
発端となったギィ・モケだけを強調して取り上げていないのも
感情に走らず、却ってこの事件を強く印象付けます。


シャトーブリアンからの手紙

さらに銃撃役のドイツ兵で、1度目の銃撃で腰を抜かした
ハインリッヒという若い兵士は、後のノーベル賞作家である
とのこと。


シャトーブリアンからの手紙

銃殺の前に連れてこられた司祭の
「暗殺は暴力を生み、さらなる暴力の連鎖を招く」という言葉、
「命令の奴隷になるな、良心に従え」という言葉は限りなく
重いです。


シャトーブリアンからの手紙

70年以上たった今でも、同じことが繰り返されている現実
から目を背けてはいけませんね。



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